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序章

鬼神舞う

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「全機、槍を放て」

そう天帝隊の隊長、張册佳が言うと共に
Su-30の下部から中距離対空ミサイル、R-77が放たれる

「撃ってきやがった アムラームスキーだ!」

R-77は西側のAMRAAM中距離空対空ミサイルに
運用用途や性能が似ているためアムラームスキーとしばしば呼ばれる

「アムラームスキーってことは…レーダーミサイルか
 ラーウェイ、チャフ散布!」

ラーウェイ機のF-15からチャフがばら撒かれて
ラーウェイに向かうR-77はそちらに向かう

一方景都の機体はチャフも撒かず
ひたすらミサイルの真正面

「馬鹿か舞時!死ぬぞ!」

「残念だな…俺は死なん」

距離1kmを切った瞬間にチャフをばら撒いてそのまま急上昇

ミサイルは景都機を捉えることはできずにそのままチャフへと突っ込む

「やりやがったよ………」

「まだだぜラーウェイ、フランカー様のお出ましだ」

急上昇した機体のラダーを踏んで
垂直状態から180度降下
天帝隊の4番機の真後ろにつく

「小癪なっ!」

後ろにつかれたSu-30SMは
機首を跳ね上げて
プガチョフコブラで景都機をオーバーシュートさせる

「貰ったぞ!台湾の傭兵!」

そう言い放って短距離空対空ミサイル、
R-73のトリガーに手をかけて
ミサイルを放った

この距離なら必中射程
と思った時、機体の正面を別のF-15が遮り、
ミサイルが真横に飛ぶその機体に引っ張られて明後日の方向へ向かってしまう

「何が起こった!?」

「ナイス、よくやった ラーウェイ」

その一瞬の混乱の時間で
反転してきた景都機のバルカン砲が火を吹く

「おやすみ」

機体の各所に数十発の機関砲弾が命中して
外板が吹き飛んで操縦不能
2名のイジェクトを確認

「くそっ、天帝4応答せよ!」

「そうやって、気ィ取られてたらダメでしょうに」

いつの間にか真下にいたラーウェイ機がサイドワインダーを放って
2番機のエアインティークとAL-31FPエンジンを吹き飛ばす

こちらの機体はイジェクト確認できず
そのまま空中爆発 残骸は山中に落ちていった


一方その時の景都は3番機を撃墜し
天帝隊の隊長機と巴戦を演じていた

ラダーを踏みながら、高度を失わぬように失わぬように
心がけながら敵機の後ろをとろうとするF-15
一方僚機を撃墜された焦りで正確な判断ができずどんどん高度を失っていくSu-30SM

先に根負けしたのはSu-30の方だった

旋回方向を逆に取る

「待ってましたっ!!!」

舵を反対にとったことで一瞬だけ機体が直進する

その一瞬を景都は待っていた
もだ

「Fox2!」

「対空ミサイル発射!」

サイドワインダーを放つ
と、ほぼ同時に鳴り響くレッドアラート

事態に気付いた景都が叫ぶ

「やりやがったなぁ!」

フランカーの翼端に搭載されたR-73が
真後ろに発射されたのだ
Su-27で実験に成功したとは聞いていたが
まさか本当にやってくるとは

フレアをばら撒きながら回避行動を取るが
避けきれない


ガガァン!


機体に大きな衝撃が走って
右翼の方が持ち上がる

「左翼を持ってかれた」

翼の付け根から左翼がごっそりなくなっている

まぁ撃墜されなかったのはいい方か

Su-30はと見ると
エンジンに命中したらしく
どんどん高度を下げながらまだ動いている

「おい、そこの空自崩れ」

敵機からの通信だ オープンチャンネルらしい

「なんだ さっさとイジェクトしろよ」

「そんなことはせん…私はこの機体を市街地に落とすわけにはならんからな
 守るべき、解放すべき民を殺さぬためにも

 鬼神と言ったか?お前はなんのために空にいる
 金のためか、自分の欲望のためか……今言わずともいい
 何かあった時、自分に問いかけてみろ それがお前の進むべき道を照らしてくれる

 さて、喋りすぎたみたいだな 機体も動かないし、火も回ってきた
 鬼神 先に地獄で待ってるぜ じゃあn………」

最後までしゃべることなく空中で爆発が起こり
粉々になった残骸がヒラヒラと海上に落ちていった


「……俺が空を飛ぶ理由か」

「オイ……なんでお前片羽で飛べてるんだ」

ラーウェイが心底呆れた声で右側につく

「あ、そうだったわ 片羽吹き飛んでるんだった
 これ基地帰れるかな」

そう言って機体をロールさせたり上昇させたり下降させたりしてみる

「おい!空中分解したらどうすんだ」

「そんときはそんときよ
 とりま大丈夫そうだな 管制機へ、これより帰投する いいか」

「あぁ、十分すぎる戦果だ 基地で待っておくよ」

こうしてここに台湾空軍の希望
鬼神と呼ばれる彼が生まれた

この鬼神という言葉は味方に敬意と戦意を
敵には畏怖と怯えを与える
それほどまでに景都の腕は卓越していたのだった
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