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第23話 セーフティーエリアと女騎士
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昼休憩を終えると、森を抜けることになった
2回の戦闘を行い、一回の小休憩を挟み、6時過ぎにセーフティーエリアに着く事が出来た
この時間は結構ギリギリらしく、セーフティーエリアは7時以降は門を閉めることになっているみたいだ
夜になると魔物は活発になるらしく、見張りも何人かいる
セーフティーエリアというのは、絶対安全で魔物が来ない場所ではないみたいだ
3Mぐらいの木の柵に丸く囲まれた、人為的につくった場所の様なのだ
大きさは直径50Mぐらいの円型、映画で見た中世のヨーロッパの砦のように思えた
銀貨1枚を払い中に入る、中に入るにはお金がかかるみたいだが一人銀貨1枚でなくPT(5人)までで1枚だ
こういう費用はアルが立替をして、帰った後に精算するそうだ
セーフティーエリアの中はコの字の型の建物が中央に一つ、左右に見張り台と小屋が一つと建物は少ない
コの字型の建物はは宿屋らしいがモーテルのような作りになっていた
コの字の始まりと終わりには武器屋と食材屋があるみたいだ
チェックインは食材屋のとこが受付もかねているそうだ
宿屋は素泊まりで1室、一泊銀貨5枚だそうだ。中にはベッドが2個あるだけの6畳ほどの部屋だ
今、街でとまっている宿屋は一泊、銅貨2枚、25倍の物価の違いになる
その為に、セーフティエリアに入っても宿屋は使わず、テントを張り野宿をしている人達もいるのだ
僕たちは1部屋とると決めているので、受付へ向かった
支払をすませ、7と書かれた番号の鍵を受け取り、部屋へ向かった
ここまでのやり取りは全て、アルフレッドがやってくれているので、僕は後ろでふんふんと聞きながらついていくだけだった
「部屋が空いていてラッキーだったな、ここのセーフティーエリアは結構人気だからなかなか空いてないんだよな」
部屋に向かいながら、安全が確保できたことで雑談も出来るようになり、アルフレッドが喋り出す
「ほんとうね、野宿なのと天井があるのとでは安心感が違うもんね」
ティアもほっとしているようにしゃべる
部屋の前につく、武器屋の隣みたいだ。ドアには7と書いているのを確認すると、全部で部屋数は7部屋というのが分かった
最後の一室が空いていたってことかな、僕も心の中でラッキーと思う反面、銀貨5枚は大丈夫かなとも心配になっている
今日のドロップ品は、魔石が7個と肉が2個、その肉も今日の昼食べて、もう一つも夜に食べる予定だからだ
後、ティアとナタリーも一緒の部屋ということにも、サラッと決まったが一人ドキドキしていた
部屋の中に順番に入る、僕は一番最後だ朝からずっと警戒して歩いていた為に安堵のため息がでる
「初めてのダンジョン流石に疲れたかな?」
ベッドに腰をかけながら、ティアが優しく声をかけてくれる
「そうですね、ずっと警戒し続けるのって大変ですね」
そういいながら、左すみにバックパックを下ろし腰かけた
神官も疲れているようで、ベッド腰かけてる
「あなた魔法使いよね?見かけによらず体力あるわね、私はへとへとよ・・・」
そうなのだ、僕は気疲れはしたものの体力的にそれほど疲れてはいない
戦士もエルフも神官よりは体力があるとはいえ疲れているようだ
「俺も体力なかったら置いて行ってやろうかと思っていたが、涼しそうな顔してやがる」
戦士も軽口をたたくが、探索中はちょくちょく後ろを確認し僕達を気に掛けてくれていた
基本能力が高いディティマールを選んでてよかったなと、心のなかで思った
「魔法使い君、お願いがあるんだけどMP余裕あるかな?あれやって欲しいな~」
「いいですよ、MPには全然余裕がありますので、一回じゃ足りなければ何回も言ってください」
そういって立ち上がり、ティアにクリアリコールを唱えた
「ふー、すごいスッキリしたー、これはもうお風呂だね」
エルフは嬉しそうにそう言っている
僕も自分にクリアリコールを掛ける
(リコール)
単距離テレポートがブリンクでいいなら、クリアリコールも縮めてリコールでいいかなと思って唱えてみると発動するので、この世界のスキルの概念って曖昧だなと思った
ふー、汗のベタツキがなくなり、服も汗で湿っていた部分もカラッとしている
これは瞬間移動の次に必須魔法だったかもしれないな
「私も!私も!」
「いいですよ、リコール」
ナタリーにも使ってあげると、その効果にすごい喜んでいる
アルフレッドもいるかなと思って聞いてみる
「アルフレッドさんもやりますか?」
「おっ・・・おう頼むわ」
「リコール」
「おっ・・・すげぇな、MPまだあるなら金儲けしにいくか!」
リコールの効果にアルフレッドも喜び、リコールを買った時にティアが言っていた事と同じ事を言い出した
