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しおりを挟むともあれ、そんなことよりも、今は両親との通信だ。
記憶を取り戻してから今まで、そこまでの日数は経っていないのだが、そのたった数日であっても、さっきまでのように取り乱すほど、ルニアのことを心配していたらしい両親に、くすぐったい気持ちを覚えながら俺は笑う。
「そんなに取り乱したりなさらなくても、僕は大丈夫ですのに……ご心配を、おかけしてしまったみたいですね」
そこは流石に、少し申し訳なくも思った。
俺の表情や雰囲気などに、それまで心配そうにしていた両親もようやく小さく笑みを浮かべた。
『あら、ルニア。心配しないわけなんてないわ。貴方はとても頑張り屋さんだから……』
『そうだぞ、ルニア。親なんだ。心配するに決まっている。困ったことがあったら、すぐに帰ってきてもいいんだぞ』
嫁に出したとはいえ、親子の縁まで断ったつもりはないし、それが叶わないほど、両国間の関係が浅いわけでもない。
だから何も気にしなくてもいいなどと、王族同士の婚姻にあるまじきことを軽々しく告げてくる両親は、つまり一国の王と王妃でありながら、それよりもルニアの親であることを優先するというようなつもりでいるらしかった。
そんな両親からの愛を、まさか俺は疑えるはずもなくて。
だけど俺は小さく首を横に振る。
「本当に……大丈夫です、お父様、お母様。ラティ様も、他の方々も……皆、よくして下さっていますから」
何もご心配頂くようなことなどありません。
重ねて告げてはみるのだけれど、それでもまだ両親は、何処か気遣わし気な眼差しを解こうとはしなかった。
『だけど……前世の記憶を、思い出したのだと聞いている。それで、混乱しているようだとも』
『幸い、代わりに今までのことを忘れてしまっているだとか、そういうわけではないようだとも報告は受けてはいるけど、でも……』
俺は小さく頷いた。
前世の記憶を思い出したのも、それもあり混乱しているのも。
どれも間違ってはいなかったからだ。
今までルニアとして過ごした記憶を、忘れているというわけでもないというものも勿論、やはり間違いではない。
ただし、少しばかり曖昧な部分があるということにも、今はもう気付いてしまっているけど、そこまではわざわざ言わなくてもいいかと内心で呟く。
どうやらただでさえ心配させてしまっていたみたいであるし、ここで追加で更に、など、当たり前に本意ではなかったので。
「確かに、まだ、混乱したままな所があるのは事実です。でも、それもきっとすぐに馴染んでいくでしょうから……」
今はまだ、少し剥離したままの感覚も、すぐに気にならなくなるはずだ。
他の前世を思い出した者たちが、これまでそうだったように。
ルニアとしてこれまで得た知識に照らし合わせた上での言葉は、両親としても、否定できるものではなかったのだろう、彼らもまた、それぞれ小さく頷いていた。
『ええ、ええ、そうでしょう、そうでしょうとも』
『だが、まだ馴染みきってはいないんだろう? なら、一度こちらに戻ってきて、様子を見るというのはどうだろう』
何を言ってもこちらは、お前の実家となるのだから。
なんて父の言葉に俺は思わず吹き出してしまった。
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