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第一部 戦士の帰還
第八話 白き鋼の殲滅者
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白き鋼に身を包み、首元に紐を通し肩の部分でマントを止めている大男、『ケンジ110』は大雑把にしか見えないが、モニターらしきものが付属された銃器付きの三脚を等間隔で置いていくといった作業をしていた。
『リシュエント帝国』(なる名前があるらしい集落)の城壁からかなりの距離がある位置での突破されるであろう防衛線の準備であった。
かなりの距離があると言っても『ガンズタレット』の有効射程範囲は2~3kmだとケンジは予測してのことであり、今陣地を構築している位置から言えばさらに2~3km離れてはいたのだが。
まぁ、予測してのことだと言っても『お前は作った側の人間だから分かるだろ。』と言われそうではあるのだが、悲しいかな、人という生き物は忘れる生き物であり、覚えていたとしてもだいたいのことしか覚えていない。
・・・・・・・・・・・・ケンジの手が入っておらずに『旅団』の手によって作られたモノであるなら尚更だと言えるのだが、そんなことを知ってるのはどこにもいなかった。
『・・・・・・・・・っと。こんなもんかな。』
手に取った銃器が取り付いている三脚を開き大地に立てると、群れが来るであろう平原を見る様に振り返る。
その平原には足元を生い茂るだけの短い雑草がただ生えているだけで、これから起こるであろうモンスターが群れを成して来るとは全く想像が出来なかった。
戦いの前の静けさというものは実に不思議なほどまでに音が聞こえてこない。
聞こえてこないのが普通だと言えるのだが、なにか妙なモノがここで起きそうな不吉な予感がケンジには感じられた。
『戦場の静けさってのは、どうも嫌なもんだぜ・・・・・・・。』
慣れたくはないのに慣れちまったな、と呟きつつ、目の前で鎮座するように置かれている箱と呼ぶには妙に頑丈そうに見える収納ボックスまで数歩歩き出し、蓋を手に取ると、蓋を開いてケンジは今回使い物になりそうだと思って持ってきた武器を取り出しては一つ一つ丁寧に外に置いていくという謎の動作をしていた。
こうやって外に出しておけばだいたいの置き場としては分かり、手元にあるモノが弾切れ等を起こした際にいちいち取り出さなくてはいかないという無駄な時間を過ごさなくてもいい様にと経験上の教訓から置いていたのだが。
・・・・・・・・・・・・・・・・正直なことを言えば、こうして置いてあった方が何かと便利というただそれだけの理由でしかないのは別の話。
最後に黒塗りにされた長い銃身を持つ『アサルトライフル』を手に取ると、蓋を閉め、その場を後にする。
ケンジは手元の『アサルトライフル』に弾がたんまりと中に入った弾倉を背中から取り出すと、トリガー下に弾倉を差し入れて横を叩いた。
カチッ。
きちんと入ったことが分かる音が聞こえると、胸元に吊るす様に下げられている多くの穴が空いてる黒い容器の横のボタンを押した。
『こちら、スパルタン110。設置は完了。後は待つだけだ。応答どうぞ。』
ケンジがそう言ってボタンを話すと、今度はザッ、と一瞬だけノイズが聞こえ、その容器から女性の声が聞こえた。
『こちら、レオナです。・・・・・・・・・・ja。了解です、マスター。待機します、応答どうぞ。』
レオナと言った女性からの通信が切れると、またザッ、と一瞬だけ雑音が聞こえて、今度は違う女性の声が聞こえた。
『・・・・・・・・・・・了解。・・・・・・・・・待機する。』
誰かは言わなくても分かるが、名前を言わないことにケンジはツッコミをするためにスイッチを押した。
『こちら、110。・・・・・・・・・・・おい、ケイト。ちゃんとやらなきゃ誰か分からねぇだろうが。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・言うの?』
『こちら、110。・・・・・・・・・・言え。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・でも、それするの、・・・・・・・・・・・・チーフのところだけだよね?』
『こちら、110。・・・・・・・・・・あのな、きちんとやるのは俺らの世界の軍隊だけで俺らがやってるのは真似事でしかねぇってのは言われなくても分かってるんだ。分かってるからこそ、きちんとやるんだろうが。分かったらやれ。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・レオナは何でやるの?』
ザッ。
『こちら、レオナです。マスターがしていることがたとえ真似事であろうとも、私はそれでもやりますよ?それが従者ですから。応答どうぞ。』
レオナ。お前、そう思ってても付き合ってくれるし、そう言ってもやってくれるってのは・・・・・・お前ってのは・・・・・・・・最高の女だよ!!!サンキューな!!!
レオナの心遣いにケンジは目に熱いモノを感じて目頭抑える。
・・・・・・・・・・抑えようとしても目を守る様にされている『アイ・ガード』に防がれて抑えられなかったが。
『・・・・・・・・・・・・はぁ~。・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・待機、了解。・・・・・・・・・・・・応答どうぞ。』
明らかに嫌だというような口調で応答の声が聞こえる。
『こちら、110。すまないな、ケイト。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・・チーフ。・・・・・・・・・これ、もっと簡単に出来ないの?・・・・・・・・・・・・・応答どうぞ。』
『こちら、110。う~ん、簡単にねぇ・・・・・・・・・・・。アレか?送れとかにするか?その方が楽だし。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・・もう何か面倒くさい。・・・・・・・・・いちいちこちら~、とか言わなくてもいいよね?・・・・・・・・・・使うの、私たちだけだし。・・・・・・・・・応答どうぞ。』
『こちら、110。まぁ、分かるっちゃ分かるし、そうするか?応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、レオナ。ですが、よろしいのですか、マスター?応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・やらないなら、ならなくていいよね?・・・・・・・・・・・・・まぁ、やりたいっていうチーフの気持ちは分からなくも・・・・・・・・・・・ごめん、分からないや。』
『こちら、110。そもそもやろうって言ったのは俺とか「旅団」の連中だけだしな。他の連中はこれを連絡用に作ろうとか使おうとか思わなかったみたいだが。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・そう言われてみると、そうだったかも。』
『こちら、110。そもそも俺だって名前略してるからな。使っても使わなくてもどっちでもいいぞ。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・そうは言ってもそれはチーフしか使わないし。』
『こちら、レオナ。そうですよ、マスター。私はそんなこと気にはしませんよ?応答どうぞ。』
『こちら、110。すまないな、レオナ。恩に着る。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、レオナ。クスッ。いえ、お気になさらず、マスター。応答どうぞ。』
『こちら、110。了解だ。・・・・・・・・・・・・・・各員警戒せよ。こちらでは未だ目視での視認は出来ず。110、通信終わり。』
そう言ってケンジは容器、通信機から手を放す。
今現在の配置からはケンジが一番前で、距離を開けてレオナとケイトの二人が後衛に就いており、三角形の形を組む陣形、三角戦闘陣形を組む形になっているため、一番前のケンジが視認できるか否かの連絡をしたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・その前に雑談めいたことを話していたのは首から下げた通信機が使えるかどうかの確認をしただけに過ぎないのだが、少し長く話していたのは否定しきれない。
これからどれだけの敵が来るかは予想は出来ないが、少なくても数千単位となればある程度の暇つぶしは出来るだろうとケンジは考える。
まぁ、先頭から一番後ろのモンスターを相手にして全部倒すまでの時間ではあろうとは推測できるのだが。
『・・・・・・・・・・数が多いだけのモンスターどもを倒すだけの簡単な作業にしては数が数千体ってのはなぁ・・・・・・・。せめて数万とか数十万とかそれだけの桁数があれば話は別だし、もうちっと装備も固めてくるんだが・・・・・・・・・・・・、数千じゃぁなぁ・・・・・・・・。』
ま、耐久値がどれだけあるかは分からんからとりあえずは持って来れるだけのものは揃えてきたが・・・・・・・・・・。
いくら暇だと言っていても仕方がないか、とケンジは思いレオナたち二人とは違うところに連絡を入れるために通信機のスイッチを『1』と書かれている場所から『2』と書かれている場所に切り替えた。
『ご機嫌どうかなお嬢さん?こちら、スパルタン110。聞こえたら返事をくれ。』
そう言って通信機から手を放して返事を待つ。
彼女が返事をくれるかは分からなかったが、ケンジはたぶん返事を返してくれると睨んでいた。
そのケンジの予想通り、通信機からレオナとケイトとは別の女性の声が聞こえた。
『こちら、コマンドタワー。おはようございます、シエラ110。よく眠れましたか?』
『こちら、110。おいおい、管制。連絡入れた第一声が皮肉か?・・・・・・・・・一応言っとくが、嫌味の類はレオナから耳にタコが出来る程聞いたから言わなくていいぜ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。それはすみません、110。しかし、こちらの存在を知っておられる方は貴方方、「旅団」の方以外いらっしゃらないので。』
『こちら、110。そりゃな。お前のことを知ってるヤツは「旅団の連中」以外だったら、知らねぇだろうさ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。それもそうですね。・・・・・・・・・・・それで、110。どうしました?』
やっと本題だ、とため息を吐きたくなる気持ちを抑えて、ケンジは通信相手に訊いてみた。
『こちら、110。そっちで確認できるだろうから、訊くんだが。なんかモンスターの群れとかって確認できるか?応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。どちらから見てか、御聞きしても?』
『こちら、110。「日常と閃撃の箱庭亭」の・・・・・・・・正面の両側からだ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。・・・・・・・・・・確認できませんね。観測用ブイでの確認、願っても?』
『こちら、110。ああ、打ち上げて構わねぇぞ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。了解しました。少々お待ちください。』
その連絡を聞いた直後、『日常と閃撃の箱庭亭』近くにある二つの『ガンズタレット』、それぞれ一つずつの気球が浮き上がる。
今ケンジがいる位置からでは目視での視認は出来ないが、気球の下には遠くを確認するために遠眼レンズが付けられているカメラが搭載されているためケンジから見えない距離でも確認ができるはずであった。
確認できたのか通信機から応答を知らせるノイズが聞こえる。
『こちら、コマンドタワー。確認しました。距離にして15km弱、モンスターの群れが確認できますね。』
『こちら、110。レールガンで気をこちらに向けられるか?』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。110。そう仰られるということは、「遠距離用レールガン」の使用を要請していると受け取ってもよろしいのですね?』
『こちら、110。それ以外にどう受け取るんだ?う~ん?言ってみろよ、ナターシャ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。・・・・・・・・・・・了解しました。それでは、出来る限り残す様に善処して発射します。』
『・・・・・・・・・・・・はっ?オイ待て、ナターシャ。誰が一匹残らず殲滅しろって言った!?こっちに来るように気を向かせろって言ってんだぞ、俺は。』
それを殲滅って誰も言ってねぇっての!!!
そう言おうとした途端に、二基の『ガンズタレット』の上部からそれぞれ一本ずつの紫電、計二本が放たれた。
あんの、バカ!!!とケンジは彼女に連絡を入れようとして通信機のスイッチを押したが、応答はなく、先程と同じく二本の紫電が放たれた。
ケンジの後方、レオナたちが身体を向けている(であろう)前方の方では衝撃を伴った旋風が巻き起こるのを肌(金属で覆われているため感じることは出来なかったが)で感じた。
『・・・・・・・・・あんの、バカがっ!!!誰が殲滅しろっつった!!!バカじゃねぇのか!!!?』
いつから人の言葉が理解できないヤツになりやがったんだ!!!
