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5・新学期と学園祭
5-19・甘えと、そして
しおりを挟む『無理に気持ちを整理する必要もない』
ユーファはそう言っていたけれど、ティール、否、ティアリィはそんな言葉に甘えるわけにはいかなかった。
ただでさえ半ば責任を放棄しているような現状、これ以上ミスティと向き合わずにいられるはずもない。
しかし、すでに学園は始まってしまっている。
次にミスティと対峙して、例えば学園が終わってから夜までなどの短時間で、用が終わるとは思えなかった。
ならば次の休日、数日後の週末にと決めて。それまではもう少しだけ考えずにいることにする。
幸いと言えばいいのか否か、今学期には学園祭がある。
学園生の自主性を育むその催しは、授業以外に色々としなければならないことが増えるのだと聞いていた。
ティアリィ自身が、というよりは、ユーファが色々と手を取られるのだろう関係上、学友という立場にあるティアリィも全く関わらないというわけにもいかず、どれだけの時間を割くことになるのか見当もつかない。
加えておそらく、自身がこの国にいられるのも、それぐらいの時期が限度だろうと思われるからこそ余計に。
リアラクタ嬢の……――キゾワリの件もある。
今はアーディが随分と手伝ってくれている、元々のティアリィ本来の仕事や公務も。
ミスティのこと以外に思考を割ける、否、割かざるを得ないことは果たしていいのか悪いのか。
実際、あまり考えたくないのが本音だった。
だからこそこの状況に甘んじる。
そうして日々が過ぎるうち、少しずつ、例えば学園祭に関連することなどが耳に入るようになっていく。
やることがあるのはいい、そう思ってしまった。
目の前の何かに意識を割いていれば、他のことなんて、とりあえずと遠ざけておくことが出来る。
ユーファは、一国の王太子という立場であるにもかかわらず、それに見合わぬほどの気遣いを見せて、一度訊ねてきて以降、更に食い下がって言葉を尽くしてきたりするようなことはなかった。
ティアリィはそれをいいことに、何でもない顔を取り繕いながら過ごしている。
否、むしろそもそも、ユーファに気取られるほど、思い悩んだ顔をしていたことこそが気を抜きすぎていた証拠とも言えて。
「はは。俺はいったいいくつのつもりなんだ……」
本当の学生でもあるまいし、10を超えるような子供がいて、同じだけの期間、一国の皇后として過ごしてきたというのに。
周囲に甘やかされている、どころの話ではない。
国が回っているのならいいという話でも。だけど。
「ティール、少し聞きたいのだが、……――」
なんて、学園生活そのものに関することをユーファ殿下に訊ねられ、
「ああ、その件でしたら、この間の――……」
などと、わかる範囲で答えたりしながら、ほんの数日の間の、ある意味での現実逃避に勤しむのだった。
もちろん、自身の中で何も答えなど見つけられないまま。
そもそもティアリィはすでに、答えなど何もわからなくなっていた。
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