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第四章

パワード・セブン 第十話

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夜。
暗い暗い、その暗闇の中を動く影があった。
月に照らせて、姿が見えるかと思いながらも、その姿は目に留まることはできないほどに早く動く者であった。
暗闇を駆け抜けて、跳躍する。
後に残るのはただの暗い、暗闇のみ。
そのは他のに向かって、二本の棒状の長い先が尖った金属の棒、棒手裏剣を投擲する。だが、投げられたもただ受けるだけではない。
投げられた棒手裏剣が身に近くなり、当たるかと思った次の瞬間にはそのの手には当たるはずだった二本の棒手裏剣があった。
そして、手に握った棒手裏剣を投げてきたに投擲する。
投げられた一本目は、先ほど行ったように当たる前に掴むことが出来た。だが、二本目の姿がなかった。
それを不審に思ったは何かがおかしいと思った次の瞬間には、もう一つのから、もう一本の棒手裏剣が投げられて・・・・・・・・・。
は立つことなく倒れることになった。
か。随分とまぁ成長はしたと思うが、まだ油断があるな、勇一。」
倒れたに向かって、月夜に姿を現して言う男、鉄也は言った。
その言葉を聞くと、は起き上がって、鉄也と同じく月夜の当たる通りへと姿を現す。
「お褒めに預かり恐悦至極、って言うの、こういう場合?」
勇一の言葉に、鉄也はハッハッハ、と大きな声で笑う。
「そう堅い表現で言わなくていい。そういうのは、弟子と師匠の仲か、他の時だろう。だが、私とお前は血の繋がった実の家族で、師匠と弟子の関係ではない。だから、普通にありがとう程度でいいぞ。」
「そう?だったら、言葉に甘えまして。ありがとう、父さん。」
「うむ。それじゃ、帰るか!」
鉄也の言葉を聞いて、勇一は言い直して鉄也に言った。その言葉を聞くと、鉄也は力強く頷き、勇一の背を叩いた。
勇一は父と帰る前に背後に天高く浮かぶ満月を見た。
そして、とある少女のことを思い出していた。
その月はキレイの様に勇一には思えた。

















家に帰ると、そこで待っていたのは、「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!今っす!!ヒーロー必殺!!横一文字斬りぃぃぃぃぃぃぃ!!」という大きな少女の声だった。
その声を聞いて、鉄也と勇一はともに笑うと、靴を脱いで玄関に上がった。
居間に着くと、オレンジ色の髪を揺らしながら床の間に置いてある机に脚を乗せて、熱くなっている空と、緑色の髪を後ろに束ねてすやすやと眠りについているのどかの二人がいた。
「帰ったぞ、空。」
「あぁ、おかえりっす、勇一。おかえりなさい、鉄也さん。」
空の肩を叩いて、勇一は帰ったことを伝えると、空は勇一と鉄也の二人に帰った時の挨拶を言って、鉄也に見られるとまずいと思ったのか、机から脚をどかす。そのしぐさを見て、鉄也はハッハッハ、と笑った。目は笑ってはいなかったが。
「ああ。今帰ったよ。」
「で?ルナはともかく、帰らねぇの、空?」
勇一はそう空に訊くと、空は何言ってるんだコイツ、と不思議な目をして勇一を見た。
「何言ってるっすか?今日は『健全戦隊エロゲーマー』のDVDを借りてきたんで、勇一のとこで見ようってなったじゃないっすか。忘れたっすか?」
「覚えてるよ。・・・・・・・・いや、そうじゃなくってな。」
「それに、『健全戦隊エロゲーマー』を見終わったら、今度はのどかの『灰色龍と小さな従者』を見るって話じゃないっすか。」
「・・・・・・・・・・・、いや、そうなんだがな。」
どうしたものかな、と思い、頭を掻くと振り返って、助け船を求めて鉄也を見た。勇一の視線を受けると、コクリと鉄也は頷くと、空に言った。
「だいたいはわかった。ゆっくりと鑑賞するといい。だが、親御さんが心配するだろう。電話したかい、木ノ葉さん?」
「それは心配ご無用っす!もうすでに電話して許可を得てるっすよ、鉄也さん!」
空の言葉を聞くと、鉄也は頷いて勇一を見て言った。
「だそうだ。くれぐれも節度は弁えてな、勇一。高校生だということを肝に銘じて、明日に備えてちゃんと寝ろよ?」
「どっか勘違いしてないか、父さん?」
