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6・求められていること

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 ラルは俺の服を開けていった。ゆっくり、丁寧な手つきで。まるでプレゼントの包装を解くがごとく、それはそれはとても楽しそうに。

「楽しそうですね」

 思わず呟いた俺に、ラルは笑みを深くする。

「ふふ。ええ、楽しいです。ずっと夢見ていました。貴方に触れたならどうなるのだろうと。貴方の肌はどのような触り心地なのだろうかと。やっとです。長かった。やっと、念願叶って、今、貴方に触れられているのです。ああ。なんて美しい」

 言いながら開けた胸にくちづけた。

「ぁっ……」

 びくり、思わず体を震わせた俺を、ラルはくすくすと笑いながらちゅ、ちゅと、幾度もくちづけを落としていく。ときおりじゅっと強く吸い付かれ、赤い花びらを散らされていることを知った。
 キスマーク。初めて見た。
 なんだかドキドキする。それはきっと、こんな触れ合い自体が初めてな所為。
 決して、この、旦那だとかいうイケメンに、好意を抱いているからだとかいうわけではない。
 だけど。逆に、別に嫌悪感などは抱いていなかった。
 旦那。と、言うことは多分、ラルは俺を抱きたいはずだ。触れたいだとか初夜だとか欲しいだとかは言われたが、そういったことは明言されていない。それでも逆はないだろうと思った。
 と、言うか、逆を求められても、多分、俺には出来ないだろう。だからいい。それでいい。
 予想に違わずラルは、俺の肌を辿りながらつと腰から手を這わせて俺の身に着けているボトムスを寛げ、肉の少ない尻たぶをむにゅと揉んだ。
 指先でそのまま穴の辺りまで探られたら、何を求められているのかなんて、間違いようがない。
 俺は抗わず身を任せる。
 なんだか変な感じだ。気持ち悪い、わけではない。だが、かと言って気持ちいいかと言われると決してそんなことはなく、ただ、触れる指先にはどうやら魔力が乗っているようで、肌と肌が合わさった所からはほわと熱が感じられ、その熱には、なんだかもどかしいような心地よさが伴われていることは確かだった。
 これが、もしかしたら今後気持ちよくなっていくのかもしれないと思う。
 それはそれとして、もにゅもにゅと尻を揉んだかと思うと、その奥の窄まりをつんつんと刺激する指は乾いていて、否、手汗だろうか、しっとりとしてはいるようだけれどもそれだけで、そうして触れている窄まりを使いたいのだろうとも思うのだけれど、そのままでは難しいのではないかと思った。
 なにせラルが目指している尻の穴というのは、排泄物を出す所であり、入れる所ではなく、普段は固く閉ざされている器官なのである。
 勿論、女性の膣のように十分に潤ったりもしない。
 そんな場所に、おそらくラルはラル自身の象徴を入れたいと思っているはず。初夜で行うこと、つまりは性交渉とはそういう行為であったと俺は認識していた。
 だが、このままではおそらく難しい。
 俺のわかる範囲で何か、ラルの行為を手助けできるようなものを、ラルが持っている様子はうかがえなかった。つまり、潤滑油だとかそう言うもののことだ。それさえもなしで、初夜。
 俺は思わずこの後の自分の尻の状況を憂いた。
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