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第四章

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森での密会でオリヴァー殿下が聞いた話はまさにこちらにとっては青天の霹靂とも言える内容だった。

男はカラトゥリ大公とリアベリー大公の両大公からの親書を携えていた。

密会を終えて砦に戻ってきた殿下から話を聞いて、ルイスレーンは始めは疑った。

「信じられません」
「私も最初その話を聞いてそう思ったが、どうやら本当のことらしい」
「クーデター……両大公はそんなことを」

そもそもこの戦争はカメイラから仕掛けてきた。
しかしそれこそが現王が寵妃とその親族に唆されて起こしたものであり、両大公は始めから反対していた。
両大公からの反対に王は二人を更迭し権限を剥奪。政治犯を収容する北の塔へ幽閉した。
大公の身柄を人質にされ、大公の陣営が手も足もでず手をこまねいているうちに事態は悪化した。
カラトゥリの大公はすでに齢六十を越えており、この幽閉に体力がもたずあっけなく数ヶ月で亡くなってしまった。
しかも王はその死を隠蔽し、大公の息子が父の死を知ったのはそのひと月後で、遺体はすでに荼毘に付されていた。
大公である父の死を隠蔽され、しかも罪人同様に遺体を扱われたことを知った息子は激怒した。
しかし、利口な彼は即座に王を糾弾せず、悲しみに暮れるふりをして密かにリアベリー大公側と連絡を取り、クーデターを企てた。

「向こうの要求はことが収束するまでこちらが傍観すること。もちろん前線に逃げ込んできた者の処分は任せるそうだ。そしてクーデター成功のあかつきには軍を撤退し、向こうが新たに擁立した君主を容認すること」
「それではこちらは向こうの要求ばかり飲むのですか?いくら愚王が勝手にやったこととは言え、こちらも多くの犠牲を出しております」
「わかっている。だからこちらは今後両国の国境にある魔石の採掘権をカメイラが放棄することと、今回のこちらの損害について全額補償することを条件に出した」
「……物理的な損失はそれで補えますが」
「気持ちはわかるが、失った命は戻ってこない。だが、亡くなった兵士たちの家族に充分なことをしてやることはできる。それにこれで早く戦争が終わればそれだけこれから先の犠牲を無くすことができる」
「それで、使者は?」
「こちらの条件を両大公に伝えに行かせた」
「その条件、飲むと思いますか?」

いくら向こうから持ちかけてきた取引とは言え、全てのむとは思えない。

「好むと好まざるとに関わらず、のむしかないだろう。これ以上戦が長引いて困るのはこちらもだが、あちらはもっと厳しい。何しろ愚かな王と愛娼のせいで政は乱れ人心も離れてきているそうだ」

「わかりました。向こうから返事が来たらすぐに陛下のもとへ走ります」

恐らく使者は二日のうちには戻ってくるだろう。
そうなれば自国の王にことの次第を説明し判断を仰がねばからない。しかも今回の件は今の段階では秘密裏に行う必要がある。ルイスレーンは知らせを受けたらすぐに王都へ走るために準備をしておこうと思った。
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