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第33話 絵のアビリティ
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翌朝、僕はいつも通りの7時に目が覚めた
みんなは流石に眠りこけている。ダンジョンならティアやナタリーは準備して起きている時間だが今日はよく寝ているようだ。
僕はそっといつもの深緑のローブを羽織り、斜め掛けのカバンを身に着けると、”散歩してきます”と軽く置き手紙を書いて岩街の街を散策するのだった
岩街の土地感は一切ないが、賑わっているところを目指し歩くと、市場のような露店が出ている大通りを見つけた
大通りを挟み左右に露店が並び、その先には丸い形の広場がある。露店は屋根のあるテントや、シートだけの上に商品を並べているとこ、簡易の棚に綺麗に並べているとこなど様々な様子で、前世でのフリーマーケットのようで楽しくなってくる
露店の数を見るとかなり規模が大きいように感じる。まだほとんどが開店前の様子で、7時では少し早かったようだ。店構えはあるが商品が並んでいない所や、並べ始めている頃、客としてくる人も少なく混雑した様子ではない
僕はその中でも空いている店に行き、揚げパンのようなものを買い、それをかじりながら大通りを歩いていく
流し見しながらだが、武器やスキルブックも売っているみたいだ。見るだけでも楽しい気持ちになる。
それに刀身が光っている剣などは、何か付加効果が付いていそうで鑑定のスキルがあればと少し悔やむ
店主を誘えば掘り出し物が買えるかもしれないな、そんな事を思いながらドンドン大通沿いを歩いていく。
僕は大通りを過ぎ、丸い広場の一角にある露店の前で足を止めた
そこは色んなアクセサリーや武器、防具を売っている雑貨屋だ。
その中でも店の端にイーゲルに飾られた、3枚の額縁に入った風景画が気になったのだ
大きさはA3サイズが2枚とA1サイズぐらいのものが1枚。立体感が少しあるので油絵のようだ。
A1サイズの大きな絵は小麦畑が広がる台地に風車小屋が見える、黄色をメインとした柔らかな絵
A3サイズの一つ目は街並みを見降ろす風景に、夕方と夜の境目がグラデーションに書かれているマジックアワーを描いたものだ。オレンジと紺をメインとした美しく感じる絵
最後にA3サイズの絵は、湖をメインに山々がバックに書かれて青と緑をメインに鮮やかな絵
3枚とも素人目でも綺麗に描かれていて、僕の目をとめたのだ
僕はその風景画をまじまじと見ていると、店主の20台前半の女性のような声の持ち主に声を掛けられた
「その絵がきになるのかな?」
「えぇ、すごい綺麗な絵でしたので有名な方が書いた絵ですか?」
僕は絵から目を離さないまま、気になってそう聞いた
「アハハ、これはうちが趣味でかいたもんだよ。お客さん見る目あるじゃん」
女性はそういって笑っているようだ。
「じゃあお姉さんは有名な画家さんという事ですか?」
なんで笑っているのか分からず、もう一度聞き返す
「いやいや違う違う、行った場所でいい景色があると描いてるだけだって」
僕の質問にまた笑いながら答えてくれた。
「えぇ!?こんなに上手なら有名な人だと勘違いしますよ」
「うちの服装をみると画家には見えないよね?そんな勘違いするのは君だけだよ」
そう言われ初めて女性をみると、確かに画家のようでなく、身軽そうな服装、上半身はヘソを出しており、ズボンもショートパンツだ、どう見ても盗賊のイメージに近い
僕はそう思い声にでていた
「盗賊・・・?」
「ブッアハハハそれは失礼でしょ、冒険者だって!」
僕の呟きに、女性はまた笑いながら答えた
(まぁ盗賊って職業としたら犯罪者か)
「それは失礼しました、ところでこの絵たちははどこで描いたんですか?」
僕は絵を指さして聞いた
「これはこの岩街のここから見える、あそこの丘から描いたもので、この湖が書かれているのは、ウェールズ湖の北側にあるほとりだったかな~、でこれはブレッド村近くの風車小屋だよ」
そう説明され、僕はまた絵を眺めるとぼやぁと名前のように文字が浮かび上がりだしたのだ
小麦畑には ブレッド村 西側 風車小屋
街並みには セイクリッドストーン 宮殿の丘 南側
湖には ウェールズ湖 北側のほとり
「えっ・・・」
(ん?これはなんだ?いきなり文字がでてきたぞ・・・この絵がその場所と認識したから?)
