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第133話 夏のパンプ村

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3日目の昼にパンプ村に到着したのだ、収穫祭はしてないものの夏野菜が収穫時期の為、露店などで売られているかもという事で立ち寄ることに

「うっぷ・・・気持ち悪いですわ」

「ナタリー大丈夫ー?」

船酔いしたナタリーの休息もあり、今日はパンプ村に泊まることに

依頼でない為、急ぐ旅ではなくのんびりとした旅行の為、多少予定が変わっても問題ないのだ

船から降りると、みんな船旅で疲れもあるのか地面を歩く感覚が嬉しそうだ

「僕、野菜とか買ってきますね。サリア何がいいとかあります?」

「あっいい物は選別したいから一緒に行くわ」

「うちもいくー」

「じゃあ私はナタリー連れて宿屋にいくねー、その後元気になったら街に出るよ」

「ティアすみません・・・」

「アルフレッドはどこ行くの?」

「俺は少し素振りしてくる」

「ふ~ん、それオリハルコンだよね?みてていい?」

「あぁいいぜ、それにオリハルコンの武器誰がつかってたか教えてくれよ」

村に入ったところでPTは解散し、自由行動となった

「アルフレッド様・・・行ってしまったわ・・・」

「後で合流すればいいじゃないですか」

「・・・あの二人、妙に仲がいいのよ・・・アルフレッド様、前まで私に武器の話をしてくれていたのに、ミードさんの方が詳しいから・・・」

「そんな事言わずにサリアさん、アル君達のとこ行ってほしいなー」

「シスレーさん!二人っきりになろうとしてますわね!私が上手くいかないから、こっちも邪魔してやるわ!」

「えぇ~・・・あっちいってよ~」

露骨に邪魔だと言い始めたシスレー、もうバレたことによりシスレーは罰則を喰らいながら隠すことは一切しなくなったのだ

「まぁまぁ二人とも、あっトマトやきゅうりとか売ってますよ。行きましょう」

「そこ!自然に手繋がない!」

「あっアハハ・・・」

「えー」

そして僕も今回は旅行の為自然体でいるようになり、どこまでが限度なのかあやふやになっていっていた

市場には瑞々しい野菜が並べられている

秋に取れる野菜の方が名産らしいが、夏野菜もそれなりに充実している

「色鮮やかで綺麗ですね」

「だね!おいしそー。ねえ、一つ今食べたいな」

シスレーが新鮮な野菜を見て、そのまま食べたくなったようだ

「おっちょうど裏の川で冷やしてるのがあるから、ちょっとまってろ!」

シスレーの一言で、店主の男性が一言言い残しかけていってしまった

「あれ?ノエル君にいったつもりだったのに」

「くぅーーー!私にはめもくれてませんでしたわ!」

しばらくまっていると、カゴに水が滴る色鮮やかな野菜をもって店主さんが戻って来た

「ほれ姉ちゃんくってみろ、うちの野菜はフレッシュ村にもまけてねーかんな」

「あっお代まだです、シスレーまってください」

「あ?んなのサービスだっ、こんな綺麗なねえちゃんにくってもらえんだ野菜も本望だろ」

「えっいいんですか?」

「おう!食って感想きかせてくれや。そっちの可愛い嬢ちゃんもくってみてくれよ」

「お兄さんありがとー、頂きますね」

「あっありがとうございますわ」

シスレーとサリアはトマトを一口かじる、横にいる僕にもそのシャクリといい音が聞こえる

「うわっ冷たくて美味しいー!すごく甘いです」

「ほんとね、何にでも合いそうだわ。夏野菜はフレッシュ村ってイメージがあったけど全く負けてないわ」

シスレーとサリアの言葉に店主の男性も嬉しそうな反応だ

「二人がそういうなら沢山買いましょう、お兄さん箱ごと買いますね」

いつも通り箱ごと買い、冬でも夏野菜が食べれる量を買う

「シスレーやサリアと一緒なら店員さんがおまけしてくれるので得ですよ」

「そう?あれぐらいいつもくれるからサービスなんじゃない?」

「シスレーさん・・・そんな風に当たり前だと思っていると、年を重ねて恥をかくことになるわ」

「ふ~ん」

「この興味なさそうな態度も余計に腹がたつわね」

「でもサリアも可愛いお嬢ちゃんって言われてましたよね」

「・・・シスレーさんのおまけ感が否めなかったわ」

「あんまり気にすることないのになー」

サリアの気持ちをシスレーは理解できない様で、これがティアやミードさんが一緒ならサリアはもっと傷ついていたのだろうと思う

意気消沈のサリアと別れ、僕はシスレーと二人になると

「二人っきりだよ、何する?」

「食事しながら絵描きません?前来た時、描こうって約束しましたよね」

「折角2人なのにー」

「ポートランドでも二人にはなれますよ、ここは夏の風景が絶対綺麗ですよ」

「そうかもだけど・・・仕方ない楽しみは後にとっておきますか~」

パンプ村は農村だ、町の周りには畑がずらっと並んでいる

左右に色鮮やかな野菜たちが並び、田舎風景をみるだけでも気持ちが高まる

「あの少し山になっている所行きましょう、そしたらパンプ村が一望できるかもしれません」

「えー・・・遠くない?」

「競争ですよ、負けた方がどっちかのいうことを1個だけ聞くということで、よーいドン!」

「いきなり!?ちょっと!え!?ブリンクなしだって!」

畑で作業している人がチラホラいるが、広大な畑に人と人との間隔は50mは離れて作業をしている。この夏の日差しが強い炎天下の中おつかれさまですと心の中で労いながら、僕はブリンクでシスレーとの距離をあけていく

