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39・制御できない嫉妬心と戸惑い⑤

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 シェスがとても気遣わし気な視線を俺にくれているのがわかる。
 きっと心配させている。
 それもやっぱり心苦しかった。だけどシェスは、

「よいのではないでしょうか?」

 俺を宥めるのではなく肯定した。

「いい?」

 良い訳がない。俺は苦く俯く。だが、もうシェスは俺を心配するばかりの表情ではなくて。

「ええ。グローディがお好きなのでしょう? それは喜ばしいことですよ。実際にグローディだって浮かれるぐらい喜んでいるじゃありませんか」
「浮かれる?」

 グローディが?

「ええ。浮かれて。いつになくはしゃいでいるように見えますけど。それはきっと嬉しいからなのでしょう」

 浮かれてはしゃぐ。
 まったくよくわからなかった。
 だってグローディは目が覚めてすぐから、さっき別れる時も含めいつだって何も、雰囲気が変わるようなことなんてなかった。
 ずっと、ただ優しくて。
 浮かれているだとか、はしゃいでいるだとか、そんな風には思えない。
 だが、ほんの昨日、目が覚めたばかりの俺と、ずっと長く、それこそ生まれた時からグローディを知っているのだろうシェス。
 どちらがよりグローディを知っているのかというと、そんなもの比べるまでもない。
 加えてそんなことを考えてまたもやっとしてしまうけれど、ともかく、シェスが言うのなら、グローディは実際に浮かれていてはしゃいでいるのだろう。
 だけど、それは、どうして。

「え、でも俺はこんな嫉妬とか……そんな、どうして……」

 俺はグローディの愛した記憶をなくす前の俺レシア様じゃないのに。

「だからですよ」
「え」

 にっこりと告げられたシェスの言葉に、俺は驚いて目をぱちぱちと瞬かせる。

「嫉妬されているのが嬉しいんです。ミーシュ様はレシア様に嫉妬なさってらっしゃるのでしょう? それをグローディにもきっとお見せした。グローディはそれが嬉しかったのだと思いますよ。今までの自分レシア様や僕にまで嫉妬していらっしゃる。グローディは間違いなくそれを喜んでいます。だってそれってそれぐらい、ミーシュ様がグローディに好意を抱いて下さっているってことなんですから」

 グローディが喜ばないわけがないと、シェスははっきりと言い切った。
 そんなシェスに、またしても、シェスはいったいグローディの何を知っているというのか、なんておかしな嫉妬心が沸き起こる。でも同時にどこか安心もしていた。

(そうか……俺が嫉妬すると、グローディは喜ぶのか……)

 なんて。
 疎ましがられたりしない。
 それはともすれば涙が出てしまいそうになるほど、俺にとって、安堵する事実に他ならなかった。
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