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23・長居できない国
しおりを挟むどれだけ居た堪れない夜を過ごしても、いつもと変わらず朝は来る。
俺の職業は冒険者だ。むしろそれ以外など知らない。
だから俺は何も依頼を受けていない時は、その時いる場所から一番近い冒険者協会に行って、出来そうな仕事はないかと探すことにしていた。
ナウラティスに滞在していた間も、日中は同じようにして過ごしていたのだが、ナウラティスの冒険者協会は、正直言ってあまり大規模なものではなく、それというのも、冒険者に任せられるような依頼が、ほとんど発生しないせいであるようらしいと知った。
なにせ、他の国なら冒険者に依頼するような案件であっても、正式な騎士や兵士が熟してしまっているというのだから、それも仕方がない話だったのだろう。
冒険者が請け負う依頼というのは多岐に当たる。魔獣や魔物の討伐や、魔の森に近づく際の護衛、薬草などの採取などから、街に立ち並ぶ家の修繕まで。
どのような依頼が多いのかや、どのような案件が中心となっているのかなどは場所によって様々で、しかしナウラティスではそのほとんどが、冒険者に頼らずとも、事足りているようだったのである。
魔獣や魔物の討伐は、魔の森の周辺での依頼が多く、基本的にそういったことこそ、冒険者へと流れてくることが主流なのだが、ナウラティスではそれさえも兵士の仕事であるというのだから、正しく、冒険者には仕事がない国と言えただろう。
地方ではそこまででもないとのことなのだが、俺がいたのは王都であったせいで、余計に仕事がないようなのだった。
暇にあかせた俺は、兵士に混じって魔の森の見回りなどもするようになっていて、それをアーディにはなすと、声を立てて笑っていた。
「あはは! ごめんね、うちの兵士たちは仕事熱心な人が多くて」
手を抜かないがゆえに、冒険者にまで仕事が流れないのだそうだ。
そう聞くと、他国では騎士や兵士が手を抜くばかりなのかと反論したくなったのだが、思い返す限り、そう言ってしまえるような国ばかりだったので口を閉ざすことにした。
何処の国でも、真面目な者ばかりではないということである。それがナウラティスでは違うのだとか。
そんな風に細かいところを思い返しても、ナウラティスはつくづく不思議な国だった。
俺の知る限りこの世界で、あれほどまでに悪いと思えるような行為を見かけない国はない。
なにせ街を歩いていても、喧嘩の声一つ聞こえないのだ。どれだけ穏やかな人間しか住んでいない国だというのか。
それはいっそ、なんだか気味悪く思えるほどで。いずれにせよ、長居できるような国ではないなというのが、正直な俺の感想だった。
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