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第186話 クリスのアビリティ

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僕はここの兵士を殺したのか、それは依頼か、このタグは何かなど自分が知りたい事は全て聞いた。女性も口ごもることなくすぐに分かる事は即答し、分からない事は分からないという

帝国では冒険者のランクはA、Bなどではなく1や2などの数字で分かれているようだ

10段階に分かれており、こいつらは4等級とされているらしい。1等級が最高ランクな為に4等級というのは王国だとC~Bの間という事のようだ

「へー、結構強い冒険者たちだったんですね」

「ほ、ほかには知りたい事はないですか!」

「う~ん・・・戦争のことについて聞いても?」

「はい!聞いてください!」

女性は僕に好かれようと必死な様子が痛々しく感じる

すでに帝国軍はスードリカ平原に待機しているようだ。4日後には開戦になる予定とのことで、クラリア達斥候部隊も谷の上から瓦礫や岩などを落とし、王国軍を削る算段のようだ

用意周到に帝国側は作戦を練り実行している。王国側は無策にもほどがあるようにおもえる

「なるほど、知りたいことは分かりました。ありがとうございます」

「じゃあ・・・解放・・・してくれますか」

「それは出来ません、えっと黒の門に突き出すのがいいのですが、あそこまで戻る時間もなさそうなので・・・ごめんなさい」

4日後に開戦となるなら、僕らはそうそうにこの地域を抜け出す必要がある

「えっ・・・話がちがうわ・・・お願いします・・・殺さないで・・・私はちがうんです・・・ブラック達とは違うんです・・・」

僕は無情にも左手を女に向ける

「お願いします・・・お願いします・・・」

「・・・ごめんなさい」

アイス・・・

「ノエル君!まってくれ!」

そんな所にクリスが女性を覆うように、僕の前に立ちふさがる

「何してるんですか?邪魔はするなと言いましたよ」

「助けてください・・・お願いします・・・」

「あなたは黙った方がいい」

「ノエル君!僕も隠している事を喋る!だからまってくれ!」

クリスさんが隠している事?

少し興味が出てしまい、ディティマールのスイッチが切れた気がした。そして僕は女性に向けた手をおろした

「それはこの状況を打開できるものなのでしょうか?」

「あぁ、だからまず話を聞いてくれ」

「分かりました。簡潔にお願いしますね」

僕の威圧ある言葉に、クリスは目を泳がせそうになるが女性をみて、キリっとした表情になり静かに喋り始めた

「僕も空間魔法ほどではないが、少しレアなアビリティをもっててね」

「はい」

「死霊術という物を持ってるんだ」

「死霊術?」

クリスの見た目からは全く似合わない物が出てきたな

「そう、生き物や魔物、人を操る事ができるアビリティさ」

「ほー・・・」

生き物操るか・・・誰かそんな事していたな?

