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16・転移陣
しおりを挟む転移陣とは、そのままズバリ、転移陣同士の転移を可能とするものだ。
簡易的な携帯型ポータルとも言える。
違いは必要となる魔力量、及び一度に転移可能な容量で、基本的には一人。多くとも三人までしか転移できなかった。
加えてポータルを使用するよりも、必要となる魔力量が多いのである。とは言え、転移陣なしで行使する個人での転移魔法とは比べ物にならない少なさで、魔力がそれなりに多い者であれば、誰でも使うことが出来た。
ただし、転移できるのは同じ転移陣同士である。転移陣には数種類のパターンが存在し、他の転移陣と組み合わせても上手く発動しなかった。
また、転移陣は広げて使用した。普段は手のひらサイズのカードのような形状に凝縮されているのだ。
俺は懐からそれを取り出し、しばし迷って、先程まで通信機を置いていたテーブルを端に寄せ、大きさとしてはギリギリだろうことを確認の上、そのままその場の床に転移陣を展開した。
広げたとほぼ同時に転移陣が光りを放ち、次の瞬間にはその場に、二人の人物が立っている。
先程通信していた相手。俺の従者と護衛だった。
「……なるほど。これは凄い。初めて見ました」
ラルがその様子を見て、目を見開いて驚いている。俺は首を傾げた。
「転移陣を、これまで行使したことが?」
「ないですね。と、言うよりは、それは携帯型ポータルですか? そんなものがあったなんて」
そもそも存在自体を知らなかったと言われ、今度は俺の方が驚く。思わず従者と護衛、ディーウィとオーシュの方へと視線を向けると、ディーウィはははと気まずそうに苦笑し、オーシュは溜め息を吐いていた。
「それはまだ一般には流通していない。そもそも、それはお前が作ったものだろうが」
呆れたと言わんばかりにオーシュが吐き捨てる。
確かに、これは数年前に俺が作成した。
だが、出来上がってすぐに、作成方法も含め、商会に流したのだ。てっきりすでに流通しているものだと思っていた。
「一般で使用するには、必要魔力が多すぎるんだよ。使えるのは一部の王侯貴族ぐらいのものだ」
なんと。確かに、ポータルを使用するよりは必要となる魔力量が多いので、使用者は限られるだろうとは思ってはいたけれども、これでも随分と簡略化したつもりだったのだ。しかしまだまだ足りなかったらしい。
俺自身は、個人で転移魔法が使えてしまう上、オーシュのように、この転移陣でも難なく行使できる者しか周りにいなかったので、加減が全くわかっていなかったようだ。ならばラルが見たことがなかったのも、当たり前のことだったのだろう。
ラルはただにこにこと俺を見つめるばかりだった。
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