「どこがだ?」
いや、なんでもないと手を振って鉄也に言うと、のどかの隣の席に勇一は座った。そののどかの横では、「いけぇぇぇぇ!!ヒーロー必殺!!十文字斬りぃぃぃぃぃぃぃ!!」と大声を上げて、再び机に空が足を乗せていた。その空に向けて、鉄也は冷たい目で空を見ていた。その鉄也の顔を見て、どうやって帰らそうかな、と真剣に考え始めた勇一の肩に預ける様にのどかの頭が肩に乗った。呑気に寝ているのどかの顔を見て、まったくこいつは、と思いながら勇一は彼女の頭を撫でた。
撫でられたのどかは頬を緩めて、えへへ~、という様に笑うと薄っすらと目を開けて、勇一の目を見た。
「あれ?帰ってたんだ~?おかえり~。」
「おぅ、ただいま。空のやつが五月蠅くなかったか?」
そうのどかに訊きながら今も熱くなって五月蠅くしている空の背を指差した。
「え~?気にしなかったよ~。」
「いや、気にするだろ?」
「えっ。空ちゃんは?」
「えっ。」
「えっ。」
「なにそれこわい。」
のどかが空をどう思ってるのか、勇一が理解した次の瞬間、机に脚を乗っけていた空が鉄也に身体を回されながら、宙を舞った。




















「それで、如何しますか?」
「えっ?」
夕食を食べた勇一たちであったが、ルナの言葉に勇一は一瞬何を言ってるのか理解が出来ずに、ルナに訊いた。その勇一の反応にルナは、はぁ、と息を吐くと言った。
「木ノ葉さんと十九野さんのことですよ、。・・・・・・・・・よろしいですか?」
「・・・・・・・・・ああ、か。ああ、分かった、大丈夫だ。」
それで、如何しますか?とルナは勇一にもう一度訊いた。
「部屋は余ってるから、空とのどかがそっちかな。」
「星川さんとっすか?いいっすよ~。」
本当に泊っていくのか、そのつもりで来たのか、泊まる気満々の返事をする空であったが、次の瞬間、勇一の返事を聞くと、固まった。
「いや、ルナは俺の部屋だから、一緒じゃないぞ。」
その時、時が止まった・・・・・・・・・ような感覚に勇一は襲われた。
あれ、なんかまずいこと言ったっけな?と勇一が首を傾げる中、ゆらりと身体を揺らしながらのどかが起き上がり、勇一の背後を押さえた。
その光景で何が起きるのかだいたいわかっているのか、鉄也はゆっくりと茶を啜り、ルナにおかわりを頼んでいた。
ルナが鉄也の湯飲みを持ちながら、台所に消えたのを境にして、のどかは勇一の肩を掴んだ。
「勇一君~、ちょっと、どういうことか~説明してくれる~?」
「別にいいけど、って、ちょっと痛いぞ、のどか。」
「大丈夫、大丈夫~。には掴んでないよ~?」
「いや、痛い。痛いから。」
「何言ってるの、勇一君~。だよ~?」
って、なにがのか、訊いても良いですか、って痛いって!」
「それじゃ、説明してくれるよね~?」
「分かった、分かったから!だから、まず手を離せ!」
勇一の言葉にのどかはゆっくりと手を離す。
いたたた、と言いながら、掴まれた肩を揉みながら、のどか達に勇一は話した。
「いや、ルナのやつに言ったんだがな?『二人で寝るより、別に別々でも良いんじゃないか?』ってな。」
「そしたら、どうなったんっすか。」
「『私は貴方の持ち物であり、貴女の傍を持ち物が離れるのはおかしいでしょう?ですから、その案は残念ですが却下です。』って言われた。」
「なんっすか、。」
勇一の言葉に空は文句を言う。空に同様だという様にのどかも強く首を縦に振っている。
勇一は二人に激しく同意できたのだが、のどかと空の二人はは全く分からなかった。
「だよなぁ。はそういう反応なんだよなぁ。」
「勇一君は知らないの~?」
のどかはそう言った勇一に疑問をぶつけるが、そう訊きたいのは勇一自身の方であった。
「いや。昔に会ったってのは分かったんだが・・・・・・・・・残念なことに、これっぽちも。」
「いくらなんでもはいけないっすよ、勇一。」
「覚えてないのは仕方ないと思うんだが。」
「鉄也叔父さんは知らないっすか?」
空は勇一の返事を聞くと、鉄也に話を振る。
「・・・・・・・・・・・・いや?知らないな。」
と言いつつ、新聞を広げる鉄也の反応を見て空とのどかの二人は身を寄せ合って、小さな声で話し合った。
「あれ、知ってるっすね。」
「うん。間違いなく知ってるね~。」
「どうするっすか。」