頭に熱が上がってくる感じを感じながら通信機のボタンを押した。
『おい、ナターシャ!!!!殲滅しろって誰が言った!!?俺たちがいる方に気を向かせろっていったんだぞ、俺は!!!!せっかく俺たちが少ないながらも潰してやろうと思ったのにそれを殲滅するとかてめぇ、ぶっ壊すぞ!!!?聞こえてんのか、てめぇ!!?』
ケンジが怒りに任せて通信機に言った直後、再び二つの紫電が走った。
あの野郎!!!と怒りに任せて連絡を入れようと思った直後、彼女から連絡が入った。
『こちら、コマンドタワー。どうかしましたか、110?』
『どうかしたかってお前な!!!いくらなんでも・・・・・・・・・・ッ!!!!』
殲滅することはないだろうが!!!、とケンジが言おうとした直前、ドドドドド!!!と地鳴りがケンジの耳に聞こえてきた。
『・・・・・・・・・・・・・・・・おい、ナターシャ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。どうかしました、110?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・今お前、殲滅するとかって言ってなかったか?』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。・・・・・・・・・言いましたかね?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・言った。一匹残らず殲滅します、とか言ってた。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はて?何か別の言葉と聞き間違えたのでは?そのようなこと、私は言っておりませんが。』
こいつ・・・・・・・・。
苛立ちを抑える様に深い呼吸をケンジは数回行う。
その間もドドドドド!!!、と正面の群れは向かって来ていた。
左手で大盾に連結されている『挽き肉製造機』の操縦桿を握り締め、通信機のダイヤルを『2』から『1』へと変更し、レオナとケイトの二人に連絡を入れるために通信ボタンを入れた。
『こちら、110。・・・・・・・・・・ちぃっとミスった。すまん。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、レオナです。お気になさらないでください、マスター。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・そうだよ。・・・・・・・・・・あんまり気にしちゃダメだよ、チーフ。』
気にするなと言う彼女たちの言葉にケンジは心の中で謝った。
こんなのがお前らの主で悪いな、と言う様に。
『こちら、110。・・・・・・・・・・・・・悪いな。感謝するぜ。・・・・・・・・群れの先頭が来てるんで通信切るぞ。・・・・・・・・・・・・武運を祈るぜ。110、通信終わり。』
そう言うや否や、ケンジはガトリングを正面に構え、グリップを握る。
ゆっくりと、銃身を回し始まるガトリングと目の前に映るモンスターの群れを見て、心の高ぶりを感じた。
敵は群れであり、レベルは自身と比べるまでもないたかが二桁の雑魚でしかないが、一人で群れを相手にするということに興奮を覚えていることにケンジは苦笑した。
多数の相手に少数で挑むなど無謀のことこの上ないが、ケンジたち、『メカノイスをキャラクターに設定しているプレイヤー』から言わせてもらえば、無謀であればあるほど面白いと思えてしまうのが事実だった。
そんなことをすれば死ぬと分かっていてするのか?
いや、そうではない。
死にはするだろうが、決して死ぬわけではない。
ただ誰も知らない場所に消えるだけだ。
それを理解しているからこそケンジは胸の高ぶりを感じた。
だからこそ、こう言えたのだ。
『かかってこい、襲うことしか出来ないモンスターども。だが、覚えておけ。ここから先は通行止めだ。俺が、「スパルタン」がてめぇら全部平らげてやる。』
そう言うと、左手のグリップを握り締めて大きく振った。
ヴォ、ヴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
轟音と共に弾丸が銃口から放たれる。
先頭を走る何体か頭部に直撃を受けて身体を止めることが出来ずに慣性の法則を受けたままの速度で数回転がる。その転がった影響を受けて何体か巻き添えを受けてまた何体かが転がり、さらに何体かが倒れ転がる。細かくは数えられないかわずか数秒の内に先頭を走る何十体かのモンスターが倒れた。
だが、それだけで群れの勢いは止まるわけがない。
ケンジの攻撃を受けた上で群れのモンスターは興奮した様で先頭を走るモンスターがケンジを逃がしてなるモノかという様に捉えた。
だが、ケンジもただ補足されるだけには終わるわけがなかった。
更に数十体を倒す勢いでグリップを握る手に力を込めた。
ヴォ、ヴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
更なるガトリングによる斉射が先頭を走る集団を捉え、その一斉射を受けて先頭を走る集団が消えた。
その度にケンジと群との距離が徐々に詰まっていく。
そうしている内に、ケンジの耳に甲高い警告音が耳に届いた。
直後、今まで弾を勢いよく吐き出していたガトリングが空回りをして弾を出さなくなった。
その様子を見てケンジは悟った。
熱がこもったか!!!
本来のケンジの戦闘スタイルであれば『杭打機』による近距離戦へと移るのだが、今回はそうは出来ない。
群れを相手にしている状態で突っ込むということは自殺行為と同じだと言ってもおかしくはない。
ならば、どうするか。
その疑問に応えるかのように右手に握った『アサルトライフル』の銃口を群れに向け、引き金を引き絞った。
タタタタタタタ!!!!
ガトリングランチャーより軽い印象が強い音を出しながら弾丸が連射される。
だが、その軽いとしか取れない音からは想像は出来ないが弾丸の一発、一発はモンスターの頭部を見事にとらえ小さな穴を穿っていく。
穿われた穴から血に似た細かいなにかを撒き散らしながら、また何体かのモンスターが倒されていく。
しかし、ライフルによる掃射もすぐに終わりを迎える。
カカカカカカ・・・・・・・ッ!!!
弾が出されずにただ空回り音を出すだけとなったライフルに目を落とし、ケンジは舌を打つ。
『チッ。これだからすぐに弾が無くなるライフルとか使いたくねぇんだよ・・・・・・・っ!!!だぁ~、クソッたれ!!!』
大きな声を出して怒りをぶつけるケンジであったが、すぐに思考を切り替えると誰かに聞かせる様に口に出した。
『弾が切れた!!!!・・・・・・・再装填頼む!!!!』
ケンジの言葉に応えるかのようマントの中から這い出てくる様に一つのロボットアームが手元に出てくる。
そのアームには弾がたんまりと入った弾倉が握らていた。
上々だ・・・・・・・・っ!!、と相手を褒めるように心の中でそう言うと、トリガー横に取り付けられている『弾倉排出ボタン』を右親指で強く押しながらライフルを勢いよく振った。
すると、弾が残っていない空となった弾倉が排出され、どこかへと飛んで行ってしまう。
弾倉がどこかへ飛んで行ってしまうがいちいち気にしている余裕は今のケンジにはなかった。弾倉を握ったロボットアームの手前に弾倉を吐き出して何もなくなったライフルを構えると、アームは弾倉が無くなった場所に新たな弾倉を差し込んだ。
差し込められるや否やケンジはライフルの横腹を軽く叩き、初弾を装填するために『チャージングハンドル』と呼ばれるレバーを手前に引いて、パッと離した。
すると、それまで感触がなかったトリガーに感触が戻ったのをケンジは感じた。
そうしている間に、モンスターの群れは更に距離を詰めているようにケンジは感じたが、彼は楽しそうだという様に笑った。
何故なら。
感触が戻っていなかった左のレバーにきちんとした感触が戻ったことが分かったからだった。
『・・・・・・・・まだだ。・・・・・・・・・・・・そう簡単にはまだ死ねねぇ、死なせちゃくれねぇ。』
何故か。
『俺が「メカノイスをロマンという言葉に心引かれて選んだ頭が狂ったプレイヤー」だからな・・・・・・・ッ!!!!』
死ねるかッ・・・・・・・・・・・・・・・!!!
死んでたまるかッ・・・・・・・・・・・・・・!!!!
