83 / 136
第1章
*1-81・限外。よって誹る⑩
しおりを挟むルスフォルを思う。
彼へと向かう気持ち。
好意を抱いている。それは間違いないはずなのだ。
「ティーシャ」
夜、寝室で対峙し、伸ばされた手に身を委ね、抱きこまれていきながら、はじめの頃から考えると随分こちらを窺うようになって来たな、そう思う。
触れられるのは、嫌ではなかった。
だって10年間、ずっと求め続けていた体温だ。
俺はずっとこの手だけを求めていた。それ以外なんていらなかった。
そっと体を離され、視線を合わされる。そこには、はじめの頃はなかった熱があった。
ぞくりと背筋が震える。求められている、それを否が応でも実感する。
『ティーシャ』
聴こえた声は幻。
ルーシー。
呼ぶ代わりに目を閉じると、そっと触れ合った唇は甘くて。
ゆっくりと、口内を探られる。そして違う、そう思った。
ルーシーのくちづけはこうではなかった。否、もしかしたら本当の初めの初めには、ルーシーとのそれもこんな風だったのかもしれない。
ぎこちなくて、躊躇いがちで。おそるおそると言った風、こわごわと俺の舌を追い、歯列を舐めた。
そこには奪うような激しさなんてなく、俺の思考を蕩かせるような快楽もなく。それどころか性感を刺激するような、官能的な気配さえない。ただ、どうすればいいのかわからない。くちづけでさえ、告げられているかのようだった。
しばらくそうして、ルスフォルの思うがままにさせておきながら、様子を見てこちらからも舌を絡めたりなどしてみる。ルスフォルに合わせて、積極的でなどない様子で、ルスフォルと同じぐらいにはぎこちないと思うのだけれど、そんなくちづけでさえルスフォルは昂って、ぐいぐいと熱く硬い腰を押し付けてきた。
興奮している。俺を、欲しいと思っている。
俺の体を暴いて、中に入りたいと。
求められているのは嫌な気分ではない。むしろ嬉しい。
やっぱり物慣れないままのルスフォルの手が、俺の身に纏った夜着を脱がそうとしてくるので、さりげなく手伝って半ば自分から肌を晒していく。
それに同時に触れてくるルスフォルの手は熱い。
ああ、やはり同じ体温。いやではない。触れられて嫌悪感など感じない。
体だってこの時点では、別に強張っているというわけではなかった。
だってルスフォルだ。他の誰でもない、俺が求めてやまない彼。なのに。
「ぅっ……ぁっ、」
ルスフォルの指が、俺の体をなぞって、腰を掠め臀部を這い、その奥の窄まりにまで到達すると、俺は途端に身を固くしてしまう。
ぐっと、知らず体を強張らせてしまって。
ぐちゅ、予め仕込んであった香油の助けも借りて、やっぱりぎこちなく指を沈められると、気持ち悪い。覚えた嫌悪を自覚せずにはいれらなかった。
0
お気に入りに追加
320
あなたにおすすめの小説
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
愛欲の炎に抱かれて
藤波蕚
BL
ベータの夫と政略結婚したオメガの理人。しかし夫には昔からの恋人が居て、ほとんど家に帰って来ない。
とある日、夫や理人の父の経営する会社の業界のパーティーに、パートナーとして参加する。そこで出会ったのは、ハーフリムの眼鏡をかけた怜悧な背の高い青年だった
▽追記 2023/09/15
感想にてご指摘頂いたので、登場人物の名前にふりがなをふりました
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる