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81・俺の話③
しおりを挟む複雑そうな顔をした三人を前に俺は更に話しを続けていく。
「父は母にべた惚れで、母しか要らないってぐらい母のことが好きなんだって。俺のことも母によく似ているって可能な範囲で可愛がってくれて。母はそんな風だから、誰か相手を一人に定めることなんて出来ない人なんだそうだ。父は大勢の中の一人でもいいと母に縋った。どうかと願って、せめてと子供を求めた。父としては、子供さえいれば一生母だけを求めて生きていっても許されると考えていたそうなんだ。母以外とは結婚したくなかったから、後継がいればいいはずだって。母は父の懇願に応えて俺を作った。母にしては珍しく、俺を成した前後の2か月間は、父だけに相手を定めてくれたのだと父はとても嬉しそうだった。だから俺は間違いなく父の子供なんだって。父のことなんて正直なんとも思ってないだろう母がどうして父に応えたのか、そんなこと俺にはわからない。多分なにがしかの思惑が母にもあったんじゃないかと思う。伯父曰く、母は出来るだけ魔力の多い子供を作ろうとしてる節があるらしいから、そういう実験みたいなものの一環なんじゃないかと思う。たった一人だけを相手にした時に、どれぐらいの存在として子供を成せるのか。多分母はそれを試したいだとかそういうのもあって父一人だけを相手取ったんだろう。でも結果的に俺の核が父のものであることは間違いようのない事実なんだそうだ」
母は別に子供を望んでいるわけではない。父も、子供を望んだ理由が、母を思うが故に過ぎず、いずれにせよそれらは俺が俺自身の価値を見出せない要因の一つであることは確かだった。
ただ、三人にはそこまでは言わず、出来るだけ事実だけを話していく。
俺の手を取ったままのラルが、ぎゅっと握る指先に力を込めてくる。
俺を慰めようとでもしてくれているのだろうか。わからなかった。そもそも俺は、慰められるような状態ではないのだけれど。それでも確かな気遣いが感じられて、なんだか心が温かくなる。俺もそっと握り返した。
「でも、確かなのはそれだけだ。子供として安定するまでの一ヶ月程こそ相手は父だけだったけど、それ以降は当然父だけじゃなくなって、俺を育てるのには当然のように色々な相手の魔力が混ざった。父が俺が生まれる時に間に合って、俺を取り上げることが出来たのは多分、運がよかっただけだろう。ただ、そもそももともとの核と、生まれる際の取り上げとが両方同じで、父である俺は、間違いなく父の子供だというのが父の認識だ。たとえその後生まれてからの授乳期間に使用された魔力が、父のものだけではなくってもね」
言いながら肩を竦めた俺に、反応を返す者はいなかった。
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