『死ねるかッ、クソッたれどもがッ!!』
左腕のガトリングと右手に握ったのライフルのトリガーを握りつつ、彼は咆哮した。
しかし、たった一人で意志を持たない多数の群れにかなうはずもなく。
彼を群れが食い潰していった。
群れの地鳴りに交じってガトリングの重い音が聞こえたが、その音もすぐに掻き消えた。
彼から約一キロ離れた場所。
彼の後衛となるその場所に白き外套で身を包みフードを頭深くに被り、その時を彼女は静かに待つ。
自分が主と認めた彼が仕掛けたタレットによる防衛ラインと決めていた場所にある最後のタレットがモンスターの量に負け、爆炎を上げて砕けるのを彼女は見て全てを悟った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ。」
彼が仕掛けていたタレットが全基破壊されたということは、彼だけで全てを食らい潰すことが出来なかったことを意味する。それゆえに彼は突破されるであろう死のサインと決めて呼んでいたのだ。
それを理解していたからこそレオナは悟った。
彼が食らい潰すことなく、群れに食らい潰されたのだと。
「・・・・・・・・・・・大丈夫、うん大丈夫。あの人はスパルタンです。そう簡単にはお亡くなりにはなりません。」
何故なら。
「あの方はスパルタンなのですから。・・・・・・・・・・・・・・そうですよね、マスター・・・・・・・・・?」
レオナは信じる様に静かに呟く様に言った。
大丈夫だ。
彼が長い間、帰ってこなかった時にもしやと思ったりもした。
だが、彼は戻ってきたのだ。
だから、レオナも言うのだ。
「スパルタンは死にません。たとえ、死んだとしてもそれは死んだわけではなく、ただこの世界が終わるだけであって死ぬわけではありません。ただ消えるだけ、・・・・・・・・・・・ですよね、マスター・・・・・・・?」
だから、大丈夫だ。
レオナは心を落ち着かせるように深く息を吸い、息を吐く。
そして、思う。
今こうして彼の安否を気に掛けているのは、自分一人だけではない、と。
彼女と反対側の場所から熱を帯びた殺意がオーラとなって立ち上る感触をレオナは肌で感じた。
レオナが彼のことを気に掛けるように、ケイトもまた彼のことを想っているのだ。
気になっているのは自分だけじゃない、と。
レオナは必死に逸る気持ちを抑える。
安否は確かに気になる。
だが、レオナとケイトの二人が彼を助けるために動いてしまえば彼が考え編み出した対抗策の全てが水の泡となってしまう。
ケンジがモンスターの群れを食らい潰せないことは想定されていた。
左右が高い岩などで通行が制限される谷などに本当は誘導したかったらしいが、それは出来なかった。
どこから来るかも分からない上にどうやって来るのかも想像が出来なかったからだ。
誘いこもうにも、誘い込んだはいいが逆に出られなくなってしまえば元も子もない。
ならば、『ガンズタレット』がある平原に陣地を築いて、群れを引き入れた方がまだマシとしてケンジを先頭にした三角戦闘陣形に決まったのだが、後ろにいる身としては彼がどうなったのか気になってしまうのは当たり前な話であって・・・・・。
そんなことをレオナが思っていると、地鳴りが彼女の足元にも感じられた。
「・・・・・・・・・・・・っ。来ましたか。」
彼女がそう言った直後、数百メートル先の地面が破裂した。
突如として巻き起こった爆発にレオナは何が起きたのか理解が出来なかった。
そして、思い出した。
つい先日、なにかを地面に埋め込むように自分の主が作業をしていたことに。
起こるであろう、もしもの時に備えて、準備していた彼の気遣いにレオナはやはり自分ではあの人に敵わないな、と感じていた。
起こるかもしれないから、それに備えて圧倒的火力を持って応える。
臆病だと彼のことを笑う人間はいるだろう。
だが、彼女は笑わない。
臆病になって何が悪い。
死に対して恐怖を持ってそれに圧倒的な最大限の火力で応える。
それを誰が笑おうか。
否。
誰も笑えるはずがない。
死への恐怖は誰もが持つモノであり、彼を含んだ『旅団』と呼ばれた者たちとてそれは変わらない。
誰も死ぬということは怖い。
怖いからこそ、彼は。
いや。
スパルタンと呼ばれた者たちは恐怖に折れる心を奮い立たせるように言ったのだ。
『スパルタンは死なない。』
『ただ、消えるだけだ』、と。
巻き起こった砂煙が徐々に晴れていくことに合わせる様に、地鳴りが再び鳴り響く。
「・・・・・・・・・・っ。あれではやはり食い止めは出来ませんか。貴方の言う通りです。流石です、マスター。」
レオナは唇を強く噛み締める。
左右の薬指にワイヤーが繋がれたリングを引っかけ、右の親指にワイヤーが巻き付かれているリングを引っ掛ける。
レオナの後ろには彼が仕掛けた数基の『タレット』が、彼女が立っている方に向けられている。
距離はある。
彼曰くは射程は100mそこそこらしく、射程から距離があるレオナは捕捉されてはいない・・・・・と、思いたかった。
彼女の後方に『タレット』があるのも突破されることを想定してのことだった。
なので、これから来る群れ全てをレオナが相手をする必要はない。
・・・・・・・・・・・・する必要はないのだが、出来るだけは少なくした方が良いだろうと思っていた。
「それでは、一曲踊らせていただきますか。」
笑う様にレオナはそう言うと、左手を背中に回し右手を上に上げた。
そして、リングが引っ掛かっている親指を前に押した。
タァーン・・・・・・・。
反動を受けて後ろに弾かれる右手を振られるままにして左足を軸に軽く回った。彼女がそうして回っている内に先頭を走るモンスターの一体の頭部に小さい穴が空いて血を飛ばしながら転倒したのを彼女は回り終わってから確認するが、レオナにはゆっくりとしている時間はなかった。
背中に回した左手を前に出すと何もなかったその手には五本のナイフが握られており・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・っ。」
彼女はナイフを群れに対して投げた。
静かに、だが真っ直ぐに、一直線に勢いを殺すことなくナイフは飛んで行く。
そして・・・・・・・・。
静かに横一列にいた五体のモンスターの頭部にナイフが突き刺さり、五体のモンスターが転倒した。
彼女の反対側、ケイトがいると思われるところから爆発が巻き起こるのをレオナは肌で感じ、ケイトが接敵して交戦に入ったのだと彼女は悟った。
「交戦に入りましたか、ケイトは。・・・・・・・・・と言いましても、あまりこちらから群れに突っ込んでいくのは主義ではないのですが・・・・・・・・・・・。」
仕方がない、という様に呟くと彼女は静かに群れに向かって走っていくと跳び上がって先頭を走る一番掴みやすいモンスターの頭部の首元を握り締める掴むと右手を前に倒した。
その直後。
彼女の右手の袖からモンスターの首に向かって一つの刃が突き刺さった。
「グ、グォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・・。」
レオナの攻撃を受けてモンスターは断末魔の様な何かの声を出しながら絶命した。
走る勢いを失ったモンスターはただ地面に倒れるのみであったが、レオナは静かに跳んだ。
そして、また一体の背中に降り立つと何もない左手をモンスターの首元に当てるように置いて手首を前に折った。
先程と同じように白く光る刃がモンスターの首元に突き刺さり、モンスターが断末魔を上げる前に彼女は再び宙を舞う様にして跳び上がり、また一体、また一体とまるで踊りか何かを踊る様にして、静かに屠っていた。
レオナが先頭に入る数分前。
太陽の光を受けて短く切り揃えられた緑色に煌めく髪を風が吹くままに吹かれながらケイトはその時を静かに待っていた。
彼女の目の前にはまだ動いた『タレット』が群れに食われて爆散したのが目に映った。
「・・・・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・・・・突破された。」
・・・・・・・・・・・・・・チーフ、大丈夫かな?
自分の主たる彼のことをケイトは案じた。
だが、それはないかという様に頭を横に振った。
「・・・・・・・・・・・・・・チーフは大丈夫。」
何故なら。
「・・・・・・・・・・・・・・チーフはスパルタンで。・・・・・・・・・・スパルタンは死なないから。・・・・・・・・・・・そうだよね、チーフ?」
・・・・・・・・・・・・・・ん。
ケイトは自身を安心させるように静かに言う。
そして、ふと今現場にいる自分ではないもう一人の存在を思い出した。
「・・・・・・・・・・・・・・レオナ。・・・・・・・・・・・・・心配してるかな?」
多分しているだろうな、と思いながらケイトは呟いた。
彼女は彼女でケイトほどではないが、妙に気にする傾向がある。
彼が死なないと言っているのだから、大丈夫だろうとケイトは思った。
でなければ戻って来れるわけがないのだから。
だが、彼は生きて戻ってきた。
ならば、ケイトとしては心配することはない。
彼が大丈夫だと言えば、大丈夫なのだ。
心配してみたところでその心配は無駄になるだろうとケイトは考える。
・・・・・・・・・・・・・一応、言っておくのだがケイトとて心配はする。
だが、彼は普通の人間ではなく、残念ながら頭が可哀そうな人たちである。
そのような存在は耳にしたことはないのだが、彼が言うのだから彼が住んでいた世界にはいるのだろうと思うしかない。
たぶん。
きっと。
メイビー。
故にケイトは大丈夫なんだろうと思うことしか出来なかった。
そんなことを思っていると、こちらに向かって来ていた先頭を走るモンスター一列の足元が爆発した。
「・・・・・・・・・・・・・・チーフ。・・・・・・・・・・・・仕掛けとかなくて良かったのに。」
ケイトには癖なのかは分からないが、彼は念を入れすぎているように彼女には思えた。
それは彼がいつもしている装備を見ればすぐ分かることだった。
必要性が感じられない過剰火力。
何も知らない人から見れば必要性は感じられないだろうとケイトは思う。
だが、とケイトは同時に感じるのだ。
彼は起こり得るであろうもしや万が一といった状況に備えていつでも遊べるように用意をしているだけなのではないか。
遠い昔(ケイトにとってだが)、彼が言っていたことをふと思い出す。
『いいか、ケイト。有り得ないってのはな、必ず起こることなんだよ。・・・・・・だからこそいつでも遊べる準備だけは怠っちゃいけねぇ。死ぬ気はないが死ぬかもしれないっていうその時は必ず来る。今は来なくても、近いうちに必ずだ。・・・・・・・・・・・・・・来るもんなんだ。』
だから準備してるんだよ、と彼は困った様に苦笑しながら言っていた(気がする)のを思い出す。
そんなことを思っていてもモンスターの群れは足を止めることなく進んでいる。
・・・・・・・・・ケイトが相手にすることが面倒だからと言って目の前の集団を無視するのもいいかもしれない。
だが、自分たちの主が相手にしているのに自分が相手をしないというのはどうなのだろうとは思う。思ってしまう。
いちいち相手にしなくてもどうにかはなる。
自分たちがいなかったもしもに備えて作った『ガンズタレット』とケンジが呼ぶ無視しようにも存在が大きな建物に相手をしてもらえばいいのだから。
しかし、問題はそう簡単には片付かないのでケイトにとっては面倒だと余計に思ってしまうのであった。
なにか、こう、頑張った褒美の様なモノがあればケイトも、やってやれなくもない頑張りをすることも出来るのだが・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・面倒。」
ケイトはただ呟く。
そう。
ケイトにとっては面倒でしかない。
ケンジ達七人の『プレイヤー』が集まり、『旅団』と呼ばれた彼ら。
目的は趣味に近い遊びだったかもしれない。
けれども、彼らが作ったモノを有効活用しないというのは愚かとしか言いようがない。
そうとしか言い様がなく、手を貸す理由には全くならないし、命を懸ける必要もない。
だが、彼は手を貸そうとしていて。
死ぬ可能性がほぼなく一方的に蹂躙するだけの簡単な作業に身を投じている。
ケイトには面倒としか思えないが、同時に彼らしいと思っている自分がいることも事実であった。
誰も死なない様に努力する。
そのために、彼はお遊びと称し数多くの武具を作ってきた。
ケイトはレオナがどう思っているのかは知らない。
ケイトはレオナでないのは当たり前なのだから。
だとしても、思うことはあった。
彼には彼なりに思うことがあるのだろう、と。
それを言い訳にしても一つの街が作れるほどの量のケイト達には理解できない武器を作っていい理由にはならないのだが。
であれば。
「・・・・・・・・・・・頑張らないとね。」
彼が戦わなくてもいい様に。
彼が心配しなくてもいい様に。
そのためにはどうすればいいか。
そう思うと、ケイトはため息を吐いた。
「・・・・・・・・・・・面倒。」
彼が戦わなくていいと、そういう状況にするためには今この現状を打破しなければならないわけで。