「後3回ほど使えると思いますが、この魔法ティアさんに買ってもらったので、お金儲けしてもティアさんに渡したいのですが」
そう、ティアに借りがあるので、リコールで手に入れたお金を受けとる資格はティアにあると思っているのだ
「私?別にいいよー、声かけるの面倒だから。アルがその辺得意だから、2人で行ってPT収入にしておいで」
僕が提案すると、さほどお金に執着してないようでティアはPT収益と考えているようだ
「なら決まりだな!」
「ティアさんがそれでいいなら」
僕とアルフレッドは食後に、他所のPTに声を掛けに行くことになったのだ
軽く、休憩を挟んだ後に食事をする事になった
メインはオーク肉だ、外に出て空いている場所を探し焚火を始める
食事はPTで一緒の物を食べるのでなく、個人で準備したものを食べることになっている
その中でドロップ品は共通のおかず?メイン?として準備するようだ
ティアとナタリーはサラダのようなものを作っていた。これも道中にある野草や山菜をティアが見つけたものだ
アルフレッドは肉だけでいいのだろう、肉が焼けるのを見ている。片手には木の樽のようなジョッキ、肉と酒があればいいタイプかな
みんなダンジョンには慣れているようで、食料はダンジョンで取れるため余分な荷物を増やさない為に持ってきていないそうだ
僕はもちろん、初めてでありアウトドアキャンプ気分の為、お構いなしに自分がしたいことをバックパックにつめた
スキレットと鍋を昨日、雑貨屋で追加購入していたのでそれで焼くことにした
皆の焚火より少し隣くらいで、石を組み土台を完成させる
肉を焼く前にパンを軽く焼いておく
パンを薄くスライスして、少し焦げ目が出来るくらいに焼くが少し回りが焦げてしまう。あるあるだ
次にオーク肉も塊でなく、厚さ2cmほどスライスしステーキのような見た目にする
軽く塩で味付けをし、肉を投入、じゅーっと焼ける音が聞こえ瞬く間にいい匂いが立ち込める
その匂いと火加減が調整できない為、肉から目が離せない
両面がいいぐらいに焼けたところで、たれを投入だ
じゅわーーと煙とともに、食欲を刺激する匂いが向かってくる
昼食から7時間、途中で休憩もしたがお腹がめちゃくちゃ空いている中で、この匂いは反則だ
今にもかぶりつきたいが、完成まで我慢だ
肉をパンに挟んで、サラダに入っていたレタスのような野菜も一緒に挟み、カツサンドぐらいの大きさにカットする、贅沢なサンドイッチが完成だ
「いただきます!」
あーんっ
お腹が空いていたけど、少し手間をかけてよかったと思えるほどおいしかった
一口噛むほどに肉汁があふれ、たれも醤油ベースのような味に似ている
あっという間に一つを食べ終えて、もう一つを掴み食べようとしたところで、皆がこっちを見ていることに気づいた
みんなの視線からサンドイッチを見ているのだろう
アルフレッドが一番最初に声を掛けた
「それ俺にもくれ!」
(僕もお腹が空いているのだ、それにこのサンドイッチは会心の出来だあげるのは惜しい・・・まぁでも助け合いだよね)
僕がそんな事を考えていた為、少し間が空いてしまった。すると続けて声を掛けてくる
「じゃあ銅貨2枚で売ってくれ!」
「えっ?お金とるほどのものじゃないですよ」
僕の返事を聞かずに銅貨2枚を押し付けて、サンドイッチを一切れもってそのままかじりついた
「うっま!」
アルフレッドは夢中で食べている様だ
ティアとナタリーも食べたそうだったので、声を掛ける
「あのよかったら食べますか?お金はとりませんよ」
「えーいいの!?食べる食べるー」
「よろしいのですか、ありがたく頂きますわ」
2人は一切れずつサンドイッチを受け取り、そのまま食べる
「うわぁ、美味しい」
「ほんとね、このソースみたいなのがよくあってますわ」
ティアとナタリーも美味しいと喜んでくれたので良かったと思う事にしよう
みんなに振舞ったせいで、自分の分が少なくなってしまったが、ティアとナタリーがオーク肉の丸焼きを少しづくくれたので、お腹は満たせれた
「俺からは金とったのに、女たちは無料かよ!それにもうないのか?」
アルフレッドが食べ終わったようだ
「いやお金って、僕の返事も待たずにお金押し付けて、とっていたんじゃないですかお金は返しますよ」
僕は少し嫌味っぽく言うが、お金は返した
「あんなに旨そうな匂いを充満させといて、旨そうな顔で食べてるの見るとそうなるだろ。ほら、俺たちPTだけじゃなくてよそのPTもこっちの匂いを気にしてたぞ」
周りを見渡すと、結構な視線が集まっていた。
(危険察知が働かないので、大丈夫だろう・・・)
ティアも食べ終えて、こっちの会話にはいってくる
「はぁ~美味しかったぁ、ノエル君は料理もできるんだね」
「いえ最初なので、何を準備したらいいのか分からず、いろいろ準備してたら楽しくなっちゃっただけですよ」