「う~ん。鉄也叔父さんに訊くって手もあるけど、鉄也叔父さん強いからねぇ~。」
「叔父さんっすからね。伊達や酔狂で勇一の父親やってないっすよ。」
「叔父さんだからねぇ~。」
チラ。
二人の視線を受けて、鉄也は大きく咳き込む。
「一番手っ取り早くって言うなら、星川さんに訊くって手が早いんっすけどねぇ。」
「星川さん、話しそうにないからねぇ~。」
教えてくれるといいんすけどねぇ。」
「そうなると、叔父さんしかいないけど、叔父さん教えてくれそうにないからねぇ~。」
「叔父さんっすからねぇ。」
チラッ。
二人の視線を受けて、わざとらしく鉄也は大きく咳き込んだ。
その光景を見ていた勇一は二人に言ってみた。
「あ~。俺が自分で訊いてみるさ。」
「いやいや、勇一が訊いたらいけないっす。」
「そうだね~。勇一君が星川さんに訊いたら問題だねぇ~。」
のどかの言葉に勇一は首を傾げた。
「なんで、問題なんだ?」
「だって、ねぇ?」
「だよねぇ~?」
のどかと空の二人は勇一には答えずに、交互にお互いを見合った。
その二人の様子を見て、勇一は何とも言えない気持ちになった。
そんな三人の様子を見て、鉄也は頬が緩みそうになる気持ちを押さえながら、三人の様子を見ていたのだが、脇からルナが茶を入れた湯飲みを差し出してくる。
「お待たせいたしました、叔父様。」
「・・・・・・・・・うん?ああ、すまないな、星川さん。」
ルナは鉄也に湯飲みを渡すと、三人の方を見て、現状が分からずに固まった。


















あの後、結局帰ることのなかった二人は柳宮家で一夜を過ごすことになり、勇一とは別の部屋で止まることになり、一日を過ごした。
そのため、二人からの視線を受けながら、登校することになったのだが。
二人の視線を受けて、妙に身体が固まる感触を感じる勇一の隣で二人の視線を素知らぬ振りで流していることの元凶である少女に、尊敬の眼差しと助けを求める意味での眼差しで勇一はルナに目を送っていた。
だが、悲しいことか、どうやら別の意味で受け取ったらしいルナは頬を染めて表情はさほど変化がなく、前を見ていた。
「なぁ。」
「はい?なんでしょうか、。」
訊いたらダメだと言われたことであってそれが思い出せない勇一にはどうしても訊かなければ分からなかった。そのために、ルナにもう既に何度目になるのか分からない質問をした。
「俺たち、どっかで会ったっけか?」
「貴方が覚えておられないのであれば、私たちは会ってはいないのでしょう。単なる一目惚れ。一人の少女が一人の青年に恋にをした。では、ダメですか?」
「いや、ダメだろ。」
勇一は彼女の言葉に否定した。
単なる一目惚れであったとしても、どこか以外の理由が感じられる。そうでなけば、で生ける六十億人のたった一人に、己の命を預けられるだろうか。
いや、ないだろう。
彼女の言った通りで済むのであれば、何もどうとも思うことはないのだが、説明しなければ理解はできない。
そのために、彼女の言う理由では説明にはなっていないと勇一は思った。
であれば、納得する言葉を言ってくれなれば納得も理解も出来ないわけだが、彼女にそれを求めるのは筋違いと言えるだろう。
求めてこう言われるのであれば、勇一の仕事なわけだ。仕事とは言っても、思い出して彼女に訊いて答え合わせをしなければならないだろうが。
そういうことであれば、少ないながらもヒントは貰ってはいた。
一つ、彼女は外国人であること。
一つ、彼女は日本生まれではないこと。
そうすると、もう答えも出てる様なモノなのだが、それだけでは答えには行き着かない。
勇一の中ではこの前、脳裏で映ったどこかの空港だろうという映像と血の海が答えを出しているとは思うのだが。
いかんせん、あと一歩のところで踏み止まっていた。
鉄也に訊けば、もう既に分かっていたことであろうが、残念ながら、勇一には人に頼ることではなく、己の力でどうにかするという意地に似た何かが勝っていた。
悩む勇一に、人に頼ればいいのではないかと言うべきかどうかを空とのどかの二人は交互に顔を見合って共に悩んでいた。
答えを出してほしいという思いと、勇一がどこか遠くに行ってしまうのではないかという心配の気持ちの両方があったからだった。
納得する答えを出してほしいのは、小さな時からの付き合いからの思いであり。
