18 / 266
第二章
5
しおりを挟む
私の言葉にニコラス医師だけでなく、フォルトナー先生も目が点になっていた。
「モラ……セ?何だそれは。ジオラル……お前はわかるか」
ニコラスさんの質問に先生が首を振る。
「クリスティアーヌ様……何ですかそれは?」
「モラルハラスメントとセクシュアルハラスメントです。モラルハラスメントはこちらを過小評価したり役立たずだと罵って精神的に傷つけることです。セクシュアルハラスメントは私をお嬢ちゃんと女だからという理由でバカにすることです。どちらにしろ、相手が女で年も若いからと言って下に見ているからこその発言です。王室の主治医だがなんだか知りませんが、相手の能力もみないで外見だけで判断するのは雇い主としては失格です」
ぽかんと口を開けてこちらを見ているニコラス医師を見て、少し言いすぎたかなと反省したが、最初が肝心だと思った。
「いや、すまない。思ったより口が立つことはわかった」
素直に謝ることができるあたり、ニコラス医師は威張るだけの人ではないみたいだ。
「ジオラル……このお嬢ちゃ……彼女はどこで見つけてきた?」
「探していたわけではないが、何か役に立ちたいと言うので、ここを紹介した。身元は確かだし、頭も切れる。性格は……思っていたより勝ち気らしい」
横に座る先生も初めて見るように私を見る。
「それで、あなたのお名前は?」
そう訊かれてまだ名乗っていなかったことに気づいた。
「失礼しました。き…クリスティアーヌ・リンドバルクと言います」
思わず如月愛理と名乗りそうになって土壇場で気がついた。
本当にここでお世話になることになれば、本名は隠した方がいいのかも知れないが、採用にあたっては嘘は吐きたくなかった。
「リンドバルク?確かジオラルが昔家庭教師をしていた……」
「そうだ。私が家庭教師をしていたご子息の奥様だ」
「え、と言うことは……貴族……ジオラル、いくら何でも侯爵夫人に子どもの世話なんて」
案の定、彼は私の素性を知って二の足を踏んだ。
「まあ、そう言わずに話だけでも最後まで聞いて欲しい。それに、悪い話ではないぞ。何せ彼女は貴族の奥方だ。給料はいらないと言っているし、逆に保育園の運営に資金まで出すと言っている。彼女を雇うお金が浮いて寄付までしてもらえる。その分で別の誰かを雇うなり設備を整えたり出来るのでは?」
甘い言葉で先生は誘いかける。
「……わかった。話だけでも聞こう」
私を雇うことのメリットを考えて、ニコラス医師は聞くだけだぞ。と念を押した。
先生は私の境遇について、クリスティアーヌとしての事情だけを話した。
「モラ……セ?何だそれは。ジオラル……お前はわかるか」
ニコラスさんの質問に先生が首を振る。
「クリスティアーヌ様……何ですかそれは?」
「モラルハラスメントとセクシュアルハラスメントです。モラルハラスメントはこちらを過小評価したり役立たずだと罵って精神的に傷つけることです。セクシュアルハラスメントは私をお嬢ちゃんと女だからという理由でバカにすることです。どちらにしろ、相手が女で年も若いからと言って下に見ているからこその発言です。王室の主治医だがなんだか知りませんが、相手の能力もみないで外見だけで判断するのは雇い主としては失格です」
ぽかんと口を開けてこちらを見ているニコラス医師を見て、少し言いすぎたかなと反省したが、最初が肝心だと思った。
「いや、すまない。思ったより口が立つことはわかった」
素直に謝ることができるあたり、ニコラス医師は威張るだけの人ではないみたいだ。
「ジオラル……このお嬢ちゃ……彼女はどこで見つけてきた?」
「探していたわけではないが、何か役に立ちたいと言うので、ここを紹介した。身元は確かだし、頭も切れる。性格は……思っていたより勝ち気らしい」
横に座る先生も初めて見るように私を見る。
「それで、あなたのお名前は?」
そう訊かれてまだ名乗っていなかったことに気づいた。
「失礼しました。き…クリスティアーヌ・リンドバルクと言います」
思わず如月愛理と名乗りそうになって土壇場で気がついた。
本当にここでお世話になることになれば、本名は隠した方がいいのかも知れないが、採用にあたっては嘘は吐きたくなかった。
「リンドバルク?確かジオラルが昔家庭教師をしていた……」
「そうだ。私が家庭教師をしていたご子息の奥様だ」
「え、と言うことは……貴族……ジオラル、いくら何でも侯爵夫人に子どもの世話なんて」
案の定、彼は私の素性を知って二の足を踏んだ。
「まあ、そう言わずに話だけでも最後まで聞いて欲しい。それに、悪い話ではないぞ。何せ彼女は貴族の奥方だ。給料はいらないと言っているし、逆に保育園の運営に資金まで出すと言っている。彼女を雇うお金が浮いて寄付までしてもらえる。その分で別の誰かを雇うなり設備を整えたり出来るのでは?」
甘い言葉で先生は誘いかける。
「……わかった。話だけでも聞こう」
私を雇うことのメリットを考えて、ニコラス医師は聞くだけだぞ。と念を押した。
先生は私の境遇について、クリスティアーヌとしての事情だけを話した。
51
お気に入りに追加
4,260
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる