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第一部 戦士の帰還

第八話 白き鋼の殲滅者

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白き鋼に身を包み、首元に紐を通し肩の部分でマントを止めている大男、『ケンジ110』は大雑把にしか見えないが、モニターらしきものが付属された銃器付きの三脚を等間隔で置いていくといった作業をしていた。
『リシュエント帝国』(なる名前があるらしい)の城壁からかなりの距離がある位置でのの準備であった。
かなりの距離があると言っても『ガンズタレット』の有効射程範囲は2~3kmだとケンジは予測してのことであり、今陣地を構築している位置から言えばさらに2~3km離れてはいたのだが。
まぁ、予測してのことだと言っても『お前は作った側の人間だから分かるだろ。』と言われそうではあるのだが、悲しいかな、人という生き物は忘れる生き物であり、覚えていたとしてもしか覚えていない。
・・・・・・・・・・・・ケンジの手が入っておらずに『旅団』の手によって作られたモノであるなら尚更だと言えるのだが、そんなことを知ってるのはどこにもいなかった。
『・・・・・・・・・っと。こんなもんかな。』
手に取った銃器が取り付いている三脚を開き大地に立てると、が来るであろう平原を見る様に振り返る。
その平原には足元を生い茂るだけの短い雑草がただ生えているだけで、これから起こるであろうモンスターが群れを成して来るとは全く想像が出来なかった。
戦いの前の静けさというものは実に不思議なほどまでに音が聞こえてこない。
聞こえてこないのが普通だと言えるのだが、なにか妙なモノがここで起きそうな不吉な予感がケンジには感じられた。
『戦場の静けさってのは、どうも嫌なもんだぜ・・・・・・・。』
、と呟きつつ、目の前で鎮座するように置かれている箱と呼ぶには妙に頑丈そうに見えるまで数歩歩き出し、蓋を手に取ると、蓋を開いてケンジは今回使い物になりそうだと思って持ってきた武器を取り出しては一つ一つ丁寧に外に置いていくという謎の動作をしていた。
こうやって外に出しておけばとしては分かり、手元にあるモノが弾切れ等を起こした際にいちいち取り出さなくてはいかないという無駄な時間を過ごさなくてもいい様にと経験上の教訓から置いていたのだが。
・・・・・・・・・・・・・・・・正直なことを言えば、こうして置いてあった方が何かと便利というただそれだけの理由でしかないのは別の話。
最後に黒塗りにされた長い銃身を持つ『アサルトライフルAR』を手に取ると、蓋を閉め、その場を後にする。
ケンジは手元の『アサルトライフルAR』に弾がたんまりと中に入った弾倉を、トリガー下に弾倉を差し入れて横を叩いた。

カチッ。

きちんと入ったことが分かる音が聞こえると、胸元に吊るす様に下げられている黒い容器の横のボタンを押した。
『こちら、スパルタンシエラ110。設置は完了。後は待つだけだ。応答どうぞオーバー。』
ケンジがそう言ってボタンを話すと、今度はザッ、と一瞬だけノイズが聞こえ、その容器から女性の声が聞こえた。
『こちら、レオナです。・・・・・・・・・・ja。了解です、。待機します、応答どうぞオーバー。』
レオナと言った女性からの通信が切れると、またザッ、と一瞬だけ雑音が聞こえて、今度は違う女性の声が聞こえた。
『・・・・・・・・・・・了解。・・・・・・・・・待機する。』
誰かは言わなくても分かるが、名前を言わないことにケンジはツッコミをするためにスイッチを押した。
『こちら、110。・・・・・・・・・・・おい、ケイト。ちゃんとやらなきゃ誰か分からねぇだろうが。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・言うの?』
『こちら、110。・・・・・・・・・・言え。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・でも、それするの、・・・・・・・・・・・・のところだけだよね?』
『こちら、110。・・・・・・・・・・あのな、きちんとやるのはの軍隊だけで俺らがやってるのは真似事でしかねぇってのは言われなくても分かってるんだ。分かってるからこそ、きちんとやるんだろうが。分かったらやれ。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・レオナは何でやるの?』
ザッ。
『こちら、レオナです。がしていることがたとえ真似事であろうとも、私はそれでもやりますよ?それが従者ですから。応答どうぞオーバー。』
レオナ。お前、そう思ってても付き合ってくれるし、そう言ってもやってくれるってのは・・・・・・お前ってのは・・・・・・・・だよ!!!サンキューな!!!
レオナの心遣いにケンジは目に熱いモノを感じて目頭抑える。
・・・・・・・・・・抑えようとしても目を守る様にされている『アイ・ガード』に防がれて抑えられなかったが。
『・・・・・・・・・・・・はぁ~。・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・待機、了解。・・・・・・・・・・・・応答どうぞオーバー。』
明らかに嫌だというような口調で応答の声が聞こえる。
『こちら、110。すまないな、ケイト。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・これ、もっと簡単に出来ないの?・・・・・・・・・・・・・応答どうぞオーバー。』
『こちら、110。う~ん、簡単にねぇ・・・・・・・・・・・。アレか?とかにするか?その方が楽だし。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・・もう何か面倒くさい。・・・・・・・・・いちいちこちら~、とか言わなくてもいいよね?・・・・・・・・・・使うの、私たちだけだし。・・・・・・・・・応答どうぞオーバー。』
『こちら、110。まぁ、分かるっちゃ分かるし、そうするか?応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、レオナ。ですが、よろしいのですか、?応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・やらないなら、ならなくていいよね?・・・・・・・・・・・・・まぁ、やりたいっていうの気持ちは分からなくも・・・・・・・・・・・ごめん、分からないや。』
『こちら、110。そもそもやろうって言ったのは俺とか「旅団」の連中だけだしな。他の連中はを連絡用に作ろうとか使おうとか思わなかったみたいだが。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・そう言われてみると、そうだったかも。』
『こちら、110。そもそも俺だって名前略してるからな。使っても使わなくてもどっちでもいいぞ。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・そうは言ってもそれはしか使わないし。』
『こちら、レオナ。そうですよ、。私はそんなこと気にはしませんよ?応答どうぞオーバー。』
『こちら、110。、レオナ。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、レオナ。クスッ。いえ、お気になさらず、応答どうぞオーバー。』
『こちら、110。了解だ。・・・・・・・・・・・・・・各員警戒せよ。では未だ目視での視認は出来ず。110、通信終わりアウト。』
そう言ってケンジは容器、通信機から手を放す。
今現在の配置からはケンジが一番前で、距離を開けてレオナとケイトの二人が後衛に就いており、三角形の形を組む陣形、三角戦闘陣形トライフォースを組む形になっているため、一番前のケンジが視認できるか否かの連絡をしたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・その前に雑談めいたことを話していたのは首から下げた通信機が使えるかどうかの確認をしただけに過ぎないのだが、少し長く話していたのは否定しきれない。
これからどれだけの敵が来るかは予想は出来ないが、少なくても数千単位となればは出来るだろうとケンジは考える。
まぁ、先頭から一番後ろのモンスターを相手にして全部倒すまでの時間おまつりにしてはみじかいじかんではあろうとは推測できるのだが。
『・・・・・・・・・・数が多いだけのモンスターどもを倒すだけの簡単な作業ひまつぶしにしては数が数千体ってのはなぁ・・・・・・・。せめて数万とか数十万とかそれだけの桁数があれば話は別だし、もうちっと装備も固めてくるんだが・・・・・・・・・・・・、数千じゃぁなぁ・・・・・・・・。』
ま、耐久値HPがどれだけあるかは分からんからとりあえずは持って来れるだけのものおもちゃどうぐは揃えてきたが・・・・・・・・・・。
いくら暇だと言っていても仕方がないか、とケンジは思いレオナたち二人かのじょらとは違うところに連絡を入れるために通信機のスイッチを『1』と書かれている場所から『2』と書かれている場所に切り替えた。
ご機嫌どうかなお嬢さんハローレディ?こちら、スパルタンシエラ110。聞こえたら返事をくれおへんじどうぞ。』
そう言って通信機から手を放して返事を待つ。
が返事をくれるかは分からなかったが、ケンジはたぶん返事を返してくれるおきていると睨んでいた。
そのケンジの予想通り、通信機からレオナとケイトとは別の女性の声が聞こえた。
『こちら、コマンドタワー管制塔110。?』
『こちら、110。おいおい、管制。連絡入れた第一声が皮肉か?・・・・・・・・・一応言っとくが、嫌味の類はレオナから耳にタコが出来る程聞いたから言わなくていいぜ。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔。それはすみません、110。しかし、の存在を知っておられる方は、「旅団」の方以外いらっしゃらないので。』
『こちら、110。そりゃな。のことを知ってるヤツは「旅団の連中おれら」以外だったら、知らねぇだろうさ。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔。それもそうですね。・・・・・・・・・・・それで、110。どうしました?』
やっと本題だ、とため息を吐きたくなる気持ちを抑えて、ケンジは通信相手かのじょに訊いてみた。
『こちら、110。で確認できるだろうから、訊くんだが。なんかモンスターの群れとかって確認できるか?応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔か、御聞きしても?』
『こちら、110。「日常と閃撃の箱庭亭おれんち」の・・・・・・・・正面の両側からだ。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔。・・・・・・・・・・確認できませんね。観測用ブイドローンでの確認、願っても?』
『こちら、110。ああ、打ち上げて構わねぇぞ。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔了解しましたアイコピー。少々お待ちください。』
その連絡を聞いた直後、『日常と閃撃の箱庭亭ケンジのいえ』近くにある二つの『ガンズタレット』、それぞれ一つずつの気球が浮き上がる。
今ケンジがいる位置からここからでは目視での視認は出来ないが、気球の下には遠くを確認するために遠眼レンズが付けられているカメラが搭載されているためケンジから見えない距離でも確認ができるはずであった。
確認できたのか通信機から応答を知らせるノイズが聞こえる。
『こちら、コマンドタワー管制塔。確認しました。距離にして15km弱、モンスターの群れが確認できますね。』
『こちら、110。レールガンで気をこちらに向けられるかぶちぬけるか?』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔。110。そう仰られるということは、「遠距離用レールガン」の使用を要請していると受け取ってもよろしいのですね?』
『こちら、110。それ以外にどう受け取るんだ?う~ん?言ってみろよ、応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔。・・・・・・・・・・・了解しましたアイコピー。それでは、出来る限り残す様に善処して発射しますいっぴきのこらずせんめつします。』
『・・・・・・・・・・・・はっ?オイ待て、。誰がって言った!?に来るように気を向かせろって言ってんだぞ、俺は。』
それを殲滅って誰も言ってねぇっての!!!
そう言おうとした途端に、二基の『ガンズタレット』の上部からそれぞれ一本ずつの紫電、計二本が放たれた。
あんの、バカ!!!とケンジはに連絡を入れようとして通信機のスイッチを押したが、応答はなく、先程と同じく二本の紫電が放たれた。
ケンジの後方、レオナたちが身体を向けている(であろう)前方の方では衝撃を伴った旋風が巻き起こるのを肌(金属で覆われているため感じることは出来なかったが)で感じた。
『・・・・・・・・・あんの、バカがっ!!!誰が殲滅しろっつった!!!バカじゃねぇのか!!!?』
いつから人の言葉が理解できないヤツバカたれになりやがったんだ!!!
頭に熱が上がってくる感じを感じながら通信機のボタンを押した。
『おい、!!!!殲滅しろって誰が言った!!?俺たちがいる方こっちに気を向かせろっていったんだぞ、俺は!!!!せっかく俺たちが少ないながらも潰してやろうと思ったのにつまらないだろうけどおあそびにもってこいとおもったのにそれを殲滅するとかてめぇ、ぶっ壊すぞ!!!?聞こえてんのか、てめぇ!!?』
ケンジが怒りに任せて通信機に言った直後、再び二つの紫電が走った。
あの野郎!!!と怒りに任せて連絡を入れようと思った直後、から連絡が入った。
『こちら、コマンドタワー管制塔。どうかしましたか、110?』
『どうかしたかってお前な!!!いくらなんでも・・・・・・・・・・ッ!!!!』
殲滅することはないだろうが!!!、とケンジが言おうとした直前、ドドドドド!!!と地鳴りがケンジの耳に聞こえてきた。
『・・・・・・・・・・・・・・・・おい、。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔。どうかしました、110?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・今お前、殲滅するとかって言ってなかったか?』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー管制塔。・・・・・・・・・言いましたかね?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・言った。一匹残らず殲滅します、とか言ってた。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はて?何か別の言葉と聞き間違えたのでは?そのようなこと、。』
こいつ・・・・・・・・。
苛立ちを抑える様に深い呼吸をケンジは数回行う。
その間もドドドドド!!!、と正面の群れは向かって来ていた。
左手で大盾に連結されている『挽き肉製造機ガトリングランチャー』の操縦桿グリップを握り締め、通信機のダイヤルを『2』から『1』へと変更し、レオナとケイトの二人にかのじょたちに連絡を入れるために通信ボタンを入れた。
『こちら、110。・・・・・・・・・・。すまん。応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『こちら、レオナです。お気になさらないでください、応答どうぞオーバー。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・そうだよ。・・・・・・・・・・あんまり気にしちゃダメだよ、。』
気にするなと言う彼女たちの言葉にケンジは心の中で謝った。
がお前らの主で悪いな、と言う様に。
『こちら、110。・・・・・・・・・・・・・悪いな。感謝するぜ。・・・・・・・・群れの先頭トップが来てるんで通信切るぞ。・・・・・・・・・・・・武運を祈るぜグッドラック。110、通信終わりアウト。』
そう言うや否や、ケンジはガトリングを正面に構え、グリップを握る。
ゆっくりと、銃身を回し始まるガトリングと目の前に映るモンスターの群れを見て、心の高ぶりを感じた。
敵は群れであり、レベルは自身と比べるまでもないたかが二桁の雑魚でしかないが、一人で群れを相手にするということに興奮を覚えていることにケンジは苦笑した。
多数の相手に少数で挑むなど無謀のことこの上ないが、、『メカノイスをキャラクターに設定しているプレイヤースパルタン』から言わせてもらえば、無謀であればあるほどと思えてしまうのが事実だった。

