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38・最後の希望④

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 ウィスティシア王女は本当にリジーに似ていた。しかも愛称がウィジーで愛称まで似ている。
 違うとすれば髪の色ぐらいだろうか。
 リジーが鮮やかなオレンジ色の髪をしているのに対し、ウィジー王女はそれよりは赤みが強く、光の加減ではピンクっぽくも見える髪色だったのだ。
 だが、違うのは本当にそれぐらいで、顔立ちはもとより、赤い目の色だって同じだった。
 もっとも、はじめにリジーが思った通り、性格はどうも全く違うようだった。
 性格が顔に現れるのだろう、顔の造作自体はほとんど同じでも、表情によって受ける印象は全く違って、いくら似ていても、顔を見て、リジーと王女を見間違えるなんてことはあり得ない程度の違いがあった。
 リジーはどちらかと言わずともきつい性格をしている。
 だれかれ構わず当たりがきついだなんていうことはないのだが、何事もはっきりきっぱり口に出すタイプだし、自分の考えもしっかり持っていて、それを貫くことに躊躇いを持つような所も全くなかった。
 口調だってともすれば乱暴になりがちで、だが、気遣いが出来ないわけではなく、周りにもそれは伝わっているのでむしろ気安いと親しまれてさえいる。
 何せあのスペリアを容認しているのである。
 それだけで、どれほど態度に厳しいものがあっても、その実、寛容な人物であるのだろうことは間違いようもなく、時に言い過ぎることもあるリジーを、周囲はむしろ微笑ましく眺めることさえあるぐらいだった。
 その上、一番親しい友人が平民であるヴィテアで、身分そのものもあまり気にしない性質であることまで知られている。
 そんなリジーに対して、王女は何処をどう切り取っても、穏やかでむしろ気弱な所さえあるような人物だった。
 王女はスペリアに好意を寄せているはずだ。
 その為に王女の身分まで手に入れ、こんな風に他国にまで留学してきた。
 非常に情熱的な所があるのだと思う。
 しかも、どう考えても目に余るスペリアの行動にさえ、困ったように寂しそうにすることさえあれど、決して否定的な言動を取らなかったのである。
 そして、何処か諦めたような顔で微笑んでいた。
 その寂しそうな表情は、こうして同じ教室で過ごせるだけで、日々、好きな相手を見ることが出来るだけで、満足しなければならないのだと、自分に言い聞かせてでもいるかのようで。
 好きなのなら、もっと強引にいってもいいのに。
 数日、王女を見てのリジーの感想がこれだ。
 だってこの王女、多分、本当に性格がいい。
 どうしてスペリアなんかに惚れてしまったのか。それこそがもったいないぐらいにしか思えないほどだった。
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