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しおりを挟むだからこそ、なのだと思う。
シェラに……会いたくなかった。
シェラが近くにいると知覚してしまうとおそらくダメだ。
逆に目に入る所にいない、ただそれだけでわけのわからない不安に襲われてしまう。
だけどシェラの存在が感じられない場合、それはそれで今のように思考を自由に遊ばせることが可能だった。
おかしな不安に支配されることもない。
シェラがカギだとは思うのだが、だからと言ってなぜこんな風になっているのか、だとかそんなことはわからない。
ただわかるのは自分の情緒がどうしようもないほど不安定であるようだという事実だけで。
(いっそ暇を出すか)
今の状態なら問題とはならないだろう。
むしろ、その方がいいようにすら思える。
ラティに言えばいい。
それだけですぐにも可能だろう。
だけどそもそもシェラは俺の為に仕事を辞めて、特に希望してもいなかった侍従などになってくれているのである。
なのに、今度は突然、暇を出すだなんて。
暇を出すということは事実上の解雇だ。
よしんばそこまでには至らなくとも、強制的に休暇を取らせることに違いはないし、配置換え程度で王宮では雇用し続けるとしてもあまり大きな違いはないだろう。
そもそもそうなると、シェラの今の状態では再教育は必須で、シェラの意思ならともかく、そうではないことで苦労を掛けること自体気が引ける。
あるいは、今は王宮内の宿舎で暮らしているシェラに暇を摂らせるとなると王宮から出すこととなり、そうなると今度はあの原因となった男の問題も出てくるのだ。
男は王宮どころか王都にも出入り禁止となっているが、あくまでもそれだけ。
シェラが王都から出てしまうようなことがあれば意味がない。
そう言った場合、なら護衛を付ければいいとなるかもしれないが、暇を出した元侍従が対象となると、今度はそれはそれで流石に、短期間ならまだしも長期間となると難しかった。
元々のきっかけからして、そんな諸々の事情を考えての侍従としての雇用で、だからこそルニアは安心していたとも言えるのだ。
にもかかわらず、今更、シェラを遠ざけるとなると、それではあんまりにシェラを振り回し過ぎというものだろう。
俺は俺だけの事情で、そこまで自分勝手には慣れなかった。だけど。
(じゃあ、どうすればいい? 距離を取った方がいいのは間違いないんだ。何か、せめて理由があれば……)
このまま一人で考えていても、いい方法など思い浮かぶわけがない。
前世と違って今の俺は、能力という意味においては決して低くはないとは思う。
少なくとも勉強面や記憶力など、そう言った意味で誰かに咎められた覚えはない。
だが、ならば優秀なのかと言えば到底そうとも言い切れなくって、現に今こうして、何も思い浮かばないという程度には、発想力に乏しいのは間違いなかった。
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