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しおりを挟む俺の育ち切らない薄い体の上を、なぞるようにフィムの手が滑っていく。
大きくてかたい、少しかさついた指先がわき腹を這い上がって胸に触れた。
「ぁっ……」
筋肉なんてほとんどついていない、僅かな脂肪と、あとは骨と皮ばかりの俺の体の隅々にまで、フィムの視線が注がれている。
反して、見上げたフィムの体は分厚くって大きくって。
身長だけじゃない、感じずにはいられない体格差に、同じ年のはずなのにと、急になんだか恥ずかしくなってくる。
こんな、子供でしかない俺の体なんて。
先程までの自分は、よく何も考えずにセックスしようと言えたものだとすら思った。
「アーシャ」
つい、視線を逸らしてしまう俺の名が咎めるかのように呼ばれ、何を咎められたのかがわからないわけもなく。
「ゃ、その……あんまり見るなよ……」
消え入りそうな声で告げると、フィムがふっと、息を吐いたのがわかる。
途端に少しだけ視線が和らいだのも。
「どうして?」
訊ねてくる口調はひどく柔らかくて。
「だ、だってその……こんな、俺、子供みたいな……は、恥ずかしいだろ? 同じ年なのに全然違う……」
フィムは周囲の誰と比べても、背が高くて逞しい方だった。
だから、フィムほどとまで行かなくてもいいけれど、せめてもう少し男らしくなりたいとは思う。
さっき、前世を思い出す前までの俺は全くそんなこと思わなかった、今はそれが不思議でならないほど。
なんで、平気だったんだろ……全然、気にもしなかった。
自分はこのままでいいとすら思っていた。
不思議だ、とつい気を逸らせてしまう俺を、フィムは今度は咎めず、代わりのよう、包み込むような柔らかさを浴びせかけてきて。
「気にしなくていいのに。どんなアーシャでも、俺には眩しくしか見えないよ」
なんて、囁く声は、より蕩けるほど甘くて、俺はますます居た堪れなくなっていく。
「お、俺が気にするんだよっ……! もう、いいから、早く……」
早く。
何も気にならないようにしてほしかった。
フィムの体は変わらず熱くて。冷めたりした様子なんてなくて。だから余計に、もうきっとここでやめようとは言わないだろうと、俺はどうしてだか確信していた。
恥ずかしかったり居た堪れなくなったりはしていても。俺が、やめたいとまでは思っていないことを、きっとフィムもまた、感じ取っているだろうから。
くすとフィムが小さく笑う。
「そうだね。俺も……早くアーシャと一つになりたいよ。わかってる? アーシャ。俺が今までどれだけ我慢してきたか。アーシャは無邪気で、欲なんて知らなくて。だから俺は、そんなアーシャを守りたかった。でも、本当は触れたいとも思っていたんだよ? 愛し合いたいって。アーシャがどんな姿でもいい、早く体の隅々まで、俺の物のにしてしまいたい、そう思うことさえ、自分自身に禁じてきたって言うのに。そんな俺に、子供を作ろうだなんて。俺の枷を取り去ってしまったのはアーシャだ、だから」
責任は取らなきゃね?
笑みを孕んだ甘い声を、体を倒すように密着させてきたフィムが、俺の耳元へと注ぎこんだ。
その声に反応するかのように、ぞくっと、背筋に這い上がったのは快感。
ああ、フィムが俺を本当に求めてくれている、そう感じられたのが嬉しくて。
「う、うん、取る、取るよ……! だから、フィム……そうしたらフィムも、俺の物だ」
俺は手を伸ばして、必死にフィムを引き寄せたのだった。
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