80 / 206
3・偽りの学園生活
3-41・情報収集
しおりを挟むうっかりとミスティに捕まって、随分と苛まれた翌日。
ティアリィを待っていたのは決してよろしくはない情報だった。
つまり、あのキゾワリから、追加で使者がやってくるというそれである。
ティアリィはそれを朝、登校前に部屋でピオラ達と共に、王宮からの伝令により知らされることとなった。
当然その場にいるもの皆が、全くよくないことを聞いたとばかりに顔をしかめる。
「あらぁ……」
困ったような顔で呟いたピオラの声が、ある意味では一番のんきだった。
「ティール様」
護衛の中では一番年嵩となるハヌソファが、静かにティアリィへと指示を仰ぐ。
ティアリィは頷いた。
「君は彼について王宮へ。もう少し詳しい話を聞いて来てくれ」
この場に残っている、伝令に来てくれた王宮からの使者と共にそちらへ向かってほしいと告げると、頷いたハヌソファは早速、使者を促して王宮へと向かった。
その背を見送ってから、他の者へと向き直る。
今、ティアリィの手元にいる手勢は少ない。だが同時にこれだけいれば充分だとも言えた。
「キゾワリの現状の確認がしたいんだけど……あとは、出来ればリアラクタ嬢のことも調べたい」
護衛をそう何人もここから離すのは得策とは思えなかった。せめて二人は残しておきたい。
侍女も同じだ。
ミデュイラが手を上げる。
「ご信頼頂けるようでしたらキゾワリの内情はうちで調べてみますが、いかがですか?」
実家であるフデュク商会の力を借りてみるとの申し出である。
ティアリィは少しだけ考えて頷くことにした。
「信頼できないなんてことはないよ。フデュク商会にはすでに充分お世話になっているしね。じゃあ、有難くそちらは任せよう」
ミデュイラは頷いて、さっそくとばかりに部屋へと足を向けた。おそらく通信用の魔道具を使うのだろう。実家であるフデュク商会との連絡用に、彼女はそれを持っていたはずだ。
「後は……」
「リアラクタ様の周辺のご様子なら私が聞いてまいります」
お任せ下さいと声を上げてくれたのは、ファルエスタから借り受けている侍女だった。ティアリィは彼女へとじっと見つめる。
何かを見透かすかのように。だが、それも一瞬のこと。そもそも、この部屋にいるというだけでも信頼に値すると断じた。
この部屋には、ナウラティスでよく使用されている防壁魔法が張られているのである。害意や悪意のある者はそもそも入れない。ただ。
「ピオラ。彼女に結界を」
追加で物理的な何かに対するそれをと指示すると、ピオラはにっこりと頷いた。
ひとまずはこれで、何かがあった際、彼女に危害が及ぶ可能性は低くなる。
申し出てくれた侍女が感極まったような顔でティアリィを見つめていることに気付かないままティアリィは、これからを考えて、思いっきり顔をしかめるばかりだった。
17
お気に入りに追加
811
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる