106 / 115
第4章
第100話 お仕置き
しおりを挟む
場の空気を変えるため、ナナは努めて明るく言葉を紡いだ。
「ねぇ、マリアちゃん。君にちなんだものなんだけどね、世間ではちょっとしたブームが起きてるんだよ。それ、知ってる?」
マリアは、首を横に振る。
「ソフィー様の――マリアちゃんは私のものだー宣言があった日から、そのブームは巻き起こったんだよ。何か、気になるでしょ?」
正直、あまり聞きたくはない。
「あの宣言から、女性が女性に告白するってのが増えてるんだよ。それはお城でも、当然――街の中でもね」
「あ、そうなんです?」
「女性が女性を好きだ――なんて、言いづらい雰囲気だったからね。その壁を、ソフィー様は取っ払ってくれたって、喜んでいる人は多いらしいよ。実際に、カップルが出来ているみたいだし」
ふむ、とマリアは頷く。
あのふざけた宣言も、決して無駄ではなかったのかと思うと、少しだけ救われた気分になる。
「これはあれだねー、私が告白されるのも時間の問題かもしれないねー」
ナナは顎に手をやり、ニヒルな笑みを浮かべる。
「馬鹿な事を言ってないで、そろそろ仕事に戻るよ」
ベルは不機嫌そうな声を出す。
「じゃあ、マリア、また今度」
そう言って、ベルはさっさとどこかに向かって歩き出す。
「あ、ちょっとベル? ではマリアちゃん、また今度ゆっくりとね」
ナナはマリアに手を振って、ベルの後を追った。
マリアはその場に立ち尽くし、暫く思案した後、帰り道を歩く。
その途中、何となく外の空気が吸いたくなって、中庭に向かおうと振り返ると――。
――急に襟首をつかまれ、魔法で体が宙に浮かぶ。
「帰りますよ、マリア」
姿を現したソフィーの姿。
「急に現れると困るんですけど?」
「それは何故ですか? 後ろめたいことでも?」
ソフィーはマリアを睨みつける。
「そんなんじゃないんですけどぉ。急に現れると心臓に悪いんですからね!」
「マリアの側には、常に私がいる。そう思えばいいだけではないのですか? そうすれば、いきなり私が現れても驚くことはありえません」
「そういう問題ではないんですけど?」
「では、どういう問題ですか?」
そう問いかけられると、少し困る。
これはちょっとした難問かもしれない。
「ソフィー様、これはもしかしたら人類がこれから答えを探し続け、いずれは到達しなければならない――そんなひとつの究極的な問いかけかもしれません」
「そうであるのならば、さっさとその考えを捨ててください」
「何故です?」
「マリアは私のことだけを考えていればいいんです。そんなくだらない問いかけで、あなたの貴重な脳を使わせたくはありません。例えその問いかけの発端が私であろうともです」
――なんか、恥ずかしくなってくる。
「あ、愛ですねーそれは」
「ええ、愛ですよ。その愛は、誰にも負けるつもりはありません」
冗談で吐いた言葉を、素直に返され、マリアはますます顔が赤くなる。
「もしかして、今のはいい感じでしたか?」
ソフィーはマリアの顔を見て、そんなことを言う。
マリアはそっぽ向く。
「そろそろ、エッチできそうですか?」
「それは、まだですから!」
マリアの言葉に、ソフィーは剥れる。
「待たせてはいけないと、急ぎ飛んで戻った部屋にあなたがおらず、わざわざ迎えに来た私に対しそれはあまりにも冷たすぎます」
そんなことを言われても、正直困る。
「ところで――聖女様とはどんな話をしたんです?」
「大した話ではないので、マリアが気にすることではありません」
そう言った後、ソフィーは何かを思い出したかのように小さく声を上げた。
「……聖女様の話を聞くだけで、忘れてしまいました。マリアをアへ顔にする方法を」
「そんなくだらない話は永遠に聞かなくていいですから」
「そんな訳にはいけません。これも全て、マリアのためですから」
一体全体――どう私のためになるのか聞いてみたい気もする。くだらない返答になることだけは間違いないのだが。
マリアはため息をつく。
「ところでいい加減、下ろしてもらっていいです?」
ソフィーはマリアを眺める。
「因みにですが、もしかして寄り道しようとしてましたか?」
その言葉に、マリアはドキッとした。
ソフィーの言葉で、忘れていた言いつけを思い出す。
マリアは誤魔化すために口笛を鳴らそうとしたが、今までできたためしもないものが急にできる訳もなく、かすかすの音しかならない。
「なるほど、私の言いつけを守らなかったのですね」
「何も言ってもせんけど!? っていうか、まだ寄り道はしてないですからね!」
マリアの言う通り、しようと思っただけでまだしていない。だから決して――嘘ではない。
「寄り道をする予定でしたが、まだしていない――と言うことですね?」
「そうですよー、しようと思っただけで、実際にするかどうかは分からないじゃないですかぁ。だって未来のことなんて誰にもわからないんですから。だから、私は無罪ですからね!」
ソフィーは少しだけ、悩んだ。
「分かりました。とりあえず戻りましょう」
マリアはほっとした。
魔法でマリアの体はソフィーの腕の中に収まる。
「続きはベットの上でしましょう。これも全て、マリアのせいですよ」
何故、ベットの上?