「じゃぁ他にも何かまだあるのか?」
「一応、明日の朝と夜、明後日の朝分は考えて準備してますよ」
そういうと戦士がさっきの銅貨2枚を渡してくる
「じゃあやっぱりこれやるから、作ったやつ俺にも分けてくれ!」
(上げるのはいいとしても、材料が一人分しか持ってきてないんだよな~)
そこで悩んでまた間があくと
ティアも続いていう
「えーー、私も食べたいー、私は銅貨2枚なら私もだすよ」
ナタリーも続く
「私も欲しいですわ」
そう言ってみんなが銅貨を差し出して、オークションのようになっているので僕は焦っていう
「ちょちょっと、ほんと大したものじゃないし、自分ひとり分の食料しか考えてなかったのでそんなに材料がないんですよ」
手を振りながら否定するかのようなジェスチャーをし、
「皆さんには分けるので、お金は銅貨2枚もらえれば材料代は賄えます!さっきアルフレッドさんに銅貨2枚もらっているので」
僕がそういうと
「やっぱり女からは金とらねーじゃねーか!」
アルフレッドが少し笑い気味にいう
僕も笑って言う
「まぁね、奢ってあげるとはリーダーはメンバーに優しいですね」
ティアとナタリーもそれに乗っかる
「リーダーありがとー」
「ご馳走様ですわ」
満足いく食事ができ、みんなに喜んでもらえてよかった
満足いく食事が終わり、片付けが終わった後にナタリーとティアは先に部屋に戻って着替えるようだ
その為、僕とアルフレッドだけがまだ外に残っている
「丁度いい時間になったな、ノエル金儲けにいくぞ」
「はい、行きましょう。でも僕声かけるの苦手ですよ」
「俺にまかせろ。交渉や声を掛けるやつは、俺が決めるから見ていてくれ」
おぉ、コミュ力お化けとはこの事か
「確認だが、残りは3回でいいんだな?」
「はい、計算上3回は確実に使えます」
正直にいってしまえば、今のMPは最大に回復しているだろう。なら、16回は使えるがそんな事を言ったら、MPはいくつあるんだと怪しまれてしまう
本来MPの回復は、1時間に1回復するそうなのだ。寝たり、休息で座ったり、体を休めることをすればもっと早く回復すると教えて貰った
残り使用回数を伝えると、アルフレッドは冒険者に声を掛けてくると言ってどこかへ行ってしまった
その場で10分ほど待っていると、すぐにアルフレッドは戻ってきたのだ
「思ったよりもすぐに集まったぜ、人あつめたからこっちにこい」
この短時間ですぐに人を集めたアルフレッドに驚愕したが、僕は言われるがままについてく
連れていかれた場所には、女性が3人。汗で髪がボサボサの人、所々に返り血が付着している人、ローブのすそが泥だらけの人達だった
アルフレッドが女性達に告げる
「よし、こいつがクリアリコールが使えるうちの魔法使いだ、さっき説明した通り銅貨2枚で交渉した通りだ。
MPの関係上あと3回しか使えない為、重ね掛けは無理だ。後から思った効果が無くても文句は言わないと約束したものだけ銅貨を払ってくれ」
すると一人のローブを着た、魔法使い風な女性が銅貨をアルフレッドに払う
「効果が薄くても構わないわ、少しでもましになるなら十分よ」
アルフレッドは銅貨を受け取り、僕のほうをみて頷く
それを合図とみて、僕は魔法使い風な女性へクリアリコールを使用した
「クリアリコール」
女性が光の渦につつまれた後に、魔法の効果を確認している
「・・・うっそ!?すごいわ、汚れがなくなってる!それに体が洗われた様な感覚、あなたもしかして高名な魔法使い様かしら!?」
女性は僕のクリアリコールの効果にすごい勘違いをしているようだ
「いえ、新人冒険者ですよ」
残りの二人も、魔法使い風の女性の効果を確認し、アルフレッドへ銅貨を払っているのを確認した後に、クリアリコールを使用した
みんな魔法の効果を実感し喜んでいた
全員に掛け終わると、最初の魔法使い風の女性が訪ねてくる
「いつまでダンジョンにいるの?」
「明後日帰還予定ですよ」
「そう、じゃあ明日もここのセーフティーエリアを使う予定かしら?」
「その予定です」
「じゃあ明日もお願いできないかしら?」
僕がいいですよと答えようとした時に、アルフレッドが割って入ってくる
「いや~、こいつは戦闘面でも期待できるやつだから、悪いが約束は出来ないな、今日はMPが余ったから声を掛けたが明日も絶対とは言い切れない」
「そう、それならもしMPが余ったら私に一番に声かけてね!」
他の女性も私も私もと声が上がり、魔法をかけた女性以外にも、その周りにいた僕の魔法の効果をみた人からも声が上がるのだ
「わかった、わかった!ただし使用回数に限りがあるから、値段の高いやつから優先はする」
アルフレッドはそう告げて、僕らはその場を去ることにしたのだ
「アルフレッドさんって結構良心的なんだね」
「ん?何でそんな事を思ったんだ?」
「だって、銅貨2枚なんてもっと、がめつくいくのか思ってました」
僕の疑問に、アルフレッドは悪い顔をして答える