?

いや、そうではない。
、決して死ぬわけではない。



を理解しているからこそケンジは胸の高ぶりを感じた。
だからこそ、こう言えたのだ。

『かかってこい、襲うことしか出来ないモンスターどもくそったれども。だが、覚えておけ。。俺が、「」がてめぇら全部平らげてやる。』
そう言うと、左手のグリップを握り締めて大きく振った。

ヴォ、ヴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

轟音と共に弾丸が銃口から放たれる。
先頭を走る何体か頭部に直撃を受けて身体を止めることが出来ずに慣性の法則を受けたままの速度で数回転がる。その転がった影響を受けて何体か巻き添えを受けてまた何体かが転がり、さらに何体かが倒れ転がる。細かくは数えられないかわずか数秒の内に先頭を走る何十体かのモンスターが倒れた。
だが、それだけで群れの勢いは止まるわけがない。
ケンジの攻撃を受けた上で群れのモンスターは興奮した様で先頭を走るモンスターがケンジを逃がしてなるモノかという様に捉えた。
だが、ケンジもただ補足されるだけには終わるわけがなかった。
更に数十体を倒す勢いでグリップを握る手に力を込めた。

ヴォ、ヴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!

更なるガトリングによる斉射が先頭を走る集団を捉え、その一斉射を受けて先頭を走る集団が消えた。
その度にケンジと群との距離が徐々に詰まっていく。
そうしている内に、ケンジの耳に甲高い警告音が耳に届いた。
直後、今まで弾を勢いよく吐き出していたガトリングが空回りをして弾を出さなくなった。
その様子を見てケンジは悟った。

熱がこもったかオーバーヒートか!!!

