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しおりを挟む「はぁ…」
リアムとの顔合わせを終え、部屋に戻ったフローリア
別れ際に手の甲に口付けをされ「またお会い出来る日を楽しみにしております」と
柔らかく微笑んだ彼の姿を瞼の裏に浮かばせると、無意識にフローリアの顔も綻んでいた
すると突然、部屋の扉がノックもなしに開けられた
「っ!驚いた…グレイス、どうしたの?」
いつもは4回扉を叩きフローリアに駆け寄るグレイスが、扉を閉めこちらを見据えている
「…グレイス?」
「………なんで…」
「え?」
「なんで!あたしじゃなくて…あんたがリアム様と…っ!!!」
「グレイス…?どうしたの、何かあったの…?」
心配で妹に近づき手を伸ばすフローリア
刹那、鋭い痛みと共にフローリアの手は彼女の肩元へ戻された
「っ」
「あたしが…あたしがずっと慕っていたのに…なんで、会ったこともないあんたに縁談がいくのよ!」
「グレイス…」
「許さない…何もしてこなかったくせに…アカデミーでどれだけ血の滲む思いで彼に近づこうと努力したか……あたしがどれだけ!!」
わなわなと震え涙を浮かべるグレイス
あぁ…そうか、彼女は彼に恋をしていたのだ
私は、とんだ邪魔者という訳だ
「グレイス、聞いて…私」
縁談は喜んで辞退する、両親には私から話して貴女に婚約者の座を渡す
そう言おうとしたフローリアを鋭く睨み、言葉を遮った
「うるさい!!もううんざり…何してもあんたと比べられて…なのにあんたは何もしない!動かない!病弱だから?それがなによ!なんであんたはあたしが欲しいものを全部奪っていくのよ!!」
取り乱すグレイス
昔から思い込みの激しい子だと気付いていたが、これほどまで盲目になってしまうとは…
「許さない…絶対に」
呪文のように呟きながら、フローリアには目もくれずフラフラとした足取りで部屋を後にする
あれ以降、あの日のように直接的な言葉は投げられなくとも態度が彼女の心を示していた
そんな姉妹間の揉め事など知る由もないリアムは、部屋に籠るフローリアへ見舞いと称し沢山のプレゼントや花束を贈ってくる
ご丁寧なことに1つ1つ手紙付きだった
「お身体はいかがですか?」「また貴女にお会いしたい」「貴女の笑顔が忘れられない」
そんな言葉が大量に…
家同士の縁談、無下にすることは出来ない為フローリアの具合が良い日は1時間ほどだけ侯爵家に招きお茶を共にした
相変わらずの熱視線と甘い言葉にむず痒くなるフローリアだったが、その度にグレイスの姿が脳裏に過ぎるのだった
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
先のグレイスの態度に寂しさを抱えながら
お客様の元へ歩みを進めるフローリア
今日はリアム様とお茶をする日だった
幸い体調も優れていた為、侯爵家の中庭へ彼を招き時間を共にする事になっている
いつものように、フローリアよりも先に到着しているリアムは
彼女の姿を見ると直ぐに立ち上がり、その手の甲に唇を落とす
穏やかな時間が流れていた
しかし、会話の中でアカデミーの話が上がり
思い出したようにリアムが耳打ちをしてきた
「フローリア様、妹君…グレイス嬢は、その…大丈夫ですか?」
「グレイス、ですか…?」
初めて2人の話題に上がったグレイス
だが、リアムの様子から良い話ではなさそうな雰囲気だった
「何か、ございましたか…?」
「その…お伝えしにくいのですが…」
知らずに膝上の手に汗が滲むフローリア
「…ご自分でお身体に傷を、つくっておりまして」
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