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第十三章

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「あなたに罪はありません。ナタリーがあのようなことをするとわかっていて推挙したわけでもありませんし、初めからその目的があって我が家に雇われたわけではなかったと聞きました」

「ですが、奥さまに起こったことは、ナタリー一人の責任で終わらせるにはあまりにも……」

「確かに、私の妻であるクリスティアーヌの身に起こったことを考えれば、私個人の心情としてはナタリー一人の処分では釣り合いは取れない」

侯爵夫人と男爵家の娘では立場が違う。仮に立場が逆であったなら、処罰は違ったものになっただろう。もしかしたら、何の咎めも受けなかったかもしれない。

「だが、クリスティアーヌはそれを望まない。新しい護衛を雇うのは簡単だが、ギオーヴ殿のことは買っている。私もそこまで狭量ではない。トラヴィスの後任として最適な人材が見つかるまでは暫く二人で頑張ってもらうことになる。と言っても当分は邸の外に出ることも出来ないだろうから、暫くは軍の訓練所で腕を磨くことだ」

「「は!」」

二人が額を床に擦り付け、深々と頭を下げる。

「寛大なご処置、ありがとうございます」

「奥様が味わった苦痛を思えば、私どもも手足を切り刻まれても致し方ないと思っておりました」

「切り刻……」

過激な発言にびっくりしてルイスレーンを見る。
オヴァイエにした仕打ちも見ているので、まったく根拠のない話でもないのかも知れない。

「あまり彼女を怯えさせるようなことを言うな。確かに私は今回のことで何人かには酷いことをしたが、それは向こうにも非があることだ」

ぐいっと腰に回った彼の腕に力が籠る。
彼が不安そうに見つめる。私が自分を恐れていないか見計らっているようだ。

「あなたを怖がるなんて……誰にどんなことをしたかわかりませんが、理由があったのなら、あなたのしたことを責めるつもりはありません。私のため……なんですよね」

自分勝手に聞こえるかも知れないが、彼が私を傷つけるつもりはないことを知っている。それが私のためならば、そこまでしてくれたことに感謝しかない。

「ギオーヴさん、ひとつ確認したいことがあります」

「なんでしょうか」

「ミシェルは……どうしていますか?私をおびきだすために拐われたあの子は……怯えたりしていませんか?」
「いえ、特には……殆ど眠らされていたようで、何があったか覚えていないようです」
「そう……良かった」
「奥さまが望まれるなら、時折様子を見て参ります」

スティーブが申し出た。

「本当に?」
「はい、自分にも弟や妹がおりますので、小さい子には慣れております」
「お願いします」

ほっとして体の緊張を解くとルイスレーンが体を支えてくれた。

「あなたにそこまでしてもらう価値が、私にあるかどうかは別ですが……私は……」

「生きてさえいれば私は……たとえ私以外の誰かが君に何かをしても、君はそんなことで穢れはしない」

私が言いたいことを察して彼が言う。

彼の言葉が嘘ではないとわかる。確証はないが、そう感じた。

「それから、ギオーヴさん、あなたに罪はありません。始めから私を狙っていたのでないなら、あなたが彼女を引き入れたことに問題はないわ。スティーブも……私を見つけるのに奔走してくれたのでしょう?」

「い、いいえ……一番奔走されたのは閣下です。我々は奥様を探しただけです。あらゆる方面に働きかけ、寝る間も食べる間もなく捜索を指揮されておりました。その手腕は男の私でも惚れ惚れする程で……」
「それくらいにしておけスティーブ……私は妻を取り戻したかっただけだ」

スティーブが心酔するように話し出すのをルイスレーンが止める。

「私も知りたいです。ルイスレーンがどんなだったか」

期待して彼を見る私にルイスレーンが困った顔を向ける。

「二人きりになったらな……」
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