「そんなわけないだろ、明日には一回銀貨1枚に行くんじゃねーかな」
「えぇ!?なんでそんないきなり5倍になるんですか!?」
「それはあの効果だぞ、最初は半信半疑だがあの効果を実感してしまったら疑う余地がない。あの3人だけでなく周りにも人がいたからな宣伝もできただろ」
「それでも銀貨1枚は取りすぎのような・・・」
「お前っバカか、ここはダンジョン内だぞ水も高ければ、食料も高い。ここにある食材屋か明日の朝、露天商をみてみろ、納得するはずだ」
そういってアルフレッドは僕を置いて、先に歩いて行ってしまった
僕はそのまま、食材屋へ行くことにするとそこには地上とは比べ物にならない値段だったのだ
塩は一袋、銀貨1枚。胡椒は一袋 銀貨5枚
塩も胡椒も地上では銅貨で買ってきていた為に、やはり物価は5倍が正しいようだ
他にもダンジョンで手に入らないものは、値段が高く、ダンジョン内で取れるものに関しては、地上と同じ値段かそれ以下で売られている
僕は一通り、食材を確認した後、セーフティーエリア内を散歩することした
ぐるっと一周回った頃ぐらいにベンチに腰掛けた
その時に女騎士風の人が魔法使いからバケツに水を入れて貰い、お金を払っていた
僕はまた女騎士という定番の職種を見ることができ、その光景を見ていた
女騎士は見た目も美しく、この世界の住人は基本顔が整っているなとか考えていると、女騎士はこちらに近づいてきて、ベンチの横あたりにある野営地へバケツを置いて座った
ベンチの横がこの女騎士の野営地らしい、他には人がいない為ソロのようだ
女騎士はバケツに布を浸せているので、体を拭くようの水を魔法使いから買っていたようだ
「そんなにジロジロ見られたら流石に、拭きにくいぞ」
そんな僕の視線に気づいて、女騎士はそう言ったのだ
「あっ、ごめんなさい!」
咄嗟に声を掛けられたことにビックリしたが、すぐさま謝るのだ
「ほかの男たちは離れたとこでコソコソしてみてるが、そんな近距離でじっと見られるとは逆に男らしいな」
女騎士に皮肉まじりだが、からかうように言われる
「ほんとっそんなつもりじゃなくて、ただ騎士のような方が珍しく目で追っていましたっ」
僕は焦って弁解する
「よい気にするな、男なら仕方ないことだ、見られるのには慣れている、ただここまで堂々としているのは初めてだったからな」
女騎士は笑ってそう告げた
周りを見渡すと、冒険者の男たちが遠目でこっちをみているのに気づく
僕がガン見してたのは事実だったが、興味本位でみていただけで決して、邪な気持ちがあったわけではない!
そう自分に言い聞かせて、クリアリコールの提案をする
「あの!気持ちは別として、じっと見ていたことには変わりませんので、お詫びとして少しお手伝いさせて頂けませんか」
女騎士は懐疑的な顔で言う
「流石にそれは積極的すぎではないか・・・幼い顔つきだが人は分からないものだな」
女騎士は体を拭くのに直接的に手伝うと勘違いしてしまった様だ。そして僕はまたコミュ症がゆえに上手く伝えれないもどかしさ、そして自分の言葉に羞恥心で顔が赤くなる
「ちっち違います、魔法でえっと、綺麗になるのがあるので、魔法です!」
焦りから、言葉遣いが変になり、どもる、声が上ずるのだ
「ハハハ、分かった分かったそんなに慌てるな、魔法だな」
「はい、魔法ですそれで今までのやりとりを無かったことにしてください!」
女騎士は、じゃあ魔法を頼むと言い、僕はそのままクリアリコールを唱える
「おお、すごいなこれは久しぶりにさっぱりできたぞ」
「良かった、お役に立てて、そして僕の名誉も守れましたかね?」
「そうだな、とんだ破廉恥野郎かと思ったが少しは撤回しよう、でもじっと見ていたことには変わりはないがな~」
女騎士は最初より表情を柔らかくして、またからかうように言う
「いえ僕はただ・・・ごめんなさい少しは見とれていました」
「うむ、少しかまぁ素直でよろしい」
女騎士はにっこりと笑う
僕は恥ずかしいので唐突に話題を変える
「きっ騎士様は一人でダンジョンに?」
「そうだ、これでもDランクの冒険者であり、王都の騎士団に所属している」
女騎士は胸をはり、ドンと片手で胸をたたく
「Dランクですか!?すごいですね、ずっと一人なんですか?」
歳もアルフレッド達と変わらないぐらいに見え、Dランクという事に素直に感心した
「修行の一環であるからな」
そういい笑う女騎士
女騎士は銀色の鎖帷子の上に、たまに見かける王国の紋章入りの服を着ている。小手やブーツは脱いでいるようだが、全てを装備したらまぁまぁな重さだろうと思う
茶色に近い金髪は、首ぐらいの長さで切りそろえている、瞳の色は綺麗な青色でとても透き通っているように見えるのだ
僕たちはそのあと、少しお喋りをして9時ぐらいになる頃に、女騎士は明日も朝早いという事で解散したのだった
(綺麗な人だったな・・・また明日も会えるかな・・・あっ名前聞いてないや)
