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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
32・塔の外にて⑬
しおりを挟むルナス様が困っている。
きっと、僕が何も言わずに泣いているばかりだから、何もかもわからなくて困っているんだ。
僕はルナス様を困らせたいわけじゃなかった。
それに僕の気持ちもわかって欲しい、そう思っている。
塔で、子供を見てくれているから、ここにユセアナはいない。
ルナス様より多分察しがいいのか何なのか、僕の気持ちをわかってくれていそうなサネラ様もいなくて、なら今、ルナス様に何かを伝えられるのは僕以外にいなかった。
そもそもが自分の気持ちだ。
僕自身の気持ちを、どうして僕は他の人に伝えてもらおうなんてしているのだろう。
僕は率先してそんなことを望んだことはなくて、でも周りのみんながそんな風に動いてくれているから、きっといつもの間にかそれが当たり前になってしまっていたのだろう。
僕はいつもほんの些細なことでも泣いてしまって話せなくて、それが普通で。
たまに少し落ち着いた時とか、泣きながらでも話すけど、僕の言葉はあんまりお行儀がよくないみたいだし、話すこと自体得意じゃなかった。
僕の世界はとても狭くて、今まで誰かに僕の気持ちを伝えたいだとか思ったことがほとんどなかったと言うのも大きい。
みんな僕が泣くだけでいろいろなことを察してくれたし、ユセアナとはいつも一緒だから、たくさんお話もしているけど、それだってほとんどがただの僕の独り言だ。
それがユセアナが拾って色々把握してくれているだけで、ユセアナにも伝えようなんて思ったことがなかった。
でも僕は今、ルナス様に僕の気持ちをわかって欲しいと思っている。
僕が好きなのはユセアナじゃなくて、ルナス様だってことを。
だったらどうすればいいのか。
そんなの、簡単な話。ううん、それ以外にはきっとない。ただ僕は言葉にしなければならないのだ。
僕自身の気持ちを、ただ。
うわぁん。
僕の泣き方が激しくなる。涙があふれて止まらない。
でも僕はしゃくり上げながら、うぇぇんなんて、泣き声の間に、何とか頑張って口を開いた。
それはルナス様に、僕の気持ちをちゃんとしっかりわかって欲しかったからだった。
「ぼく、ぼく、ぼくは……ふぇっ……ぅぅ……ぼく、はぁ……! ぼくが、好きなの、は……ルナス様ですぅ……ひっくっ、ゆ……ユセアナじゃないぃ……」
うわぁあん。
もうそれ以上は言葉にならない。
でも頑張って言葉を紡いだ。ルナス様に何とかわかって欲しかった。
きっと泣き声が混じっていて聞き取りづらかっただろう。こんなんじゃきっとわかってもらえない。
ますます悲しくなる僕は、だけど次の瞬間。ぎゅっと強く、ルナス様に抱きしめられていたのだった。
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