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4・初めての国内視察
4-13・休暇中の暗躍⑥(ミスティ視点)
しおりを挟むアーディの微笑みは崩れず、剰え、
「ま、父様からご許可頂けなくても、僕の行動は変わらないんですけど」
「アーディ」
そんなことまで宣って肩を竦めるアーディを、ミスティは厳しく名前を呼ぶことで咎めてみせる。ならなぜわざわざ許可を取りに来たのか。
許可が出なくても取りやめたりしないのなら、許可を取る意味などないだろう。
「そんな険しい顔しないでください。僕はこれが必要だと考えているだけです。こうしてお話ししているのだって、父様にはお伝えしておかなければならないと思ってのこと。でも、反対されたからと言って取りやめることはできないし、最終的には父様も、頷かざるを得ないだろうとも僕は予想しています」
にこりと微笑む表情は本当に子供らしくなくて。
ミスティは深く、溜め息を吐いた。
「お前はまだ子供だ。庇護すべき年齢だという自覚をしなさい。あからさまに宜しくない場所に、一人でなんて送り出せるわけがないだろう」
「一人じゃありませんよ。ミーナもグローディも一緒です。他に護衛も」
「そういう問題じゃない」
「そういう問題ですよ。危ないことなんてしません。ただちょっとあの国に行って内情を探って、見極めてくるだけです」
「アーディ」
「なら父様は母様があの国に行ってもいいって言うんですか?」
「っ……!」
苛立ち紛れに、少しばかり言い争った先、ついに告げられたアーディの言葉に、思わずミスティは息を詰めてしまった。
ティアリィが、あの国へ?
正直な所そんなこと、アーディがそうすることを想像するより、余程ミスティにとって耐えがたいことにしか思えなかった。
だからこそつくづくと自覚する。
自分は結局、子供よりも、ただティアリィだけが大切なのだと。
ティアリィがもし万が一にも害される可能性を考えると、他のことなどどうでもよくなってしまう。
それはティアリィとの初めての子供であり、子供たちの中でも、どうしても特別視してしまいがちなアーディであっても同じこと。むしろ年よりもしっかりしすぎている分、どうにも頼りがちになってしまう所まであって。
更に言うならアーディにとって、ティアリィは何をおいても守らねばならないとまで思う対象であるような部分は、共感できてしまうからこそ余計にティアリィを引き合いに出されると、ミスティは結局、言葉に詰まるばかりなのだった。
子供に言い負かされるなど、恥ずかしいことこの上ない、そう思ってもどうにもならない。
アーディはずっとにこにこと、余裕のある微笑みを崩さないままだった。
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