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第211話 順調な悪だくみ

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カタカタカカタカタ

朝方、アルと見張り番を交代し2時間ほど経った頃だった。

「ん・・・なんです、この音・・・」

2時間も寝れば僕の体はスッキリとし、何か音が聞こえるので僕は目を覚ました。

「もう、起きたかのか。ただの馬車の列だ・・・まだ寝てていいぞ」

「んーーー、いえもう目が覚めました」

体を起こし、伸びをしながら音がする方を見た。

僕らは街道をはずれ、少し森に入った茂みで野営をしていた。そこは街道よりも少し高くなっているので、音の正体がよくわかる。

ずらっと街道を並ぶ長蛇の馬車の列。50はある馬車、4輪の帆馬車から2輪のものと様々だが総出という感じはある。

「圧巻ですね、これは戦争の物資ですかね」

「多分そうだろうな、朝早くからご苦労なこった」

・・・

昨夜にアルと話をし、結局成り行きに任せ。まずはサーヤさん達をみつけた後に戦争について考えようという結論にいたったが・・・目の前の馬車の列をみると・・・

僕らに出来ることはこれではないだろうか、と思えた。

「アル、話が」

「おう、今俺も声を掛けようと思ってた」

僕がアルの方を向くと、アルも少し笑いながら僕を見ていた。

「ふふ、そうですか。じゃあやりますか」

「あぁ俺は何も言わないし、俺達だけの秘密だククク」

アルとは少し思考が似ている所が出てきているのか、悪い事、いや悪戯ぐらいの事をしでかそうとする時はお互いが何をやりたいのか分かってき始めていた。

僕らはお互い、ニヤニヤとイタズラを考える子供のように作戦会議を始めた。



僕らは馬車の護衛に紛れ込み、お仕事をすることにした。

盗賊紛いの行為という選択肢もあったが、50以上もの馬車なだけはあり、それなりに護衛もついている為に流石にそれは無謀だと知りこっそりと護衛の中へと紛れ込んだのだ。

幸い、ブラック達のタグがある為、これ見よがしにぶら下げておけば僕らは帝国の冒険者なのだ。

一応変装をし、僕は弓使い風としレザーの鎧に羽根つきのベレー帽をかぶり弓を持ち矢筒を背負う。アルは軽装鎧から、重装鎧にかえ顔をフルフェイスの兜で隠していた。

「くそっ歩きづらいぜ」

「しっ聞こえますよ。仕方ないですよ、アルの体格だと前衛職しかありえませんから」

「魔法使いでも行けただろ・・・他にもってなかったのかよ」

「アルが魔法使いは・・・ありえませんよ。それにアルの顔はいい意味で人を引き付けるので、それ被って丁度いいんですよ」

「はぁ・・・この被ってるのも中で空気が籠って苦しいぜ」

「文句言わない、ほら護衛らしくきびきび歩く!」

「はぁー・・・お前はちゃっかり楽な装備つけやがって・・・」

上手く僕らは護衛に紛れ込むことができ、物資輸送のこの隊へと加わる事が出来ていた。

御者や他の冒険者から、戦争の状況などを聞くとすでに戦は始まっているようだ。だが、帝国側が用意していた奇襲作戦が上手く進んでおらず、予定が狂っているとかという話を聞く。

4等級というこのタグのおかげか、話を聞く冒険者たちは僕達に敬意をもって話をしてくれる為、話が聞き出しやすかった。

この物資も2週間分の食料を詰め込んでいるようだ。帝国はスードリカ平原での戦いは短期決戦を狙い、すぐに王国へと侵入していく算段だったようだが、奇襲が失敗しているという事でこの物資を早急に戦地へと持っていく必要があると聞いた時には、崖の洞窟を潰していた事が今ここにきて効いているようだった。

急ぎの物資補給の為、この隊は帝都から少ない休息、短い野営で移動を続けていることが分かった。

すでに帝都から出て数日が経っている為に、護衛や馬にも疲れが見えているが急ぐことを優先している。

これも僕らに優位に働き、注意力の欠如により僕らの仕事を簡単に進めさせてくれたのだ。

スードリカ平原まであと少しという所で、野営となる。ただ5時間ほどの休息の後に早朝4時には出発だというのだ。

僕らはその時に自分達ができる最大のお仕事をやってのけた。誰にも知られることのない僕らの仕事、これで王国側が圧倒的に有利になるかと言われれば、そうではないが、個人で出来る最大限のパフォーマンスだと思える仕事内容だった。

僕とアルは50もの馬車の帝国の物資を強奪し、その夜のうちに隊からこっそりと消えたのだった。
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