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x-8・私の幸福、幸せな話。
しおりを挟むユリィ様はすでに私の伴侶だ。
私はユリィ様の配偶者となっている。
先程、そう書類を認めた。
多分ユリィ様は快楽に眩んで、よくおわかりになっていらっしゃらなかっただろうけれど、しっかりと婚姻の為の書類に、ユリィ様ご自身の署名も頂いている。
「貴方はとてもお可愛らしいです」
私はユリィ様のよくわからない、全くご自身を正しく評価なされていらっしゃらない発言を、根気強く一つ一つ正していった。
例えば、見た目に自信がないようであることには、
「ユリィ様は魔力が少なくあられるにもかかわらず、大変にお可愛らしい容姿をしていらっしゃる、それは本当に見た目に優れていらっしゃるからです」
と。
頭がよくない、などというどうしてそう思われたのかやはりさっぱり理解できない発言にも、
「頭の回転が速く記憶力が良く、人の感情の機微などを察するのもお得意でいらっしゃる」
「あれほどに臥せってばかりおられたのに私と共に学ぶことが出来た、それだけでもユリィ様の能力の高さはうかがい知ることが出来るというものでしょう」
と。
実際に学業面は、とても良い成績だったのである。それでどうして頭がよくないなどと言う結論に至れるのか。
確かに魔法や魔術はお使いになれない。
それは魔力が少ないのだから仕方のないことだ。
だが、今日、先程までの治療でユリィ様の魔力総量は目に見えて上がっていらっしゃった。
なにせあれほどまでに黒に近かった髪の色が、今では鮮やかな紫色へと染まっている。
それはユリィ様のお体の中を巡る、魔力の量が増えた証。
目の色も少し前よりもずっと鮮やかな青。いっそ私の色に近い。
本来ユリィ様は何も問題がなければ魔力多くお生まれになられるはずだったので、そもそも子供と成った際にもとても多くの魔力を必要としていたのである。
にもかかわらず、その際に十分な魔力を得て育つことが出来なかった。
それはユリィ様が常に重篤な魔力欠乏症状に陥られていた理由の一つだ。
ユリィ様はご自身で生成できる魔力量が平民並みであるにもかかわらず、存在を維持するための魔力量は、それよりもずっとたくさん必要だったのだ。
そのような状態では当然、生きていくことさえままならない。
それを何とかこの年まで生き永らえさせてきたのはひとえに陛下や、僭越ながら私を含め、周囲の者が大変に苦心してきた結果と言えるだろう。
ここで私がユリィ様に治療を施さないなどと言うことはあり得ない。
それはユリィ様がもし万が一にでも、本当に私と離れたいと望んでいたのだとしても、変わることのない事実だった。
今のユリィ様に治療を施せるのはきっと私以外にいないだろうし、私は私以外など許すつもりはない。
お話を伺っている限り、どうやらユリィ様は私を非常に高く評価して下さっているらしい。
私など、ただユリィ様に執着する、魔力量が多いだけの愚物に過ぎないというのに。
ユリィ様の清らかさ、高潔さに、どうして敵うというのだろう。
ユリィ様ほど美しく、お優しく、素晴らしい存在などこの世のどこにもありはしないのだ。
ああ、ユリィ様、私の全て、私の愛。なんて可愛らしい私のユリィ様。
幸いにして私の説得が功を奏したのか、私が言葉を尽くして希うと、ユリィ様は私を受け入れて下さったようだった。
よかったと私はほっと安堵する。
そもそもユリィ様がいったいどのようなおつもりであっても、私はユリィ様を放さないのだけれど、たとえ同じ結果になるのだとしても、ユリィ様の心持ちが違うというの大変大きい。
ユリィ様はもう、私の子供まで望んで下さった。
そして、それを疎んじておられる様子も全くない。
「ユリィ様。私は貴方を大切にします。一緒に幸せになりましょう」
満面の笑みを浮かべての私の言葉に、ユリィ様が戸惑いながら頷かれる。
「ぁ、ああ、そう、だな……? お前が幸せだというのなら、それで……」
などと、とても控えめなユリィ様らしいお言葉で。
ああ、ユリィ様。
本当になんておかわいらしく愛おしい。
「ああ、何をおっしゃっておられるのです、ユリィ様。貴方が私の腕の中にいる。それに勝る幸福など、私にはございませんよ。ねぇ、ユリィ様」
私はユリィ様をしっかりと包み込んだ。
ユリィ様は結局、おそらくは生涯、魔力をそう多くはご自身で生成できない。
ユリィ様のご病気の原因はそもそもその部分にあるからだ。
魔力生成不全。
本来なら生き永らえることそのものが難しいほどのそれ。
それを、私の魔力で補間していく。
私は幸い非常に魔力が多いので、ユリィ様お一人を満たしたところで、なんと言うこともないことだろう。
それは今の子を成されたユリィ様でも変わらない。
ただ私がユリィ様と子の二人分、魔力を注げばいいだけなのだから。
ああ、ユリィ様。
そういった事情もあるので、きっとこの部屋からはあまり出して差し上げられないことだろう。
だが、子を成して更に1年の授乳期間を経た後なら、少しばかり状況も変えられるはずだ。
何故なら必要とする魔力が、ユリィ様お一人分でよくなるからだ。
きっと陛下やあの彼ら彼女らとも、その頃になら触れ合うことが出来るようになる。
もっともすぐに次の子をユリィ様が望まれてしまったら、それも難しくはなるけれど。
私は何でも構わない。
ただ、ユリィ様はこれから、私のそばを離れることはない。ずっと、私の腕の中にいる。
それだけが私の全てだった。
―ユリィ様、私は幸せです。
私がそう囁くと、ユリィ様は柔らかく微笑んで頷かれた。
―ラシェが幸せなのならきっと僕も幸せだ。
ああ、その言葉だけで、私は。
きっとこの世で一番の、幸せを感じられることだろう。
Fine.
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ちょいちょいエロが入って、ラシェの執着愛感じて安心ε-(´∀`;)ホッ
お城仕えの身内からは可愛がられてるけど、どうも周囲の貴族は違うのかな。
更新が楽しみです๑ ᷇ 𖥦 ᷆๑)♡
感想ありがとうございます〜!
うーん、あくまでも子供だから悪気なく毒吐いてる、的なイメージですね……
多分嫉妬とかもあって、それが隠しきれず口から出ちゃったのかな、と。
あとは普通に、主人公のことをどこかバカにした気持ちもあるとは思います。
親の思惑とかも理解しきれないし、それを子供だから言葉とかにしてしまった的な。
子供って残酷ですから!
ラシェは単純に忙しすぎてそばにいられなかっただけです。
あと、彼らは言うならばラシェの代わりでした。
でももちろん、何もかもがラシェには適わず……
ラシェは渾身でヤンデレ執着攻めなので囲い込みにかかっている部分があるんですが、残念ながらそれは主人公視点では全く見えません
色々と主人公が理解していない事情があるので、周囲の貴族の思惑も見えないですね、現状w
一応続けて攻め視点答え合わせまでを予定しています。
引き続き頑張ります〜!
多分遅くとも明日には終われるかと!
短編なので……
もうしばらくお付き合い下さいね♡