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35・最後の希望①
しおりを挟むリジーは頭を抱えた。
該当するような人間がいない。
駄目だ。多分、どんな人材であってもリジーほどにはスペリアの関心など引けないのだろう。
「諦めた方がいいと思いますよ? ね、リジー」
頭を抱えるリジーに、ヴィテアが慰めるようにそう声をかけてくる。
だが、リジーは知っていた。この女、気遣っている風にしているが、所詮は他人事だとしか思っていないということを。ちなみにそう指摘しても、
「え、何言ってるんです? 当たり前じゃないですか。だって実際、他人事ですよ?」
と、知れっと当たり前の顔をして返してくる。
勿論、慰めているのも気遣っているのも本当ではあるのだろう、だが一方で、ヴィテアはそういうどこか冷めた一面を持っていた。
もっとも、だからこそリジーは彼女を、付き合いやすい人間だとも思っているのだが。
「いいえ、諦めないわ! 今はちょうど良さそうなのが居なくても、いつかきっと現れるはず!」
今、リジーたちは5年生。学園生活はあと1年半ほど残っている。
この1年半に賭けるしかない。
予想以上に短いがリジーは気にしない。
なにせ、人が恋に落ちるのなんて一瞬なのだ。もしスペリアが今後、心変わりすることがあったとして、それもきっと一瞬のはず。
「リジー」
ヴィテアは呆れたような顔でリジーを見ていたし、
「あは! 無駄な期待を将来に掛けるリジー! やっぱりかわいいなぁ」
相変わらず廊下からリジーをのぞき込んでいるスペリアもスペリアでどこまでもいつも通りだった。
そうして、何も変わらず学園生活を過ごして更に半年。
待ちに待ったリジーの理想通り、望んでいた通りの存在が現れたのは、リジーたち皆が6年、つまり最終学年に上がってすぐのことだったのである。
それは元庶民で、でも最近某国の王女になったという編入生で、とても性格の良さそうな、そしてとてもまともそうな、何よりも見た目が何故かリジーそっくりな、同じ年の少女だった。
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