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しおりを挟むそこにあった半獣人についての説明書きはこうだ
“獣人に噛まれると彼らの身体の細胞の一部が噛まれた者の体内に根付き、その者と似た姿に変身できる。
発現は満月の夜が多いとされているが、個体差によって発現までの歳月・タイミングに違いがある。
また、変身してしまった者は最中記憶が無い事例も報告されている。
尚、半獣人化してしまう細胞を取り除くには…”
「……細胞主に、もう一度噛まれるしかない…?」
アリシアは絶望した
自分を噛んだ獣人はどんな人だったのかスカーレットに確認すればよかったと
勿論、今から彼女に確認することは出来ない
それに彼女が知っているとも限らない…1番いいのは、赤ん坊だった私を獣人に噛ませた兵士から聞き出すことだ
が…私の知る限り兵士の中で勤務が長い者はせいぜい10年で、20年も前からいる者はいない
きっと、姉が何かしら手回しをして真実を知るものを消したのだろう
「どうすれば…」
「何故、そんなに落胆している?」
ハッとルークを見上げるアリシア
まだ、自分が半獣人だと話していない…
しかし、遅かれ早かれ探しているうちに気づかれてしまうくらいならばもう…確かめて、話してしまおう
「……ルークさん」
「なんだ?」
「この国で、半獣人はどのような存在ですか?」
「…何を脅えている?少なくとも、お前が思っているような扱いを受けることはないな。そもそもいたという前例がない」
「……そう、ですか」
ルークへ身体の向きを直し、きゅっと両拳を膝上で握り締め、意を決する
「…私は、半獣人だそうです」
「!?」
「赤ん坊の頃、姉に命じられた兵士が私を無理やり獣人に噛ませたと、姉本人から聞きました…昨日の事です」
「……」
「私は、一昨日の晩変身してしまい、大事な妹を傷つけてしまった…真相は、姉に嵌められたものでしたが、私が手をかけてしまったことに変わりないですよね」
呆れたように乾いた笑いを零すアリシア
「処刑されそうになり…悔しくて悲しくて、怖くて…
それで、逃げてきたのです…」
「…」
「すぐにお話できなくて、ごめんなさい…」
「いや…」
尻尾をパタン…パタン…とゆっくり椅子に打ち付けるルークは何か考え込んでいる様子だった
「その…お前を噛んだ獣人に心当たりは?」
「皆目見当もつきません…姉に聞くことも出来ないし、当時のその兵士は既に城にも折らず消息も分かりません」
「そうか」
そう言うと突然立ち上がりアリシアを抱えるルーク
「!?ルークさん…っ?」
「確かめたいことがある」
ぼふんっと寝台の上に降ろされるアリシア
突然の事にされるがままになっていると、上からルークが覆い被さる
「っ!?」
「…ここか」
アリシアの耳元でそう呟いたルーク
「ここに噛み跡がある」
「えっ」
スンスンと鼻を鳴らす音が耳を掠め、思わず身体を捩る
「んっ」
身体の芯が震え熱が走る
「…グルッ」
ルークの喉が呼応するように唸った
「昨日…お前を見つけた時、匂いを感じた」
「にお、い?」
「…甘く、脳が蕩けるような香りと、もう1つ………俺の匂いだ」
「…えっ」
「……恐らく、赤ん坊のお前を噛んだのは…俺だ」
グルルと再度唸るルークは次第に呼吸が荒くなり、眼光もギラついている…
でも、不思議と怖くはない
「お前が望むなら、ここを噛んですぐに退く…」
半獣人の細胞を取り除くだけ…そう言って別の何かを自制しようとしているように見えたルーク
苦しそう…彼の言う、自分と同じ匂いと他の…もう1つの匂いが彼をこうさせているのだろうか?
解放してあげたい…優しい彼を私のせいで苦しめたくない
「ルークさん」
両手を彼のふわふわとした大きな首に回し耳元で懇願する
「…噛んで」
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