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3・見慣れない女生徒
しおりを挟むふと気付くと、学園過ごされるレシア王子のお隣に、それまで見たことのなかった女生徒をよく見かけるようになっておりました。
少し調べてみますと、ビュティ・デナフォ様とおっしゃるその女生徒は少し前に親の再婚で新たにデナフォ男爵家に引き取られたご令嬢で、私と同じ年です。
つまりレシア王子の一つ下の学年となります。
普通なら私のように接点などなさそうなものなのですが、とかくビュティ様はレシア王子の横にいらっしゃいました。
遠目に見ていてもすぐにわかるほど、レシア王子に熱を上げていらっしゃいます。
それまでですっかりレシア王子と距離が開いてしまっていた私はそんなお二人を見ても、少し面白くないと思いこそすれ、それほど傷ついてはいない自分に気付きました。
いつの間に私はそんなにもレシア王子への関心を失っていたのでしょうか。
数年前までは仲良くできていたはずです。
私に対しては他より随分と優しく気遣って接して下さっていたレシア王子を、私はまだよく覚えています。
しかし今では私とレシア王子との心の距離は、こんなにまで遠くなってしまっているのです。それはこうして遠めに見ている、物理的な距離以上のものでした。
「あのお二人を見ているのは、お辛いのではないですか?」
自分の心に愕然として、切なく、つい、お二人を見つめ続けてしまう私に声をかけて下さったのは、やはりライネ王子です。
私は首を横に振りました。
「辛い、わけではございません。ですが……」
辛い、というのとは違います。嫉妬しているわけでもない。ただ、なんと言えばいいのか。
ライネ王子は首を傾げられました。見事な濃い蜂蜜色の髪がさらと揺れます。
レシア王子とは少し趣が違いますが、ライネ王子もまた、大変麗しい王子です。
つい、きらめく髪の軌跡を目で追ってしまう私に、ライネ王子は躊躇いがちに口を開きました。
「でしたら、お寂しいのでしょうか?」
僕と同じように。
髪よりもさらに儚く、眼差しがゆらと揺れておられました。
そうすると私はなんだか胸が切なくなって。
寂しい。
それは、辛い、というよりは自分の気持ちに近いようにも感じました。
「そうかもしれません」
ですから、曖昧に頷いたのですが、ライネ王子はほっと息を吐かれます。
「よかった。やはりネフィ嬢は僕と同じ気持ちですね」
少し、違うようにも思えましたが、同じだと喜んでくださっている様子のライネ王子がお可愛らしく、私は小さく笑んで、今度こそはっきりと頷きました。
「ええ、きっと同じですわ」
その時にはもう、レシア王子のことなど、少しも考えないようになってしまっておりました。
むしろ、目の前にいらっしゃるライネ王子にしか意識が向きません。
私がレシア王子の婚約者であることに変わりはないというのに。
勿論、私とライネ王子の間に不貞を疑われるようなふれあいは一切ございません。
ただ、時折学園内でも一緒にお話をするようにはなりましたけれど、レシア王子が私の婚約者だと知っていて、かつ、今のレシア王子をご覧になっていらっしゃる周囲の皆様方は、むしろ私に同情的なばかりでした。
ライネ王子のことも、レシア王子のご様子から、私を気にかけて下さっておられるのだろうという解釈です。
あながち間違ってはおりませんでしたので訂正もせず、その後も私の方からレシア王子に何らかの行動を起こすということはしないまま。
しかし、それですまさなかったのは、意外なことにビュティ様の方でした。
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