72 / 136
第1章
*1-70・転変。および希求⑫
しおりを挟むルスフォルは律儀だ、そう思う。
「ティーシャ。今日も、その……」
毎夜、すっかり寝支度も整えた後に、夫婦の寝室へと訪れるルスフォルは、いつまでたっても慣れた様子を見せなかった。
毎晩毎晩ぎこちなく、躊躇いがちで。
俺に欲情しているのは確かだ。触れたいと思ってくれているのも。
でも、強引に迫るような積極性を持たない。
そんなルスフォルを見る度に、俺は胸が軋んで仕方なかった。違う。そう思う。
「陛下」
だから俺は毎晩わざわざ、やんわりと微笑んで、こちらから手を差し伸べる。
「どうぞ」
そうして促せばルスフォルは、まるで花の蜜に誘われる蝶のよう、俺へと手を伸ばし返し、そうして一度でも触れると強引に俺をかき抱いた。
「ぁっ!」
とさ、寝台の上に押し倒され、
「ティーシャ、ティーシャ、ああ、」
何度も名前を呼ばれながら、荒々しい手つきで体を弄られる。
どうせすぐ脱ぐことを想定して、ゆるく身に着けていた夜着は瞬く間に剥ぎ取られ、俺は何も身に纏わない裸体をルスフォルの前に晒した。
足を広げられ、その間に、未だ衣服を寛げないルスフォルの、布越しでもはっきりとわかるほど熱く逞しく昂った彼自身を押し当てられる。
もうすっかり慣れた熱。否、以前から変わらない熱。
ルスフォルはもぞもぞと自身の衣服を乱し、
「ティーシャ、すまない、俺はもう……大丈夫だろうか? 構わないか?」
余裕なく俺に触れながらも、近頃はそんな風に可能な限り注意深く俺の様子をうかがおうとしてくるようになっていた。
俺の下肢を探り、解そうとする。慎ましやかな窄まり。毎晩長時間ルスフォルを受け入れ続けているにもかかわらず、俺自身が治癒魔術で治してしまう所為か、毎晩未経験かのような頑なさを取り戻してしまっているそこ。
ちっとも緩むことはなく強張って、一応ルスフォルがこの部屋へとと訪れる前に、自分で少しばかり触ってはいるのだけれど、辛うじて香油を仕込むのが精々で、いぜ、こうしてルスフォルに触れられてしまうと、どうしてか俺の体は、まるでルスフォルの指を拒絶するかのような反応を返してしまうばかりだった。
綻ぶとも解れるとも程遠い。硬いばかりの俺の体に、だけどルスフォルの興奮が収まることはなく、一応今のよう、指程度であれば、仕込んだ香油の助けもあって、傷つくなどということはないのだけれど、俺よりずっと太いルスフォルの指を押し込められると、ほんの微かな痛みと大きな違和感を伴った。
「ぁっ、ぅっ……」
ぐちゅぐちゅと腹の中を触られるのは、正直な所、不快だ。
他でもないルスフォルの指なのに、どうしてこんなにも嫌だと思うのか。俺は自分で自分がわからない。
なぜだかどうしても気持ち悪くて。でも、自分がこの指を、気持ち悪いと思うことそのものにどこか安堵している。
歪んでいる、そう思った。
眉根を寄せ、小さく呻く俺をルスフォルが注意深く窺っているのがわかる。
見ないで欲しい。
告げる代わりに引き寄せた。
「あっ!」
ぐりっ、強く内側を抉られてひときわ大きな声が上がる。気持ちよさから上がった声じゃないことぐらい、自分でもわかっている。
否、今のルスフォルに俺はきっと、蕩けた声なんて聴かせた声がない。いつも苦痛に呻くか、そうでなくとも反射的に上がるそればかり。
だからというわけでもないのだろうけれど、ルスフォルは萎えたりなどせず、硬く昂ったまま熱をぐっと俺に押し付けてきて。
俺はルスフォルが俺を求めている、その事実だけでどこか満足していた。
0
お気に入りに追加
321
あなたにおすすめの小説
【完結】気づいたら6人の子持ちで旦那がいました。え、今7人目がお腹にいる?なにそれ聞いてません!
愛早さくら
BL
はたと気づいた時、俺の周りには6人の子供がいて、かつ隣にはイケメンの旦那がいた。その上大きく膨らんだお腹の中には7人目がいるのだという。
否、子供は6人ではないし、お腹にいるのも7人目ではない?え?
いったい何がどうなっているのか、そもそも俺は誰であなたは誰?と、言うか、男だよね?子供とか産めなくない?
