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第十章

16【*】

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「ん………」

合わさった唇の隙間から舌が捩じ込まれ、自分から迎え入れるように舌を絡める。
夜着の裾の下から太ももに直接手が触れた。その温かさに心地好くなって無意識に彼に体を擦り付けた。そのまま彼は両腕をお尻と背中に回すと、キスをしたままくるりと回転して寝台まで運ばれた。

寝台に仰向けに寝かされる。夜着を胸の上まで捲り上げ右手で胸を掴まれ、左手は足の間に差し込まれる。

既に濡れてきていること知り、接触している彼の口角が上がったのがわかった。

剥き出しの胸を揉まれ、時折指先が敏感になった乳首を摘まむ。下着越しに彼の大きな手で包み込まれて指先を窪みにそって動かされると、下着越しでは我慢できず自然と腰をもぞもぞと動かす。

「あ……んん………」

私の反応に気付き、下着をずらした部分から彼の指が分け入ってきて、指が一本入り口を探りあてて差し込まれた。

「ん……ああ……」

一本から二本、三本と追加されていき、体の奥から溢れてくる愛液の音がびちゃびちゃと響く。

「いいか?」

ずっと重ねていた唇を僅かに離し、耳元で掠れた低音が響いて頷くと、下着を足首まで下ろされぐっと膝が胸に触れそうになる所まで持ち上げられた。ひやりと空気を濡れた場所に感じる。カチャカチャと彼がスラックスの前を開ける音がして、先端が入り口にあてられ、ぐいっと熱い杭が侵入してきた。

「あん……はあ…」

まだ数回しか彼のものを受け入れていなくて、少し狭い道を彼の固く熱いものがゆっくりと突き進む。その圧迫感と快感に私は喘ぎ声を洩らすと、それを聞いて中の彼が更に大きくなる。

奥まで彼が辿り着くと同時に彼が動きだし、引き摺り出す度に擦れた場所が気持ちいいところを刺激する。私の両脇に手をついて、目を閉じながら私を穿つ彼の顔を見つめ、突き上げてくる官能の波に溺れそうになる。

「あ、そ、ああん…ああっい、いっちゃ……」

繋がった所に彼が手を差し込み、手前の尖りをぎゅんと摘ままれると、背中を仰け反らせて達した。

続いて彼が絶頂に達して続けざまに熱いものが自分の中に注がれる頃には、私は既に何度も達し最後の瞬間に脱力した。
彼も突いていた手を滑らせ私には覆い被さるように倒れこんだ。

はあはあと彼の荒い息が耳のすぐ横で聞こえた。自身を引き抜き、横たわって瞑っていた目を開いた。

私の好きな彼の緑とオレンジの混じりあった瞳が見つめてくる。

「あなたの顔を見て我慢できなかった」

すまなさそうに言う彼に私はふるふると首を振った。
いきなりの行動に驚いたが、夢のせいで心細さを感じていたこともあって彼の温かさにほっとした。

「こんなに朝早く起きて……よく眠れなかったのか?」

私の反応に安堵しながらも彼が心配げに訊いてくる。

「ルイスレーンこそ……夕べも遅かったのに、今からお出掛けになるなんて……お忙しいのはわかりますが、お体は大丈夫なのですか?」
「今朝は殿下たちも参加する訓練があるんだ」
「いつか……見学してもよろしいですか?その……無理にとはいいません」

庭で一人鍛練する彼を一、二度見かけたが、誰かを相手に剣を振るうところを見てみたいと思った。

「時々公開模擬試合がある。次の日程が決まったら知らせるので、良ければその時に来るといい」
「はい、是非」

職場を訪問できるとは思っていなかったので、勢いよく返事をした。

そんな私の様子に彼が柔らかく微笑んで、髪を撫でて額にキスを落とす。

「旦那様……お出掛けの時刻です」

執事補のマリスが降りてこない彼を呼びに来て、まさか私の部屋にいると思わず彼の部屋の扉を叩いた。

「……もう行かねば。世話をする時間がなくてすまない」

もう一度唇を重ね乱れた衣服を正す彼から目が離せなかった。

「もう少し寝ていなさい」

起き上がって立ち上がりかけたのを止められた。

「でも……」

夫を見送り、出迎えるのは妻の務め……ルイスレーンは私が寝ている間に帰り、寝ている間に出掛けてしまう。

「旦那様?」

廊下から再びマリスの声が聞こえる。

「出迎えも見送りも嬉しいが、それを義務だと考える必要はない。私の方が体力があるのだし、辛いなら無理はしなくていい」

扉まで歩いて行き、そこで彼はもう一度振り返る。

「私はあなたが同じ邸に居てくれると思うだけで満たされる。もちろん、さっきのようなことが度々あると嬉しいがな」

扉を僅かに開けて隙間から滑り出ていった。

「マリス…私はここだ」
「あ……え……あ、そちらでしたか」

扉の向こうでまごつくマリスの声が聞こえ、戸惑っている顔が想像できて、一人で照れた。

片足にひっかけたままの下着に手を掛けようとして動いた拍子にさっきルイスレーンが残した精がトロリと流れ出て来た。

彼が言うほど体は辛くない。もはやあの人との行為がどんなものだったか思い出せなくなっていることに驚いた。それでも投げつけられた言葉や受けた扱いはまだ記憶に残っている。叔父に掴まれた痣はもう殆ど消えていた。心に受けた傷も、この痣のように目に見えて癒えるのがわかればいいのにと思った。
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