本来のケンジの戦闘スタイルであれば『杭打機パイルバンカー』による近距離戦へと移るのだが、今回はそうは出来ない。
群れを相手にしている状態で突っ込むということは自殺行為と同じだと言ってもおかしくはない。
ならば、どうするか。
その疑問に応えるかのように右手に握った『アサルトライフルAR』の銃口を群れに向け、引き金を引き絞った。

タタタタタタタ!!!!

ガトリングランチャーより軽い印象が強い音を出しながら弾丸が連射される。
だが、その軽いとしか取れない音からは想像は出来ないが弾丸の一発、一発はモンスターの頭部を見事にとらえ小さな穴を穿っていく。
穿われた穴から血に似た細かいを撒き散らしながら、また何体かのモンスターが倒されていく。
しかし、ライフルによる掃射もそれもすぐに終わりを迎える。

カカカカカカ・・・・・・・ッ!!!

弾が出されずにただ空回り音を出すだけとなったライフルに目を落とし、ケンジは舌を打つ。
『チッ。これだからすぐに弾が無くなるたまがきれるライフルとか使いたくねぇんだよ・・・・・・・っ!!!だぁ~、クソッたれ!!!』
大きな声を出して怒りをぶつけるケンジであったが、すぐに思考を切り替えると口に出した。
弾が切れたエンプティ!!!!・・・・・・・再装填頼むリロード!!!!』
ケンジの言葉に応えるかのようマントの中から這い出てくる様に一つのロボットアームが手元に出てくる。
そのアームには弾がたんまりと入った弾倉が握らていた。
上々だナイスワーク・・・・・・・・っ!!、とを褒めるように心の中でそう言うと、トリガー横に取り付けられている『弾倉排出ボタンイジェクトボタン』を右親指で強く押しながらライフルを勢いよく振った。
すると、弾が残っていない空となった弾倉が排出され、どこかへと飛んで行ってしまう。
弾倉がどこかへ飛んで行ってしまうがいちいち気にしている余裕は今のケンジにはなかった。弾倉を握ったロボットアームの手前に弾倉を吐き出して何もなくなったライフルを構えると、アームは弾倉が無くなった場所に新たな弾倉を差し込んだ。
差し込められるや否やケンジはライフルの横腹を軽く叩き、初弾を装填するために『チャージングハンドル』と呼ばれるレバーを手前に引いて、パッと離した。
すると、それまで感触がなかったトリガーに感触が戻ったのをケンジは感じた。
そうしている間に、モンスターの群れは更に距離を詰めているようにケンジは感じたが、は楽しそうだという様に笑った。
何故なら。
感触が戻っていなかった左のレバーにきちんとした感触が戻ったことが分かったからだった。
『・・・・・・・・まだだ。・・・・・・・・・・・・そう簡単にはまだ。』
何故か。

『俺が「メカノイスをロマンという言葉に心引かれて選んだ頭が狂ったプレイヤースパルタン」だからな・・・・・・・ッ!!!!』

ッ・・・・・・・・・・・・・・・!!!
ッ・・・・・・・・・・・・・・!!!!

ッ、クソッたれどもがッ!!』

左腕のガトリングと右手に握ったのライフルのトリガーを握りつつ、は咆哮した。
しかし、たった一人で意志を持たない多数の群れにかなうはずもなく。
を群れが
群れの地鳴りに交じってガトリングの重い音が聞こえたが、その音もすぐに掻き消えた。



から約一キロ離れた場所。
の後衛となるその場所に白き外套で身を包みフードを頭深くに被り、その時をは静かに待つ。
自分が主と認めたが仕掛けたタレットによる防衛ラインデッドラインと決めていた場所にある最後のタレットがモンスターの量に負け、爆炎を上げて砕けるのを彼女は見て全てを悟った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ。」
が仕掛けていたタレットが全基破壊されたということは、だけで全てをことが出来なかったことを意味する。それゆえに突破されるであろう死のサインデッドラインと決めて呼んでいたのだ。
それを理解していたからこそレオナは悟った。

ことなく、群れにのだと。

「・・・・・・・・・・・大丈夫、うん大丈夫。あの人はです。そう簡単には。」
何故なら。

なのですから。・・・・・・・・・・・・・・そうですよね、・・・・・・・・・?」

レオナは信じる様に静かに呟く様に言った。
大丈夫だ。
が長い間、時にもしやと思ったりもした。
だが、は戻ってきたのだ。
だから、レオナも言うのだ。

は死にません。たとえ、としてもそれはわけではなく、ただが終わるだけであって。ただ、・・・・・・・・・・・ですよね、・・・・・・・?」

だから、大丈夫だ。
レオナは心を落ち着かせるように深く息を吸い、息を吐く。
そして、思う。
今こうしての安否を気に掛けているのは、自分一人だけではない、と。
彼女と反対側の場所から熱を帯びた殺意がオーラとなって立ち上る感触をレオナは肌で感じた。
レオナがのことを気に掛けるように、ケイトもまたのことを想っているのだ。
気になっているのは自分だけじゃない、と。
レオナは必死に逸る気持ちを抑える。
安否は確かに気になる。
だが、レオナとケイトの二人がを助けるために動いてしまえばが考え編み出した対抗策の全てが水の泡となってしまう。
ケンジがモンスターの群れをことは想定されていた。
左右が高い岩などで通行が制限される谷などに本当は誘導したかったらしいが、それは出来なかった。
どこから来るかも分からない上にどうやって来るのかも想像が出来なかったからだ。
誘いこもうにも、誘い込んだはいいが逆に出られなくなってしまえば元も子もない。
ならば、『ガンズタレット』がある平原に陣地を築いて、群れを引き入れた方がとしてケンジを先頭にした三角戦闘陣形トライフォースに決まったのだが、後ろにいる身としてはがどうなったのか気になってしまうのは当たり前な話であって・・・・・。
そんなことをレオナが思っていると、地鳴りが彼女の足元にも感じられた。
「・・・・・・・・・・・・っ。。」
彼女がそう言った直後、数百メートル先の地面が破裂した。
突如として巻き起こった爆発にレオナは何が起きたのか理解が出来なかった。
そして、思い出した。
つい先日、なにかを地面に埋め込むように自分の主ケンジが作業をしていたことに。
起こるであろう、の時に備えて、準備していたの気遣いにレオナはやはり自分ではあの人に敵わないな、と感じていた。



