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00-1・始まりはいつも突然に

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「どうしよう……」

 俺は天蓋付きのやたら豪華なベッドの上で1人、上半身だけ起こした体勢で頭を抱えていた。
 そしてまた、ぽつりと呟く。

「どうしよう……」

 なんて、呟いてもどうしようもないんだろうなぁ、ってことぐらい、薄々なんとなく察しながら。



 ――……話は数分前に遡る。
 否、遡るってほど前じゃないけど、とにかく遡るのだ。
 ほんの今さっき、たったの数分だけ。
 とにかく、ほんの今さっき、たったの数分前、俺は目を覚ました。
 なんのことは無い、ただ朝だから起きただけ。
 いつもと同じように起きた……つもりだった。なのに。

「? なんだこれ?」

 目が覚めてすぐ、視界に広がった光景に俺は驚いた。
 なんせ全く見た事も無い天井だったのだ。
 勿論、いつも寝起きしてる家の自室などではない。
 やけに低くて布が張ってあった。
 それがつまり天蓋付きベッドの天井だったわけなのだが、なぜ自分がそんな、見覚えのない場所で目覚めるのかも分からず、俺は混乱するばかりだった。
 寝起きゆえか、妙にぼんやりする頭で考える。
 はて、ここはどこで俺は寝る前、一体どういう状況だっただろうかと。
 幸いにして、記憶は直ぐに甦った。
 なんのことは無い、ここはただの自室だったのだ。いつも寝ている自分たち・・のベッドの上。
 いつも通り目を覚ましただけだった。
 自分はどうやら寝ぼけていたのだろう。
 いくら起きた時に1人で心細かったとはいえ、寝ぼけすぎではないだろうか。
 もう責任ある立場となっているのだから、こんなことでは――に負担をかけてしまう。
 自分は彼を助けなければならないと言うのに。
 否、ここが寝起きのベッドの上などというごくごくプライベートな空間であったことを良かったと思うべきなのか。
 あまり気を張りすぎるのもこれからの長い生、疲れてしまって、それはそれで良くないだろうか。
 だが、しかし。
 などまで考えて、自分で自分に突っ込んだ。
 いや、立場ってなんだ。
 彼とは一体。
 否、否、分かっている、わからないはずがない。そんなものただ1人。
 俺の愛しい旦那……――え?
 旦那ってなんだ?!
 そこでまた俺は混乱した。
 覚えていない、という訳ではなかった。
 覚えている、わかっている。自分の名前、自分の立場、最愛のただ1人たる俺の旦那様……つまり伴侶のことも。
 しっかりちゃんと、わからないはずがない。
 その上で混乱したのはひとえに、それだけではなく、昨夜眠りに落ちる前には、確かになかったはずの覚えのない記憶があり、なおかつ、意識がそちらに引きずられているからだった。
 つまり、どういうことかと言うと……――。

(待て待てこれって異世界転生っていうものじゃないのか?! しかも俺、ルニアって言うと俺の好きだった、学園モノ異世界BL小説のラストに断罪されて処刑される悪役の名前じゃないか! どういうことなんだ、一体?!)

 そして冒頭に戻るのである。
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