突如、記憶喪失に陥った主人公レシアが現状に戸惑いながらも押し流されなんとかかんとかそれらを受け入れていく話。になる予定です。
・某ほかの話と同世界設定でリンクもしてるある意味未来編ですが、多分それらは読んでなくても大丈夫、なはず。(詳しくは近況ボード「突発短編」の追記&コメント欄をどうぞ
・男女関係なく子供が産める、魔法とかある異世界が舞台です
・冒頭に*がついてるのは割と容赦なくR18シーンです。他もあやしくはあるんですけど、最中の描写がばっちりあるのにだけ*付けました。前戯は含みます。
・ハッピーエンドは保証しません。むしろある意味メリバかも?
・とはいえ別にレイプ輪姦暴力表現等が出てくる予定もありませんのでそういう意味ではご安心ください
恋の終わりもその先も~ずっと好きだった幼なじみに失恋したので、
愛早さくら
BL
忘れ形見 も 創ることにした
↑ここまでタイトル。
ティシクニ王国の第1王子でありながら王立騎士団の団長も務めるリシュは幼馴染みであり、自身の副官でもある公爵子息マディのことが好きだった。
しかし長くセフレ関係を続けながら、それがゆえか恋人同士には進めないでいた。
とは言え、お互い口に出せないだけ、マディとは相思相愛だとばかり思っていたのに、ある日、マディの好みは自分ではないと知ってしまって……――?!
俺は今日、失恋した。
から始まる、ちょっと素直になれない系のでも包容力はある方な攻め×自分に自信があるタイプのちょっと思い込みが激しめな受け、でありがちな勘違い、すれ違い物。
に、記憶喪失ネタと隠し子ネタを添えて。
オチバレすると失恋自体が勘違いです!ハピエン!
相変わらず「固定CP」が最大のネタバレ。
・いつもの。(他の異世界話と同じ世界観)
・今回も国ごと新規!
・切ない風に思える描写もあるかもしれませんが、主人公が脳筋よりの自信家なので悲壮感はそんなにないはずです。
・頭はいいはずなのに馬鹿な主人公(というか、思考がぶっ飛んでいる。)
・喧嘩っぷる要素あり
・って感じに出来ればいいなぁ~!
・男女関係なく子供が産める魔法とかある異世界が舞台。
・R18描写があるお話にはタイトルの頭に*を付けます。
・視点がコロコロ変わります注意!
【完結】囚われの塔の泣き虫姫(♂)
愛早さくら
BL
ほとんど自滅のように敗戦した小公国テュナコルからまるで貢物のように差し出された第一王子リュディは、囚われた塔の中、日々泣き暮らしていた。
それはどれほど、戦勝国シュネリニアの国王ルナスが宥めても取り成しても、そして愛を囁いても変わらず。
なのにリュディは……――。
捕まえた美しい王子様に囚われた王様と、王様にいくら愛を捧げられても泣き止まない王子様のお話。
・ルナス×リュディ
・リュディが主人公のつもりだけど、第1章はどう見てもルナスが主人公
・短く終わらせたい。(野望。
・何も起こらない。
・実は誰も苦しんでない。
・ご都合主義の無理やり展開でも気にしない。
・設定も展開も全部ふわふわ。
・頭空っぽにして読めるようにしたい。(切望。
・タグがネタバレ。
・いつもの。
・他の異世界話と同じ世界観。けど、今回は血縁じゃありません!多分。
・男女関係なく子供が産める魔法とかある異世界が舞台。
・R18描写があるお話にはタイトルの頭に*を付けます。
・言い訳というか解説というかは近況ボード「突発短編」のコメントをどうぞ。
【完結】逆ざまぁされ()王子の僕はなぜか監禁されている。
愛早さくら
BL
「ヴァラシエタ・ミサフィレ! 俺様はここで、貴様との婚約破棄を言い渡す!」
成人を祝うパーティで、開始を待たずに俺様は声高にそう言い放った。
だけど、事態は思う通りに行かなくて……――?!
逆ざまぁなるものの存在を知った王子が、婚約者(従兄弟)に逆ざまぁされるために頑張って画策して婚約破棄だ!ってやってみるけど、きっちり思惑通りに逆ざまぁされたと思ったのに何故か婚約破棄には至れず、結果的に婚約者に監禁されて孕まされることになった話。
・全くの新作思い付き。気が向いたから書いてみた。(自制心が死んでいる。
・短編なのですぐ終わります。多分明日か明後日には完結。(すればいいなぁ。
・気軽に読めるスナック感覚のどえげつない執着ヤンデレ監禁孕ませ話です♪
・いつもの。
・他の異世界話と同じ世界観。
・今回も血縁ではないし、舞台国は別。
・男女関係なく子供が産める魔法とかある異世界が舞台。
・R18描写があるお話にはタイトルの頭に*を付けます。
・言い訳というか解説というかは近況ボードの「突発短編」コメント欄をどうぞ。(2じゃない方です。)
愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと
糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。
前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!?
「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」
激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。
注※微エロ、エロエロ
・初めはそんなエロくないです。
・初心者注意
・ちょいちょい細かな訂正入ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる