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79・俺の話①
しおりを挟む俺の顔を見たからだろうか。ラルは慈しむような眼差しを俺に注ぎながら笑んだ。
そんな様子にまで、俺はなんだか照れ臭くなってしまう。
取られたままの手が熱い。
「僕の話はこれぐらいでいい? 僕の気持ちはちゃんと君に伝わったかな?」
そんな風に言われてしまうとなんだか妙に座りが悪くなって、居た堪れない気持ちになった。
ラルの気持ち、なんてそんなもの。充分なぐらいだ。
ラルが、俺を本当に好いてくれているってことはよくわかった。
なら。
「えっと……じゃあ、次は、俺かな?」
そもそもの目的は、お互いのことを教え合うこと。ラルの話をたくさん聞いたのだ、なら次は俺の番。
「そうだね。僕にフィリスのことを教えて欲しい。僕が知っている君のことは、さっき言ったようにあまり多くはないんだ。特に魔法魔術に関しては驚くばかりだよ」
言いながらラルが少し苦く笑うので、俺はよくわからなくて首を傾げた。先程までの話でもそうなのだけれど、ラルは俺を過大評価しすぎているとしか思えない。
だけどまぁいいかと思い直す。
今から話す俺自身のことを聞いて、改めて判断してくれればいい。
きっと、俺の話を聞いたらラルだって、俺がそんなに大層な人間じゃないことがわかるはずだから。
俺は頭の中で、これまでの自分を想い返しながら、躊躇いがちに話し始める。
「ラルも知っていると思うけど、俺の父親はコリデュアの今の国王だ。それで、俺を産んだ母親は、ナウラティスの王族で、前々皇帝と皇后の実子。前皇帝と現皇后の兄弟になる。名前はリオルシャナ。リオルシャナ・ジルサ・ナウラティス。身分としてはナウラティスの王子だ。ただし、生まれつき問題を抱えていた。伯父の話では、おそらく前世の影響ではないかということなのだけれど……簡単に言うと、性行為依存症なんだ。常にそんな行為をし続けていないと耐えられない。物心つくかつかないかの頃からそんな調子で、育てるのにも苦労したらしい。母の両親、つまり俺の祖父母はそんなことを良しと出来る人達じゃなかったらしいから。当たり前だよな。小さい子供に、いくら本人が泣いてねだるからと言って、性行為に準じた行動さえ、させられるはずがない。それでも、成人まで我慢させることは結局できなかったらしいけど」
こんな話、俺だって子供の頃はわからなかった。
正しく母のことを知ったのは、伯父に連れられてナウラティスに行ってから。教えてくれたのは伯父だった。
※前々皇帝=ミスティ、前々皇后=ティアリィ、前皇帝=アーディ、現皇后=リーファ
※この話の時系列は、「身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?」よりも未来です。
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