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第241話 帰り道は思い出がいっぱい

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「なんか綺麗になったなブレッド村」

「ブレッド村は魔物に襲われたわけじゃないので、建物は崩れてませんでしたからね」

ウェッジコートから街道、道なりを進めば次はブレッド村だった。

人が住んでいる気配はないが、雑草が生い茂っている感じもない。

「来年は小麦が戻ってくるかもな」

「だといいですね、何も考えずにあの塔から街を見渡したいですよ。あとブレッド村のマフィンサンド!」

僕らの身を助けてくれた小麦畑は今は真っ白に染まっている。

「まだそこにだわってるのかよククク、でももう同じ味ではないかもな」

「それは仕方ないです。でも新しく出来た方が美味しいかもしれませんよ」

「まぁそれを比べれるのも食った事ある俺だけどな」

「もう!サリアもあれは本場を食べるべきとか言って作ってくれませんし、気になる一方ですよ」

僕は腕を組み、アルにぷいっと顔をそむける。


「またっすー!私もいるの!」

ホルンは右手を挙げて、アルの前でぴょんぴょん跳ねてアピール。

「いるのっつっても何もしらねーだろ、俺達も色々冒険してんだよ」

それをアルはすいっと払うようにどける。こなれたもんだ。

「そうですね、どこかこの地方はいい出来事ばかりではないですが、今では思い出のようなものが沢山です」

「だな、今となっては冒険譚だが、あの時は必死だったな俺は」

感慨深そうにあたりを見渡す。丁度ブレッド村をでて王都に伸びる街道を歩きだしていた。

「なぜ俺はを強調したのかな?」

「事実だろ、ノエルは余裕だっただろ」

「いやいや、一緒に麻痺矢を受けて死にかけたじゃないですか。ゴブリンリーダーからもやっとの事で救出したりと、あの時は必死さはありましたよ」

「ククク、今がないみたいな言い方だな」

「ちっ違います、語弊があるであります!」

「だから私もいるの!私にも分かるように話してほしいっす!」

またピョンピョンと跳ねているホルン。

ホルンを置いて話込むのも、そのぐらい僕らだけの冒険がここには広がっていたからだ。

「仕方ねーなー、ノエルが盗賊の宝を盗んだ話からしてやるか」

「なんすかそれ!」

「そんなのよりも、アルとサーヤさんの馴れ初めからですよ」

「うわぁ~、聞きたくないっすけど気になる~」

「そんな話面白くないだろ、ノエルが死体転がる夜の街を一人彷徨い、金品をかっさらってく話のがいいだろ」

「ちょっと言い方!無駄に凝らない!」

「それも面白そうっす!」

「それなら、アルがサーヤさんを助けた弱みに付け込んでなし崩しに手籠めにした話しますよ」

「お前!言い方!さっきのを悪くいっただけじゃねーか」

「なし崩しで手籠めって・・・アル君それはありっすか!?あっでも私ちょっと帝国離れて寂しくなったっす~なんちて///」

手を前で組んでモジモジとするホルン。


「だったらお前がゴブリンリーダーを一人引き受けた話してやるか、これならいいだろ」

そんなホルンの言葉を綺麗にスルー。

「まぁ、それは別に・・・。じゃあ僕はオークソルジャーを一人で何匹も倒して王都で勲章をもらった話でもしますか」

「あぁでもそれクリスや知らないやつらは俺がキングも倒していると思ってるって言ってたよな」

「そういえばそうですね。でも話せば話すほどドンドン出てきますね」

「そうだな、まだ1年前や何か月前の話なのに色濃く残ってるわ」

「僕もです、危険な事と楽しい事が合わさりいい思い出となってますね」

「これぞ冒険者って感じだな」

アルと僕は顔を見合わせ小さく笑う。

「冒険って楽しいですね」

「あぁだな。ノエル、これからも色んなとこ行って冒険しような」

アルは右手をグーにして僕の顔の横へ持ってくる。

「もちろんです」

僕も左手でグーを作り、ノックをするようにコンっと一度返して笑った。

アルとはまだまだ長い付き合いになりそうだと感じる。この先またこの道を通る時は今話している事も思い出に変わっているのだろうな。



「だから!私もいるの~~~!!!」
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