よく分からない現象に、戸惑いながらももう一度絵を見てみることに
まじまじと小麦畑の絵を眺める、すると写真のようにその景色が鮮明に僕の頭に広がった。
そよ風になびく小麦がサラサラとその音を立てる、田舎のようなにおいに、澄んだ青い空から夏のような日差しを肌で感じられるほど僕の五感を刺激する
僕のビックリした顔を見てか、店主の女性が僕の肩をトントンと叩きながら声をかける。
「どうしたの?いきなり固まってしまって」
「えっ、えぇこの絵からこの場所の良さが伝わってきたので少し感動を」
声を掛けられたので、絵から目を離すと先ほどの感覚は消えていた。
なんだったんだ今の感覚は・・・
「この絵気に入ったなら買ってくれないかな?根無し草の冒険者だから荷物は移動する時にかさばるんだよね」
女性はそういう、僕も3枚ともほしいのだが・・・でもこの出来なら高いだろう・・・と思ってしまう。
「でもお高いんじゃ・・・いくらですか?」
「素人の趣味だっていってるでしょ、画材代さえ元が取れればいいと思ってるからねこっちの小さいのが一つ銀貨1枚、こっちの大きいのが銀貨2枚かな~」
「えっ!?そんなに安くていいんですか?」
多分本当に画材だけの値段なのだろう、思いのほか安かったのだ
「うん3枚とも買ってくれるなら、銀貨2枚でいいぞー」
女性はそういったのですぐさま銀貨を取りだし、買うことにしたのだ。
「買います!」
即決である
「毎度あり!絵は今回初めて露店に並べたんだけど、少し恥ずかしくて隅に置いてたんだ。まさか、こんなにすぐ売れると思ってなかったよ」
画家の女性も自分の作品が売れて嬉しそうだ
僕もいい買い物ができて満足だ。
これは僕にとって趣味やインテリアだけの物ではないのだ
長距離転移にはその場所を思い描かなければいけないと説明があった
僕は記憶力にそこまで自信もなく、この異世界で写真のような物は存在しないと思っていた
その場所を記憶の補助の為に絵を描こうと思い、ポイントもあまり必要としない絵のアビリティをとったのだが、さっきの感覚からして効果は高いように感じた。
それに自分が行ったことがない場所でも、絵から読み取れた景色に行けるのではないかと可能性を感じていた
「僕がお姉さんの画家としてのファン1号ですね!」
「ファンってそんな大げさなニシシシ」
画家は照れているようだが満更でもなさそうだ、これからも色んな所にいって絵を描いてもらいたいものだ。自分で絵を描かなくても、こういう人がパートナーなら将来楽しく過ごせるだろうなとも思った。
その後、今までで一番きれいな場所などを聞いたり少し世間話をした
「次もまた会えたら絵を買いたいので、この素敵な趣味を続けてくださいね」
「うちも明後日にはこの街を一度離れるけど、ファン君の為に用意しておくよ」
そこで僕は画家のお姉さんと別れ、人気のない路地に入り絵をイベントリへ収納した。流石に絵はかさ張る為、イベントリの有能さに脱帽。
まだ露店を見て回りたかったが、人が多くなっているのを感じ遠くの方で鐘が鳴っているのが聞こえた
ブラブラしていると、もう9時になっているようだ。流石にみんな起きているだろうと思い宿に戻ることにした。
宿に戻ると1階の酒場に3人ともいた。4人掛けのテーブル席で朝食を食べているようだ。
テーブルに近づき、アルの横に座る
「おはようございます」
「おう」
「おはよー」
「おはようございます」
僕があいさつするとみんな返してくれる
「朝からどこ行ってたんだよ、昨日の今日でタフすぎるだろお前・・・」
アルが皮肉っぽく言うのだ
「朝散歩していたら、露店がすごくあったので2時間ぐらいブラブラしちゃってましたよ」
僕は満足そうにそういう
「はぁ~・・・お前の気持ちの切り替えは見習いたいぜ」
アルはもう呆れていた
「何かいいものあった?」
ティアはちゃんと僕が聞いて欲しい言葉を掛けてくれる
「はい!すごい綺麗な絵がありましたので買っちゃいましたよ、画家のお姉さんとも知り合いになれましたよ」
