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続編的番外編

x-36・意外な反応とその後②

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 彼女はここで暮らすようになって尚、それまでと同じように父を扱ったようだった。
 つまり、何くれとなく身の回りの世話をしたのである。
 しかし、これまで数人でこなしていたそれを彼女ともう一人でせねばならなくなっていて、父に結局、不自由をさせてしまっていただろうと彼女は嘆いた。
 なお、彼女からそんな話を聞いた時に父も共にいたのだが、父はただひたすら困惑しきった様子だったとだけ付け加えておく。
 要は彼女が思うほど、父は不自由を感じていなかったのだ。
 結論的に、その侍女が父があれほどまでに変わった様子がなく、のほほんとしたままだった要因の一つだった。
 だが、あの屋敷で生活をしていた、父と、父についていた者たち併せて、父を入れて六人の生活を例の侍従と、時折得られる臨時収入だけでなど賄い続けられるはずがなく、生活は困窮していっているようだった。そもそもここまで数年間持ったことだけでも奇跡のようなものだろう。
 父の住んでいた屋敷そのものなどの基盤を整えたのは、父がたまたまその時に身に着けていた装飾品や服を売って得た金だったのだという。
 それがあったからこそ、今まで来れたのだとも侍従が説明してくれた。
 現状をどうにかしたいと思っても、そもそも父に危機感などが一切ない。その一端を担っていたのは侍女だったようだが、そこまではわからなかったらしい侍従は困り果て、ついには直接、父に訴え、父がたまたま母の元を訪れていた伯父と行き会い、相談し、俺へと連絡する運びとなったというようなことだったらしい。
 ちなみにそういった事情が分かったのはここに着いてだいたい一週間ほどが経過した頃のことで、ちょうどディルの代わりがこちらに着いたのも同じぐらいの時期だった。
 そこから改めて父にいったい今、何が出来るのかの確認をしたり、今回のことで父の元を去るだとかいうことには結局ならなかった侍女た侍従とも相談して、何とか今後生活していけそうな状況を模索するのにはより多くの時間が必要となり、自然、滞在が延び、何とか先を見通せなくもない程度まで現状を変えることが出来たのは、最初の予定から2週間も過ぎた、ここへきて一ヶ月ほどが経とうとしている頃だった。
 なお、結論としては商会を立ち上げることになったのだが、父は結局、最後までほとんど何もできないままだったので、父は名前だけの商会長となり、事務作業や取引さとのやり取りなど、実働は例の侍従、また件の侍女と、少なくとも父よりは出来ることの多かった護衛の一人が取り仕切ることとなった。
 取り扱う商品は魔石。
 魔石は魔力のこもった石なのだが、多くの魔道具の原動力として使用されており、中に入った魔力が尽きた後はただの石に等しくなってしまう。
 そこにもう一度、魔力を込め再利用するのは、この世界で広く行われている手軽な商売の一つで、魔力の尽きた魔石に魔力を込め直す作業・・は、碌に使えもしないのに魔力だけは多い父でも出来る、数少ないことの一つだった。
 石に魔力を込めることだけならば、言ってしまえば魔力の乏しい平民でも出来るような仕事である。
 石の大きさや、込める魔力の量にもよるけれども、魔力の多い父ならばそれほど負担にもならないことだろう。
 これに関してだけは父も行うこととなり、あとは騙されたりなどしない限りは、そう大きく問題等も起こらないと思われた。

「念の為、結界術も教えとけよ」

 などと言いだしたのはオーシュで、確認したところ、案の定と言えばいいのか、意外にもと思えばいいのか、父はナウラティスの結界・・・・・・・・・に弾かれない人物であるらしかったのである。
 簡単に言うならば、父は悪意・・害意・・そのものを一切持ち合わせていなかったのだ。
 父と共にいた他の五人もそれは同じで、だからこそ父と共にい続けているのかもしれなかった。
 なんにせよ、この結界を父、あるいは父と共にいる五人のうちの誰かでもよいのだが、そのいずれかが張れるようになり、今後商売をしていく上での商談などの場で利用できれば、騙されたりなどする可能性は激減する。
 幸いにして、父はこれまで学んでこなかっただけで、魔力操作そのものは苦手というわけではなかったようなので、俺はそれほどかからずに父に、結界の張り方も教えることが出来たのだった。
 そうして一ヶ月。
 父から連絡をもらってからだとちょうどだいたい三ヶ月になる。
 今日はこれから帰路に着く予定となっていた。
 予定が延びてしまったのもあり、帰りは母の管理する、国家間転移施設ポータルを使用することにしていた。
 父達が見送りに来てくれ、父と、大公から使わされていた青年とに見送られ、さてポータルに向かおうと思った矢先のことだった。

「よぉ、今から帰んのか? なら、俺も連れてけよ」

 などと言いながら、どこから聞きつけたのか、ディルが姿を現したのである。
 それは全く予想外の出来事だった。
 ディルが続けて口を開く。

「なぁ、公爵閣下。そこのビショーネンもどきより――……」

 ……――そして冒頭・・に至る。

 
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