臆病だとのことを笑う人間はいるだろう。
だが、彼女は笑わない。
臆病になって何が悪い。
に対して恐怖を持ってそれに圧倒的な最大限の火力で応える。
それを誰が笑おうか。
否。
誰も笑えるはずがない。
への恐怖は誰もが持つモノであり、を含んだ『旅団』と呼ばれた者たちとてそれは変わらない。
誰もということは怖い。
怖いからこそ、は。
いや。
スパルタンと呼ばれた者たちかれらは恐怖に折れる心を奮い立たせるように言ったのだ。

。』

』、と。

巻き起こった砂煙が徐々に晴れていくことに合わせる様に、地鳴りが再び鳴り響く。
「・・・・・・・・・・っ。あれではやはり食い止めは出来ませんか。貴方の言う通りです。流石です、。」
レオナは唇を強く噛み締める。
左右の薬指にワイヤーが繋がれたリングを引っかけ、右の親指にワイヤーが巻き付かれているリングを引っ掛ける。
レオナの後ろには彼が仕掛けた数基の『タレット』が、彼女が立っている方に向けられている。
距離はある。
曰くは射程は100mそこそこらしく、射程から距離があるレオナは捕捉されてはいない・・・・・と、思いたかった。
彼女の後方に『タレット』があるのも
なので、これから来る群れ全てをレオナが相手をする必要はない。
・・・・・・・・・・・・する必要はないのだが、少なくした方が良いだろうと思っていた。
「それでは、一曲踊らせていただきますかおあいてさせていだきますか。」
笑う様にレオナはそう言うと、左手を背中に回し右手を上に上げた。
そして、リングが引っ掛かっている親指を

タァーン・・・・・・・。

反動を受けて後ろに弾かれる右手を振られるままにして左足を軸に軽く回った。彼女がそうして回っている内に先頭を走るモンスターの一体の頭部に小さい穴が空いて血を飛ばしながら転倒したのを彼女は回り終わってから確認するが、レオナにはゆっくりとしている時間はなかった。
背中に回した左手を前に出すと何もなかったその手には五本のナイフが握られており・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・っ。」
彼女はナイフを群れに対して投げた。
静かに、だが真っ直ぐに、一直線に勢いを殺すことなくナイフは飛んで行く。
そして・・・・・・・・。
静かに横一列にいた五体のモンスターの頭部にナイフが突き刺さり、五体のモンスターが転倒した。
彼女の反対側、ケイトがいると思われるところから爆発が巻き起こるのをレオナは肌で感じ、ケイトが接敵して交戦に入ったのだと彼女は悟った。
「交戦に入りましたか、ケイトは。・・・・・・・・・と言いましても、あまりこちらから群れに突っ込んでいくのは主義ではないのですが・・・・・・・・・・・。」
仕方がない、という様に呟くと彼女は静かに群れに向かって走っていくと跳び上がって先頭を走る一番掴みやすいモンスターの頭部の首元を握り締める掴むと右手を
その直後。
彼女の右手の袖からモンスターの首に向かって一つの刃が突き刺さった。
「グ、グォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・・。」
レオナの攻撃を受けてモンスターは断末魔の様な何かの声を出しながら絶命した。
走る勢いを失ったモンスターはただ地面に倒れるのみであったが、レオナは静かに跳んだ。
そして、また一体の背中に降り立つとをモンスターの首元に手首を前に折った。
先程と同じように白く光る刃がモンスターの首元に突き刺さり、モンスターが断末魔を上げる前に彼女は再び宙を舞う様にして跳び上がり、また一体、また一体とまるで踊りか何かを、静かに屠っていた。



レオナが先頭に入る数分前。
太陽の光を受けて短く切り揃えられた緑色に煌めく髪を風が吹くままに吹かれながらケイトはを静かに待っていた。
彼女の目の前には『タレット』が群れに爆散したのが目に映った。
「・・・・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・・・・突破された。」
・・・・・・・・・・・・・・、大丈夫かな?
自分の主たるのことをケイトは案じた。
だが、それはないかという様に頭を横に振った。
「・・・・・・・・・・・・・・は大丈夫。」
何故なら。
「・・・・・・・・・・・・・・で。・・・・・・・・・・から。・・・・・・・・・・・そうだよね、?」
・・・・・・・・・・・・・・ん。
ケイトは自身を安心させるように静かに言う。
そして、ふと今現場にいる自分ではないもう一人の存在を思い出した。
「・・・・・・・・・・・・・・レオナ。・・・・・・・・・・・・・心配してるかな?」
多分しているだろうな、と思いながらケイトは呟いた。
彼女は彼女でケイトほどではないが、妙に気にする傾向がある。
と言っているのだから、大丈夫だろうとケイトは思った。
でなければ戻って来れるわけがないのだから。
だが、は生きて戻ってきた。
ならば、ケイトとしては心配することはない。
が大丈夫だと言えば、大丈夫なのだ。
心配してみたところでその心配は無駄になるだろうとケイトは考える。
・・・・・・・・・・・・・一応、言っておくのだがケイトとて心配はする。
だが、ではなく、残念ながら頭が可哀そうな人たちスパルタンである。
のだが、が言うのだからにはいるのだろうと思うしかない。

