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5 デビュタント
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「このドレスの方がお似合いです!」
「では髪飾りはこちらなんていかがでしょう!」
嬉々としてメイド達がエラのデビュタント衣装を準備していた。
「皆にまかせるわ」
正直、ドレスや宝石に囲まれるより
剣の腕を磨いて一日でも早く皇子の専属騎士になりたかったエラは
あまり乗り気ではない様子だ
「お嬢様が社交界の華になる日もそう遠くはないですね」
「本当に!こんな美しいお嬢様を放っておく男性はおりません」
そんなメイド達の会話も耳に入らないほど、
エラは真剣に皇子から届いた手紙を見つめていた。
『親愛なるエラ
君と会ってから8年という歳月が過ぎた
君が家業を継いだ話を父から聞いた
騎士としての功績もよく耳にする
本当に君には感服してしまうよ
実は、2週間後のデビュタントで、僕は皇位を継ぐことになっている
正直、とても不安だが隣に君がいてくれれば乗り切れると思っている
差し出がましい申し出かとは思うが、
どうか僕のパートナーとして、
デビュタントに出席してほしい』
イーサン皇子…最後に会ったのは10歳の時、
婚約破棄を申し込み、
彼に膝をついた時だ。
蜂から逃げ、生垣の陰にうずくまり
恥ずかしく赤面した幼い頃の彼を思い出す…
「本当に……
なんて愛らしい方なんでしょう」
文面の『不安』という文字を何度も見つめ、
ため息を漏らす。
彼の近況はもちろんエラの耳にも入っている
父である皇帝陛下と共に行政に携わり、
国民の住みやすい国づくりに励む彼
そんな国の為、民の為に頑張る彼にはエラも感服している。
しかし、やはり重荷でもあるのだろう
それを悟られないよう気丈に振舞ってはいるものの、
エラについ零してしまったイーサン
「こんな愛らしい申し出、断る事ができましょうか」
ー3週間後ー
デビュタント当日。馬車に揺られるエラと侯爵、侯爵夫人と兄のアルベルト
「エラ…最近は騎士団の制服姿ばかり見ていたが…やはり美しいな」
「お父様ったら…」
「全くだ。皇子とパートナーでなければ会場の全ての男がエラにダンスを申し込んでいただろうな」
「お兄様まで…」
3人の様子を柔らかく見つめ微笑む侯爵夫人。
「クラーク侯爵様御一家、ご到着です」
会場は煌びやかな装飾と豪華な食事、
生演奏が心地よく響いていた
公爵家や、侯爵家、子爵家や伯爵家、男爵家まで
幅広く招待されているようだった。
エラは初めての社交界に戸惑い緊張でいつもより
背筋が張り詰め、固まっていた。
「皇帝陛下、イーサン皇子のご登場です」
会場の全員が頭上にある階段の踊り場に注目した
「皆、デビュタントおめでとう。
これからは社交界の一員として、
より立派な紳士淑女として活躍してくれると
期待している」
皇帝陛下の挨拶に皆が一礼をする。
頭を下げながら、エラは皇帝陛下の隣の男性に釘付けになっていた
シルバーブロンドの髪、淡い紫色の瞳、長いまつ毛、
以前と違うのは、男性らしい肉付きになり20cm以上も伸びた身体と、
シュッと切れ長になった瞳と、
幼さを微塵も感じさせないほどシャープになったお顔や鼻筋。
イーサン皇子だった
「今宵は皆、楽しんでくれ」
皇帝陛下の挨拶も終わり、各々がパートナーとダンスを踊り始めた
「あの、クラーク侯爵令嬢」
声をかけてきたのは公爵令息だった。
「もし、お一人でしたら私と…」
「失礼、公爵令息」
エラと公爵令息の間に現れたのは、
「…イーサン皇子」
「彼女は僕のパートナーだ。」
「では髪飾りはこちらなんていかがでしょう!」
嬉々としてメイド達がエラのデビュタント衣装を準備していた。
「皆にまかせるわ」
正直、ドレスや宝石に囲まれるより
剣の腕を磨いて一日でも早く皇子の専属騎士になりたかったエラは
あまり乗り気ではない様子だ
「お嬢様が社交界の華になる日もそう遠くはないですね」
「本当に!こんな美しいお嬢様を放っておく男性はおりません」
そんなメイド達の会話も耳に入らないほど、
エラは真剣に皇子から届いた手紙を見つめていた。
『親愛なるエラ
君と会ってから8年という歳月が過ぎた
君が家業を継いだ話を父から聞いた
騎士としての功績もよく耳にする
本当に君には感服してしまうよ
実は、2週間後のデビュタントで、僕は皇位を継ぐことになっている
正直、とても不安だが隣に君がいてくれれば乗り切れると思っている
差し出がましい申し出かとは思うが、
どうか僕のパートナーとして、
デビュタントに出席してほしい』
イーサン皇子…最後に会ったのは10歳の時、
婚約破棄を申し込み、
彼に膝をついた時だ。
蜂から逃げ、生垣の陰にうずくまり
恥ずかしく赤面した幼い頃の彼を思い出す…
「本当に……
なんて愛らしい方なんでしょう」
文面の『不安』という文字を何度も見つめ、
ため息を漏らす。
彼の近況はもちろんエラの耳にも入っている
父である皇帝陛下と共に行政に携わり、
国民の住みやすい国づくりに励む彼
そんな国の為、民の為に頑張る彼にはエラも感服している。
しかし、やはり重荷でもあるのだろう
それを悟られないよう気丈に振舞ってはいるものの、
エラについ零してしまったイーサン
「こんな愛らしい申し出、断る事ができましょうか」
ー3週間後ー
デビュタント当日。馬車に揺られるエラと侯爵、侯爵夫人と兄のアルベルト
「エラ…最近は騎士団の制服姿ばかり見ていたが…やはり美しいな」
「お父様ったら…」
「全くだ。皇子とパートナーでなければ会場の全ての男がエラにダンスを申し込んでいただろうな」
「お兄様まで…」
3人の様子を柔らかく見つめ微笑む侯爵夫人。
「クラーク侯爵様御一家、ご到着です」
会場は煌びやかな装飾と豪華な食事、
生演奏が心地よく響いていた
公爵家や、侯爵家、子爵家や伯爵家、男爵家まで
幅広く招待されているようだった。
エラは初めての社交界に戸惑い緊張でいつもより
背筋が張り詰め、固まっていた。
「皇帝陛下、イーサン皇子のご登場です」
会場の全員が頭上にある階段の踊り場に注目した
「皆、デビュタントおめでとう。
これからは社交界の一員として、
より立派な紳士淑女として活躍してくれると
期待している」
皇帝陛下の挨拶に皆が一礼をする。
頭を下げながら、エラは皇帝陛下の隣の男性に釘付けになっていた
シルバーブロンドの髪、淡い紫色の瞳、長いまつ毛、
以前と違うのは、男性らしい肉付きになり20cm以上も伸びた身体と、
シュッと切れ長になった瞳と、
幼さを微塵も感じさせないほどシャープになったお顔や鼻筋。
イーサン皇子だった
「今宵は皆、楽しんでくれ」
皇帝陛下の挨拶も終わり、各々がパートナーとダンスを踊り始めた
「あの、クラーク侯爵令嬢」
声をかけてきたのは公爵令息だった。
「もし、お一人でしたら私と…」
「失礼、公爵令息」
エラと公爵令息の間に現れたのは、
「…イーサン皇子」
「彼女は僕のパートナーだ。」
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