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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)

7・世界は輝いている⑦

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 ちなみに僕は衣装もあまり持っていない。
 持って来れなかったというのもあるし、もともと持っていなかったのも本当。
 あって精々、洗濯に困らない程度。勿論、それぞれの質に関しては、公子という身分に見劣るほど粗末なものではないのだけれども。
 今身に着けているのは、一応輿入れ・・・になるというので、急遽新しく誂えたものだった。
 身につけたことがないというぐらいには、洗練されていて、なおかつ華美だ。
 だけど先程、ここに着いてからちらと目にしたルナス様やサネラ様はもとより、他のお仕着せ以外の人たちの様子を見るに同じ程度・・・・の派手さしかなく、つまり盛装には程遠いということ。一応礼服にはなるのかな……? とは思うのだけれど、結局僕にはよくわからないまま。
 輿入れと言ってもお披露目もなければ婚姻式などの儀式も予定されていないのだと聞いている。一応人質・・という側面があるが故に。
 ご説明下さったサネラ様は、大変心苦しそうなご様子だったけれども、僕は全く気にしていない。
 儀式だとかそういうのに興味はないし、夜会だとか社交だとかも正直面倒くさい。むしろただここでずっと好きに過ごすだけでいいと聞いて、有難いとさえ思っていた。
 と、言うか、同じ敷地内、近い場所にルナス様がいらっしゃる。それを考えるだけで僕は幸せなのだから。
 しかも。

「ねぇ、ユセアナ、ルナス様って今晩いらっしゃるのかな?」

 実は来ると聞いているのである。
 夜に、お渡り・・・がある予定なのだと。
 少しばかり、自信なさげな声音になってしまっていたのだろう、否、声に涙が滲んでいるからか。なんて、そんなのはいつものことなのだけれども。荷物の整理をしていたユセアナの手が止まり、彼女は僕の方を振り返った。
 いったい僕の何を確かめているのか、注意深い視線。

「……いらっしゃると、おっしゃっておられましたね」

 返ってきたのは肯定。
 僕はほろほろと頬を伝う涙もそのままに、ほわと気付けば微笑んでいた。

「そっか。……そうだよね」

 うふふ。
 なんだかふわふわする。
 胸がくすぐったい。
 ああ、そうか、そうなのか。ルナス様は、今晩いらっしゃる予定なのだ。
 お渡り。
 その言葉の意味を、実は僕はよく知らないのだけれど、何があったってかまわないとそう思う。
 だって、ああ、会える。それだけでいい。

「ふふ……うふふ、ふふ。楽しみぃー!」

 相変わらず涙を止める術さえ分からないまま、僕は笑った。夜が待ち遠しくて堪らなかったからだった。
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