たぶん。
きっと。
メイビー。

故にケイトは大丈夫なんだろうと思うことしか出来なかった。
そんなことを思っていると、に向かって来ていた先頭を走るモンスター一列の足元が爆発した。
「・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・仕掛けとかなくて良かったのに。」
ケイトには癖なのかは分からないが、は念を入れすぎているように彼女には思えた。
それはがいつもしている装備を見ればすぐ分かることだった。
必要性が感じられない過剰火力。
何も知らない人から見れば必要性は感じられないだろうとケイトは思う。
だが、とケイトは同時に感じるのだ。
は起こり得るであろうといった状況に備えてように用意をしているだけなのではないか。
(ケイトにとってだが)、が言っていたことをふと思い出す。

『いいか、ケイト。ってのはな、ことなんだよ。・・・・・・だからこそいつでも準備だけは怠っちゃいけねぇ。死ぬ気はないがっていうは必ず来る。今は来なくても、近いうちに必ずだ。・・・・・・・・・・・・・・。』

だから準備してるんだよ、とは困った様に苦笑しながら言っていた(気がする)のを思い出す。
そんなことを思っていてもモンスターの群れは足を止めることなく進んでいる。
・・・・・・・・・ケイトが相手にすることが面倒だからと言って目の前の集団を無視するのもいいかもしれない。
だが、自分たちの主ケンジが相手にしているのに自分が相手をしないというのはどうなのだろうとは思う。思ってしまう。
いちいち相手にしなくても
自分たちがいなかったに備えて作った『ガンズタレット』とケンジが呼ぶ無視しようにも存在が大きな建物おおきなおもちゃに相手をしてもらえばいいのだから。
しかし、問題はそう簡単には片付かないのでケイトにとっては面倒だと余計に思ってしまうのであった。
なにか、こう、頑張った褒美の様なモノがあればケイトも、をすることも出来るのだが・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・面倒。」
ケイトはただ呟く。
そう。
ケイトにとっては面倒でしかない。
ケンジ達七人の『プレイヤー』が集まり、『旅団』と呼ばれた
目的は趣味に近いだったかもしれない。
けれども、が作ったモノを有効活用しないというのは愚かとしか言いようがない。
そうとしか言い様がなく、手を貸す理由には全くならないし、命を懸ける必要もない。
だが、は手を貸そうとしていて。
死ぬ可能性がほぼなく一方的に蹂躙するだけの簡単な作業むだにしかおもえないたたかいに身を投じている。
ケイトには面倒としか思えないが、同時にらしいと思っている自分がいることも事実であった。

様に努力する。

そのために、と称し数多くの武具を作ってきた。
ケイトはレオナがどう思っているのかは知らない。
ケイトはレオナでないのは当たり前なのだから。
だとしても、思うことはあった。

にはなりに思うことがあるのだろう、と。

それを言い訳にしても一つの街が作れるほどの量のケイト達には理解できない武器かれがおもちゃというものを作っていい理由にはならないのだが。
であれば。
「・・・・・・・・・・・頑張らないとね。」
が戦わなくてもいい様に。
が心配しなくてもいい様に。
そのためにはどうすればいいか。
そう思うと、ケイトはため息を吐いた。
「・・・・・・・・・・・面倒。」
が戦わなくていいと、そういう状況にするためには今この現状を打破しなければならないわけで。
そうなると、目の前に映るモンスターの群れを全て撃破するくいつぶす必要があるわけであり。
そう考えると、やはり面倒だと言うしかないのだが・・・・・・・。
その面倒な状態を打破しなければいけないのもまた事実であった。
自分の考えが繰り返されていることループしていることにケイトは気付くことはなかった。
しかし、ケイトにとってはそうなっていることに気付こうが気付くまいが
何故なら。
今のケイトの脳内には。
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・。」

ただ目の前に映るモンスターたちを倒すことしか考えていなかったからだった。

すぅ~、とケイトは目を閉じて静かに深く息を吸い込む。
と同時に彼女の身体が青白いオーラに包まれる。
パチッ、と目を開くと同時に彼女は身体を前に出す様に
瞬間。
まだ群れとの距離があったにも関わらず、ケイトの身体は群れの目の前にあった。
その事実に前にいたモンスターたちは驚いた反応をしようとする。
しかし、いちいちに反応していてはケイトは戦う前から疲れてしまう。
故に、ケイトは反応する代わりに静かに、だが衝撃を纏って。
「・・・・・・・・・・・ん。」