記憶をさぐり、この世界にきたときからの人を思い出していく

だれだったっけ・・・そうだ、メネラウトさんを護衛していたジンさんだ!馬に主従の魔法をかけていると言っていた気がする

あの人も爽やかな見た目で、死霊術使いだったのか

「僕はまだそこまでの使い手ではないが・・・彼女の行動を制限することはできる」

「ふんふん」

「・・・この術は王国では人にかける事を禁止している。だが、帝国ではそうではない為に・・・僕が行動制限術のスキルを使うから・・・頼む!彼女を殺さないでくれ」

クリスは頭を下げる

僕の意識は既にその死霊術というものが見たくて仕方ないという気持ちだ

「どのくらい制限できるんですか?実際にみてみないと分かりません」

「僕のいう事全てだ。でも言っていないことは自由だからね、1個ずつ制限していかないといけない」

「ふんふん、まずは見せてください」

「分かったよ、いいかい君もそれで」

「はい・・・命が助かるならなんでもします・・・」

「分かった・・・ふーーー」

恐らくクリスは人に使うのは初めてなのだろう、緊張をほぐすように深呼吸をした

そして

「行動制限!」

クリスの右手が闇の青と黒の揺らめく煙がまとわりつく、その右手を女性の額へ押し付けていく

「あ・・・がぁ・・・」

少し苦しそうな様子な女性、その状態が10秒ほど続くと黒い煙は女性の体へと吸い込まれていく

「かはっ・・・」

女性はパタリと倒れ

「成功だ、これで彼女は僕のいう事を聞いてくれるはずだ」

結構時間が掛かるのか、それに押し付けないといけないのは条件が厳しいな

その行動制限という相手の自由を奪うという強い効果には、それなりの事をしないといけないようだった

「それ僕にもやろうと思えばできます?」

「恐らく無理だろうね、何時間か掛けたらあるいはって感じだと思う」

「それはなぜですか?」

「魔力値や祝福、HPの様子で掛かりやすさがあるんだよ」

ふふ、ポケットなやつらをボールで捕まえるみたいだなと思ってしまう

「この女性はCランク相当のようでしたが」

「君が弱らせたんだろ・・・それに彼女は自ら術に掛かることを望んだからね、すぐに成功したよ」

この死霊術・・・

「ほー、その死霊術のアビリティって、魔物もいけるんですよね?」

「あぁ、でも僕は行動制限術しか覚えてなくてね、これは一度に2つの対象しか従わすことができなんだ」

「・・・それは初級術だからですか?」

「そうだね、級が上がるにつれて言う事を利かせやすくなるし、対象も増やしたりと出来るようだけどね。王国にはスキルブックは出回らないんだよ」

「ふんふん・・・」

これを聞いて、やはりサイシアールやウェッジコートが襲われたのは誰かの仕業だったという事が現実味を帯びてきていた

その考察をしてみたいが、行動制限術にかかった女性がまた目を覚ます様子に、一度ここまでとする

「起きたみたいですね、その効果を僕に見せてください」

「何をさせればいい?基本彼女は自由だ。命令というよりも制限させる術だからね」

「なるほど・・・じゃあ、僕とクリスさん、アル、グリーンウッドさんの事を他人に喋ることを禁止し、かつ攻撃的な事も禁止」

「ふんふん、・・・悪いね行動制限も5個までしか制限できないんだ」

「・・・それやっぱり今しんで貰った方がいいのでは?」

初級魔法だから仕方ないとは言え・・・ちょっと今の状況では使いづらい

「私絶対喋りもしないし、何もしません・・・」

「ノエル君、制限は僕の方が慣れているから任せてくれないか。僕らに危害を加えたり、僕らの事を喋る事を制限すればいいんだよね」

「ですね、分かりました。任せます」

クリスは5の制限を彼女にかせると、僕に声をかける

「これで大丈夫だよ。僕らに危害や人に話す事を制限しているからね、もちろん逃げ出すことも」

「どうやって確かめれば?」

「・・・そう言われると、難しいね・・・ちょっとクラリア君、僕をなぐってみてくれないか?」

「えっ・・・」

「まぁいいからやってみてくれ、じゃないとノエル君に殺されちゃうよ」

「はい・・・」

女性は右手を握り、その姿に似つかわしくない切れのある右ストレートを繰り出す

だが彼女の拳はクリスに当たることはなく、寸前のところで止まる

「ノエル君、これで信じてもらえないだろうか」

「う~ん・・・もう少しやって貰ってもいいですか?そうですね剣とか使って自分の力では寸止めできないぐらいのものを」

「あぁいいさ。クラリア君これを使ってやってみてくれ」

僕の提案に、クリスは自信があるような感じでクラリアに指示する

「えっでも・・・」

「いいから、僕は君を助けたいんだ」

「は、はい」

クリスは甘い言葉をクラリアに囁き、クラリアも満更でもなさそうに顔を赤くしているが・・・クリスは分かってるのか?こいつらは兵士を殺しているってことを・・・

確かにクラリアというこの女、見た目は綺麗な顔立ちをしている。僕が見つけた時には仲間とよろしくやっていた為、ほぼ下着、いや裸同然の服だ。クリスが見た目に騙されて助けたいと思っていなければいいが

僕が思案していると、クラリアはクリスに剣を振り降ろしたが、同じように寸止めで終わる。これは本当のようだ

「なるほど、少し疑わしさはありますがとりあえずはクリスさんを信じます」

「じゃあ・・・彼女は殺さないと」

「はい」

「あ、ありがとうございます~・・・クリス様、ありがとうございます」

「いや、いいんだ・・・」

「じゃあ、中に入ってもう少しクラリアさんには詳しくお話を聞きましょう。どうやって兵士達を殺したのかなどを」

見た目で騙されるなと、クリスに忠告するように再度こいつらがやった事を、クラリアの口から喋らせるようにし、クリスに無用な同情をさせないようにと務めるのだ

「・・・はい」

「そうだよね・・・」

僕らは詰め所の中へと入っていった
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