どこか手の届かないほどの遠くに行ってしまうのではないかという思いである。
奇妙な感覚にお互いを見合う二人であるが、勇一が見せたヒーローとしての姿に憧れてヒーローを目指した空と、一人でいたところを手を出して一人ではなくしてくれたのどかの二人にとっては、勇一の隣に立つべくは自分ではない他の誰かが立つべきだと思っていた。
幸せになるべくは、自分ではなくヒーローゆういちであるべき、だと。
その想いは、二人に共通した想いであった。
そのために、気が付くのが少し遅れてしまった。
遠くの方で、飛行機に似た機体が飛び、その機体に続いてステルス機に似た機体が飛び、新幹線が飛ぶという奇妙な出来事に。
「なんっすか、あれ?」
「あっ?」
後ろにいた空の言葉に、勇一は前を向く。
それに遅れて、少し距離がある通りから地面から巨大なドリルが轟音と共に突き上がる。
「まさかだけど~。」
『お~っほっほっほ!!そのまさかですわ!!』
耳に甲高く響く宮子の声と同時にロボットが勇一たちの目の前に轟音と共に降り立つ。その爆風に勇一と空、のどかの三人は片目を瞑り、片耳を塞ぐ。だが、ルナは冷たくただ見上げるのみだった。
『「パワード・セブン」!七人集まる前に倒させてもらいますわ!』
「まだ、学校じゃないんだけどな。」
「騒音の件で、学校に言われそうだねぇ~。」
『ぐっ!言いますわね!』
のどかの言葉に宮子は怯んだ様子で言う。怯えているのが分かる様にロボットも怯えたポーズをとっていることから、操作の腕もいいのに、勿体ないな、と勇一は目の前で起きている様子を呑気に考えていた。
「その前にいなくなれば文句は言われないっすよ。」
「木ノ葉さん。は。」
空の言葉にルナは軽くツッコミを言う様に言うが、それがいけなかった。
『そうですわ!その前に貴方方を倒して、撤収してしまえば問題はありませんわ!』
いや、それは違う、と勇一がツッコミを入れる前に、宮子は大声を上げた。
『「ハガネイラー」、最終合体!!合体はじめ!!』
『了解!ハガネーステルス!』
『了解!ハガネーライナー!』
『了解!ハガネードリル!ゴー!』
四機ともが天高く飛び上がる。
勇一は後ろを振り返ると、冷たい目で空を見た。
だが、空はその目には応えず、軽く口笛を吹いていた。
その間に、四機は合体を始める。
宮子が乗っていると思われるロボットが肩を後ろに畳むと、その畳まれた肩があった位置に新幹線が突っ込む。そのまま突き抜けるかと思われたが、逆噴射を掛けて勢いを止める。
『ハガネーライナー、合体よし!』
ロボットの腰部が半回転すると、その脚部に先端部が折れたドリルが足を食い入れる。
『ハガネードリル、合体よし!』
上空からステルス機がロボットの背中に向かって降下し、ロボットの背中に固定される。
『ハガネーステルス、合体よし!』
新幹線の両側から太い二の腕らしきモノが降りると、ステルス機の左右に取り付けられジェット部と接続され、そのジェット部から手が生える。そして、どこからか天から兜が降りてくるとロボットの頭の上部に接続されて、『H』の一文字を点灯すると、ロボットの両目が点灯する。
『各部異常なしですわ!!起動!!ハガッ!!ネイッ!!ラーッ!!』
爆風を起こしながら、勇一たちの目の前に降り立つと、勇一たちを指差して言った。
の準備は出来ましてよ!!さぁ、今度は貴方たちの番ですわ!!』
「・・・・・・・・・・・と、言われておりますが、如何しましょう?」
自分よりも大きなロボットが目の前にいるにも関わらず、ルナはいつもそうするように勇一に訊いてきた。彼女の度胸に感心しながらも、勇一は彼女に手を伸ばした。
「いけるか?」
「問題なく。」
勇一の質問に頷きながら答え、ルナは勇一の手を包んだ。すると、彼女の姿は突如として目の前から消え、勇一の腰に一つのベルトが付けられた。
「やるっすか?やるんすね?ぶっ飛ばすんすね!?ぶっ飛ばすっすよ!」
「三人しかいないけどね~。」
「それを言ったら、おしまいだ。」
「言えてるね~。流石だねぇ~。」
そう言うと、空とのどかの姿が消えて、腰のベルトにオレンジと緑のランプが点灯する。
『スタンバイ、レディ。、いつでもどうぞ。』
その言葉に、勇一は右手を左前に、左手を左腰に当てることで応えた。
そして。
「変、身っ!」
『ビルドアップ。』