拳を打ち出した。

ゴウッ!!と豪風を纏った拳は爆発を伴って先頭を走っていた集団を
「・・・・・・・・・・・次。」
彼女は次の目標を定めるために左右を見た。
左を走る何体かよりも右にいるの方が早い。
そう考え、右の拳を後ろに下げると、左の拳を右側に放った。
先程と同じく爆音と共に爆風が右の集団を襲う。
だが、その群れがどうなったかをいちいち確認している暇は彼女にはない。
左の拳を後ろに下げると、彼女は左側に一歩、足を踏み出しながら右拳を放った。
打ち放たれた拳は爆風を伴って集団に襲い掛かる。
しかし、先程と同じく、今のケイトには足を止めている暇はなかった。
なかったのだが、ふとそこで気が付いた。
ケイトの目の前、群れの後方ではが暴れているらしく、モンスターたちはから逃げる様にやや焦っている様にケイトには思えた。
自分たちよりもモンスターが怖いと感じる
ケイトはそのことに疑問を抱く。
目の前を走るモンスターよりも強いモンスターなどはこの近辺ではほとんど目にすることない。
目にすることがあったとしても、『ケンジを含めた七人りょだん』がで作った『ガンズタレット』の餌食になっているはずだ。
そのため、そうした危険となる脅威おもちゃに捕捉されない様にするはずである。
それを知らないのはここらにはいない低レベルのモンスター位でしかない。
なのに、モンスターが慌てるとはどういうことか。
強いモンスターはいない。
だが、モンスターたちは慌てている様に見える。
それは何を示すのか。
そうケイトが思った時に懐かしさを感じさせる音がしずかなおととおもいおとが耳に届くと同時に白い装甲に身を包んで背にマントを付けているケンジ110かれの姿がケイトの目に映った。
「・・・・・・・・・・・ん。」
が生きているということに胸を降ろしながら、ケイトは拳を放ちながらがいる前へと駆けた。
『・・・・・・・・・・っ!!!!バカか、ケイト!!!射線に出てくるな!!!!!』
彼女に当たらない様にケンジは急いで銃口を逸らしながら、引き金を引く。
タタタタタッ!!!と軽い音が聞こえると同時に数体のモンスターが倒れる。
『っちぃ!!!弾切れだエンプティ!!!再装填頼むリロード!!!!』
の言葉に合わせる様にしてマントの下からケイトからすればが入っている弾倉(ケンジ曰くにはそうらしい)が出てくるのと、がどこかに飛ばされていくのはほぼ同時だった。
『ケイト!!!!?』
そう言いながら右手に掴んだ銃に弾倉を入れ込んで銃にあるレバーを引きながら左腕の大盾の先端部に取り付けられているが回転をはじめ、六つの弾丸が放たれ、モンスターの身体を横に弾くのはほぼ同時だった。
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・ja。・・・・・・・・・・・私の残りはだよ?」
そう答えながら、ケイトはが身体を向けている方向とは逆側に身体を向けると拳を放った。
『ハッ、了解だ!!!!だったら、レオナの援護フォローに回ってくれ!!!!』
「・・・・・・・・・・・は?」
『あんまりにも数は少ないわ、あんまりにも弱いもんで、俺がを相手する!!!レオナのヤツにはちぃっときついだろうからな・・・・・・・・・・頼めるか!?』
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・。」
へっ。
了解したアイコピー!!!!!!!』
どこか不安に思う言葉を言うであったが、ケイトはが言うなら大丈夫か、と思うことにした。
やや不安に思いながらもケイトはを置いて、レオナが戦っている方向に足を向けたのだった。



ケイトがいるところにケンジが向かって行った頃。
レオナは。
「・・・・・・・・・・・っ!!!こうも数が多いと・・・・・・・っ!!!流石に嫌になりますねっ!!!!」
もう何十体になるだろうか分からなくなってきたころ背に飛び移っては首元を穿つというもはや何かしらの作業に似た行為に少し苛立ちを感じ始めていた。
彼女らの主ケンジここから先には行かせられない死の境界線デッドラインと定めた数多く設置されている『タレット』からはまだ距離はある。
距離はあるが、というだけであと何分か、何秒あるのか、レオナは少し焦りを感じていた。
前衛を務めるのいるところが突破されるのは、戦闘前からすでに分かっていたことではある。
こうして戦っているとしょりをしていると、いつ後ろに到達するか、いつ『タレット』からの掃射を受けるのか、気が焦ってしまって落ち着けなくなってしまう。
「しかし、私が急がなければケイトが・・・・・・・・・・・っ。」
ふと、ケイトが今どうしているのか疑問に持った瞬間。
レオナが移ったモンスターを吹き飛ばす様に爆音と共に旋風が舞った。
「なっ!?」
何が起きたのか全く理解できなかったレオナだったが、なんとか爆風に巻き込まれる前にモンスターの背から飛び降りることが出来た。
今度は先程までしていた様にモンスターの背には飛び移らずに平らな地に、地面にレオナは足を着かせた。
レオナがそうして着地して顔を上げようとしたちょうどその時、背後で再び轟音と共に爆風が舞った。
その爆風が起こせるのはレオナが知っている中でただ一人だけであり、その人物はことに疑問を抱きつつ彼女は振り返った。
すると、巻き起こった風に逆らうようにしてモンスターの群れに向かって突き進む短く切り揃えられた緑色の髪をした少女、いや、女性がいた。
「ケイトっ!?貴女、何をして・・・・・・・・・・っ!!」
「・・・・・・・・・・・・倒す。」
「へっ?」
ケイトはただ淡々とレオナの疑問に答えると、モンスターの群れを蹴散らして行ったのだった。
「・・・・・・・出来れば、説明してもらいたいものですが・・・・・・・。」
説明することがそんなに面倒でしょうか。
服に付いた埃を払う様に身体を叩きながらレオナは立ち上がり、ケイトがいたであろう方向に目を向けた。
だが、目を向けたその方にはいたはずのモンスターの姿はなかった。
その代わりに、マントを着けた白い鋼鉄に覆われたがゆっくりと歩いてくるのが目に映った。
それが誰の姿か、レオナはすぐに理解した。