マリアの疑問は、後ほど解決する。
部屋で鳴り響く悲鳴は、二人だけの秘密のお話。
「ねぇ、マリアちゃん。君にちなんだものなんだけどね、世間ではちょっとしたブームが起きてるんだよ。それ、知ってる?」
マリアは、首を横に振る。
「ソフィー様の――マリアちゃんは私のものだー宣言があった日から、そのブームは巻き起こったんだよ。何か、気になるでしょ?」
正直、あまり聞きたくはない。
「あの宣言から、女性が女性に告白するってのが増えてるんだよ。それはお城でも、当然――街の中でもね」
「あ、そうなんです?」
「女性が女性を好きだ――なんて、言いづらい雰囲気だったからね。その壁を、ソフィー様は取っ払ってくれたって、喜んでいる人は多いらしいよ。実際に、カップルが出来ているみたいだし」
ふむ、とマリアは頷く。
あのふざけた宣言も、決して無駄ではなかったのかと思うと、少しだけ救われた気分になる。
「これはあれだねー、私が告白されるのも時間の問題かもしれないねー」
ナナは顎に手をやり、ニヒルな笑みを浮かべる。
「馬鹿な事を言ってないで、そろそろ仕事に戻るよ」
ベルは不機嫌そうな声を出す。
「じゃあ、マリア、また今度」
そう言って、ベルはさっさとどこかに向かって歩き出す。
「あ、ちょっとベル? ではマリアちゃん、また今度ゆっくりとね」
ナナはマリアに手を振って、ベルの後を追った。
マリアはその場に立ち尽くし、暫く思案した後、帰り道を歩く。
その途中、何となく外の空気が吸いたくなって、中庭に向かおうと振り返ると――。
――急に襟首をつかまれ、魔法で体が宙に浮かぶ。
「帰りますよ、マリア」
姿を現したソフィーの姿。
「急に現れると困るんですけど?」
「それは何故ですか? 後ろめたいことでも?」
ソフィーはマリアを睨みつける。
「そんなんじゃないんですけどぉ。急に現れると心臓に悪いんですからね!」
「マリアの側には、常に私がいる。そう思えばいいだけではないのですか? そうすれば、いきなり私が現れても驚くことはありえません」
「そういう問題ではないんですけど?」
「では、どういう問題ですか?」
そう問いかけられると、少し困る。
これはちょっとした難問かもしれない。
「ソフィー様、これはもしかしたら人類がこれから答えを探し続け、いずれは到達しなければならない――そんなひとつの究極的な問いかけかもしれません」
「そうであるのならば、さっさとその考えを捨ててください」
「何故です?」
「マリアは私のことだけを考えていればいいんです。そんなくだらない問いかけで、あなたの貴重な脳を使わせたくはありません。例えその問いかけの発端が私であろうともです」
――なんか、恥ずかしくなってくる。
「あ、愛ですねーそれは」
「ええ、愛ですよ。その愛は、誰にも負けるつもりはありません」
冗談で吐いた言葉を、素直に返され、マリアはますます顔が赤くなる。
「もしかして、今のはいい感じでしたか?」
ソフィーはマリアの顔を見て、そんなことを言う。
マリアはそっぽ向く。
「そろそろ、エッチできそうですか?」
「それは、まだですから!」
マリアの言葉に、ソフィーは剥れる。
「待たせてはいけないと、急ぎ飛んで戻った部屋にあなたがおらず、わざわざ迎えに来た私に対しそれはあまりにも冷たすぎます」
そんなことを言われても、正直困る。
「ところで――聖女様とはどんな話をしたんです?」
「大した話ではないので、マリアが気にすることではありません」
そう言った後、ソフィーは何かを思い出したかのように小さく声を上げた。
「……聖女様の話を聞くだけで、忘れてしまいました。マリアをアへ顔にする方法を」
「そんなくだらない話は永遠に聞かなくていいですから」
「そんな訳にはいけません。これも全て、マリアのためですから」
一体全体――どう私のためになるのか聞いてみたい気もする。くだらない返答になることだけは間違いないのだが。