そうなると、目の前に映るモンスターの群れを全て撃破する必要があるわけであり。
そう考えると、やはり面倒だと言うしかないのだが・・・・・・・。
その面倒な状態を打破しなければいけないのもまた事実であった。
自分の考えが繰り返されていることにケイトは気付くことはなかった。
しかし、ケイトにとってはそうなっていることに気付こうが気付くまいがどうでもいいことだった。
何故なら。
今のケイトの脳内には。
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・潰す。」
ただ目の前に映るモンスターたちを倒すことしか考えていなかったからだった。
すぅ~、とケイトは目を閉じて静かに深く息を吸い込む。
と同時に彼女の身体が青白いオーラに包まれる。
パチッ、と目を開くと同時に彼女は身体を前に出す様に大きく足を踏み出した。
瞬間。
まだ群れとの距離があったにも関わらず、ケイトの身体は群れの目の前にあった。
その事実に前にいたモンスターたちは驚いた反応をしようとする。
しかし、いちいちこんなことに反応していてはケイトは戦う前から疲れてしまう。
故に、ケイトは反応する代わりに静かに、だが衝撃を纏って。
「・・・・・・・・・・・ん。」
拳を打ち出した。
ゴウッ!!と豪風を纏った拳は爆発を伴って先頭を走っていた集団をかき消した。
「・・・・・・・・・・・次。」
彼女は次の目標を定めるために左右を見た。
左を走る何体かよりも右にいるの方が早い。
そう考え、右の拳を後ろに下げると、左の拳を右側に放った。
先程と同じく爆音と共に爆風が右の集団を襲う。
だが、その群れがどうなったかをいちいち確認している暇は彼女にはない。
左の拳を後ろに下げると、彼女は左側に一歩、足を踏み出しながら右拳を放った。
打ち放たれた拳は爆風を伴って集団に襲い掛かる。
しかし、先程と同じく、今のケイトには足を止めている暇はなかった。
なかったのだが、ふとそこで気が付いた。
ケイトの目の前、群れの後方ではなにかが暴れているらしく、モンスターたちはその何かから逃げる様にやや焦っている様にケイトには思えた。
自分たちよりもモンスターが怖いと感じるなにか。
ケイトはそのことに疑問を抱く。
目の前を走るモンスターよりも強いモンスターなどはこの近辺ではほとんど目にすることない。
目にすることがあったとしても、『ケンジを含めた七人』が単なる趣味で作った『ガンズタレット』の餌食になっているはずだ。
そのため、そうした危険となる脅威に捕捉されない様にするはずである。
それを知らないのはここらにはいない低レベルのモンスター位でしかない。
なのに、モンスターが慌てるとはどういうことか。
強いモンスターはいない。
だが、モンスターたちは慌てている様に見える。
それは何を示すのか。
そうケイトが思った時に懐かしさを感じさせる音が耳に届くと同時に白い装甲に身を包んで背にマントを付けているケンジ110の姿がケイトの目に映った。
「・・・・・・・・・・・ん。」
彼が生きているということに胸を降ろしながら、ケイトは拳を放ちながら彼がいる前へと駆けた。
『・・・・・・・・・・っ!!!!バカか、ケイト!!!射線に出てくるな!!!!!』
彼女に当たらない様にケンジは急いで銃口を逸らしながら、引き金を引く。
タタタタタッ!!!と軽い音が聞こえると同時に数体のモンスターが倒れる。
『っちぃ!!!弾切れだ!!!再装填頼む!!!!』
彼の言葉に合わせる様にしてマントの下からケイトからすればどの様に言うのかは分からないが金属の様な何かにしか見えない腕の様な何かに金色に煌めく金属の様な色をした人差し指ほどの大きさをしている細長いモノが入ったモノが入っている弾倉(ケンジ曰くにはそうらしい)が出てくるのと、彼が銃と呼ぶ何かから放り投げる様に黒い空の容器がどこかに飛ばされていくのはほぼ同時だった。
『ケイト!!!こっちはこれで全部か!?』
そう言いながら右手に掴んだ銃に弾倉を入れ込んで銃にあるレバーを引きながら左腕の大盾の先端部に取り付けられている黒光りする六つの細長い筒が回転をはじめ、六つの弾丸が放たれ、モンスターの身体を横に弾くのはほぼ同時だった。
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・ja。・・・・・・・・・・・私の残りはこれだけだよ?」
そう答えながら、ケイトは彼が身体を向けている方向とは逆側に身体を向けると拳を放った。
『ハッ、了解だ!!!!だったら、レオナの援護に回ってくれ!!!!』
「・・・・・・・・・・・チーフは?」
『あんまりにも数は少ないわ、あんまりにも弱いもんでまだまだ遊び足りねぇが、俺がこっちを相手する!!!レオナのヤツにはちぃっときついだろうからな・・・・・・・・・・頼めるか!?』
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・任された。」
へっ。
『了解した!!!ここは任せろ!!!!』
どこか不安に思う言葉を言う彼であったが、ケイトは彼が言うなら大丈夫か、と思うことにした。
やや不安に思いながらもケイトは彼を置いて、レオナが戦っている方向に足を向けたのだった。
ケイトがいるところにケンジが向かって行った頃。
レオナは。
「・・・・・・・・・・・っ!!!こうも数が多いと・・・・・・・っ!!!流石に嫌になりますねっ!!!!」
もう何十体になるだろうか分からなくなってきたころ背に飛び移っては首元を穿つというもはや何かしらの作業に似た行為に少し苛立ちを感じ始めていた。
彼女らの主がここから先には行かせられない死の境界線と定めた数多く設置されている『タレット』からはまだ距離はある。
距離はあるが、まだそこには到達してはいないというだけであと何分か、何秒あるのか、レオナは少し焦りを感じていた。
前衛を務める彼のいるところが突破されるのは、戦闘前からすでに分かっていたことではある。
こうして戦っていると、いつ後ろに到達するか、いつ『タレット』からの掃射を受けるのか、気が焦ってしまって落ち着けなくなってしまう。
「しかし、私が急がなければケイトが・・・・・・・・・・・っ。」
ふと、ケイトが今どうしているのか疑問に持った瞬間。
レオナが移ったモンスターを吹き飛ばす様に爆音と共に旋風が舞った。
「なっ!?」
何が起きたのか全く理解できなかったレオナだったが、なんとか爆風に巻き込まれる前にモンスターの背から飛び降りることが出来た。
今度は先程までしていた様にモンスターの背には飛び移らずに平らな地に、地面にレオナは足を着かせた。
レオナがそうして着地して顔を上げようとしたちょうどその時、背後で再び轟音と共に爆風が舞った。
その爆風が起こせるのはレオナが知っている中でただ一人だけであり、その人物はここにはいるはずがないことに疑問を抱きつつ彼女は振り返った。
すると、巻き起こった風に逆らうようにしてモンスターの群れに向かって突き進む短く切り揃えられた緑色の髪をした少女、いや、女性がいた。
「ケイトっ!?貴女、何をして・・・・・・・・・・っ!!」
「・・・・・・・・・・・・倒す。」
「へっ?」
ケイトはただ淡々とレオナの疑問に答えると、モンスターの群れを蹴散らして行ったのだった。
「・・・・・・・出来れば、説明してもらいたいものですが・・・・・・・。」
説明することがそんなに面倒でしょうか。
服に付いた埃を払う様に身体を叩きながらレオナは立ち上がり、ケイトがいたであろう方向に目を向けた。
だが、目を向けたその方にはいたはずのモンスターの姿はなかった。
その代わりに、マントを着けた白い鋼鉄に覆われた人物がゆっくりと歩いてくるのが目に映った。
それが誰の姿か、レオナはすぐに理解した。
かつて。
そう、かつて。
この世界に多くの人々がいて、彼ら、彼女らが絶望した時があった。
足を止め動くことが出来なくなった者たちに変わり、足を突き進めた者たちがいた。
彼らは『メカノイス』をキャラクターに選択していて最前線で戦うことを選んだ。
その先に絶望が待っていようとも彼らは足を突き進め、決して休めることはなかった。
彼らにとっては単なる暇つぶしであったのかもしれない。
だが、彼らではない普通の人たちからしてみれば、彼らは人々を救うために戦おうとした英雄にしか見えなかった。
故に、誰かが彼らのことをこう呼んだ。
絶対に死ぬことがない命知らずな連中、と。
『大丈夫か、レオナ?ケイトはともかくお前にはちょいと荷が重かったか。となると、新しい装備を考える必要があるか・・・・・・・・・・?』
レオナの近くまでその人物、『彼女が主だと認めるただ一人の人物』は何かを考える様にして下顎に手を置きながら彼女にそう訊いてきた。
「nein。いいえ、マスター。今回は私の不手際が原因です。新しい装備の検討はよろしいかと。」
『えっ。・・・・・・・・・そうは言うけど、お前ほとんど片づけられてないじゃん。』
「ja。出来ていませんが。」
『そうなると、今の装備だとちょっと厳しいよねって話にならね?』
「nein。なりません。・・・・・・・・・・・えぇ、なりませんとも。」
『・・・・・・・・・・え~、お兄さんは問題になると思うぜ~?』
「nein。なりません。」
『・・・・・・・・・・・・本当か?』
「ja。本当ですとも。今回はたまたま私のペース配分が間違っていただけです。」
レオナの言葉を聞いて彼は怪しむように彼女を見た。
『・・・・・・・・・・・・・強がってる?』
「私が、貴方に、ですか?・・・・・・・・・・・・nein。あり得ませんね。」
『・・・・・・・・・・・・・今、俺しかいないから、正直に言ってくれないかなぁ~?』
「ありません。」
そう答えた彼女に彼は諦めた様にやれやれと肩をすくめる。
『オーケー、オーケー。了解だ、了解。はいはい、分かった分かった。そういうことにしといてやる。』
チラッ。
『・・・・・・・・・・・・素直に言っていいのよ?大丈夫、お兄さん口堅いから。ユー、素直になっちゃえYO。』
彼の言葉を聞いてレオナはケンジの顔を見て訊いた。
「・・・・・・・・・・・素直になってよろしいので?」
『ん?ああ、いいぞ!!お兄さんに解決できることだったら言ってごらん!!!』
さぁ!!!この胸に言うんだ!!!!と両腕を広げる彼の腕の中にレオナは自分に対して素直になって飛び込んだ。
『・・・・・・・・・・・・ん?あれ、レオナ。ちょっといいかな?なんかお兄さんが考えてたのとなんか違うんだけど。』
彼はそう言うが、レオナの耳には届くことはなく、彼女はただ彼の胸の中で泣いていた。
その時、彼女は一人の従者ではなく、一人の少女として泣いていた。
「・・・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・・ずっと、ずっと、心配していたんですよ。・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・ずっと、ずっと戻って、・・・・・・・お戻りになられなかったから。・・・・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・貴方が行かれてからしばらくして貴方方を『スパルタン』と呼ぶ方々がいなくなって。・・・・・・・・・・だから、だから、私たちは貴方が仰っていた通り、この世界が終わってしまうのだと。・・・・・・・・・・・・ずっと、思っていたのです。」
ですがっ。
「ぐすっ。・・・・・・・・・・この世界は終わることなくまだ生きているではありませんかっ。・・・・・・・・・・・・・・だからっ。・・・・・・・・・・だからっ、貴方が死んでしまったとばかりっ。」
泣きながらそう言う彼女にそれは違うぞ、とケンジは口にする寸前で言葉にすることを抑え込む。
ずっと。
ずっと、彼女は心配していたのだ。
彼女の主たるただ一人のことを。
終わりが来るであろうこの世界がまだ生きていることで、ケンジが死んだかもしれないということを。
ケンジは彼女の両肩に手を置くと静かに言った。
『・・・・・・・・・・・死なないさ。死にはしない。』
「ですがっ。・・・・・・・・・・・ですがっ。」
ゆっくりと彼女を自分の身体から剥がし、彼女の顔を見た。
『何度も言って耳にタコが出来てると思うがな、レオナ。』
ああ。
『「メタノイスをキャラクターに選んだプレイヤー」は死なない。死なないんだ、分かるか?』
ぐすっ。
「なぜか・・・・・・・・・・御聞きしても?」
『そう訊かれると、俺としてはそういうものだからとしか言えないんだが・・・・・・・・・。』
・・・・・・・・・だがな?
『「俺たちプレイヤー」は死ぬことが出来ないんだ。人々の・・・・・・。』
いや。
『戦えない連中からモンスターを遠ざけるために振り回す矛とモンスターたちから戦えない連中を守る盾だから、な。』
そう言ったケンジの言葉にレオナは泣き顔で笑った。
「・・・・・・・・・・矛盾ですね、マスター?」
『ああ、そうだな。お前の言う通り正に矛盾ってヤツだ。』
だがな?