そう、

に多くの人々がいて、彼ら、彼女らが絶望した時があった。

足を止め動くことが出来なくなった者たちに変わり、足を突き進めた者たちがいた。

彼らは『メカノイス』をキャラクターに選択していて最前線で戦うことを選んだ。

その先に絶望が待っていようともは足を突き進め、決して休めることはなかった。

にとってはであったのかもしれない。

だが、ではないからしてみれば、は人々を救うために戦おうとしたにしか見えなかった。

故に、誰かがのことをこう呼んだ。

絶対に死ぬことがない命知らずな連中スパルタン、と。

『大丈夫か、レオナ?ケイトはともかくお前にはちょいと荷が重かったか。となると、新しい装備を考える必要があるか・・・・・・・・・・?』
レオナの近くまでその人物、『彼女が主だと認めるただ一人の人物ケンジ110』は何かを考える様にして下顎に手を置きながら彼女にそう訊いてきた。
「nein。いいえ、。今回は私の不手際が原因です。新しい装備の検討はよろしいかと。」
『えっ。・・・・・・・・・そうは言うけど、お前ほとんど片づけられてないしょりできてないじゃん。』
「ja。出来ていませんが。」
『そうなると、今の装備だとちょっと厳しいよねって話にならね?』
「nein。なりません。・・・・・・・・・・・えぇ、なりませんとも。」
『・・・・・・・・・・え~、お兄さんは問題になると思うぜ~?』
「nein。なりません。」
『・・・・・・・・・・・・本当か?』
「ja。本当ですとも。今回は私のペース配分が間違っていただけです。」
レオナの言葉を聞いては怪しむように彼女を見た。
『・・・・・・・・・・・・・強がってる?』
「私が、貴方に、ですか?・・・・・・・・・・・・nein。あり得ませんね。」
『・・・・・・・・・・・・・今、俺しかいないから、正直に言ってくれないかなぁ~?』
「ありません。」
そう答えた彼女には諦めた様にやれやれと肩をすくめる。
『オーケー、オーケー。了解だ、了解。はいはい、分かった分かった。にしといてやる。』
チラッ。
『・・・・・・・・・・・・素直に言っていいのよ?大丈夫、お兄さん口堅いから。ユー、YO。』
の言葉を聞いてレオナはケンジの顔を見て訊いた。
「・・・・・・・・・・・よろしいので?」
『ん?ああ、いいぞ!!お兄さんに解決できることだったら言ってごらん!!!』
さぁ!!!この胸に言うんだ!!!!と両腕を広げるの腕の中にレオナは飛び込んだ。
『・・・・・・・・・・・・ん?あれ、レオナ。ちょっといいかな?なんかお兄さんが考えてたのとなんか違うんだけど。』
はそう言うが、レオナの耳には届くことはなく、彼女はただの胸の中で泣いていた。
その時、彼女は一人の従者ではなく、一人の少女として泣いていた。
「・・・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・・、心配していたんですよ。・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・戻って、・・・・・・・お戻りになられなかったから。・・・・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・貴方が行かれてからしばらくして貴方方を『スパルタン』と呼ぶ方々が。・・・・・・・・・・だから、だから、は貴方が仰っていた通り、のだと。・・・・・・・・・・・・、思っていたのです。」
ですがっ。
「ぐすっ。・・・・・・・・・・ではありませんかっ。・・・・・・・・・・・・・・だからっ。・・・・・・・・・・だからっ、貴方がとばかりっ。」
泣きながらそう言う彼女には違うぞ、とケンジは口にする寸前で言葉にすることを抑え込む。
ずっと。
ずっと、彼女は心配していたのだ。
彼女の主たるただ一人のことを。
で、ケンジがということを。
ケンジは彼女の両肩に手を置くと静かに言った。
『・・・・・・・・・・・。』
「ですがっ。・・・・・・・・・・・ですがっ。」
ゆっくりと彼女を自分の身体から剥がし、彼女の顔を見た。
『何度も言って耳にタコが出来てると思うがな、レオナ。』
ああ。
『「メタノイスをキャラクターに選んだプレイヤースパルタン」はんだ、分かるか?』
ぐすっ。
「なぜか・・・・・・・・・・御聞きしても?」
『そう訊かれると、俺としてはだからとしか言えないんだが・・・・・・・・・。』
・・・・・・・・・だがな?
『「俺たちプレイヤースパルタン」は。人々の・・・・・・。』
いや。
『戦えない連中からモンスターを遠ざけるために振り回すとモンスターたちから戦えない連中を守るだから、な。』
そう言ったケンジの言葉にレオナは泣き顔で笑った。
「・・・・・・・・・・ですね、?」
『ああ、そうだな。お前の言う通り正にってヤツだ。』
だがな?
存在がいなけりゃいけないんだわ、これがまた。面倒くさいったりゃありゃしねぇ。』
そう言いながらは彼女に笑う。
そうしていると、遠くの方で爆音が響いた。
。」
彼女に答える様には立ち上がる。

・・・・・・・・・・・・・・・。』

爆音が聞こえてきた方を向きながら彼女に応えた。

・・・・・・・・。』


そう。





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