マリアはため息をつく。
「ところでいい加減、下ろしてもらっていいです?」
ソフィーはマリアを眺める。
「因みにですが、もしかして寄り道しようとしてましたか?」
その言葉に、マリアはドキッとした。
ソフィーの言葉で、忘れていた言いつけを思い出す。
マリアは誤魔化すために口笛を鳴らそうとしたが、今までできたためしもないものが急にできる訳もなく、かすかすの音しかならない。
「なるほど、私の言いつけを守らなかったのですね」
「何も言ってもせんけど!? っていうか、まだ寄り道はしてないですからね!」
マリアの言う通り、しようと思っただけでまだしていない。だから決して――嘘ではない。
「寄り道をする予定でしたが、まだしていない――と言うことですね?」
「そうですよー、しようと思っただけで、実際にするかどうかは分からないじゃないですかぁ。だって未来のことなんて誰にもわからないんですから。だから、私は無罪ですからね!」
ソフィーは少しだけ、悩んだ。
「分かりました。とりあえず戻りましょう」
マリアはほっとした。
魔法でマリアの体はソフィーの腕の中に収まる。
「続きはベットの上でしましょう。これも全て、マリアのせいですよ」
何故、ベットの上?
マリアの疑問は、後ほど解決する。
部屋で鳴り響く悲鳴は、二人だけの秘密のお話。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
半魔のお姉さんに買われて、奴隷幼女の私が抵抗しながらも堕とされた??話
Remi
恋愛
おねロリの主導権をロリに握らせるな!!
奴隷幼女が誘い受け? 人外お姉さん(少女)が攻めのお話。
短編2作目
この物語の元ネタはVRChat の無言勢
いいね、感想、しおり、励みになります
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
ネカマ姫のチート転生譚
八虚空
ファンタジー
朝、起きたら女になってた。チートも貰ったけど、大器晩成すぎて先に寿命が来るわ!
何より、ちゃんと異世界に送ってくれよ。現代社会でチート転生者とか浮くだろ!
くそ、仕方ない。せめて道連れを増やして護身を完成させねば(使命感
※Vtuber活動が作中に結構な割合で出ます
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜
セカイ
ファンタジー
いたって普通の女子高生・花園 アリス。彼女の平穏な日常は、魔法使いを名乗る二人組との邂逅によって破られた。
異世界からやって来たという魔法使いは、アリスを自国の『姫君』だと言い、強引に連れ去ろうとする。
心当たりがないアリスに魔の手が伸びた時、彼女を救いに現れたのは、魔女を名乗る少女だった。
未知のウィルスに感染したことで魔法を発症した『魔女』と、それを狩る正統な魔法の使い手の『魔法使い』。アリスはその戦いの鍵であるという。
わけもわからぬまま、生き残りをかけた戦いに巻き込まれるアリス。自分のために傷付く友達を守るため、平和な日常を取り戻すため、戦う事を決意した彼女の手に現れたのは、あらゆる魔法を打ち消す『真理の剣』だった。
守り守られ、どんな時でも友達を想い、心の繋がりを信じた少女の戦いの物語。
覚醒した時だけ最強!? お伽話の様な世界と現代が交錯する、バイオレンスなガールミーツガールのローファンタジー。
※非テンプレ。異世界転生・転移要素なし。
※GL要素はございません。 ※男性キャラクターも登場します。
※イラストがある話がございます。絵:時々様( @_to_u_to_ )/SSS様( @SSS_0n0 )
旧タイトル「《ドルミーレ》終末の眠り姫 〜私、魔女はじめました〜」
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる