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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)

17・侍女の誤認識と、愛しい彼を想うこと⑥

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「陛下。どうぞリュディ様のお傍へ」

 あまつさえそんな風に、いつも泣いている僕に戸惑うばかりのルナス様を促してくれる。
 そうしたらルナス様はお優しいから、しぶしぶでもなんでも、僕をやんわりと包み込むように抱きしめて下さって。そうされると僕は幸せで幸せで、いつだってもっと更に泣いてしまうばかりだった。
 僕は多分感情表現がストレートだと思う。自分でも。
 思ったことはなんでも口にしてしまうし、それでいつもユセアナには呆れられるばかりだった。
 例えば、

「流石ユセアナ! 愛してる!」

 だなんて、言葉で好意を表すのに躊躇いはないし、誰にだって同じようなことを口にする。
 もっとも、これまで生きてきて僕がかかわったことがある存在なんて、ユセアナとはじめとした何人かの侍従や侍女、護衛の他は両親と妹の家族しかいないのだけれども。
 今は子供と、ルナス様が増えたけれどそれだけ。
 ただ、ルナス様だけは例外で、好きすぎて感極まって泣いてしまって、緊張もあって、何も言葉に出来なくなるのだ。
 ああ、なんて意気地なしなんだろうか。
 泣くばかりの自分が嫌だ。
 こんなにもルナス様のことが大好きで、世界で一番愛しているのに。
 僕はいつまで経っても、ルナス様の前では何も話せないままだった。
 ああ、きっとルナス様は呆れてしまっていることだろう。
 ルナス様はお優しいから、夜毎、ほとんど毎晩のように僕の元へと通ってきてくださって、僕へと大切に触れて下さるのだけれど、きっと鬱陶しく思っているに違いない。
 こんな、泣くばかりで、何の役にも立たない僕なんて。
 ちなみに無能な僕でも出来ることがあるのか、簡単な書類仕事の一部なんかは、サネラ様がさせて下さるようになっている。
 それは比較的に早い時期からで、多分塔の中にいては暇だからとご考慮下さったのだろう。
 何故かユセアナが嫌そうな顔をしていたのは不思議だったのだけれど、ここへきて、それほど経っていなかった頃からのこと。
 今では徐々に量も増えてきていて、僕でも出来ることがあるんだと思うと嬉しい。
 だって僕は本当に何の役にも立たないのだもの。
 でもここに居られて幸せだから、何かできるならやりたかったんだ。
 きっとサネラ様はそれを見抜いていらっしゃったのだろう。
 やっぱりとってもお優しい方だ、そう思った。
 ここは優しい方ばかり。
 僕は幸福に浸りながら日々を過ごしていく。
 幸せで幸せで幸せで。
 子供が生まれてだいたい一年が経ち、存在がもうしっかり確かなものとなったのがわかってすぐ、僕は我慢できずに次の子供を望んでいた。
 子供の存在が確かなものと成ったら、子供に与える魔力は少なくて済むようになる。
 むしろ最悪なくったって育っていく、否、育っていけるようになる。それが確かなものとなるということだからだ。
 でもそうしたらルナス様が、毎晩のように僕へと注いで下さる魔力の行き場所が無くなってしまって。だから、それならと僕は子供を望んでしまったのだ。
 ルナス様は少し驚いておられたようだけど、何もおっしゃったりしなかった。
 駄目だとも何も。
 そしてまた幸せに過ぎていく日々。
 溺れてしまいそうな幸福感。
 だからなのだろうか。
 僕がルナス様に甘えすぎていたのか。
 ルナス様の態度が、何故だか段々とぎこちなくなっていったのは、二人目の子供を身ごもっている最中のことだった。
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