そんな淡い期待をしながら、僕もみんながいる部屋に戻るのだった
2回の戦闘を行い、一回の小休憩を挟み、6時過ぎにセーフティーエリアに着く事が出来た
この時間は結構ギリギリらしく、セーフティーエリアは7時以降は門を閉めることになっているみたいだ
夜になると魔物は活発になるらしく、見張りも何人かいる
セーフティーエリアというのは、絶対安全で魔物が来ない場所ではないみたいだ
3Mぐらいの木の柵に丸く囲まれた、人為的につくった場所の様なのだ
大きさは直径50Mぐらいの円型、映画で見た中世のヨーロッパの砦のように思えた
銀貨1枚を払い中に入る、中に入るにはお金がかかるみたいだが一人銀貨1枚でなくPT(5人)までで1枚だ
こういう費用はアルが立替をして、帰った後に精算するそうだ
セーフティーエリアの中はコの字の型の建物が中央に一つ、左右に見張り台と小屋が一つと建物は少ない
コの字型の建物はは宿屋らしいがモーテルのような作りになっていた
コの字の始まりと終わりには武器屋と食材屋があるみたいだ
チェックインは食材屋のとこが受付もかねているそうだ
宿屋は素泊まりで1室、一泊銀貨5枚だそうだ。中にはベッドが2個あるだけの6畳ほどの部屋だ
今、街でとまっている宿屋は一泊、銅貨2枚、25倍の物価の違いになる
その為に、セーフティエリアに入っても宿屋は使わず、テントを張り野宿をしている人達もいるのだ
僕たちは1部屋とると決めているので、受付へ向かった
支払をすませ、7と書かれた番号の鍵を受け取り、部屋へ向かった
ここまでのやり取りは全て、アルフレッドがやってくれているので、僕は後ろでふんふんと聞きながらついていくだけだった
「部屋が空いていてラッキーだったな、ここのセーフティーエリアは結構人気だからなかなか空いてないんだよな」
部屋に向かいながら、安全が確保できたことで雑談も出来るようになり、アルフレッドが喋り出す
「ほんとうね、野宿なのと天井があるのとでは安心感が違うもんね」
ティアもほっとしているようにしゃべる
部屋の前につく、武器屋の隣みたいだ。ドアには7と書いているのを確認すると、全部で部屋数は7部屋というのが分かった
最後の一室が空いていたってことかな、僕も心の中でラッキーと思う反面、銀貨5枚は大丈夫かなとも心配になっている
今日のドロップ品は、魔石が7個と肉が2個、その肉も今日の昼食べて、もう一つも夜に食べる予定だからだ
後、ティアとナタリーも一緒の部屋ということにも、サラッと決まったが一人ドキドキしていた
部屋の中に順番に入る、僕は一番最後だ朝からずっと警戒して歩いていた為に安堵のため息がでる
「初めてのダンジョン流石に疲れたかな?」
ベッドに腰をかけながら、ティアが優しく声をかけてくれる
「そうですね、ずっと警戒し続けるのって大変ですね」
そういいながら、左すみにバックパックを下ろし腰かけた
神官も疲れているようで、ベッド腰かけてる
「あなた魔法使いよね?見かけによらず体力あるわね、私はへとへとよ・・・」
そうなのだ、僕は気疲れはしたものの体力的にそれほど疲れてはいない
戦士もエルフも神官よりは体力があるとはいえ疲れているようだ
「俺も体力なかったら置いて行ってやろうかと思っていたが、涼しそうな顔してやがる」
戦士も軽口をたたくが、探索中はちょくちょく後ろを確認し僕達を気に掛けてくれていた
基本能力が高いディティマールを選んでてよかったなと、心のなかで思った
「魔法使い君、お願いがあるんだけどMP余裕あるかな?あれやって欲しいな~」
「いいですよ、MPには全然余裕がありますので、一回じゃ足りなければ何回も言ってください」
そういって立ち上がり、ティアにクリアリコールを唱えた
「ふー、すごいスッキリしたー、これはもうお風呂だね」
エルフは嬉しそうにそう言っている
僕も自分にクリアリコールを掛ける
(リコール)
単距離テレポートがブリンクでいいなら、クリアリコールも縮めてリコールでいいかなと思って唱えてみると発動するので、この世界のスキルの概念って曖昧だなと思った
ふー、汗のベタツキがなくなり、服も汗で湿っていた部分もカラッとしている
これは瞬間移動の次に必須魔法だったかもしれないな
「私も!私も!」
「いいですよ、リコール」
ナタリーにも使ってあげると、その効果にすごい喜んでいる
アルフレッドもいるかなと思って聞いてみる
「アルフレッドさんもやりますか?」
「おっ・・・おう頼むわ」
「リコール」
「おっ・・・すげぇな、MPまだあるなら金儲けしにいくか!」
リコールの効果にアルフレッドも喜び、リコールを買った時にティアが言っていた事と同じ事を言い出した
「後3回ほど使えると思いますが、この魔法ティアさんに買ってもらったので、お金儲けしてもティアさんに渡したいのですが」