「へー、今仕舞っているんだよね?あとで見せてね」
「はい!もちろんいいですよ」
僕は自分が描いた絵を見せるかのような笑顔でいう、自慢したいのだ
「岩街はダンジョンから採れるアイテム上、芸術に力を入れる方が多いと聞きますね。貴族の方たちが気に入った画家や彫刻家、装飾屋の作品はかなり高価になっているそうですわ」
ナタリーも岩街の事をある程度知っているようで説明をしてくれた
それを聞いて、他にも絵が出品されている可能性と、それに露店以外にも絵を専門として売っている店があると思い、岩街の探索が楽しみになったのだ
「そうそう、3人はなんの話をしてたのですか?」
一通り露店の話が終わり、今後のことを話していたのだと思い聞いてみる
「あぁ明日の予定だよ、昨日はナタリーが居なかったからな、その説明をしていた」
「わたくしも先発組としてアルと一緒にいきますわ」
ナタリーが先発組で行くというのだ
「もう体は大丈夫なんですか?あまり無理はしないほうが」
僕はナタリーも行くとは思っていたが、後発組で一緒かな?と思っていたから聞いてみる
「ご心配おかけしましたが・・・やはり孤児院が気になるので早く自分の目で確かめたいのです」
「そうですか、僕は恐らく後発組になると思うのですが、もし体調に自信がなければ僕達と一緒に後発組として参加しましょうね」
「はい、ありがとうございます。あなたは冷たい用で、やはり優しいですね」
ナタリーはそういうと少しほほ笑んだ
「俺も後発組の方が休息期間があるからいいって進めたが、こればっかりはナタリーの気持ちを汲んでやりたい。俺が一緒だ、任せとけ」
アルはそういう、ナタリーの気持ちが分かるのだろう
こうして今の予定では先発組はアルとナタリー、後発組は僕とティアとなった
そして机に金貨8枚をアルが置いた
「これは昨日騎士団から情報料としてもらった。一人2枚受け取ってくれ、魔物の襲撃が事実だと確定した時は+で金貨10でるようだ」
店主はもう2枚とっていったから今は8枚なのかな
「それって襲撃が虚偽の報告だったらどうするんですか?」
僕は疑問に思いそう聞いた
「俺と店主の首が飛ぶか、犯罪奴隷おちだな」
アルがまじめな顔で怖いことをいう
「そうですか・・・怖いですね」
その後に言葉は続かなかったから、そこから2枚の金貨を受け取る
「ノエル、俺の分はお前が受け取れ、命を助けられた借りがある」
アルはそういい僕の方に金貨2枚を滑らせてくる
「私も助けれれちゃったし、今いるのノエル君のおかげだからね」
ティアも2枚渡してくる
「そうですわ、私は何度もあなたに命を助けられたことか・・・」
ナタリーも2枚を滑らせるように僕の前へ
どこかしんみりした空気になってしまった
僕はそれぞれの2枚の金貨をみんなの前に返しながら
「仲間だから借りとかは無しですよ。それに命の借りなら金貨2枚ではチャラにしませんよ」
ニカっと笑い僕はみんなをみていう
「おい、こいつすげー悪いやつだ」
アルも僕の言葉に笑いながら反論する
「そうよわたくしたちの気持ちを尊重しなさいよ!」
ナタリーも元気に答える
「ノエル君、意外に腹黒~」
ティアも続く
「僕の魔法でどこへ逃げても、一瞬で追いつきますからね、逃げても無駄ですよ。特にアルは一生逃がしませんよ」
僕は笑ってそういう、借りとかは気にしていないし、僕もみんなに助けられているのだ
そのあとはしんみりした空気はなくなり、笑いあいながら今日の予定を軽く決めた
「じゃ先発組は騎士団主導だから説明を聞きに、俺は騎士団の詰め所へ行く。ノエルも店主に用があるだろから行くぞ。ナタリーは明日の俺たち用に物資を調達してくれ、ティアはそれを手伝ってやって欲しい」
「わかったー、いってらっしゃい」
「よろしくお願いします、買い物が終われば、この宿屋で休んでいますので」
「じゃあ各自解散」
僕とアルは宿をでて、騎士団の詰め所へ向かった
みんなは流石に眠りこけている。ダンジョンならティアやナタリーは準備して起きている時間だが今日はよく寝ているようだ。
