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しおりを挟む「まともな紅茶も淹れられないの!?」
ガシャン!!
と鈍い音が響く
陶器が大理石の床に叩きつけられ、粉々に割れてしまった音
「…申し訳ございません」
「ほんっと…醜いだけでなく家事もロクに出来ないくせに家に居続けるなんて良いご身分ね?」
はぁとわざとらしく深い溜息をつき、床に散らばった破片を片付ける私を見下ろす公爵夫人 バリー
8歳の頃、父が新しい母として再婚した私の義母にあたる人
「お母様、早くお母様とのお茶に戻りたいわ…私の部屋で続きをやりましょう?
…こんなに破片の飛び散った所にいては
お母様の綺麗な靴が汚れてしまうもの」
鼻で笑い、夫人同様こちらをゴミを見るような目で見下ろすのは15歳の異母妹 カーラ
ふわふわの栗色の髪を靡かせ
父と同じ金色の瞳を持つ、見た目だけは愛くるしい容姿の少女
「まぁカーラ、貴女は美しいだけでなく心まで綺麗なのね…こんなのとは大違いだわ」
クスクスと上品に笑いながら部屋を後にする2人
一体、何故こんな扱いを受けるようになってしまったのか…
理由を考えても、原因を考えても思い当たらない
公爵家の娘として育った私 ラステル
それなりの学も身に付け、婚約者もいた
しかし、私の人生を狂わせる大きな事件が2つ起きてしまった
1つは4年前 結婚式を明日に控えた夜
メイドがいつものように洗顔用の桶を持って来た
すると突然額から左頬、鎖骨にかけて皮膚が焼けるような痛みを感じ視界がグラついた
メイドが桶を持ったままバランスを崩し、桶の中身をこちらに零してしまったのだ
普通なら、ぬるま湯が入っている桶に
何故かその日は熱湯が入っていた…
私の左顔半分から首筋、鎖骨には大きな火傷が出来上がり皮膚は爛れ、その姿はまるで化け物のようだと後ろ指を指される始末
2つ目は、2年前 カーラの13歳の誕生日パーティーの日
人の目に触れないよう自分の部屋へ戻ろうとした時、階段でカーラとすれ違った
すると突然、甲高い悲鳴が家中に響く
振り返ると階段下で蹲るカーラがこちらを震えながら見上げ「酷いわ…お姉様!」と、周りに駆け寄ってきた人々に泣き付いた
この冤罪をきっかけに、私は屋敷から1歩も出てはいけない事と家事や雑務をすることを命じられた
命があるだけ救いではある…そこは、無関心な父からのせめてもの情けなのだろうか
1つ目の事件をきっかけに婚約者からは婚約者解消を持ち掛けられ、精神的にも疲弊していった私に追い討ちをかけるように義母と異母妹によって肉体的にも虐げられる日々
今日も、突然部屋に押し入って来たと思えば「カーラとお茶をするから紅茶と菓子を用意しなさい」と命じられ、
バリーの好きな銘柄の紅茶とカーラの好きな焼き菓子を用意したのにお茶がぬるくて不味いと言われ、カップを床に叩きつけられた
後片付けをする私を止めてくる使用人はいない
皆、夫人に逆らえず言いなりだから
きっと、逆らえば家族や大切な人を傷付けるなどと脅しているのだろう…
「何をしている」
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