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続編的番外編
x-32・父の現状①
しおりを挟む何を考えていたのか、何も考えていなかったのか、ディルはその後、特に何かを言うようなこともなく、口を閉ざしたまま歩き続けた。
俺は口さえ開かなければ存外、存在が気にならないものだな、なんてことをちらと思い、それだけでやはりディルのことを意識そのものから追い出してしまう。
考えることは、他にいくらでもあったからだ。
例えば父の現状など。
予め聞いていた通り、やはり今まで父を支えていたのは、あの老齢の侍従で間違いないのだろう。
どうやら今、父の側にいるのはあの侍従を含めて五人。侍女が2人と護衛が2人だ。
元はその倍の人数が、父について国を出ていたらしい。
だが、国に戻れなくなった父に見切りをつけて、傍を離れてしまって、残ったのがその五人。
とは言えそのたった五人でさえ、今は雇えるような状況にないのだとか。
一度、彼ら全員にどういう考えで今も父の側にあるのか、確認しなければならないなと今後の予定を頭の中で組み立てていった。
それと同時に、実際に父に今、何が出来るのかも把握したい。
そうでなければ相談も何もあったものではないからだ。
子供を引き取るのだとも言っていただろうか。
俺の弟か妹。
今はまだ母と共にいるという幼子。
とりあえず近々、幼子も共に過ごすのだということを念頭において、考えていく必要がある。
どう見ても面倒にしかならなさそうで、こぼれ出る溜め息をこらえることが出来なかった。
この上、ディルのことになど、到底構っていられない。
ディルの、あの俺に喧嘩を売っているとしか思えない態度が、どうも大公の意向とは外れているようで、ディルを側から離してしまっても問題なさそうなのは正直、助かる話だった。
ディルがいると、ラルもオーシュも、ディーウィだって機嫌を損ねることが多くなって、それらを取り成したりだとかが億劫で仕方がなかったのだ。
彼らが俺を、想ってくれているが故なのがわかっているだけに無下にも出来ず。
かと言って俺に出来ることなど何もなく、どうすればいいかと思っていた所なので。
ディルさえ近くにいなければ、きっと状況は変わるはずだ。
ディルに対しての対応などを勧がずともよくなるだけでも、父のことが色々とやりやすくなるだろう。
少なくともラルやオーシュ、ディーウィの思考が、ディルへと逸れることが無くなるのだから。
ちらと近すぎない位置で、だけど並んで歩くディルを窺った。
いったい何を考えているのか、物凄く難しい顔をしている。
とりあえず、黙っていてくれるのはありがたい、今後ずっと口を開かないままでいればいいのに、なんて心の片隅で思いながらも俺は、やはりすぐにディルのことなど、意識の外へと追いやってしまったのだった。
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