僕はそっといつもの深緑のローブを羽織り、斜め掛けのカバンを身に着けると、”散歩してきます”と軽く置き手紙を書いて岩街の街を散策するのだった
岩街の土地感は一切ないが、賑わっているところを目指し歩くと、市場のような露店が出ている大通りを見つけた
大通りを挟み左右に露店が並び、その先には丸い形の広場がある。露店は屋根のあるテントや、シートだけの上に商品を並べているとこ、簡易の棚に綺麗に並べているとこなど様々な様子で、前世でのフリーマーケットのようで楽しくなってくる
露店の数を見るとかなり規模が大きいように感じる。まだほとんどが開店前の様子で、7時では少し早かったようだ。店構えはあるが商品が並んでいない所や、並べ始めている頃、客としてくる人も少なく混雑した様子ではない
僕はその中でも空いている店に行き、揚げパンのようなものを買い、それをかじりながら大通りを歩いていく
流し見しながらだが、武器やスキルブックも売っているみたいだ。見るだけでも楽しい気持ちになる。
それに刀身が光っている剣などは、何か付加効果が付いていそうで鑑定のスキルがあればと少し悔やむ
店主を誘えば掘り出し物が買えるかもしれないな、そんな事を思いながらドンドン大通沿いを歩いていく。
僕は大通りを過ぎ、丸い広場の一角にある露店の前で足を止めた
そこは色んなアクセサリーや武器、防具を売っている雑貨屋だ。
その中でも店の端にイーゲルに飾られた、3枚の額縁に入った風景画が気になったのだ
大きさはA3サイズが2枚とA1サイズぐらいのものが1枚。立体感が少しあるので油絵のようだ。
A1サイズの大きな絵は小麦畑が広がる台地に風車小屋が見える、黄色をメインとした柔らかな絵
A3サイズの一つ目は街並みを見降ろす風景に、夕方と夜の境目がグラデーションに書かれているマジックアワーを描いたものだ。オレンジと紺をメインとした美しく感じる絵
最後にA3サイズの絵は、湖をメインに山々がバックに書かれて青と緑をメインに鮮やかな絵
3枚とも素人目でも綺麗に描かれていて、僕の目をとめたのだ
僕はその風景画をまじまじと見ていると、店主の20台前半の女性のような声の持ち主に声を掛けられた
「その絵がきになるのかな?」
「えぇ、すごい綺麗な絵でしたので有名な方が書いた絵ですか?」
僕は絵から目を離さないまま、気になってそう聞いた
「アハハ、これはうちが趣味でかいたもんだよ。お客さん見る目あるじゃん」
女性はそういって笑っているようだ。
「じゃあお姉さんは有名な画家さんという事ですか?」
なんで笑っているのか分からず、もう一度聞き返す
「いやいや違う違う、行った場所でいい景色があると描いてるだけだって」
僕の質問にまた笑いながら答えてくれた。
「えぇ!?こんなに上手なら有名な人だと勘違いしますよ」
「うちの服装をみると画家には見えないよね?そんな勘違いするのは君だけだよ」
そう言われ初めて女性をみると、確かに画家のようでなく、身軽そうな服装、上半身はヘソを出しており、ズボンもショートパンツだ、どう見ても盗賊のイメージに近い
僕はそう思い声にでていた
「盗賊・・・?」
「ブッアハハハそれは失礼でしょ、冒険者だって!」
僕の呟きに、女性はまた笑いながら答えた
(まぁ盗賊って職業としたら犯罪者か)
「それは失礼しました、ところでこの絵たちははどこで描いたんですか?」
僕は絵を指さして聞いた
「これはこの岩街のここから見える、あそこの丘から描いたもので、この湖が書かれているのは、ウェールズ湖の北側にあるほとりだったかな~、でこれはブレッド村近くの風車小屋だよ」
そう説明され、僕はまた絵を眺めるとぼやぁと名前のように文字が浮かび上がりだしたのだ
小麦畑には ブレッド村 西側 風車小屋
街並みには セイクリッドストーン 宮殿の丘 南側
湖には ウェールズ湖 北側のほとり
「えっ・・・」
(ん?これはなんだ?いきなり文字がでてきたぞ・・・この絵がその場所と認識したから?)
