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第二章

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確かに、ルイスレーン様がどんな人かもわかっていないのに、私は彼に気に入られないと始めから思い込んでいた。

それは自分に対する自信のなさから来るのかも知れない。

「自信を持つ……具体的にはどうするのですか?」

マリアンナが質問すると、皆がそこで黙った。

「一番いいのはルイスレーン様にクリスティアーヌ様……『愛理』様を好きになっていただくことですが……」
「さすがにここにルイスレーン様はおられませんし、無理矢理言わせても……それに頼んでそう言っていただけるか」
「おとぎ話じゃないんですから、そう簡単に真実の愛なんて囁けませんよ。私もほぼ初対面の男性に愛を囁けと言われて、口先では言えても心の底から言えません」

四人で再び黙ってしまった。

「あの、こう言うのはどうでしょう?」

ふと思いつき、私が声をあげた。

「ルイスレーン様の女性の好みがどんなのかとか他人任せのことではなく、私が自分で自立できるようになるというのは……」
「自立?」
「そうです。侯爵夫人としてではなく、一人の女性として、旦那様の権力にも財産にも頼ることなく生きていけるようになれば」

愛理は大学には通ったが社会に出て働いたことがない。それどころかアルバイトすらしたことがない。
自分の力でお金を稼ぎ生活する。
そんな生活に憧れていたことを思い出した。

「まさか、働かれると、そうおっしゃっているのですか?」

察しのいい先生が訊いた。

「そうです。今すぐとは言いませんが、もし自分の力でお金を稼いで自立することができれば、きっと夫からどう思われているかとか気にせず生きていける……」
「貴族の奥方が外で働くなどとんでもありません!」

ダレクが大声をあげて私の話を遮った。

「そうですよ。そんなこと……リンドバルク家は奥様を働かせるほど落ちぶれていませんよ」

マリアンナもむきになってダレクさんに同意する。

「やっぱり……ダメなんですか?」

いい考えだと思ったが、二人に真っ向から否定された。

「向こうでは女性だって大統領になったり政治に関わっていましたし、女社長も大勢いました」
「あちらの世界はどうかわかりませんが、身分のある方が働くなど、そんな……」
「働くのは私なんですよ。私がいいって思ってるのに。もちろん、旦那様には内緒ですけど」
「とにかく、クリスティアーヌ様はリンドバルク侯爵家のれっきとした女主人なんです。平民に紛れて働くなど、絶対にだめです」
「それなら、社会奉仕ならいかがですか?孤児院や診療所を支援したり、資金集めに協力されるご婦人もいらっしゃいますし、他に才能ある芸術家などを育成している方もございます」

働くことを頑として許してくれない二人に、先生が助け船を出して提案してくれた。


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