『そういう矛盾した存在がいなけりゃいけないんだわ、これがまた。面倒くさいったりゃありゃしねぇ。』
そう言いながら彼は彼女に笑う。
そうしていると、遠くの方で爆音が響いた。
「終わりましたね、マスター。」
彼女に答える様に彼は立ち上がる。
『いや・・・・・・・・・・・・・・・。』
爆音が聞こえてきた方を向きながら彼女に応えた。
『たった今、始まったばかりさ・・・・・・・・。』
そう。
たった今、終わったのではない。
これからだ。
彼らの物語は、これから始まるのだ。
『リシュエント帝国』(なる名前があるらしい集落)の城壁からかなりの距離がある位置での突破されるであろう防衛線の準備であった。
かなりの距離があると言っても『ガンズタレット』の有効射程範囲は2~3kmだとケンジは予測してのことであり、今陣地を構築している位置から言えばさらに2~3km離れてはいたのだが。
まぁ、予測してのことだと言っても『お前は作った側の人間だから分かるだろ。』と言われそうではあるのだが、悲しいかな、人という生き物は忘れる生き物であり、覚えていたとしてもだいたいのことしか覚えていない。
・・・・・・・・・・・・ケンジの手が入っておらずに『旅団』の手によって作られたモノであるなら尚更だと言えるのだが、そんなことを知ってるのはどこにもいなかった。
『・・・・・・・・・っと。こんなもんかな。』
手に取った銃器が取り付いている三脚を開き大地に立てると、群れが来るであろう平原を見る様に振り返る。
その平原には足元を生い茂るだけの短い雑草がただ生えているだけで、これから起こるであろうモンスターが群れを成して来るとは全く想像が出来なかった。
戦いの前の静けさというものは実に不思議なほどまでに音が聞こえてこない。
聞こえてこないのが普通だと言えるのだが、なにか妙なモノがここで起きそうな不吉な予感がケンジには感じられた。
『戦場の静けさってのは、どうも嫌なもんだぜ・・・・・・・。』
慣れたくはないのに慣れちまったな、と呟きつつ、目の前で鎮座するように置かれている箱と呼ぶには妙に頑丈そうに見える収納ボックスまで数歩歩き出し、蓋を手に取ると、蓋を開いてケンジは今回使い物になりそうだと思って持ってきた武器を取り出しては一つ一つ丁寧に外に置いていくという謎の動作をしていた。
こうやって外に出しておけばだいたいの置き場としては分かり、手元にあるモノが弾切れ等を起こした際にいちいち取り出さなくてはいかないという無駄な時間を過ごさなくてもいい様にと経験上の教訓から置いていたのだが。
・・・・・・・・・・・・・・・・正直なことを言えば、こうして置いてあった方が何かと便利というただそれだけの理由でしかないのは別の話。
最後に黒塗りにされた長い銃身を持つ『アサルトライフル』を手に取ると、蓋を閉め、その場を後にする。
ケンジは手元の『アサルトライフル』に弾がたんまりと中に入った弾倉を背中から取り出すと、トリガー下に弾倉を差し入れて横を叩いた。
カチッ。
きちんと入ったことが分かる音が聞こえると、胸元に吊るす様に下げられている多くの穴が空いてる黒い容器の横のボタンを押した。
『こちら、スパルタン110。設置は完了。後は待つだけだ。応答どうぞ。』
ケンジがそう言ってボタンを話すと、今度はザッ、と一瞬だけノイズが聞こえ、その容器から女性の声が聞こえた。
『こちら、レオナです。・・・・・・・・・・ja。了解です、マスター。待機します、応答どうぞ。』
レオナと言った女性からの通信が切れると、またザッ、と一瞬だけ雑音が聞こえて、今度は違う女性の声が聞こえた。
『・・・・・・・・・・・了解。・・・・・・・・・待機する。』
誰かは言わなくても分かるが、名前を言わないことにケンジはツッコミをするためにスイッチを押した。
『こちら、110。・・・・・・・・・・・おい、ケイト。ちゃんとやらなきゃ誰か分からねぇだろうが。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・言うの?』
『こちら、110。・・・・・・・・・・言え。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・でも、それするの、・・・・・・・・・・・・チーフのところだけだよね?』
『こちら、110。・・・・・・・・・・あのな、きちんとやるのは俺らの世界の軍隊だけで俺らがやってるのは真似事でしかねぇってのは言われなくても分かってるんだ。分かってるからこそ、きちんとやるんだろうが。分かったらやれ。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・レオナは何でやるの?』
ザッ。
『こちら、レオナです。マスターがしていることがたとえ真似事であろうとも、私はそれでもやりますよ?それが従者ですから。応答どうぞ。』
レオナ。お前、そう思ってても付き合ってくれるし、そう言ってもやってくれるってのは・・・・・・お前ってのは・・・・・・・・最高の女だよ!!!サンキューな!!!
レオナの心遣いにケンジは目に熱いモノを感じて目頭抑える。
・・・・・・・・・・抑えようとしても目を守る様にされている『アイ・ガード』に防がれて抑えられなかったが。
『・・・・・・・・・・・・はぁ~。・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・待機、了解。・・・・・・・・・・・・応答どうぞ。』
明らかに嫌だというような口調で応答の声が聞こえる。
『こちら、110。すまないな、ケイト。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・・チーフ。・・・・・・・・・これ、もっと簡単に出来ないの?・・・・・・・・・・・・・応答どうぞ。』
『こちら、110。う~ん、簡単にねぇ・・・・・・・・・・・。アレか?送れとかにするか?その方が楽だし。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・こちら、ケイト。・・・・・・・・・・もう何か面倒くさい。・・・・・・・・・いちいちこちら~、とか言わなくてもいいよね?・・・・・・・・・・使うの、私たちだけだし。・・・・・・・・・応答どうぞ。』
『こちら、110。まぁ、分かるっちゃ分かるし、そうするか?応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、レオナ。ですが、よろしいのですか、マスター?応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・やらないなら、ならなくていいよね?・・・・・・・・・・・・・まぁ、やりたいっていうチーフの気持ちは分からなくも・・・・・・・・・・・ごめん、分からないや。』
『こちら、110。そもそもやろうって言ったのは俺とか「旅団」の連中だけだしな。他の連中はこれを連絡用に作ろうとか使おうとか思わなかったみたいだが。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・そう言われてみると、そうだったかも。』
『こちら、110。そもそも俺だって名前略してるからな。使っても使わなくてもどっちでもいいぞ。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・そうは言ってもそれはチーフしか使わないし。』
『こちら、レオナ。そうですよ、マスター。私はそんなこと気にはしませんよ?応答どうぞ。』
『こちら、110。すまないな、レオナ。恩に着る。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、レオナ。クスッ。いえ、お気になさらず、マスター。応答どうぞ。』
『こちら、110。了解だ。・・・・・・・・・・・・・・各員警戒せよ。こちらでは未だ目視での視認は出来ず。110、通信終わり。』
そう言ってケンジは容器、通信機から手を放す。
今現在の配置からはケンジが一番前で、距離を開けてレオナとケイトの二人が後衛に就いており、三角形の形を組む陣形、三角戦闘陣形を組む形になっているため、一番前のケンジが視認できるか否かの連絡をしたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・その前に雑談めいたことを話していたのは首から下げた通信機が使えるかどうかの確認をしただけに過ぎないのだが、少し長く話していたのは否定しきれない。
これからどれだけの敵が来るかは予想は出来ないが、少なくても数千単位となればある程度の暇つぶしは出来るだろうとケンジは考える。
まぁ、先頭から一番後ろのモンスターを相手にして全部倒すまでの時間ではあろうとは推測できるのだが。
『・・・・・・・・・・数が多いだけのモンスターどもを倒すだけの簡単な作業にしては数が数千体ってのはなぁ・・・・・・・。せめて数万とか数十万とかそれだけの桁数があれば話は別だし、もうちっと装備も固めてくるんだが・・・・・・・・・・・・、数千じゃぁなぁ・・・・・・・・。』
ま、耐久値がどれだけあるかは分からんからとりあえずは持って来れるだけのものは揃えてきたが・・・・・・・・・・。
いくら暇だと言っていても仕方がないか、とケンジは思いレオナたち二人とは違うところに連絡を入れるために通信機のスイッチを『1』と書かれている場所から『2』と書かれている場所に切り替えた。
『ご機嫌どうかなお嬢さん?こちら、スパルタン110。聞こえたら返事をくれ。』
そう言って通信機から手を放して返事を待つ。
彼女が返事をくれるかは分からなかったが、ケンジはたぶん返事を返してくれると睨んでいた。
そのケンジの予想通り、通信機からレオナとケイトとは別の女性の声が聞こえた。
『こちら、コマンドタワー。おはようございます、シエラ110。よく眠れましたか?』
『こちら、110。おいおい、管制。連絡入れた第一声が皮肉か?・・・・・・・・・一応言っとくが、嫌味の類はレオナから耳にタコが出来る程聞いたから言わなくていいぜ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。それはすみません、110。しかし、こちらの存在を知っておられる方は貴方方、「旅団」の方以外いらっしゃらないので。』
『こちら、110。そりゃな。お前のことを知ってるヤツは「旅団の連中」以外だったら、知らねぇだろうさ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。それもそうですね。・・・・・・・・・・・それで、110。どうしました?』
やっと本題だ、とため息を吐きたくなる気持ちを抑えて、ケンジは通信相手に訊いてみた。
『こちら、110。そっちで確認できるだろうから、訊くんだが。なんかモンスターの群れとかって確認できるか?応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。どちらから見てか、御聞きしても?』
『こちら、110。「日常と閃撃の箱庭亭」の・・・・・・・・正面の両側からだ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。・・・・・・・・・・確認できませんね。観測用ブイでの確認、願っても?』
『こちら、110。ああ、打ち上げて構わねぇぞ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。了解しました。少々お待ちください。』
その連絡を聞いた直後、『日常と閃撃の箱庭亭』近くにある二つの『ガンズタレット』、それぞれ一つずつの気球が浮き上がる。
今ケンジがいる位置からでは目視での視認は出来ないが、気球の下には遠くを確認するために遠眼レンズが付けられているカメラが搭載されているためケンジから見えない距離でも確認ができるはずであった。
確認できたのか通信機から応答を知らせるノイズが聞こえる。
『こちら、コマンドタワー。確認しました。距離にして15km弱、モンスターの群れが確認できますね。』
『こちら、110。レールガンで気をこちらに向けられるか?』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。110。そう仰られるということは、「遠距離用レールガン」の使用を要請していると受け取ってもよろしいのですね?』
『こちら、110。それ以外にどう受け取るんだ?う~ん?言ってみろよ、ナターシャ。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。・・・・・・・・・・・了解しました。それでは、出来る限り残す様に善処して発射します。』
『・・・・・・・・・・・・はっ?オイ待て、ナターシャ。誰が一匹残らず殲滅しろって言った!?こっちに来るように気を向かせろって言ってんだぞ、俺は。』
それを殲滅って誰も言ってねぇっての!!!