よく分からない現象に、戸惑いながらももう一度絵を見てみることに
まじまじと小麦畑の絵を眺める、すると写真のようにその景色が鮮明に僕の頭に広がった。
そよ風になびく小麦がサラサラとその音を立てる、田舎のようなにおいに、澄んだ青い空から夏のような日差しを肌で感じられるほど僕の五感を刺激する
僕のビックリした顔を見てか、店主の女性が僕の肩をトントンと叩きながら声をかける。
「どうしたの?いきなり固まってしまって」
「えっ、えぇこの絵からこの場所の良さが伝わってきたので少し感動を」
声を掛けられたので、絵から目を離すと先ほどの感覚は消えていた。
なんだったんだ今の感覚は・・・
「この絵気に入ったなら買ってくれないかな?根無し草の冒険者だから荷物は移動する時にかさばるんだよね」
女性はそういう、僕も3枚ともほしいのだが・・・でもこの出来なら高いだろう・・・と思ってしまう。
「でもお高いんじゃ・・・いくらですか?」
「素人の趣味だっていってるでしょ、画材代さえ元が取れればいいと思ってるからねこっちの小さいのが一つ銀貨1枚、こっちの大きいのが銀貨2枚かな~」
「えっ!?そんなに安くていいんですか?」
多分本当に画材だけの値段なのだろう、思いのほか安かったのだ
「うん3枚とも買ってくれるなら、銀貨2枚でいいぞー」
女性はそういったのですぐさま銀貨を取りだし、買うことにしたのだ。
「買います!」
即決である
「毎度あり!絵は今回初めて露店に並べたんだけど、少し恥ずかしくて隅に置いてたんだ。まさか、こんなにすぐ売れると思ってなかったよ」
画家の女性も自分の作品が売れて嬉しそうだ
僕もいい買い物ができて満足だ。
これは僕にとって趣味やインテリアだけの物ではないのだ
長距離転移にはその場所を思い描かなければいけないと説明があった
僕は記憶力にそこまで自信もなく、この異世界で写真のような物は存在しないと思っていた
その場所を記憶の補助の為に絵を描こうと思い、ポイントもあまり必要としない絵のアビリティをとったのだが、さっきの感覚からして効果は高いように感じた。
それに自分が行ったことがない場所でも、絵から読み取れた景色に行けるのではないかと可能性を感じていた
「僕がお姉さんの画家としてのファン1号ですね!」
「ファンってそんな大げさなニシシシ」
画家は照れているようだが満更でもなさそうだ、これからも色んな所にいって絵を描いてもらいたいものだ。自分で絵を描かなくても、こういう人がパートナーなら将来楽しく過ごせるだろうなとも思った。
その後、今までで一番きれいな場所などを聞いたり少し世間話をした
「次もまた会えたら絵を買いたいので、この素敵な趣味を続けてくださいね」
「うちも明後日にはこの街を一度離れるけど、ファン君の為に用意しておくよ」
そこで僕は画家のお姉さんと別れ、人気のない路地に入り絵をイベントリへ収納した。流石に絵はかさ張る為、イベントリの有能さに脱帽。
まだ露店を見て回りたかったが、人が多くなっているのを感じ遠くの方で鐘が鳴っているのが聞こえた
ブラブラしていると、もう9時になっているようだ。流石にみんな起きているだろうと思い宿に戻ることにした。
宿に戻ると1階の酒場に3人ともいた。4人掛けのテーブル席で朝食を食べているようだ。
テーブルに近づき、アルの横に座る
「おはようございます」
「おう」
「おはよー」
「おはようございます」
僕があいさつするとみんな返してくれる
「朝からどこ行ってたんだよ、昨日の今日でタフすぎるだろお前・・・」
アルが皮肉っぽく言うのだ
「朝散歩していたら、露店がすごくあったので2時間ぐらいブラブラしちゃってましたよ」
僕は満足そうにそういう
「はぁ~・・・お前の気持ちの切り替えは見習いたいぜ」
アルはもう呆れていた
「何かいいものあった?」
ティアはちゃんと僕が聞いて欲しい言葉を掛けてくれる
「はい!すごい綺麗な絵がありましたので買っちゃいましたよ、画家のお姉さんとも知り合いになれましたよ」
