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第129話 吟遊詩人

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サイシアールから戻り、アルがレインさんとギルドで報告をする日、僕もポートランドの資料をギルドで見る為に一緒にアルとギルドへ向かう事に

「アル、これも一緒に渡してくださいね」

セーフティーエリアで拾った冒険者カードとゴブリンリーダーやハイゴブリンが入った魔石の袋を渡す

「あぁ、全員セーフティーエリアでみつけたんだよな?」

「はい、前お話した通りです。みんな掴まり慰め者にされたり食料用にされたり的にされたりとかです」

「分かった」

アルは事務的手続きを全てやってくれている。こういうのが煩わしく思える僕にとってとてもありがたい

ギルド前に着き、アルと一度別れると僕は資料室へ

ギルドの資料室は図書館ほどではないが、色々な文献がある。魔物、鉱石、地域、植物あらゆる情報が本で残っている為少しほこりっぽいが中々雰囲気がでている為、ここで資料を読み漁ると自分も賢者の一員になれた気にさせてくれる

ポートランドは貿易で栄えた街だが、近くに海底神殿とよばれるダンジョンがあるそうだ。昔は潮が引くと現れる時がありその限られた日だけダンジョンに入れるという何とも好奇心がくすぐられる事も資料には書かれていた

「アルが言ってた海底神殿はポートランド付近にあるのか・・・」

昔の記憶もよみがえりながら、資料集めだ

「ねえ、君」

ふと資料を見ていると中性的な声でとても透き通るような声が聞こえ

「はい」

っと、返事をしながら頭をあげると目の前にティアのようなに耳が尖った、肌が褐色の女性が立っていた

「ねえ君もだよね?最近功績をあげてる期待の若手PTって」

「期待の若手PT?」

「そう、祝福探しでしょ?」

「はい、祝福探しですが、期待の若手PTではないかと・・・」

「サイシアール討伐で名を売って、ウェッジコート奪還ではオークソルジャーを一人で何匹も倒し、Dランクなのにレイクペイントを倒した、アルフレッドは期待の若手と言っても遜色ないと思うけど?」

女性がアルの功績をまとめると、確かにここ1年で起きた出来ごとをうまくのりきり、他人にはそのように見えているのかと思えた                                       
「確かに・・・」

「それに今回はゴブリンリーダーもDランクだけで受けて、倒してきたと聞いてるよ」

「まぁ・・・中和の力やフィストの方がいましたから・・・」

「中和なんて万年Dランク、フィストもロード以外初心者の集まりだよね?戦力になってないのは分かってるよ」

「・・・」

レインさんが他の冒険者になんて呼ばれているのかしり少し寂しく思う、それにフィストの人達の事は良く知らないが全員死人だ・・・あまり悪く言うのも言われるのもいやだな・・・

「あの、僕に何かようですか?」

「あっそうそう自己紹介がまだだったね、私は吟遊詩人のミード」

吟遊詩人のミードさん、恐らくダークエルフなのだろう。褐色の肌に銀髪に瞳も銀色のようだ。ティアのような神秘的な美しさと少しミステリアスな雰囲気があり、サリアがまた羨みそうなスタイルの持ち主だ