そう言おうとした途端に、二基の『ガンズタレット』の上部からそれぞれ一本ずつの紫電、計二本が放たれた。
あんの、バカ!!!とケンジは彼女に連絡を入れようとして通信機のスイッチを押したが、応答はなく、先程と同じく二本の紫電が放たれた。
ケンジの後方、レオナたちが身体を向けている(であろう)前方の方では衝撃を伴った旋風が巻き起こるのを肌(金属で覆われているため感じることは出来なかったが)で感じた。
『・・・・・・・・・あんの、バカがっ!!!誰が殲滅しろっつった!!!バカじゃねぇのか!!!?』
いつから人の言葉が理解できないヤツになりやがったんだ!!!
頭に熱が上がってくる感じを感じながら通信機のボタンを押した。
『おい、ナターシャ!!!!殲滅しろって誰が言った!!?俺たちがいる方に気を向かせろっていったんだぞ、俺は!!!!せっかく俺たちが少ないながらも潰してやろうと思ったのにそれを殲滅するとかてめぇ、ぶっ壊すぞ!!!?聞こえてんのか、てめぇ!!?』
ケンジが怒りに任せて通信機に言った直後、再び二つの紫電が走った。
あの野郎!!!と怒りに任せて連絡を入れようと思った直後、彼女から連絡が入った。
『こちら、コマンドタワー。どうかしましたか、110?』
『どうかしたかってお前な!!!いくらなんでも・・・・・・・・・・ッ!!!!』
殲滅することはないだろうが!!!、とケンジが言おうとした直前、ドドドドド!!!と地鳴りがケンジの耳に聞こえてきた。
『・・・・・・・・・・・・・・・・おい、ナターシャ。』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。どうかしました、110?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・今お前、殲滅するとかって言ってなかったか?』
ザッ。
『こちら、コマンドタワー。・・・・・・・・・言いましたかね?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・言った。一匹残らず殲滅します、とか言ってた。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はて?何か別の言葉と聞き間違えたのでは?そのようなこと、私は言っておりませんが。』
こいつ・・・・・・・・。
苛立ちを抑える様に深い呼吸をケンジは数回行う。
その間もドドドドド!!!、と正面の群れは向かって来ていた。
左手で大盾に連結されている『挽き肉製造機』の操縦桿を握り締め、通信機のダイヤルを『2』から『1』へと変更し、レオナとケイトの二人に連絡を入れるために通信ボタンを入れた。
『こちら、110。・・・・・・・・・・ちぃっとミスった。すまん。応答どうぞ。』
ザッ。
『こちら、レオナです。お気になさらないでください、マスター。応答どうぞ。』
ザッ。
『・・・・・・・・・・・そうだよ。・・・・・・・・・・あんまり気にしちゃダメだよ、チーフ。』
気にするなと言う彼女たちの言葉にケンジは心の中で謝った。
こんなのがお前らの主で悪いな、と言う様に。
『こちら、110。・・・・・・・・・・・・・悪いな。感謝するぜ。・・・・・・・・群れの先頭が来てるんで通信切るぞ。・・・・・・・・・・・・武運を祈るぜ。110、通信終わり。』
そう言うや否や、ケンジはガトリングを正面に構え、グリップを握る。
ゆっくりと、銃身を回し始まるガトリングと目の前に映るモンスターの群れを見て、心の高ぶりを感じた。
敵は群れであり、レベルは自身と比べるまでもないたかが二桁の雑魚でしかないが、一人で群れを相手にするということに興奮を覚えていることにケンジは苦笑した。
多数の相手に少数で挑むなど無謀のことこの上ないが、ケンジたち、『メカノイスをキャラクターに設定しているプレイヤー』から言わせてもらえば、無謀であればあるほど面白いと思えてしまうのが事実だった。
そんなことをすれば死ぬと分かっていてするのか?
いや、そうではない。
死にはするだろうが、決して死ぬわけではない。
ただ誰も知らない場所に消えるだけだ。
それを理解しているからこそケンジは胸の高ぶりを感じた。
だからこそ、こう言えたのだ。
『かかってこい、襲うことしか出来ないモンスターども。だが、覚えておけ。ここから先は通行止めだ。俺が、「スパルタン」がてめぇら全部平らげてやる。』
そう言うと、左手のグリップを握り締めて大きく振った。
ヴォ、ヴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!
轟音と共に弾丸が銃口から放たれる。
先頭を走る何体か頭部に直撃を受けて身体を止めることが出来ずに慣性の法則を受けたままの速度で数回転がる。その転がった影響を受けて何体か巻き添えを受けてまた何体かが転がり、さらに何体かが倒れ転がる。細かくは数えられないかわずか数秒の内に先頭を走る何十体かのモンスターが倒れた。
だが、それだけで群れの勢いは止まるわけがない。
ケンジの攻撃を受けた上で群れのモンスターは興奮した様で先頭を走るモンスターがケンジを逃がしてなるモノかという様に捉えた。
だが、ケンジもただ補足されるだけには終わるわけがなかった。
更に数十体を倒す勢いでグリップを握る手に力を込めた。
ヴォ、ヴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
更なるガトリングによる斉射が先頭を走る集団を捉え、その一斉射を受けて先頭を走る集団が消えた。
その度にケンジと群との距離が徐々に詰まっていく。
そうしている内に、ケンジの耳に甲高い警告音が耳に届いた。
直後、今まで弾を勢いよく吐き出していたガトリングが空回りをして弾を出さなくなった。
その様子を見てケンジは悟った。
熱がこもったか!!!
本来のケンジの戦闘スタイルであれば『杭打機』による近距離戦へと移るのだが、今回はそうは出来ない。
群れを相手にしている状態で突っ込むということは自殺行為と同じだと言ってもおかしくはない。
ならば、どうするか。
その疑問に応えるかのように右手に握った『アサルトライフル』の銃口を群れに向け、引き金を引き絞った。
タタタタタタタ!!!!
ガトリングランチャーより軽い印象が強い音を出しながら弾丸が連射される。
だが、その軽いとしか取れない音からは想像は出来ないが弾丸の一発、一発はモンスターの頭部を見事にとらえ小さな穴を穿っていく。
穿われた穴から血に似た細かいなにかを撒き散らしながら、また何体かのモンスターが倒されていく。
しかし、ライフルによる掃射もすぐに終わりを迎える。
カカカカカカ・・・・・・・ッ!!!
弾が出されずにただ空回り音を出すだけとなったライフルに目を落とし、ケンジは舌を打つ。
『チッ。これだからすぐに弾が無くなるライフルとか使いたくねぇんだよ・・・・・・・っ!!!だぁ~、クソッたれ!!!』
大きな声を出して怒りをぶつけるケンジであったが、すぐに思考を切り替えると誰かに聞かせる様に口に出した。
『弾が切れた!!!!・・・・・・・再装填頼む!!!!』
ケンジの言葉に応えるかのようマントの中から這い出てくる様に一つのロボットアームが手元に出てくる。
そのアームには弾がたんまりと入った弾倉が握らていた。
上々だ・・・・・・・・っ!!、と相手を褒めるように心の中でそう言うと、トリガー横に取り付けられている『弾倉排出ボタン』を右親指で強く押しながらライフルを勢いよく振った。
すると、弾が残っていない空となった弾倉が排出され、どこかへと飛んで行ってしまう。
弾倉がどこかへ飛んで行ってしまうがいちいち気にしている余裕は今のケンジにはなかった。弾倉を握ったロボットアームの手前に弾倉を吐き出して何もなくなったライフルを構えると、アームは弾倉が無くなった場所に新たな弾倉を差し込んだ。
差し込められるや否やケンジはライフルの横腹を軽く叩き、初弾を装填するために『チャージングハンドル』と呼ばれるレバーを手前に引いて、パッと離した。
すると、それまで感触がなかったトリガーに感触が戻ったのをケンジは感じた。
そうしている間に、モンスターの群れは更に距離を詰めているようにケンジは感じたが、彼は楽しそうだという様に笑った。
何故なら。
感触が戻っていなかった左のレバーにきちんとした感触が戻ったことが分かったからだった。
『・・・・・・・・まだだ。・・・・・・・・・・・・そう簡単にはまだ死ねねぇ、死なせちゃくれねぇ。』
何故か。
『俺が「メカノイスをロマンという言葉に心引かれて選んだ頭が狂ったプレイヤー」だからな・・・・・・・ッ!!!!』
死ねるかッ・・・・・・・・・・・・・・・!!!
死んでたまるかッ・・・・・・・・・・・・・・!!!!