少し高い山なだけあり、周りを見渡せるが・・・どうやらパンプ村はかなり広大な土地のようだ、全てを一望できるほどでは無かったが、上からだと畑が何畑か分かりやすかった

「はぁ・・・はぁ・・・ひどい・・・おいて行かれた・・・」

「あっシスレー遅いですよ」

「ちょっと・・・飲み物・・・暑い・・・」

シスレーは僕におくれて20分後に到着した。その間に画材道具などを広げていたので丁度良かった

「プハー・・・もう次置いて行ったら許さないから!」

「ふふごめんなさい、でも僕が競争で買ったんでお願い聞いてもらってもいいですか?」

「・・・お願い聞いてもらいたいから、あんなブリンクまで使って競争したの?」

「てへへ、そうです」

「最初から素直にお願いすればいいのに・・・」

「だってシスレー僕が選んだ服着たくないって言ってたから」

「・・・何着させようとしてるの?」

「普通の服ですよ、恐らく」

僕は白の少しふんわりしたワンピースと大きな麦わら帽子を取り出した

僕の夏の女性のイメージがこの服で、モネの日傘をさした女性という絵を真似て絵を描きたかったからだ

「シンプルだね・・・まぁそこまで変じゃないからいいけど、ここで着替えればいいの?」

「あっ・・・クレイで目隠し作りますね」

土を盛り上げ、土のカーテンを作りあげる。カチャカチャと装備を外す音がすごくいやらしく感じ、僕は風景を見ながらシスレーに背を向けた

「いいよー、壊してー」

しばらく待っていると、シスレーの着替えが終わり僕はクレイを壊すと・・・シスレーはやっぱり何を着ても似合っていた

白のワンピースに、シスレーの涼し気な目元が僕の夏のイメージを最大限に表現してくれている

「すごい綺麗です・・・思った以上に」

「そう?うちの趣味じゃないけど、ノエル君が綺麗って言ってくれるならいいか」

写真がないのが本当に残念に思えるのだ

クルクルと周り、時折風が吹く中麦わら帽子を押さえる姿も様になっていた

「おっと・・・ずっとシスレーを見てられますが、絵をかかないと」

「今日はノエル君が描くの?」

「はい、シスレーはモデルです。もし上手く描けなかったら、また今度シスレーが描いてください」

「ふ~ん・・・分かったー。ここいいればいいの?」

「はい、自由にしていてください。ご飯もここに用意しているので自由に食べてください。たまにポーズをお願いしますが」

「動いててもいいんだ」

「はい、正確に描写できるわけじゃないので」

僕が好きな絵は印象派だ、描き方なんて知らないがアビリティと器用さの能力値を頼りに描くだけなのだ

その後、シスレーと風景を描写していく。たまにシスレーに声を掛けながら、イメージを膨らませて3時間ほどかけて描き上げた

「できました!・・・けど、題名は付いてないですね・・・」

これは下手だから認識できていないようだ

「ほんと、見せて見せてー・・・へー上手に描けてるじゃん」

「ありがとうございます、でも折角いいモデルと風景なのにうまく表現できないのが残念です」

「ちょっと触ってもいい?」

「あっどうぞ」

シスレーと場所を代わり、シスレーは僕の絵に手を加えていく

すらすらと筆が進み、僕はその様子に息をのむ

「こんな感じ?ちょっと変わりすぎた?」

「おぉ!!正しくこんな感じですよ!僕が描きたかったのは!」

シスレーがほんの10分ほど、僕が描いた絵に絵を加えただけで全く別物といってもいいほど完成された物に変わった

”シスレーと夏のパンプ村”

「題名まで・・・流石ですシスレー!」

「ちょっと触っただけだよ、ノエル君ももう少し知識を深めたら描けるよ。絵自体は上手だから・・・それにしても自分の名前が題名になるは恥ずかしいかも」

「知識ですか・・・やはり勉強も必要なんですね。僕はシスレーの名前がついたこの絵はお気に入りになりました」

「うちもまだまだ知らないことがあるから、一緒に勉強していこー」

「優しいですね、あっもうその服も着替えますか」

「う~ん?ノエル君が綺麗って言ってくれたから、今日はこれ着てようかな」

「いいですね!じゃあ街に戻りましょう、その服装でブレッド村の小麦畑とかも最高でしたね・・・」

「ここでも最高だよ、ほら片づけて下の畑の近くいこっ、でももう置いてかないでね」

「はい」

画材道具はそのままイベントリへしまい後で片づけることに

山から降りながら、とうもろこし畑に近づく

とうもろこし畑は背が高く、そこに入ってしまえば僕らはこの世界で二人っきりになったかのように思えるあの感覚

「ふたっりきりだね」

「シスレー綺麗ですよ」

僕らは背の高いとうもろこしのカーテンに隠れ、愛を深めたのだった
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