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第三章

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『親愛なるルイスレーン様

いかがお過ごしですか?こちらは日に日に新緑が眩しい季節になってきました。
 
先日、王宮で開かれた茶会に出席してまいりました。

初めての王宮は何もかも凄かったです。建物の規模も華やかさも人の多さも。あんなにたくさんの建物が建ち並んでいて、どうして皆さんは迷ったりしないんでしょうか。
案内の人がいなければ忽ち迷い、遭難してしまうところでした。

皇太子妃様も第二皇子妃様もとても美しく神々しかったです。眩しくて目が瞑れそうでした。

茶会は今回そちらへ遠征に行っている中の主に小隊長以上の階級にある方々の配偶者が招待されていて、総勢二百人ほどが集まっておりました。

年齢も私より少し上の方から母親くらいの方までいらっしゃいました。

初めてお会いする方ばかりでまわりの方々が話をされているのをきいているばかりでしたが、途中でルイスレーン様の部下だというアッシェハルク様の奥様というイザベラ様がお声をかけてくださり、何人かの方を紹介していただきました。

あまりにたくさんの方を一度に紹介していただいたので、とても全員の方の名前を覚えきれませんでした。

でも皆様、戦地にいらっしゃる旦那様を心配して無事に戻られることを毎日祈っているところは共通しておられました。

色々ありましたが、王宮のお茶会はお茶もお菓子もとてもおいしかったです。

ご武運をお祈りしております

クリスティアーヌ』

前回茶会の招待状が届いたことを書いたので、その結果を書かないわけには行かないとペンを握った。

皇太子妃と第二皇子妃に個別に呼び出されたことを書くことは躊躇われた。
何だか告げ口をするみたいだと思ったからだ。
なので、二人のことは一般的な感想に止めておいた。

それともうひとつ。書いていいものか考えることがあった。

茶会で出会った人々はイザベラ様とそのお仲間だけではなかった。

二十歳前後のお嬢様がいる奥様たちからは、いつ侯爵と知り合ったのか、どうやって侯爵を射止めたのかなど根掘り葉掘り問い沙汰された。

それはあわよくば自分の娘を侯爵夫人にと思っていた方々たちらしいとイザベラ様がおっしゃた。

つまり私はそんな彼女たちの目論見を打ち砕いた女ということで、皇太子妃様たちの手前おおっぴらにきつい言い方をする人はいなかったが、視線は痛かった。

中でもグリュセラ伯爵とポートリア伯爵夫人は私をまるで泥棒猫のような目で睨んできた。

この国の貴族社会の結婚市場においてルイスレーン様はかなりの注目株だったようだ。
二人の迫力にルイスレーン様を花婿にと考えていた他の方々もたじたじだった。


だが、これを書いてしまってはきっと要らぬ心配をかけてしまう。
今のところ睨まれたりしただけで実害はないことだ。

取りあえず、お茶会ミッションは無事に(?)終了し、私はまた明日からの診療所での手伝いのため、その日は早目に眠りについた。
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