「その吟遊詩人さんが僕に何か用ですか?」

「もちろん、期待の若手PTがどんな冒険をしているのか教えて欲しくてね」

「・・・僕よりアルに聞いてくださいよ」

「自己紹介すら聞いてくれなかったよ」

「そうですか・・・アルが駄目なら僕から話すことはないですよ」

「ちょっとちょっとー、なんでもいいから教えてよ。最近話題がなくて歌がつくれないんだから」

シスレーもそうだが、見た目詐欺が多いなと思う。さっきまでのミステリアスな雰囲気は喋るとなくなってしまった

「知りませんよ・・・」

「そんな事言わないでよー」

綺麗な女性をないがしろにするのは僕の意に反するが、少しめんどくさそうなのでアルが無視したのなら僕も無視したらいいかと思い資料を読み進めることに

「もー・・・無視して」

僕がポートランドの資料を机の上に山積みにしていたせいか、女性はその資料の一つを手に取ってパラパラと読み始めた

「へー・・・ポートランドに興味あるの?」

「・・・はい」

ただ普通の会話を無視するほど僕は冷たくない為、返事をしてしまう

「あそこはいいよ、海底神殿行ったことあるんだけどさ」

「えぇ!?」

このお姉さんが何歳かなんて興味がなかったが、海底神殿に行ったことある!?文献には結構昔のように書かれていたのに

「あっ興味ある?」

「そりゃもちろんですよ!僕も冒険者ですもん!」

ミードという女性は、僕のこの反応を待っていたかのように口角を少しあげ

「へー、お話してあげてもいいけどな~・・・そっちも私の質問に答えてくれるかな~?」

「・・・やめときます」

「えぇ!?なんで!?ちょっとアルフレッドに関すること教えてくれたらいいのに!」

「・・・僕はミードさんの事よくしりませんもん。吟遊詩人なら一曲何か聞かせてくださいよ」

「ふんふん、なるほどね~。私結構有名なんだけど、その私をしらなくてただで聞かせろとはいい度胸だね~」

「もういいです、さようなら」

「うそうそ!ちょっとここ資料室だから外で聞かせてあげるよ、広場に行けば客もよってくるし」

「・・・有名なのにがめついですね」

「・・・有名だからって稼いでるわけじゃない」

出していた資料を片付けた後に、ギルドをでるがアルはまだレインさんと報告している様子なので声を掛けることなく外へ

「そこ座って聞いててくれる?」

広場の木陰になっているベンチに促され座る

ミードさんは背中に背負っていたリュートを奏で始めたが

これ・・・馬車馬の集いの音楽・・・歌詞あったの!?

ミードさんはその透き通る声から発せられる調べ、どこかの英雄の冒険譚なのだろうが初めて聞いたのにすんなりと歌詞が入ってくる

桃太郎やシンデレラみたいな昔話のように、小さい頃からしっているような感覚だ

道行く人も足を止め、ミードさんの歌に耳を傾けている

夏に入りこの暑い晴れた昼下がり、その気分を爽快な風が吹いていく感じでミードさんの歌は終わった

僕は吟遊詩人という職をよく理解しておらず、ただの歌手だと思っていたが、魔法がある世界だ。アビリティにスキルがあるのあだからミードさんの歌には何かしら効果があるのかもしれないと思ってしまい、このミードさんは本物だと納得した

僕は静かに拍手をしていると、周りの足を止めていた人達もパチパチと僕に続きミードさんが地面においた帽子へコインを入れて行っていた

足を止めていた人達は自分の日常へ戻って行き、ミードさんは木陰に座る僕の方へよってきていたので僕も銀貨1枚を用意し

「すばらしい歌でした。これ僕も少ないですが立ち見料です」

「え?あぁ別に君はよかったのに、もらえる物は頂くよ」

「ミードさん、さっき歌った歌はなんていう題名なんですか?曲は聞いたことがあったのですが、歌詞があるとは知りませんでした」

「あぁ、曲はね魔道具でよくつくられてるからだよね。あれは”草原の狩人”って題名だよ、何を隠そう作詞作曲も私が手掛けてるのさ」

「ほー、すごい」

「まぁ・・・その一曲だけなんだけどね。有名になったのは」

「そうなんですね」

有名だからってお金持ちじゃないってことは、印税などは無いってことかな?

「まぁそんなことよりも、アルフレッドの話だよ!私が本物って証明できたよね!」

「はい、ミードさんこれからお時間あります?僕らの拠点に案内するので僕よりもアルの事を詳しい人を紹介しますよ」

「ほんとかい!ぜひお邪魔する!」

サリアに任せておけば、大げさに伝えてもらい面白そうな歌が出来るだろうと思ってしまっていたのだ

「じゃあ行きましょう」

ギルドから拠点に向かう道のり、ミードさんの素性をもう少し知りたくて質問をしていく

「ミードさんって岩街にいつもいるんですか?」

「いやぁ私は生粋の根無し草さ、街どころか国も渡り歩くからね」

「なるほど・・・一応冒険者ってことですか?」

「昔はね~Cランクだったけどね。十分強くなったから歌で生きて行こうって決めたのさ」

「おぉC!?」

そういうと少し色あせた冒険者カードを見せてくれた。僕が持っている物よりもデザインが少し違い、大きさも一回り大きい気がした

「ね!ほら私は怪しくないよ」

「・・・ミードさんっていい感じに交渉とか下手ですよね。今の一言で台無しですもん」

「うっそ!?」

「恐らく交渉っぽいことせず普通に頼んだ方が、相手に信用されそうですよ。歌は本物だと感じましたもん」

「あちゃ~、交渉上手だと思って生きてきてたのにな~」

「何歳か知りませんが、長年苦労してそうですね」

「うぅ・・・」

「あっつきましたよ、ここです」

まだ昼過ぎのこの時間帯、隣の孤児院の庭では子供たちが走り回って遊んでいる

「・・・いい家すんでるね」

「まぁみんなで奮発しましたよ、どうぞ」

「・・・君たちはDランクだよね?」

「はい」

門をくぐりキョロキョロと庭を見て回りながら、庭を抜けていく

サリアがハーブや野菜など家庭菜園を始め、拠点の庭も緑豊かな場所になっている

ガチャリとドアをあけてそのままリビングへ

後ろから小声でお邪魔しますと聞こえた

リビングには丁度サリアとティア、シスレーがいた為このままサリアになすりつけようと思ったが

「おかえりー・・・」

シスレーが真っ先に声がかかり、すぐに後ろのミードさんに気づき止まるのが分かった

「ただいまもど」

「あれ?ミード?」

「え?ティア?」

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