「へー、今仕舞っているんだよね?あとで見せてね」
「はい!もちろんいいですよ」
僕は自分が描いた絵を見せるかのような笑顔でいう、自慢したいのだ
「岩街はダンジョンから採れるアイテム上、芸術に力を入れる方が多いと聞きますね。貴族の方たちが気に入った画家や彫刻家、装飾屋の作品はかなり高価になっているそうですわ」
ナタリーも岩街の事をある程度知っているようで説明をしてくれた
それを聞いて、他にも絵が出品されている可能性と、それに露店以外にも絵を専門として売っている店があると思い、岩街の探索が楽しみになったのだ
「そうそう、3人はなんの話をしてたのですか?」
一通り露店の話が終わり、今後のことを話していたのだと思い聞いてみる
「あぁ明日の予定だよ、昨日はナタリーが居なかったからな、その説明をしていた」
「わたくしも先発組としてアルと一緒にいきますわ」
ナタリーが先発組で行くというのだ
「もう体は大丈夫なんですか?あまり無理はしないほうが」
僕はナタリーも行くとは思っていたが、後発組で一緒かな?と思っていたから聞いてみる
「ご心配おかけしましたが・・・やはり孤児院が気になるので早く自分の目で確かめたいのです」
「そうですか、僕は恐らく後発組になると思うのですが、もし体調に自信がなければ僕達と一緒に後発組として参加しましょうね」
「はい、ありがとうございます。あなたは冷たい用で、やはり優しいですね」
ナタリーはそういうと少しほほ笑んだ
「俺も後発組の方が休息期間があるからいいって進めたが、こればっかりはナタリーの気持ちを汲んでやりたい。俺が一緒だ、任せとけ」
アルはそういう、ナタリーの気持ちが分かるのだろう
こうして今の予定では先発組はアルとナタリー、後発組は僕とティアとなった
そして机に金貨8枚をアルが置いた
「これは昨日騎士団から情報料としてもらった。一人2枚受け取ってくれ、魔物の襲撃が事実だと確定した時は+で金貨10でるようだ」
店主はもう2枚とっていったから今は8枚なのかな
「それって襲撃が虚偽の報告だったらどうするんですか?」
僕は疑問に思いそう聞いた
「俺と店主の首が飛ぶか、犯罪奴隷おちだな」
アルがまじめな顔で怖いことをいう
「そうですか・・・怖いですね」
その後に言葉は続かなかったから、そこから2枚の金貨を受け取る
「ノエル、俺の分はお前が受け取れ、命を助けられた借りがある」
アルはそういい僕の方に金貨2枚を滑らせてくる
「私も助けれれちゃったし、今いるのノエル君のおかげだからね」
ティアも2枚渡してくる
「そうですわ、私は何度もあなたに命を助けられたことか・・・」
ナタリーも2枚を滑らせるように僕の前へ
どこかしんみりした空気になってしまった
僕はそれぞれの2枚の金貨をみんなの前に返しながら
「仲間だから借りとかは無しですよ。それに命の借りなら金貨2枚ではチャラにしませんよ」
ニカっと笑い僕はみんなをみていう
「おい、こいつすげー悪いやつだ」
アルも僕の言葉に笑いながら反論する
「そうよわたくしたちの気持ちを尊重しなさいよ!」
ナタリーも元気に答える
「ノエル君、意外に腹黒~」
ティアも続く
「僕の魔法でどこへ逃げても、一瞬で追いつきますからね、逃げても無駄ですよ。特にアルは一生逃がしませんよ」
僕は笑ってそういう、借りとかは気にしていないし、僕もみんなに助けられているのだ
そのあとはしんみりした空気はなくなり、笑いあいながら今日の予定を軽く決めた
「じゃ先発組は騎士団主導だから説明を聞きに、俺は騎士団の詰め所へ行く。ノエルも店主に用があるだろから行くぞ。ナタリーは明日の俺たち用に物資を調達してくれ、ティアはそれを手伝ってやって欲しい」
「わかったー、いってらっしゃい」
「よろしくお願いします、買い物が終われば、この宿屋で休んでいますので」
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