そう、ティアに借りがあるので、リコールで手に入れたお金を受けとる資格はティアにあると思っているのだ
「私?別にいいよー、声かけるの面倒だから。アルがその辺得意だから、2人で行ってPT収入にしておいで」
僕が提案すると、さほどお金に執着してないようでティアはPT収益と考えているようだ
「なら決まりだな!」
「ティアさんがそれでいいなら」
僕とアルフレッドは食後に、他所のPTに声を掛けに行くことになったのだ
軽く、休憩を挟んだ後に食事をする事になった
メインはオーク肉だ、外に出て空いている場所を探し焚火を始める
食事はPTで一緒の物を食べるのでなく、個人で準備したものを食べることになっている
その中でドロップ品は共通のおかず?メイン?として準備するようだ
ティアとナタリーはサラダのようなものを作っていた。これも道中にある野草や山菜をティアが見つけたものだ
アルフレッドは肉だけでいいのだろう、肉が焼けるのを見ている。片手には木の樽のようなジョッキ、肉と酒があればいいタイプかな
みんなダンジョンには慣れているようで、食料はダンジョンで取れるため余分な荷物を増やさない為に持ってきていないそうだ
僕はもちろん、初めてでありアウトドアキャンプ気分の為、お構いなしに自分がしたいことをバックパックにつめた
スキレットと鍋を昨日、雑貨屋で追加購入していたのでそれで焼くことにした
皆の焚火より少し隣くらいで、石を組み土台を完成させる
肉を焼く前にパンを軽く焼いておく
パンを薄くスライスして、少し焦げ目が出来るくらいに焼くが少し回りが焦げてしまう。あるあるだ
次にオーク肉も塊でなく、厚さ2cmほどスライスしステーキのような見た目にする
軽く塩で味付けをし、肉を投入、じゅーっと焼ける音が聞こえ瞬く間にいい匂いが立ち込める
その匂いと火加減が調整できない為、肉から目が離せない
両面がいいぐらいに焼けたところで、たれを投入だ
じゅわーーと煙とともに、食欲を刺激する匂いが向かってくる
昼食から7時間、途中で休憩もしたがお腹がめちゃくちゃ空いている中で、この匂いは反則だ
今にもかぶりつきたいが、完成まで我慢だ
肉をパンに挟んで、サラダに入っていたレタスのような野菜も一緒に挟み、カツサンドぐらいの大きさにカットする、贅沢なサンドイッチが完成だ
「いただきます!」
あーんっ
お腹が空いていたけど、少し手間をかけてよかったと思えるほどおいしかった
一口噛むほどに肉汁があふれ、たれも醤油ベースのような味に似ている
あっという間に一つを食べ終えて、もう一つを掴み食べようとしたところで、皆がこっちを見ていることに気づいた
みんなの視線からサンドイッチを見ているのだろう
アルフレッドが一番最初に声を掛けた
「それ俺にもくれ!」
(僕もお腹が空いているのだ、それにこのサンドイッチは会心の出来だあげるのは惜しい・・・まぁでも助け合いだよね)
僕がそんな事を考えていた為、少し間が空いてしまった。すると続けて声を掛けてくる
「じゃあ銅貨2枚で売ってくれ!」
「えっ?お金とるほどのものじゃないですよ」
僕の返事を聞かずに銅貨2枚を押し付けて、サンドイッチを一切れもってそのままかじりついた
「うっま!」
アルフレッドは夢中で食べている様だ
ティアとナタリーも食べたそうだったので、声を掛ける
「あのよかったら食べますか?お金はとりませんよ」
「えーいいの!?食べる食べるー」
「よろしいのですか、ありがたく頂きますわ」
2人は一切れずつサンドイッチを受け取り、そのまま食べる
「うわぁ、美味しい」
「ほんとね、このソースみたいなのがよくあってますわ」
ティアとナタリーも美味しいと喜んでくれたので良かったと思う事にしよう
みんなに振舞ったせいで、自分の分が少なくなってしまったが、ティアとナタリーがオーク肉の丸焼きを少しづくくれたので、お腹は満たせれた
「俺からは金とったのに、女たちは無料かよ!それにもうないのか?」
アルフレッドが食べ終わったようだ
「いやお金って、僕の返事も待たずにお金押し付けて、とっていたんじゃないですかお金は返しますよ」
僕は少し嫌味っぽく言うが、お金は返した
「あんなに旨そうな匂いを充満させといて、旨そうな顔で食べてるの見るとそうなるだろ。ほら、俺たちPTだけじゃなくてよそのPTもこっちの匂いを気にしてたぞ」
周りを見渡すと、結構な視線が集まっていた。
(危険察知が働かないので、大丈夫だろう・・・)
ティアも食べ終えて、こっちの会話にはいってくる
「はぁ~美味しかったぁ、ノエル君は料理もできるんだね」
「いえ最初なので、何を準備したらいいのか分からず、いろいろ準備してたら楽しくなっちゃっただけですよ」
「じゃぁ他にも何かまだあるのか?」
「一応、明日の朝と夜、明後日の朝分は考えて準備してますよ」
そういうと戦士がさっきの銅貨2枚を渡してくる
「じゃあやっぱりこれやるから、作ったやつ俺にも分けてくれ!」
