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21.糾弾
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「うわあ、まさかのウキナムルート? あのチャラ男に? いや、格好良かったけどさ。ドキッとしたけどさ」
声は落としているが、いつもの奇妙な発言が繰り広げられる。
「でも目的はカフシアナン殿下なんだよお。このままじゃ、お父様の機嫌が直らないじゃない。それに王子の好感度が低いままだと、聖女に覚醒はしても魔王は封じるだけで倒せないんだよねー」
悪しき精霊が毎夜のように一人で喋り続けてくれるおかげで、魔王というのがダルムのことだとは分かった。
そして彼女の目的が、ダルムを倒すことだということも。
悪しき精霊をアンバーに封じたのはケセディーヌ姫とザドキール様。
けれど王となる者には別の精霊様が祝福をくださるのだと、精霊様について書かれていた本には記されていた。
ダルムは第一子であるけれど、側妃様の子供なので継承権は低い。次期王太子はカフシアナン殿下と目されている。
――精霊様にとっては、正妃か側妃かなど関係ないのではないかしら? 精霊様がダルムに祝福を与えているとしたら? 悪しき精霊がダルムを警戒する理由になるのではないかしら?
魔王という言葉から、人間に厄災を与える恐ろしい存在を想像してしまっていた。
でも悪しき精霊にとっては、自分を封じるかもしれない精霊様と、祝福を頂く人間こそが魔王なのかもしれない。
「少しいいか? ケセディアーナ嬢」
――ダルム!
現れたダルムに驚きと喜びが入り混じり、駆け寄ってしまった。彼に私は見えないのに。
「な、何かご用でしょうか? 殿下。私には婚約者がいますので、殿下といえど殿方と二人きりになるわけには」
「心配は無用だ。ここは人目があるから、不埒な真似はできない」
そう言ってダルムが顔を向けた先には、警護の騎士が立っていた。断れないと覚ったのか、悪しき精霊は苦く顔を歪める。
「回りくどいことは苦手だ。単刀直入に聞く。お前は誰だ?」
「ケセディアーナ・ボボイルです」
「違うな。お前はケセディアーナではない。よく似ているが別人だ。公爵に命じられているのか? 他言はしない。必要ならばお前とお前の家族を保護してやろう。だからお前の正体と、本物のケセディアーナについて知っていることを話せ」
ダルムは私の名を騙る悪しき精霊を一刀両断にする。
悪しき精霊の顔色は悪く、視線が泳いでいる。
「答えよ。それとも、答えさせてほしいか?」
「ひぃっ?!」
懐に手を入れるダルム。きらりと光る物が見えて、悪しき精霊は小さな悲鳴を上げて後退った。
――待って! ダルム。その体に入っているのは私ではないけれど、その体は私の体なの!
自分で言っていて混乱しそうだ。
「こ、公爵家の令嬢に暴力を振るうなんて、王子でも許されませんよ!」
震える声で悪しき精霊が抗議する。
「公爵家の令嬢ならな」
どうやらダルムは私の体を悪しき精霊が乗っ取ったのではなく、私に似た人間に私を演じさせていると考えたようだ。
「わ、私はケセディアーナです」
「そうか。あくまで白を切るか。どこまで耐えられるか」
後退する悪しき精霊は、手に触れたグラスを掴んだ。ダルムに投げつけようと持ち上げる。
「あれ? 珍しいですね。ダルムニドル殿下が庭園にいらっしゃるなんて」
緊張を破る声が割って入り、悪しき精霊の手が下がる。ダルムも声の主を確かめるように視線を動かした。
「邪魔が入ったか」
呟くと踵を返して去っていった。
ダルムの背中を見開いた目で見送る悪しき精霊。充分に離れたと見て取ると、崩れるようにベンチに腰を落とす。
「た、助かった。魔王、まじ怖い。断罪前にフラグが立つとか、嘘でしょう?」
不思議そうに眺めていた異母妹とウキナム様が、東屋に戻ってくる。近くまで来て顔色の悪い悪しき精霊を見た異母妹は、血相を変えて駆け寄った。
「お姉様? 大丈夫ですか?」
「うん、なんとか」
「ダルムニドル殿下は取っつき難いところあるからなあ。ケセディアーナ様には刺激が強かったかな?」
異母妹とウキナム様に気遣われて、悪しき精霊は落ち着いていった。東屋で少し雑談を楽しんでから、庭園を廻りながら馬車付へと向かう。
「ウキナム様、またお会いしてくださいますか?」
「これは嬉しいお誘いだ。俺で良ければいつでもエスコートさせて頂きますよ?」
「まあ! 約束ですわよ」
異母妹はずいぶんとウキナム様と親しくなったようで、再度会う約束を取り付けていた。
「ねえ、モモ。もしかしてウキナム様に惚れちゃった?」
なんてはしたない問い掛けをするのだろう。異母妹はもちろん、同席していた侍女も目を丸くしている。
「お、お姉様、そのような言い方は」
「あれ? 違った? じゃあやっぱりカフシアナン殿下が好きなの?」
「いえ、カフシアン殿下は素敵な御方だと思いますけれど、やっぱり私には雲の上の存在だと思います」
「そんなことないと思うけど。じゃあ、やっぱりウキナム様?」
息を飲んで答えられない異母妹だが、その顔は真っ赤に染まっている。
「そっかー。でもウキナム様は女好きだから、お勧めしないよ? 色んな女性に声を掛けているからね」
「お姉様、失礼ですわ。ウキナム様はそのような方ではありません。お優しい方だから勘違いなさる方はいるかもしれませんけれど、不誠実な方ではありませんわ」
「あー、いや、モモはまだ世間を知らないから」
「まあ! ではお姉様はそんなに世間を知っていると言いますの? そうだとしても不誠実な殿方と関わるなんて不潔ですわ」
頬を膨らませた異母妹は、悪しき精霊から顔を逸らした。
「待って、モモ。そうじゃないから。私はただ、モモに傷付いてほしくなくて」
なにやら言い訳をしているが、異母妹は聞く耳を持たない。
公爵家に戻り夕食の時間になっても異母妹の怒りは収まっていないようで、悪しき精霊と顔を合わせようとはしなかった。
「ミスったなあ。でもどうしよう? ウキナムルートに突入したっぽいよね。カフシアナン殿下は諦めるしかないのかなあ? お父様にどう言おう。まさか私との婚約が復活するなんてことはないよね? ……ないよね?」
騒ぐ悪しき精霊の声を聞きながら、私は月を見上げた。
――ダルム。私はここよ。どうか気付いて。
声は落としているが、いつもの奇妙な発言が繰り広げられる。
「でも目的はカフシアナン殿下なんだよお。このままじゃ、お父様の機嫌が直らないじゃない。それに王子の好感度が低いままだと、聖女に覚醒はしても魔王は封じるだけで倒せないんだよねー」
悪しき精霊が毎夜のように一人で喋り続けてくれるおかげで、魔王というのがダルムのことだとは分かった。
そして彼女の目的が、ダルムを倒すことだということも。
悪しき精霊をアンバーに封じたのはケセディーヌ姫とザドキール様。
けれど王となる者には別の精霊様が祝福をくださるのだと、精霊様について書かれていた本には記されていた。
ダルムは第一子であるけれど、側妃様の子供なので継承権は低い。次期王太子はカフシアナン殿下と目されている。
――精霊様にとっては、正妃か側妃かなど関係ないのではないかしら? 精霊様がダルムに祝福を与えているとしたら? 悪しき精霊がダルムを警戒する理由になるのではないかしら?
魔王という言葉から、人間に厄災を与える恐ろしい存在を想像してしまっていた。
でも悪しき精霊にとっては、自分を封じるかもしれない精霊様と、祝福を頂く人間こそが魔王なのかもしれない。
「少しいいか? ケセディアーナ嬢」
――ダルム!
現れたダルムに驚きと喜びが入り混じり、駆け寄ってしまった。彼に私は見えないのに。
「な、何かご用でしょうか? 殿下。私には婚約者がいますので、殿下といえど殿方と二人きりになるわけには」
「心配は無用だ。ここは人目があるから、不埒な真似はできない」
そう言ってダルムが顔を向けた先には、警護の騎士が立っていた。断れないと覚ったのか、悪しき精霊は苦く顔を歪める。
「回りくどいことは苦手だ。単刀直入に聞く。お前は誰だ?」
「ケセディアーナ・ボボイルです」
「違うな。お前はケセディアーナではない。よく似ているが別人だ。公爵に命じられているのか? 他言はしない。必要ならばお前とお前の家族を保護してやろう。だからお前の正体と、本物のケセディアーナについて知っていることを話せ」
ダルムは私の名を騙る悪しき精霊を一刀両断にする。
悪しき精霊の顔色は悪く、視線が泳いでいる。
「答えよ。それとも、答えさせてほしいか?」
「ひぃっ?!」
懐に手を入れるダルム。きらりと光る物が見えて、悪しき精霊は小さな悲鳴を上げて後退った。
――待って! ダルム。その体に入っているのは私ではないけれど、その体は私の体なの!
