32 / 266
第三章
9
しおりを挟む
『親愛なるルイスレーン様
いかがお過ごしですか?こちらは日に日に新緑が眩しい季節になってきました。
先日、王宮で開かれた茶会に出席してまいりました。
初めての王宮は何もかも凄かったです。建物の規模も華やかさも人の多さも。あんなにたくさんの建物が建ち並んでいて、どうして皆さんは迷ったりしないんでしょうか。
案内の人がいなければ忽ち迷い、遭難してしまうところでした。
皇太子妃様も第二皇子妃様もとても美しく神々しかったです。眩しくて目が瞑れそうでした。
茶会は今回そちらへ遠征に行っている中の主に小隊長以上の階級にある方々の配偶者が招待されていて、総勢二百人ほどが集まっておりました。
年齢も私より少し上の方から母親くらいの方までいらっしゃいました。
初めてお会いする方ばかりでまわりの方々が話をされているのをきいているばかりでしたが、途中でルイスレーン様の部下だというアッシェハルク様の奥様というイザベラ様がお声をかけてくださり、何人かの方を紹介していただきました。
あまりにたくさんの方を一度に紹介していただいたので、とても全員の方の名前を覚えきれませんでした。
でも皆様、戦地にいらっしゃる旦那様を心配して無事に戻られることを毎日祈っているところは共通しておられました。
色々ありましたが、王宮のお茶会はお茶もお菓子もとてもおいしかったです。
ご武運をお祈りしております
クリスティアーヌ』
前回茶会の招待状が届いたことを書いたので、その結果を書かないわけには行かないとペンを握った。
皇太子妃と第二皇子妃に個別に呼び出されたことを書くことは躊躇われた。
何だか告げ口をするみたいだと思ったからだ。
なので、二人のことは一般的な感想に止めておいた。
それともうひとつ。書いていいものか考えることがあった。
茶会で出会った人々はイザベラ様とそのお仲間だけではなかった。
二十歳前後のお嬢様がいる奥様たちからは、いつ侯爵と知り合ったのか、どうやって侯爵を射止めたのかなど根掘り葉掘り問い沙汰された。
それはあわよくば自分の娘を侯爵夫人にと思っていた方々たちらしいとイザベラ様がおっしゃた。
つまり私はそんな彼女たちの目論見を打ち砕いた女ということで、皇太子妃様たちの手前おおっぴらにきつい言い方をする人はいなかったが、視線は痛かった。
中でもグリュセラ伯爵とポートリア伯爵夫人は私をまるで泥棒猫のような目で睨んできた。
この国の貴族社会の結婚市場においてルイスレーン様はかなりの注目株だったようだ。
二人の迫力にルイスレーン様を花婿にと考えていた他の方々もたじたじだった。
だが、これを書いてしまってはきっと要らぬ心配をかけてしまう。
今のところ睨まれたりしただけで実害はないことだ。
取りあえず、お茶会ミッションは無事に(?)終了し、私はまた明日からの診療所での手伝いのため、その日は早目に眠りについた。
いかがお過ごしですか?こちらは日に日に新緑が眩しい季節になってきました。
先日、王宮で開かれた茶会に出席してまいりました。
初めての王宮は何もかも凄かったです。建物の規模も華やかさも人の多さも。あんなにたくさんの建物が建ち並んでいて、どうして皆さんは迷ったりしないんでしょうか。
案内の人がいなければ忽ち迷い、遭難してしまうところでした。
皇太子妃様も第二皇子妃様もとても美しく神々しかったです。眩しくて目が瞑れそうでした。
茶会は今回そちらへ遠征に行っている中の主に小隊長以上の階級にある方々の配偶者が招待されていて、総勢二百人ほどが集まっておりました。
年齢も私より少し上の方から母親くらいの方までいらっしゃいました。
初めてお会いする方ばかりでまわりの方々が話をされているのをきいているばかりでしたが、途中でルイスレーン様の部下だというアッシェハルク様の奥様というイザベラ様がお声をかけてくださり、何人かの方を紹介していただきました。
あまりにたくさんの方を一度に紹介していただいたので、とても全員の方の名前を覚えきれませんでした。
でも皆様、戦地にいらっしゃる旦那様を心配して無事に戻られることを毎日祈っているところは共通しておられました。
色々ありましたが、王宮のお茶会はお茶もお菓子もとてもおいしかったです。
ご武運をお祈りしております
クリスティアーヌ』
前回茶会の招待状が届いたことを書いたので、その結果を書かないわけには行かないとペンを握った。
皇太子妃と第二皇子妃に個別に呼び出されたことを書くことは躊躇われた。
何だか告げ口をするみたいだと思ったからだ。
なので、二人のことは一般的な感想に止めておいた。
それともうひとつ。書いていいものか考えることがあった。
茶会で出会った人々はイザベラ様とそのお仲間だけではなかった。
二十歳前後のお嬢様がいる奥様たちからは、いつ侯爵と知り合ったのか、どうやって侯爵を射止めたのかなど根掘り葉掘り問い沙汰された。
それはあわよくば自分の娘を侯爵夫人にと思っていた方々たちらしいとイザベラ様がおっしゃた。