(上げるのはいいとしても、材料が一人分しか持ってきてないんだよな~)
そこで悩んでまた間があくと
ティアも続いていう
「えーー、私も食べたいー、私は銅貨2枚なら私もだすよ」
ナタリーも続く
「私も欲しいですわ」
そう言ってみんなが銅貨を差し出して、オークションのようになっているので僕は焦っていう
「ちょちょっと、ほんと大したものじゃないし、自分ひとり分の食料しか考えてなかったのでそんなに材料がないんですよ」
手を振りながら否定するかのようなジェスチャーをし、
「皆さんには分けるので、お金は銅貨2枚もらえれば材料代は賄えます!さっきアルフレッドさんに銅貨2枚もらっているので」
僕がそういうと
「やっぱり女からは金とらねーじゃねーか!」
アルフレッドが少し笑い気味にいう
僕も笑って言う
「まぁね、奢ってあげるとはリーダーはメンバーに優しいですね」
ティアとナタリーもそれに乗っかる
「リーダーありがとー」
「ご馳走様ですわ」
満足いく食事ができ、みんなに喜んでもらえてよかった
満足いく食事が終わり、片付けが終わった後にナタリーとティアは先に部屋に戻って着替えるようだ
その為、僕とアルフレッドだけがまだ外に残っている
「丁度いい時間になったな、ノエル金儲けにいくぞ」
「はい、行きましょう。でも僕声かけるの苦手ですよ」
「俺にまかせろ。交渉や声を掛けるやつは、俺が決めるから見ていてくれ」
おぉ、コミュ力お化けとはこの事か
「確認だが、残りは3回でいいんだな?」
「はい、計算上3回は確実に使えます」
正直にいってしまえば、今のMPは最大に回復しているだろう。なら、16回は使えるがそんな事を言ったら、MPはいくつあるんだと怪しまれてしまう
本来MPの回復は、1時間に1回復するそうなのだ。寝たり、休息で座ったり、体を休めることをすればもっと早く回復すると教えて貰った
残り使用回数を伝えると、アルフレッドは冒険者に声を掛けてくると言ってどこかへ行ってしまった
その場で10分ほど待っていると、すぐにアルフレッドは戻ってきたのだ
「思ったよりもすぐに集まったぜ、人あつめたからこっちにこい」
この短時間ですぐに人を集めたアルフレッドに驚愕したが、僕は言われるがままについてく
連れていかれた場所には、女性が3人。汗で髪がボサボサの人、所々に返り血が付着している人、ローブのすそが泥だらけの人達だった
アルフレッドが女性達に告げる
「よし、こいつがクリアリコールが使えるうちの魔法使いだ、さっき説明した通り銅貨2枚で交渉した通りだ。
MPの関係上あと3回しか使えない為、重ね掛けは無理だ。後から思った効果が無くても文句は言わないと約束したものだけ銅貨を払ってくれ」
すると一人のローブを着た、魔法使い風な女性が銅貨をアルフレッドに払う
「効果が薄くても構わないわ、少しでもましになるなら十分よ」
アルフレッドは銅貨を受け取り、僕のほうをみて頷く
それを合図とみて、僕は魔法使い風な女性へクリアリコールを使用した
「クリアリコール」
女性が光の渦につつまれた後に、魔法の効果を確認している
「・・・うっそ!?すごいわ、汚れがなくなってる!それに体が洗われた様な感覚、あなたもしかして高名な魔法使い様かしら!?」
女性は僕のクリアリコールの効果にすごい勘違いをしているようだ
「いえ、新人冒険者ですよ」
残りの二人も、魔法使い風の女性の効果を確認し、アルフレッドへ銅貨を払っているのを確認した後に、クリアリコールを使用した
みんな魔法の効果を実感し喜んでいた
全員に掛け終わると、最初の魔法使い風の女性が訪ねてくる
「いつまでダンジョンにいるの?」
「明後日帰還予定ですよ」
「そう、じゃあ明日もここのセーフティーエリアを使う予定かしら?」
「その予定です」
「じゃあ明日もお願いできないかしら?」
僕がいいですよと答えようとした時に、アルフレッドが割って入ってくる
「いや~、こいつは戦闘面でも期待できるやつだから、悪いが約束は出来ないな、今日はMPが余ったから声を掛けたが明日も絶対とは言い切れない」
「そう、それならもしMPが余ったら私に一番に声かけてね!」
他の女性も私も私もと声が上がり、魔法をかけた女性以外にも、その周りにいた僕の魔法の効果をみた人からも声が上がるのだ
「わかった、わかった!ただし使用回数に限りがあるから、値段の高いやつから優先はする」
アルフレッドはそう告げて、僕らはその場を去ることにしたのだ
「アルフレッドさんって結構良心的なんだね」
「ん?何でそんな事を思ったんだ?」
「だって、銅貨2枚なんてもっと、がめつくいくのか思ってました」
僕の疑問に、アルフレッドは悪い顔をして答える
「そんなわけないだろ、明日には一回銀貨1枚に行くんじゃねーかな」
「えぇ!?なんでそんないきなり5倍になるんですか!?」