自分で言っていて混乱しそうだ。
「こ、公爵家の令嬢に暴力を振るうなんて、王子でも許されませんよ!」
震える声で悪しき精霊が抗議する。
「公爵家の令嬢ならな」
どうやらダルムは私の体を悪しき精霊が乗っ取ったのではなく、私に似た人間に私を演じさせていると考えたようだ。
「わ、私はケセディアーナです」
「そうか。あくまで白を切るか。どこまで耐えられるか」
後退する悪しき精霊は、手に触れたグラスを掴んだ。ダルムに投げつけようと持ち上げる。
「あれ? 珍しいですね。ダルムニドル殿下が庭園にいらっしゃるなんて」
緊張を破る声が割って入り、悪しき精霊の手が下がる。ダルムも声の主を確かめるように視線を動かした。
「邪魔が入ったか」
呟くと踵を返して去っていった。
ダルムの背中を見開いた目で見送る悪しき精霊。充分に離れたと見て取ると、崩れるようにベンチに腰を落とす。
「た、助かった。魔王、まじ怖い。断罪前にフラグが立つとか、嘘でしょう?」
不思議そうに眺めていた異母妹とウキナム様が、東屋に戻ってくる。近くまで来て顔色の悪い悪しき精霊を見た異母妹は、血相を変えて駆け寄った。
「お姉様? 大丈夫ですか?」
「うん、なんとか」
「ダルムニドル殿下は取っつき難いところあるからなあ。ケセディアーナ様には刺激が強かったかな?」
異母妹とウキナム様に気遣われて、悪しき精霊は落ち着いていった。東屋で少し雑談を楽しんでから、庭園を廻りながら馬車付へと向かう。
「ウキナム様、またお会いしてくださいますか?」
「これは嬉しいお誘いだ。俺で良ければいつでもエスコートさせて頂きますよ?」
「まあ! 約束ですわよ」
異母妹はずいぶんとウキナム様と親しくなったようで、再度会う約束を取り付けていた。
「ねえ、モモ。もしかしてウキナム様に惚れちゃった?」
なんてはしたない問い掛けをするのだろう。異母妹はもちろん、同席していた侍女も目を丸くしている。
「お、お姉様、そのような言い方は」
「あれ? 違った? じゃあやっぱりカフシアナン殿下が好きなの?」
「いえ、カフシアン殿下は素敵な御方だと思いますけれど、やっぱり私には雲の上の存在だと思います」
「そんなことないと思うけど。じゃあ、やっぱりウキナム様?」
息を飲んで答えられない異母妹だが、その顔は真っ赤に染まっている。
「そっかー。でもウキナム様は女好きだから、お勧めしないよ? 色んな女性に声を掛けているからね」
「お姉様、失礼ですわ。ウキナム様はそのような方ではありません。お優しい方だから勘違いなさる方はいるかもしれませんけれど、不誠実な方ではありませんわ」
「あー、いや、モモはまだ世間を知らないから」
「まあ! ではお姉様はそんなに世間を知っていると言いますの? そうだとしても不誠実な殿方と関わるなんて不潔ですわ」
頬を膨らませた異母妹は、悪しき精霊から顔を逸らした。
「待って、モモ。そうじゃないから。私はただ、モモに傷付いてほしくなくて」
なにやら言い訳をしているが、異母妹は聞く耳を持たない。
公爵家に戻り夕食の時間になっても異母妹の怒りは収まっていないようで、悪しき精霊と顔を合わせようとはしなかった。
「ミスったなあ。でもどうしよう? ウキナムルートに突入したっぽいよね。カフシアナン殿下は諦めるしかないのかなあ? お父様にどう言おう。まさか私との婚約が復活するなんてことはないよね? ……ないよね?」
騒ぐ悪しき精霊の声を聞きながら、私は月を見上げた。
――ダルム。私はここよ。どうか気付いて。
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