『死ねるかッ、クソッたれどもがッ!!』
左腕のガトリングと右手に握ったのライフルのトリガーを握りつつ、彼は咆哮した。
しかし、たった一人で意志を持たない多数の群れにかなうはずもなく。
彼を群れが食い潰していった。
群れの地鳴りに交じってガトリングの重い音が聞こえたが、その音もすぐに掻き消えた。
彼から約一キロ離れた場所。
彼の後衛となるその場所に白き外套で身を包みフードを頭深くに被り、その時を彼女は静かに待つ。
自分が主と認めた彼が仕掛けたタレットによる防衛ラインと決めていた場所にある最後のタレットがモンスターの量に負け、爆炎を上げて砕けるのを彼女は見て全てを悟った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ。」
彼が仕掛けていたタレットが全基破壊されたということは、彼だけで全てを食らい潰すことが出来なかったことを意味する。それゆえに彼は突破されるであろう死のサインと決めて呼んでいたのだ。
それを理解していたからこそレオナは悟った。
彼が食らい潰すことなく、群れに食らい潰されたのだと。
「・・・・・・・・・・・大丈夫、うん大丈夫。あの人はスパルタンです。そう簡単にはお亡くなりにはなりません。」
何故なら。
「あの方はスパルタンなのですから。・・・・・・・・・・・・・・そうですよね、マスター・・・・・・・・・?」
レオナは信じる様に静かに呟く様に言った。
大丈夫だ。
彼が長い間、帰ってこなかった時にもしやと思ったりもした。
だが、彼は戻ってきたのだ。
だから、レオナも言うのだ。
「スパルタンは死にません。たとえ、死んだとしてもそれは死んだわけではなく、ただこの世界が終わるだけであって死ぬわけではありません。ただ消えるだけ、・・・・・・・・・・・ですよね、マスター・・・・・・・?」
だから、大丈夫だ。
レオナは心を落ち着かせるように深く息を吸い、息を吐く。
そして、思う。
今こうして彼の安否を気に掛けているのは、自分一人だけではない、と。
彼女と反対側の場所から熱を帯びた殺意がオーラとなって立ち上る感触をレオナは肌で感じた。
レオナが彼のことを気に掛けるように、ケイトもまた彼のことを想っているのだ。
気になっているのは自分だけじゃない、と。
レオナは必死に逸る気持ちを抑える。
安否は確かに気になる。
だが、レオナとケイトの二人が彼を助けるために動いてしまえば彼が考え編み出した対抗策の全てが水の泡となってしまう。
ケンジがモンスターの群れを食らい潰せないことは想定されていた。
左右が高い岩などで通行が制限される谷などに本当は誘導したかったらしいが、それは出来なかった。
どこから来るかも分からない上にどうやって来るのかも想像が出来なかったからだ。
誘いこもうにも、誘い込んだはいいが逆に出られなくなってしまえば元も子もない。
ならば、『ガンズタレット』がある平原に陣地を築いて、群れを引き入れた方がまだマシとしてケンジを先頭にした三角戦闘陣形に決まったのだが、後ろにいる身としては彼がどうなったのか気になってしまうのは当たり前な話であって・・・・・。
そんなことをレオナが思っていると、地鳴りが彼女の足元にも感じられた。
「・・・・・・・・・・・・っ。来ましたか。」
彼女がそう言った直後、数百メートル先の地面が破裂した。
突如として巻き起こった爆発にレオナは何が起きたのか理解が出来なかった。
そして、思い出した。
つい先日、なにかを地面に埋め込むように自分の主が作業をしていたことに。
起こるであろう、もしもの時に備えて、準備していた彼の気遣いにレオナはやはり自分ではあの人に敵わないな、と感じていた。
起こるかもしれないから、それに備えて圧倒的火力を持って応える。
臆病だと彼のことを笑う人間はいるだろう。
だが、彼女は笑わない。
臆病になって何が悪い。
死に対して恐怖を持ってそれに圧倒的な最大限の火力で応える。
それを誰が笑おうか。
否。
誰も笑えるはずがない。
死への恐怖は誰もが持つモノであり、彼を含んだ『旅団』と呼ばれた者たちとてそれは変わらない。
誰も死ぬということは怖い。
怖いからこそ、彼は。
いや。
スパルタンと呼ばれた者たちは恐怖に折れる心を奮い立たせるように言ったのだ。
『スパルタンは死なない。』
『ただ、消えるだけだ』、と。
巻き起こった砂煙が徐々に晴れていくことに合わせる様に、地鳴りが再び鳴り響く。
「・・・・・・・・・・っ。あれではやはり食い止めは出来ませんか。貴方の言う通りです。流石です、マスター。」
レオナは唇を強く噛み締める。
左右の薬指にワイヤーが繋がれたリングを引っかけ、右の親指にワイヤーが巻き付かれているリングを引っ掛ける。
レオナの後ろには彼が仕掛けた数基の『タレット』が、彼女が立っている方に向けられている。
距離はある。
彼曰くは射程は100mそこそこらしく、射程から距離があるレオナは捕捉されてはいない・・・・・と、思いたかった。
彼女の後方に『タレット』があるのも突破されることを想定してのことだった。
なので、これから来る群れ全てをレオナが相手をする必要はない。
・・・・・・・・・・・・する必要はないのだが、出来るだけは少なくした方が良いだろうと思っていた。
「それでは、一曲踊らせていただきますか。」
笑う様にレオナはそう言うと、左手を背中に回し右手を上に上げた。
そして、リングが引っ掛かっている親指を前に押した。
タァーン・・・・・・・。
反動を受けて後ろに弾かれる右手を振られるままにして左足を軸に軽く回った。彼女がそうして回っている内に先頭を走るモンスターの一体の頭部に小さい穴が空いて血を飛ばしながら転倒したのを彼女は回り終わってから確認するが、レオナにはゆっくりとしている時間はなかった。
背中に回した左手を前に出すと何もなかったその手には五本のナイフが握られており・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・っ。」
彼女はナイフを群れに対して投げた。
静かに、だが真っ直ぐに、一直線に勢いを殺すことなくナイフは飛んで行く。
そして・・・・・・・・。
静かに横一列にいた五体のモンスターの頭部にナイフが突き刺さり、五体のモンスターが転倒した。
彼女の反対側、ケイトがいると思われるところから爆発が巻き起こるのをレオナは肌で感じ、ケイトが接敵して交戦に入ったのだと彼女は悟った。
「交戦に入りましたか、ケイトは。・・・・・・・・・と言いましても、あまりこちらから群れに突っ込んでいくのは主義ではないのですが・・・・・・・・・・・。」
仕方がない、という様に呟くと彼女は静かに群れに向かって走っていくと跳び上がって先頭を走る一番掴みやすいモンスターの頭部の首元を握り締める掴むと右手を前に倒した。
その直後。
彼女の右手の袖からモンスターの首に向かって一つの刃が突き刺さった。
「グ、グォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・・。」
レオナの攻撃を受けてモンスターは断末魔の様な何かの声を出しながら絶命した。
走る勢いを失ったモンスターはただ地面に倒れるのみであったが、レオナは静かに跳んだ。
そして、また一体の背中に降り立つと何もない左手をモンスターの首元に当てるように置いて手首を前に折った。
先程と同じように白く光る刃がモンスターの首元に突き刺さり、モンスターが断末魔を上げる前に彼女は再び宙を舞う様にして跳び上がり、また一体、また一体とまるで踊りか何かを踊る様にして、静かに屠っていた。
レオナが先頭に入る数分前。
太陽の光を受けて短く切り揃えられた緑色に煌めく髪を風が吹くままに吹かれながらケイトはその時を静かに待っていた。
彼女の目の前にはまだ動いた『タレット』が群れに食われて爆散したのが目に映った。
「・・・・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・・・・突破された。」
・・・・・・・・・・・・・・チーフ、大丈夫かな?
自分の主たる彼のことをケイトは案じた。
だが、それはないかという様に頭を横に振った。
「・・・・・・・・・・・・・・チーフは大丈夫。」
何故なら。
「・・・・・・・・・・・・・・チーフはスパルタンで。・・・・・・・・・・スパルタンは死なないから。・・・・・・・・・・・そうだよね、チーフ?」
・・・・・・・・・・・・・・ん。
ケイトは自身を安心させるように静かに言う。
そして、ふと今現場にいる自分ではないもう一人の存在を思い出した。
「・・・・・・・・・・・・・・レオナ。・・・・・・・・・・・・・心配してるかな?」
多分しているだろうな、と思いながらケイトは呟いた。
彼女は彼女でケイトほどではないが、妙に気にする傾向がある。
彼が死なないと言っているのだから、大丈夫だろうとケイトは思った。
でなければ戻って来れるわけがないのだから。
だが、彼は生きて戻ってきた。
ならば、ケイトとしては心配することはない。
彼が大丈夫だと言えば、大丈夫なのだ。
心配してみたところでその心配は無駄になるだろうとケイトは考える。
・・・・・・・・・・・・・一応、言っておくのだがケイトとて心配はする。
だが、彼は普通の人間ではなく、残念ながら頭が可哀そうな人たちである。
そのような存在は耳にしたことはないのだが、彼が言うのだから彼が住んでいた世界にはいるのだろうと思うしかない。
たぶん。
きっと。
メイビー。
故にケイトは大丈夫なんだろうと思うことしか出来なかった。
そんなことを思っていると、こちらに向かって来ていた先頭を走るモンスター一列の足元が爆発した。
「・・・・・・・・・・・・・・チーフ。・・・・・・・・・・・・仕掛けとかなくて良かったのに。」
ケイトには癖なのかは分からないが、彼は念を入れすぎているように彼女には思えた。
それは彼がいつもしている装備を見ればすぐ分かることだった。
必要性が感じられない過剰火力。
何も知らない人から見れば必要性は感じられないだろうとケイトは思う。
だが、とケイトは同時に感じるのだ。
彼は起こり得るであろうもしや万が一といった状況に備えていつでも遊べるように用意をしているだけなのではないか。
遠い昔(ケイトにとってだが)、彼が言っていたことをふと思い出す。
『いいか、ケイト。有り得ないってのはな、必ず起こることなんだよ。・・・・・・だからこそいつでも遊べる準備だけは怠っちゃいけねぇ。死ぬ気はないが死ぬかもしれないっていうその時は必ず来る。今は来なくても、近いうちに必ずだ。・・・・・・・・・・・・・・来るもんなんだ。』
だから準備してるんだよ、と彼は困った様に苦笑しながら言っていた(気がする)のを思い出す。
そんなことを思っていてもモンスターの群れは足を止めることなく進んでいる。
・・・・・・・・・ケイトが相手にすることが面倒だからと言って目の前の集団を無視するのもいいかもしれない。
だが、自分たちの主が相手にしているのに自分が相手をしないというのはどうなのだろうとは思う。思ってしまう。
いちいち相手にしなくてもどうにかはなる。
自分たちがいなかったもしもに備えて作った『ガンズタレット』とケンジが呼ぶ無視しようにも存在が大きな建物に相手をしてもらえばいいのだから。
しかし、問題はそう簡単には片付かないのでケイトにとっては面倒だと余計に思ってしまうのであった。
なにか、こう、頑張った褒美の様なモノがあればケイトも、やってやれなくもない頑張りをすることも出来るのだが・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・面倒。」
ケイトはただ呟く。
そう。
ケイトにとっては面倒でしかない。
ケンジ達七人の『プレイヤー』が集まり、『旅団』と呼ばれた彼ら。
目的は趣味に近い遊びだったかもしれない。
けれども、彼らが作ったモノを有効活用しないというのは愚かとしか言いようがない。
そうとしか言い様がなく、手を貸す理由には全くならないし、命を懸ける必要もない。
だが、彼は手を貸そうとしていて。
死ぬ可能性がほぼなく一方的に蹂躙するだけの簡単な作業に身を投じている。
ケイトには面倒としか思えないが、同時に彼らしいと思っている自分がいることも事実であった。
誰も死なない様に努力する。
そのために、彼はお遊びと称し数多くの武具を作ってきた。
ケイトはレオナがどう思っているのかは知らない。
ケイトはレオナでないのは当たり前なのだから。
だとしても、思うことはあった。
彼には彼なりに思うことがあるのだろう、と。
それを言い訳にしても一つの街が作れるほどの量のケイト達には理解できない武器を作っていい理由にはならないのだが。
であれば。
「・・・・・・・・・・・頑張らないとね。」
彼が戦わなくてもいい様に。
彼が心配しなくてもいい様に。
そのためにはどうすればいいか。
そう思うと、ケイトはため息を吐いた。
「・・・・・・・・・・・面倒。」
彼が戦わなくていいと、そういう状況にするためには今この現状を打破しなければならないわけで。
