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27・パターン5、近衛騎士②
しおりを挟む騎士はスペリアを一目見た途端、頬を染めてぼーっと見惚れて次いではっと我に返ったかと思うと、どう見ても挙動不審なままその場に平伏して見せた。
まぁ、腐っても騎士なので、それ自体は別にいい。王族に使える予定なのだ、平伏ぐらいするだろう。
いや、しないか。そこまではしない。精々跪き首を垂れるぐらいだ。
だって平伏だ。頭を床に擦り付けている。
むしろそれは何か謝罪でもしているかのごとくな動作ではなかろうか。
申し訳ない気持ちがあったのか。やましかったから? だとすれば納得できなくもない。
つまり騎士はその時どう控えめに見ても恐慌をきたしていて、動作のどこをとっても、礼儀もへったくれもあるものではなかった。
スペリアに騎士を紹介した、おそらくその騎士の上司にでもあたるのだろう人物も慌てて狼狽えている。
まさかあの騎士が、そんな醜態を晒すとは思ってもみなかったのだろう。
ただ、スペリアもスペリアで流石と言うべきか、そんな騎士のことを全く見ていなかった。
つまり、当然のように、スペリアの視線はリジーへと向いていたのである。
なので結局、騎士の挙動不審に気付きもせず、咎めもせず。
あらー。
リジーは思った。物凄くひどい光景だなと。
明らかに恐慌をきたしている騎士と、狼狽えるその上司と、そちらへと一切、視線も注意も向けないスペリアと。
リジーはうっかりスペリアと目が合ってしまって、思わずふいと顔を背けた。
視界の端、真っ赤な顔で平伏する騎士が、むしろなんだか憐れだった。
それから、何がどう話が進んだのか、騎士はスペリアの側近くで仕えるようになったようだった。
とは言え、騎士は学生。まだ卒業はしていない。否、だからこそか。
騎士は休み時間の度に制服のまま、リジーやスペリアの教室まで足を運ぶようになり、必ずスペリアの側に控えるようになって、そして――……リジーに敵意を向け始めるのに、それほどの時間などかからなかったのである。
だろうな、とリジーは納得した。
だってあの騎士はどう見てもスペリアに好意を抱いている。
だがスペリアはリジーしか見ていない。
スペリアに好意を抱いている人間からすると、そりゃあリジーの存在など面白くないだろう。
これまでの例もある。わかりやすすぎるぐらいわかりやすい話だった。
勿論、当然リジーも、そんな風にむやみやたらに敵意なんぞ向けられたくはない。向けられたくはないのだけれども……――悲しいかな、慣れているのもまた、事実だった。
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