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1章

7.装備は冒険者の鏡

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「おっ、来たな。さぁ薬を買い取ろうじゃないか」
さっきの商人の所に戻ってきた。
「じゃぁさっきのやつを」
一応といった感じで確認している。
「確かに、じゃぁ冒険者カードを」
今度はちゃんとあるので提示する。
「よし、120万ニースだ」
と言われ大金を受け取る。
すると、お金は手元から消えた。
「えっ!?」
思わず驚きの声が出た。
「なんだ? ちゃんと説明受けたんじゃねぇのか?」
いやいや何のことだ?
「はぁ、聞いてないみたいだな。お金は持ち歩くのが大変だから、冒険者カードに備わってる小さな収納機能に取り入れられるんだ」
なんだ……びっくりさせやがって。まぁそれなら便利だな。
ノイルが口を開けて固まってた。
「おい、ノイル。ちゃんと話し聞いてたか? お金は冒険者カードの中だ」
そう言うと、ノイルはハッと我に戻り安堵のため息をついた。
「まぁ知らずに見ればびっくりだわな」
商人の人に笑われた。ちくしょう。
「これからもどうかごひいきにな。俺の名はギーマだ」と言われた。
どうやら長い付き合いになりそうだ。
「買い取りとかはここに来るようにするよ、またなギーマ」
「ありがとうございました、ギーマさん」
そう言って俺らは装備屋に向かう。

「120万ニースあればどれくらいの装備が買えるでしょうかね?」
「俺的には、あんまり期待できないと思うぞ」
そう、もしも金銭感覚が円に近いなら装備は相当高いはずだ。

「ここなら、駆け出しからベテランまでの装備があるらしいです」
よく知ってるなぁと思う。そういえばこいつは魔法使いなのに杖とか要らんのか?

「うーん……」
予想通りだった。どれもこれも高い高い。安いので一式60万ニースだ。
ノイルも見て回っている。

そして俺は奥の方まで来た。ほこりを被っていて、値段が低くなってるものが多々ある。
そこで一際目を引くものがあった。
「この杖……結構いいものなんじゃないか?」
木でできていて、上には水晶のようなものが、成長に巻き込まれたかのように埋まっている。
全く知識が無い俺でも直感で分かった。でも、なんでこんな所で値段まで安くなって……。
『20万ニース』安い……。
危険察知を使って危険がないか見てみる。
……。問題ない、いわく付きでもないのか。
「買うか」
ほこりを払い持って行く。

ほこりを被ってる所から、防具を適当に選んだ。
杖を含み合計は70万ニースとなった。
「ノイル~、何見てんだ?」
ノイルはノイルで見て回ってた。
「ハルトにちょうど良さそうな武器を探してたんですが……ハルト、職業は?」
あっ……職業どうしよう。
「決めてないな……どうするか」
真面目にこれは悩むぞ。
「そうですね~どんなスタイルで戦いたいですか?」
「まず、魔法は使いたいよな。あと~ノイルは魔法使いだから前衛が必要だな……」
こうなるとどんな職業があるんだ?
「そうですねぇ……魔法剣士とかですかね?」
「魔法剣士……そんな職業があるのか!?」
盲点だった、どっちも両立できる職業があるとは。
「もちろん!そうなると剣ですね」
剣を探し始めた。俺も探す。

「これとかどうです?」
「ちょっと違うかな……」
「これは?」
「うーん……」
「難しいですね、剣は……」
確かに剣は難しい。何がちょうど良いんだ?

そして探してると、やはりほこりを被ってる所に来てしまった。
「こんな所に、良いのがありますかね?」
「さっきもそれなりにいいのがあったから、あるだろ」
ノイルは半信半疑で探している。
とある箱を漁ってると、ノイルが、
「これとかどうです? 結構いい感じがしますが」
剣術の能力を持ってるせいか反応する。
「これ、結構いいんじゃねぇか? 何でさっき見つけられなかったんだろ!」
何故だろう、気に入った。
形はシンプルで西洋の剣らしい。両方から切れるやつだ。
『35万ニース』
まぁ安い方か。
「決定だな、会計に行こうぜ」
「はーい」
と言って付いてくる。

「えぇっと、合計で105万ニースね」
なかなか強そうな男の店員だ。
カードを提示して、支払う。
クレジットカードみたいで簡単だな。

「にしても兄ちゃん、姉ちゃん見る目があるなぁ」
そんなにいいものだったのか?
「この剣も杖もどこから回って来たか忘れたが、かなりの代物に変わりはねぇ。ベテランが使ってても違和感ねぇもんだ」
すげぇ……けど何で埋もれてたんだ?
「そんなに良いもんと知ってて、何でほこりまみれにしたんだ?」
そう言うと、何か楽しそうに語り出した。
「俺は金目当ての商売をしてんじゃねぇ。武器を買うってんなら、見る目がある奴に売りてぇんだよ。だから店頭に並ぶ物に目を眩ます奴らに売る気はねぇ、ただそれだけの事よ」
すごい、この人本物のいい人だ。
ノイルが感激して目尻に粒を浮かべてる。
「ありがとな、こんな良いものを安く売ってくれて」
「ありがとうございます!」
2人でお礼を言っといた。
「新人なんだろ? 期待してるぜ! その目の効き、きっと大物になる! またうちによってくんな!」
そして俺らはこの店を後にした。

感動をもらったこの店、絶対忘れない。
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