そうなると、目の前に映るモンスターの群れを全て撃破する必要があるわけであり。
そう考えると、やはり面倒だと言うしかないのだが・・・・・・・。
その面倒な状態を打破しなければいけないのもまた事実であった。
自分の考えが繰り返されていることにケイトは気付くことはなかった。
しかし、ケイトにとってはそうなっていることに気付こうが気付くまいがどうでもいいことだった。
何故なら。
今のケイトの脳内には。
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・潰す。」
ただ目の前に映るモンスターたちを倒すことしか考えていなかったからだった。
すぅ~、とケイトは目を閉じて静かに深く息を吸い込む。
と同時に彼女の身体が青白いオーラに包まれる。
パチッ、と目を開くと同時に彼女は身体を前に出す様に大きく足を踏み出した。
瞬間。
まだ群れとの距離があったにも関わらず、ケイトの身体は群れの目の前にあった。
その事実に前にいたモンスターたちは驚いた反応をしようとする。
しかし、いちいちこんなことに反応していてはケイトは戦う前から疲れてしまう。
故に、ケイトは反応する代わりに静かに、だが衝撃を纏って。
「・・・・・・・・・・・ん。」
拳を打ち出した。
ゴウッ!!と豪風を纏った拳は爆発を伴って先頭を走っていた集団をかき消した。
「・・・・・・・・・・・次。」
彼女は次の目標を定めるために左右を見た。
左を走る何体かよりも右にいるの方が早い。
そう考え、右の拳を後ろに下げると、左の拳を右側に放った。
先程と同じく爆音と共に爆風が右の集団を襲う。
だが、その群れがどうなったかをいちいち確認している暇は彼女にはない。
左の拳を後ろに下げると、彼女は左側に一歩、足を踏み出しながら右拳を放った。
打ち放たれた拳は爆風を伴って集団に襲い掛かる。
しかし、先程と同じく、今のケイトには足を止めている暇はなかった。
なかったのだが、ふとそこで気が付いた。
ケイトの目の前、群れの後方ではなにかが暴れているらしく、モンスターたちはその何かから逃げる様にやや焦っている様にケイトには思えた。
自分たちよりもモンスターが怖いと感じるなにか。
ケイトはそのことに疑問を抱く。
目の前を走るモンスターよりも強いモンスターなどはこの近辺ではほとんど目にすることない。
目にすることがあったとしても、『ケンジを含めた七人』が単なる趣味で作った『ガンズタレット』の餌食になっているはずだ。
そのため、そうした危険となる脅威に捕捉されない様にするはずである。
それを知らないのはここらにはいない低レベルのモンスター位でしかない。
なのに、モンスターが慌てるとはどういうことか。
強いモンスターはいない。
だが、モンスターたちは慌てている様に見える。
それは何を示すのか。
そうケイトが思った時に懐かしさを感じさせる音が耳に届くと同時に白い装甲に身を包んで背にマントを付けているケンジ110の姿がケイトの目に映った。
「・・・・・・・・・・・ん。」
彼が生きているということに胸を降ろしながら、ケイトは拳を放ちながら彼がいる前へと駆けた。
『・・・・・・・・・・っ!!!!バカか、ケイト!!!射線に出てくるな!!!!!』
彼女に当たらない様にケンジは急いで銃口を逸らしながら、引き金を引く。
タタタタタッ!!!と軽い音が聞こえると同時に数体のモンスターが倒れる。
『っちぃ!!!弾切れだ!!!再装填頼む!!!!』
彼の言葉に合わせる様にしてマントの下からケイトからすればどの様に言うのかは分からないが金属の様な何かにしか見えない腕の様な何かに金色に煌めく金属の様な色をした人差し指ほどの大きさをしている細長いモノが入ったモノが入っている弾倉(ケンジ曰くにはそうらしい)が出てくるのと、彼が銃と呼ぶ何かから放り投げる様に黒い空の容器がどこかに飛ばされていくのはほぼ同時だった。
『ケイト!!!こっちはこれで全部か!?』
そう言いながら右手に掴んだ銃に弾倉を入れ込んで銃にあるレバーを引きながら左腕の大盾の先端部に取り付けられている黒光りする六つの細長い筒が回転をはじめ、六つの弾丸が放たれ、モンスターの身体を横に弾くのはほぼ同時だった。
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・ja。・・・・・・・・・・・私の残りはこれだけだよ?」
そう答えながら、ケイトは彼が身体を向けている方向とは逆側に身体を向けると拳を放った。
『ハッ、了解だ!!!!だったら、レオナの援護に回ってくれ!!!!』
「・・・・・・・・・・・チーフは?」
『あんまりにも数は少ないわ、あんまりにも弱いもんでまだまだ遊び足りねぇが、俺がこっちを相手する!!!レオナのヤツにはちぃっときついだろうからな・・・・・・・・・・頼めるか!?』
「・・・・・・・・・・・ん。・・・・・・・・・・任された。」
へっ。
『了解した!!!ここは任せろ!!!!』
どこか不安に思う言葉を言う彼であったが、ケイトは彼が言うなら大丈夫か、と思うことにした。
やや不安に思いながらもケイトは彼を置いて、レオナが戦っている方向に足を向けたのだった。
ケイトがいるところにケンジが向かって行った頃。
レオナは。
「・・・・・・・・・・・っ!!!こうも数が多いと・・・・・・・っ!!!流石に嫌になりますねっ!!!!」
もう何十体になるだろうか分からなくなってきたころ背に飛び移っては首元を穿つというもはや何かしらの作業に似た行為に少し苛立ちを感じ始めていた。
彼女らの主がここから先には行かせられない死の境界線と定めた数多く設置されている『タレット』からはまだ距離はある。
距離はあるが、まだそこには到達してはいないというだけであと何分か、何秒あるのか、レオナは少し焦りを感じていた。
前衛を務める彼のいるところが突破されるのは、戦闘前からすでに分かっていたことではある。
こうして戦っていると、いつ後ろに到達するか、いつ『タレット』からの掃射を受けるのか、気が焦ってしまって落ち着けなくなってしまう。
「しかし、私が急がなければケイトが・・・・・・・・・・・っ。」
ふと、ケイトが今どうしているのか疑問に持った瞬間。
レオナが移ったモンスターを吹き飛ばす様に爆音と共に旋風が舞った。
「なっ!?」
何が起きたのか全く理解できなかったレオナだったが、なんとか爆風に巻き込まれる前にモンスターの背から飛び降りることが出来た。
今度は先程までしていた様にモンスターの背には飛び移らずに平らな地に、地面にレオナは足を着かせた。
レオナがそうして着地して顔を上げようとしたちょうどその時、背後で再び轟音と共に爆風が舞った。
その爆風が起こせるのはレオナが知っている中でただ一人だけであり、その人物はここにはいるはずがないことに疑問を抱きつつ彼女は振り返った。
すると、巻き起こった風に逆らうようにしてモンスターの群れに向かって突き進む短く切り揃えられた緑色の髪をした少女、いや、女性がいた。
「ケイトっ!?貴女、何をして・・・・・・・・・・っ!!」
「・・・・・・・・・・・・倒す。」
「へっ?」
ケイトはただ淡々とレオナの疑問に答えると、モンスターの群れを蹴散らして行ったのだった。
「・・・・・・・出来れば、説明してもらいたいものですが・・・・・・・。」
説明することがそんなに面倒でしょうか。
服に付いた埃を払う様に身体を叩きながらレオナは立ち上がり、ケイトがいたであろう方向に目を向けた。
だが、目を向けたその方にはいたはずのモンスターの姿はなかった。
その代わりに、マントを着けた白い鋼鉄に覆われた人物がゆっくりと歩いてくるのが目に映った。
それが誰の姿か、レオナはすぐに理解した。
かつて。
そう、かつて。
この世界に多くの人々がいて、彼ら、彼女らが絶望した時があった。
足を止め動くことが出来なくなった者たちに変わり、足を突き進めた者たちがいた。
彼らは『メカノイス』をキャラクターに選択していて最前線で戦うことを選んだ。
その先に絶望が待っていようとも彼らは足を突き進め、決して休めることはなかった。
彼らにとっては単なる暇つぶしであったのかもしれない。
だが、彼らではない普通の人たちからしてみれば、彼らは人々を救うために戦おうとした英雄にしか見えなかった。
故に、誰かが彼らのことをこう呼んだ。
絶対に死ぬことがない命知らずな連中、と。
『大丈夫か、レオナ?ケイトはともかくお前にはちょいと荷が重かったか。となると、新しい装備を考える必要があるか・・・・・・・・・・?』
レオナの近くまでその人物、『彼女が主だと認めるただ一人の人物』は何かを考える様にして下顎に手を置きながら彼女にそう訊いてきた。
「nein。いいえ、マスター。今回は私の不手際が原因です。新しい装備の検討はよろしいかと。」
『えっ。・・・・・・・・・そうは言うけど、お前ほとんど片づけられてないじゃん。』
「ja。出来ていませんが。」
『そうなると、今の装備だとちょっと厳しいよねって話にならね?』
「nein。なりません。・・・・・・・・・・・えぇ、なりませんとも。」
『・・・・・・・・・・え~、お兄さんは問題になると思うぜ~?』
「nein。なりません。」
『・・・・・・・・・・・・本当か?』
「ja。本当ですとも。今回はたまたま私のペース配分が間違っていただけです。」
レオナの言葉を聞いて彼は怪しむように彼女を見た。
『・・・・・・・・・・・・・強がってる?』
「私が、貴方に、ですか?・・・・・・・・・・・・nein。あり得ませんね。」
『・・・・・・・・・・・・・今、俺しかいないから、正直に言ってくれないかなぁ~?』
「ありません。」
そう答えた彼女に彼は諦めた様にやれやれと肩をすくめる。
『オーケー、オーケー。了解だ、了解。はいはい、分かった分かった。そういうことにしといてやる。』
チラッ。
『・・・・・・・・・・・・素直に言っていいのよ?大丈夫、お兄さん口堅いから。ユー、素直になっちゃえYO。』
彼の言葉を聞いてレオナはケンジの顔を見て訊いた。
「・・・・・・・・・・・素直になってよろしいので?」
『ん?ああ、いいぞ!!お兄さんに解決できることだったら言ってごらん!!!』
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『・・・・・・・・・・・・ん?あれ、レオナ。ちょっといいかな?なんかお兄さんが考えてたのとなんか違うんだけど。』
彼はそう言うが、レオナの耳には届くことはなく、彼女はただ彼の胸の中で泣いていた。
その時、彼女は一人の従者ではなく、一人の少女として泣いていた。
「・・・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・・ずっと、ずっと、心配していたんですよ。・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・ずっと、ずっと戻って、・・・・・・・お戻りになられなかったから。・・・・・・・・・・・ぐすっ。・・・・・・・・貴方が行かれてからしばらくして貴方方を『スパルタン』と呼ぶ方々がいなくなって。・・・・・・・・・・だから、だから、私たちは貴方が仰っていた通り、この世界が終わってしまうのだと。・・・・・・・・・・・・ずっと、思っていたのです。」
ですがっ。
「ぐすっ。・・・・・・・・・・この世界は終わることなくまだ生きているではありませんかっ。・・・・・・・・・・・・・・だからっ。・・・・・・・・・・だからっ、貴方が死んでしまったとばかりっ。」
泣きながらそう言う彼女にそれは違うぞ、とケンジは口にする寸前で言葉にすることを抑え込む。
ずっと。
ずっと、彼女は心配していたのだ。
彼女の主たるただ一人のことを。
終わりが来るであろうこの世界がまだ生きていることで、ケンジが死んだかもしれないということを。
ケンジは彼女の両肩に手を置くと静かに言った。
『・・・・・・・・・・・死なないさ。死にはしない。』
「ですがっ。・・・・・・・・・・・ですがっ。」
ゆっくりと彼女を自分の身体から剥がし、彼女の顔を見た。
『何度も言って耳にタコが出来てると思うがな、レオナ。』
ああ。
『「メタノイスをキャラクターに選んだプレイヤー」は死なない。死なないんだ、分かるか?』
ぐすっ。
「なぜか・・・・・・・・・・御聞きしても?」
『そう訊かれると、俺としてはそういうものだからとしか言えないんだが・・・・・・・・・。』
・・・・・・・・・だがな?
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彼女に答える様に彼は立ち上がる。
『いや・・・・・・・・・・・・・・・。』
爆音が聞こえてきた方を向きながら彼女に応えた。
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そう。
たった今、終わったのではない。
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