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第1章
1-69・転変。および希求⑪
しおりを挟むだってこれでもかとばかり過剰なほど注がれる魔力は同じで、毎晩のように明け方まで俺を求める所も同じ。勿論、以前に其処にあったのは快楽で今とは少しも重ならないのだけれど、他でもないルスフォルに求められている、それだけで俺は何処か、表現しがたい満足感を得ているようなのである。
だから実は、1週間ほど経った頃から、徐々に変わり始めたルスフォルには、怯えさえ抱いている部分があった。
情熱的なことは変わらない。結局は最終的に、ただ俺を組み敷き、夢中で揺さぶるばかりになる所も。だけどその過程でルスフォルは少しずつ、どうも注意深く、俺の様子を探るようになってきていたのだ。
俺が少しでも苦痛に眉根を寄せると躊躇して、非常に不安そうに行為を進めた。
とは言えそのうちにルスフォルにも余裕がなくなって、結局は強引に事を進めることとはなるのだけれど。そうなる前の僅かな時間が俺には焦れったくて堪らず、俺は俺を見て欲しくない、そんな心地になるばかり。
なにぶん閨の中でのこと、俺は比較的いつもあられもない格好にされていて、恥ずかしいというのもあるし、もっと余裕なく求めて欲しいと思う部分もある。
ルスフォルの多少の躊躇ぐらいでは、俺の体の強張りなんて解けず、様子をうかがわれては、痛みや苦しみを顔に出し辛く、余計に辛くなった。
いっそ何も気にせず扱ってくれた方が気が楽だとさえ思ってしまう。
何よりも多分俺は、痛みや苦しみを感じていたいのだと思う。
きっとそうすることで俺は、自分に自分で言い訳しているのだろう。
いくら同じルスフォルとは言え、以前とは違ってしまった存在にこの身を明け渡す。そこに芽生える罪悪感を逃がす手段として、痛みや苦しみを欲しているのかもしれない。
だから強張りは解けないし、自分で自分を慣らす指も、どうにも躊躇いがちな有り様で。そうでなければ痛みが無くなってしまう。苦しいと、感じなくなってしまう。
強張りを、解こうとしないで欲しい。そんな風にどこまでも利己的で浅ましい俺を見て欲しくない。
俺はルスフォルに求められて悦んでいるくせに、罪悪感にも苛まれて、その捌け口として、ルスフォルを利用しているにすぎないのだから。
でもこうした毎晩の行為が俺の体に負担となっていることは間違いないし、疲弊していることも本当で。
だからこそあのお二方や、俺の周りの侍女たちが俺を諫めているのは当たり前の話。
わかっていながらも俺は今も、変えられるとは思えなかった。
以前と同じようにルスフォルに情熱的に求めて欲しい。そこに以前と同じ部分を見いだし、安堵し、求めながら、同時にそれでもルスフォルが以前と違うことを理解しているが故に罪悪感が拭えず、その罪悪感を緩和させる手段に、他でもないルスフォルから与えられる痛みも求めているのである。
どうしようもない。
我ながらそう思った。
そうして更に日は過ぎていく。
ついに差し迫った婚姻式。それは俺にとって、少しばかり先延ばしにしていた問題を突きつけるものに他ならなかった。
婚姻式が終わったら。
そうしたら俺はきっと……――。
それは俺の中にある恐怖と、同時に間違いようもない希望だった。
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