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194・後始末③
しおりを挟む子供が生まれる頃にはいろいろと周囲はすっかり落ち着いていて、つまりコリデュアの王妃としても、おそらくは手駒が尽きたのだろうと思われた。
そうでもなければあの王妃が、俺を付け狙うことを諦めるはずがない。
ちなみに王妃以外に関してはもっと早くにいなくなっていて、少なくともあのお茶会に来ていた問題の8人に、俺はあれ以降一度も会うことがなかったのは確かだった。
例外はそれこそ、あの物慣れない侍従が知らせに来た子爵ぐらいのもの。
ラルにちらと尋ねると、
「何言ってるの? 僕がフィリスのこと、あんなふうに言ったやつらに対して、何もしないわけがないでしょう?」
なんて言いながらにっこり笑っていて、俺はそうだろうなと思ったので、それ以上何かを言うのをやめておいた。
知ってもきっといいことはないだろうと思ったので。
ちなみに、お茶会自体はあれからも何度か開いているけれども、それは普通のお茶会だ。
カティリュナ辺境伯を中心として、何人かからの招待にも応じたことはある。
大変に煩わしく面倒ではあるけれども、それが貴族としての付き合いというものなのだろうと俺自身認識しているが故だった。
とは言っても、その頻度は最低限というに相応しいぐらいに低いのだけれども。
そうして更に数年。
子供も2人ばかり増えて、俺は満たされていた。
子育ては大変だけれど、何にも何処にも不満がない。
ディーウィとオーシュはずっとそばにいてくれているし、時折伯父と連絡を取って話したりもする。
母には一度も会いに行ったりしていないけれども、それに関しては必要ないとも思っているので、別に構わないと思う。母だって別に俺に会いたいとも思っていないことだろう。逆に会いたくないとも思ってはいないのだろうけれども。
ちなみに、父とも連絡を取っていないが、こちらも必要ないという認識だ。
むしろ今の状況でコリデュアとかかわりを持つことそのものが良くないことだろう。
コリデュアの状況は、当然ながら非常に悪い。
それは当たり前のことだった。むしろ現状、国としてあれていることこそ奇跡。
だが、結局は俺がラルの元へと嫁いできてから6年ほど経つ頃には、国の名前が変わっていた。
王制は廃止され、共和制になったのだとか。
大規模なクーデターがあったのだと聞いている。きっと心ある貴族が頑張ってでもいたのか、むしろ遅すぎるぐらいだろう。
なんでも、異母弟となる王妃の息子の婚約者とその生家がよくよく国内を管理してくれていたのに愚かにも異母弟は婚約者とその生家を国から追い出してしまったのだそうだ。
異母弟が18歳。つまり、俺がラルへと嫁いだのと同じ年の頃の出来事だったのだと聞いている。
そこからは坂道を転がり落ちるがごとく、加速度的に国が荒れ、そしてついに国民が王城まで討ち入って、そして。
元々王妃も異母弟も評判が良くなかった。
国を貶めた張本人たちだ。
国民の怒りは彼ら二人と彼らに与する貴族に向けられていたそうで、逃げようとしていた王妃も捕まえられ、異母弟共々無事ではいられなかったのだとか。
なお、その時国王たる父は相も変わらず母の元へと通っていて、国を空けていたらしい。
そのまま帰らず、母のいるリリフェステに亡命したと聞いた。
つまり父は生きているようなので、ほとぼりが冷めた頃になら、父には会ってもいいかもしれないと俺は思っている。
俺は父には一切の恨みなどはないし。もっとも、そんなことを言えば王妃にも異母弟にも恨みなどそういうものは元々何も持っていないのだけれども。
ともかくそれが全ての顛末。ようは俺自身は何もしていないけれども皆、身から出た錆で自滅していったということである。
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