変身の掛け声とともに左前に伸ばした右手を右腰部に思い切り引き右腰のスイッチを、左手を下におろして左腰のスイッチを共に押した。
瞬間。
先程巻き起こした暴風に負けず劣らない竜巻が勇一を渦の中心として巻き起こる。
その様子に、宮子は細く微笑んだ。
『今度はそちらとは言いましたが、手を出さないとは言ってはいませんわ。』
「相手になるのが、勇一たち、四人とも言ってもないな。」
宮子の言葉に、静かに答える誰かの声が耳に届く。
『何奴!!?』
宮子はその声に勇一たちから目を離して、上を見た。
その上空には。
一人の男がさも当然といった具合で平然とした表情をして

















「息子の晴れ舞台を妨害する気はないが、朝の一番を騒がれると近所迷惑になる。」
がなんだと言うのです!!』
「いや。別にたいしたことではないんだが。」
鉄也はそう言うと、言葉を切って言った。
「近所迷惑で言われるのはであって、ではないということだ。が起こした問題にも関わらず、な。」
『だから、何だというのです!?吹き飛びなさい!ドリル!クラッシャー!マグナム!』
宮子はそう静かに言う哲也に向かって、右拳を打ち出した。
だが、鉄也はその打ち出された右拳をフッと笑うと、身体を逸らすだけで避けてみせた。
『なっ!?』
「軌道が甘いな。そんなものでは打てる相手も倒せんぞ。」
そう言った瞬間、鉄也はバッと両腕を開いてコマを回す様に全身を回した。
「疾風怒濤ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!大回転、魔弾っ!!ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
バチバチィと雷と共にロボットに向かって行く鉄也のコマ。
鉄也のコマに対して、宮子は左手を前に突き出した。
『そうはいきません!!プロテクション・ウォール!!』
鉄也の前に現れた障壁に、鉄也が当たり、一瞬、障壁に鉄也は動きを阻まれる。
その光景に、宮子は頬を緩める。
だが、バギバギッと障壁にヒビが入ると、宮子は緩めた頬を引き締めた。
しかし、そうした時には時すでに遅し。
パリィン!と障壁が割られるとゴォ!とコマは勢いを増して竜巻となった。
そして、その竜巻を防ぐことをできずに、竜巻は『ハガネイラー』の胴を食らい込んで、胴体に大穴を開ける。
地面に竜巻が当たると、徐々に勢いを殺していき、一人の男性が姿を現す。
「爆圧、完了。」
鉄也の言葉と共に『ハガネイラー』が爆発する。
その爆発に遅れて、勇一を食らった竜巻が勢いを殺して、渦から手が出てくる。
そして、渦を引き裂いた。
鋼鉄の姿に身を包んだ勇一は構えを取ると、爆発した姿の『ハガネイラー』を見た。
の思いを受け継いで、悪を倒せと我が身が叫ぶ!平和を乱す悪は、が、いや、が許さん!!『パワード・セブン』、ここに、現、着!!」
『おや?いませんね。』
『くっ、どこに消えたっすか!?』
『そんな器用そうには見えなかったけどね~。どこだろ~。』
目の前で爆発を起こしているロボットを見ないように意識して、言う勇一たちであったが、そんな勇一たちの姿を見て、鉄也は呑気に手を振りながら、こう言った。
「お~い、勇一~!倒したぞ~!」
「父さん!?・・・・・・・・・・なにやってるんだよ!」
鉄也が呑気に言う言葉に勇一は反論する。
何も知らない他人から見れば、心配しているように見えるが、事情を知っている空とのどかの二人はそうは思ってはいなかった。
「なにって・・・・・・近所迷惑だろ?文句言われるのはだからな。」
「いや、それは分かるけどさ。」
『流石、鉄也叔父さんっす。』
『だね~。』
『・・・・・・・・・・叔父様だから、と納得するべきでしょうか。』
『そう言えば、星川さんは知らないんでしたっけ?なら、納得っす。』
『だね~。鉄也叔父さんだからねぇ~。』
三人の言葉に、『ハガネイラー』を倒した当の本人である鉄也はハッハッハッ!と豪快に笑った。
「ハッハッハッ!なかなか手厳しいなっ!」
「どこがだよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
鉄也の言葉に勇一は肩を落としながら答えた。


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