「それはあの効果だぞ、最初は半信半疑だがあの効果を実感してしまったら疑う余地がない。あの3人だけでなく周りにも人がいたからな宣伝もできただろ」
「それでも銀貨1枚は取りすぎのような・・・」
「お前っバカか、ここはダンジョン内だぞ水も高ければ、食料も高い。ここにある食材屋か明日の朝、露天商をみてみろ、納得するはずだ」
そういってアルフレッドは僕を置いて、先に歩いて行ってしまった
僕はそのまま、食材屋へ行くことにするとそこには地上とは比べ物にならない値段だったのだ
塩は一袋、銀貨1枚。胡椒は一袋 銀貨5枚
塩も胡椒も地上では銅貨で買ってきていた為に、やはり物価は5倍が正しいようだ
他にもダンジョンで手に入らないものは、値段が高く、ダンジョン内で取れるものに関しては、地上と同じ値段かそれ以下で売られている
僕は一通り、食材を確認した後、セーフティーエリア内を散歩することした
ぐるっと一周回った頃ぐらいにベンチに腰掛けた
その時に女騎士風の人が魔法使いからバケツに水を入れて貰い、お金を払っていた
僕はまた女騎士という定番の職種を見ることができ、その光景を見ていた
女騎士は見た目も美しく、この世界の住人は基本顔が整っているなとか考えていると、女騎士はこちらに近づいてきて、ベンチの横あたりにある野営地へバケツを置いて座った
ベンチの横がこの女騎士の野営地らしい、他には人がいない為ソロのようだ
女騎士はバケツに布を浸せているので、体を拭くようの水を魔法使いから買っていたようだ
「そんなにジロジロ見られたら流石に、拭きにくいぞ」
そんな僕の視線に気づいて、女騎士はそう言ったのだ
「あっ、ごめんなさい!」
咄嗟に声を掛けられたことにビックリしたが、すぐさま謝るのだ
「ほかの男たちは離れたとこでコソコソしてみてるが、そんな近距離でじっと見られるとは逆に男らしいな」
女騎士に皮肉まじりだが、からかうように言われる
「ほんとっそんなつもりじゃなくて、ただ騎士のような方が珍しく目で追っていましたっ」
僕は焦って弁解する
「よい気にするな、男なら仕方ないことだ、見られるのには慣れている、ただここまで堂々としているのは初めてだったからな」
女騎士は笑ってそう告げた
周りを見渡すと、冒険者の男たちが遠目でこっちをみているのに気づく
僕がガン見してたのは事実だったが、興味本位でみていただけで決して、邪な気持ちがあったわけではない!
そう自分に言い聞かせて、クリアリコールの提案をする
「あの!気持ちは別として、じっと見ていたことには変わりませんので、お詫びとして少しお手伝いさせて頂けませんか」
女騎士は懐疑的な顔で言う
「流石にそれは積極的すぎではないか・・・幼い顔つきだが人は分からないものだな」
女騎士は体を拭くのに直接的に手伝うと勘違いしてしまった様だ。そして僕はまたコミュ症がゆえに上手く伝えれないもどかしさ、そして自分の言葉に羞恥心で顔が赤くなる
「ちっち違います、魔法でえっと、綺麗になるのがあるので、魔法です!」
焦りから、言葉遣いが変になり、どもる、声が上ずるのだ
「ハハハ、分かった分かったそんなに慌てるな、魔法だな」
「はい、魔法ですそれで今までのやりとりを無かったことにしてください!」
女騎士は、じゃあ魔法を頼むと言い、僕はそのままクリアリコールを唱える
「おお、すごいなこれは久しぶりにさっぱりできたぞ」
「良かった、お役に立てて、そして僕の名誉も守れましたかね?」
「そうだな、とんだ破廉恥野郎かと思ったが少しは撤回しよう、でもじっと見ていたことには変わりはないがな~」
女騎士は最初より表情を柔らかくして、またからかうように言う
「いえ僕はただ・・・ごめんなさい少しは見とれていました」
「うむ、少しかまぁ素直でよろしい」
女騎士はにっこりと笑う
僕は恥ずかしいので唐突に話題を変える
「きっ騎士様は一人でダンジョンに?」
「そうだ、これでもDランクの冒険者であり、王都の騎士団に所属している」
女騎士は胸をはり、ドンと片手で胸をたたく
「Dランクですか!?すごいですね、ずっと一人なんですか?」
歳もアルフレッド達と変わらないぐらいに見え、Dランクという事に素直に感心した
「修行の一環であるからな」
そういい笑う女騎士
女騎士は銀色の鎖帷子の上に、たまに見かける王国の紋章入りの服を着ている。小手やブーツは脱いでいるようだが、全てを装備したらまぁまぁな重さだろうと思う
茶色に近い金髪は、首ぐらいの長さで切りそろえている、瞳の色は綺麗な青色でとても透き通っているように見えるのだ
僕たちはそのあと、少しお喋りをして9時ぐらいになる頃に、女騎士は明日も朝早いという事で解散したのだった
(綺麗な人だったな・・・また明日も会えるかな・・・あっ名前聞いてないや)
そんな淡い期待をしながら、僕もみんながいる部屋に戻るのだった
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