つまり私はそんな彼女たちの目論見を打ち砕いた女ということで、皇太子妃様たちの手前おおっぴらにきつい言い方をする人はいなかったが、視線は痛かった。
中でもグリュセラ伯爵とポートリア伯爵夫人は私をまるで泥棒猫のような目で睨んできた。
この国の貴族社会の結婚市場においてルイスレーン様はかなりの注目株だったようだ。
二人の迫力にルイスレーン様を花婿にと考えていた他の方々もたじたじだった。
だが、これを書いてしまってはきっと要らぬ心配をかけてしまう。
今のところ睨まれたりしただけで実害はないことだ。
取りあえず、お茶会ミッションは無事に(?)終了し、私はまた明日からの診療所での手伝いのため、その日は早目に眠りについた。
30
お気に入りに追加
4,253
あなたにおすすめの小説
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
召喚されて異世界行ったら、全てが終わった後でした
仲村 嘉高
ファンタジー
ある日、足下に見た事もない文字で書かれた魔法陣が浮かび上がり、異世界へ召喚された。
しかし発動から召喚までタイムラグがあったようで、召喚先では全てが終わった後だった。
倒すべき魔王は既におらず、そもそも召喚を行った国自体が滅んでいた。
「とりあえずの衣食住は保証をお願いします」
今の国王が良い人で、何の責任も無いのに自立支援は約束してくれた。
ん〜。向こうの世界に大して未練は無いし、こっちでスローライフで良いかな。
R15は、戦闘等の為の保険です。
※なろうでも公開中
幼子は最強のテイマーだと気付いていません!
akechi
ファンタジー
彼女はユリア、三歳。
森の奥深くに佇む一軒の家で三人家族が住んでいました。ユリアの楽しみは森の動物達と遊ぶこと。
だが其がそもそも規格外だった。
この森は冒険者も決して入らない古(いにしえ)の森と呼ばれている。そしてユリアが可愛い動物と呼ぶのはSS級のとんでもない魔物達だった。
「みんなーあしょぼー!」
これは幼女が繰り広げるドタバタで規格外な日常生活である。
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
【悲報】恋活パーティーサクラの俺、苦手な上司と遭遇しゲイ認定され愛されてしまう
grotta
BL
【本編完結】ノンケの新木は姉(元兄)の主催するゲイのカップリングパーティーのサクラとして無理矢理参加させられる。するとその会場に現れたのは鬼過ぎて苦手な上司の宮藤。
「新木?なんでお前がここに?」
え、そんなのバイトに決まってますが?
しかし副業禁止の会社なのでバイトがバレるとまずい。なので俺は自分がゲイだと嘘をついた。
「いやー、俺、男が好きなんすよ。あはは」
すると上司は急に目の色を変えて俺にアプローチをかけてきた。
「この後どう?」
どう?じゃねえ!だけどクソイケメンでもある上司の誘いを断ったら俺がゲイじゃないとバレるかも?くっ、行くしかねえ!さよなら俺のバックバージン……
しかも上司はその後も半ば脅すようにして何かと俺を誘ってくるようになり……?
ワンナイトのはずがなんで俺は上司の家に度々泊まってるんだ?
《恋人には甘いイケメン鬼上司×流されやすいノンケ部下》
※ただのアホエロ話につき♡喘ぎ注意。
※ノリだけで書き始めたので5万字いけるかわからないけどBL小説大賞エントリー中。
いつか終わりがくるのなら
キムラましゅろう
恋愛
闘病の末に崩御した国王。
まだ幼い新国王を守るために組まれた婚姻で結ばれた、アンリエッタと幼き王エゼキエル。
それは誰もが知っている期間限定の婚姻で……
いずれ大国の姫か有力諸侯の娘と婚姻が組み直されると分かっていながら、エゼキエルとの日々を大切に過ごすアンリエッタ。
終わりが来る事が分かっているからこそ愛しくて優しい日々だった。
アンリエッタは思う、この優しく不器用な夫が幸せになれるように自分に出来る事、残せるものはなんだろうかを。
異世界が難病と指定する悪性誤字脱字病患者の執筆するお話です。
毎度の事ながら、誤字脱字にぶつかるとご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く可能性があります。
ご了承くださいませ。
完全ご都合主義、作者独自の異世界感、ノーリアリティノークオリティのお話です。菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
振られたから諦めるつもりだったのに…
しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ヴィッテは公爵令息ディートに告白して振られた。
自分の意に沿わない婚約を結ぶ前のダメ元での告白だった。
その後、相手しか得のない婚約を結ぶことになった。
一方、ディートは告白からヴィッテを目で追うようになって…
婚約を解消したいヴィッテとヴィッテが気になりだしたディートのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる